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2019-10

銀の匙のこと その1 - 2012.10.14 Sun

荒川 弘さんの「銀の匙 Silver Spoon」です。

 少年サンデーにて連載中で4巻で累計400万部という大メジャーマンガです。 2012年のマンガ大賞受賞で、前作の「鋼の錬金術師」に続いて安定した支持を受けているみたいですね。
荒川さんといえば「鋼錬」ですが自分は読んだことがありません。 このマンガは「小さい子向けの冒険マンガ」だと思っていたからです。 だって少年ガンガンだし。 NHKの「マンガ夜話」で取り上げられたときの情報だけが自分の「鋼錬」の知識の全てです。 大人のファンが多いようですが、それが「お子様向けマンガではない」という否定にはつながりません。 子供向けのマンガが好きな方々にはお奨めなマンガでしょう。 とてもよく考えられた設定とシナリオで大人の購読にも耐えられるらしいです。 みんな褒めていたし。
したがって、今回のお話は荒川さんのマンガを初めて買って読んでみて思ったことです。 累計5700万部の「鋼錬」支持者たちにとっては納得できる内容じゃないかもしれません。(冒頭から言い訳がましいですが・・・)
今回は明確なネタバレがありますので、まだ読んでいないで楽しみにしている方々はご注意を。

 大ヒット作「鋼錬」終了後の新連載の場は少年サンデーでした。 月刊少年ガンガンよりはメジャー誌なので一般の読者には歓迎だと思います。 サンデーもファンタジーOKなのですが、荒川さんが選んだのは学園コメディーでした。 自身が農業高校出身でその手の細かいマンガも描いていたので違和感はありませんでした。 マンガ界の「一次産業マター」を目指してるんだと思います。 むしろ「鋼錬」をアニメから入った小学生とかはビックリしたかもしれませんね。 「スラムダンク」にしろ「デスノート」にしろヒット作の次は前作と比べられる難しさがあります。 同じジャンルに固執するのかまったく違うジャンルを狙うのか。 河合克敏さんなどは柔道→競艇→書道と読み手の想像を超えたチョイスで楽しませてくれます。 「銀の匙」は意表を突くというよりも得意なジャンルで手堅く描くといった印象です。
物語は進学系の優秀な中学で優秀な成績だった八軒(はちけん)が、ドロップアウトして全寮制の大蝦夷農業高校に入学するお話。 畜産関係の生徒ばかりの高校で今までの学力や価値観が通用しない八軒と、周囲の人々とのふれあいで成長していく物語のようです。 いわゆる「農高あるある」マンガですね。 サンデーで牧童モノといえば、ゆうきまさみさんの「じゃじゃ馬グルーミンUP」です。 マンガは比べて「どっちが面白いか?」とかいうジャンルではありません。 でも小学館でこの題材なら読者は当然比べちゃいます。 だって1話目の主人公とヒロインの出会いのシーンが同じだから。

 ゆうき氏の「じゃじゃ馬・・・」と荒川さんの「銀の匙」は共通点が多いです。 舞台が北海道、設定が酪農と競走馬で牧場つながり、主人公は元優等生(ガリ勉)、ヒロインは男子より馬に夢中など。 1話目の冒頭の主人公と出会う“馬に乗った謎の美少女”なんてあきらかにリスペクト(もしくはパクリ?)としか思えません。 「銀の匙」を読んでいると「じゃじゃ馬」を思い出すんですよね。 これは意図的なのか、たまたま似てるのか? 同じ出版社だからワザとやらせてるとも考えられますし。
ゆうき氏の前作が「パトレバー」で荒川さんは「鋼錬」なのも、前作がアニメ・アニメしたマンガっていう共通項です。 「同じじゃダメなんですか?」って蓮舫さんが言いそうですが、マンガにおける「同じ」はそんなにダメじゃありません。 「スラムダンク」の後出しじゃんけんの「あひるの空」は後発の優位さもありますが「スラムダンク」に負けないバスケマンガです。 バスケの試合をしていない時の面白さは「あひるの空」に軍配かな? 試合していない宮本武蔵のマンガが面白いのかどーかは知りません。 読んでいないから。
では「じゃじゃ馬」と「銀の匙」の違うところを考えてみましょう。

 「銀の匙」には個性豊かな同級生や教師が、「じゃじゃ馬」には牧場オーナー家や従業員が登場します。 アニメ化されやすいマンガの特徴に「定番化しやすいキャラ」というのがあります。 ツン・デレとか熱血とか、視聴者にも声優にもイメージが伝わりやすいキャラです。 「綾波レイ」のようとか「秋山澪」みたいとか具体的なイメージで並べると読む側もわかりやすいです。 でも、これって見たことのあるキャラってことです。 特に見たことがあったのは同級生の多摩子(たまこ)で、「モンキーターン」に出てきた城ヶ崎ありさを思い出しちゃいました。 それが「パクリなのか?別キャラなのか?」とかいう問題じゃなくて、別のマンガのキャラクターを思い出させちゃうことがマズイと思うんです。 描き分けのために記号を使うのは簡単ですが記号には愛着はわきません。 萌えキャラがオタクにしか浸透しないのは、一般読者に萌えの記号が通用しないからです。 カタチ(デザイン)として可愛く描かれていても可愛いという約束事を共有する人にしか伝わらないから。 「けいおん!」のキャラは京アニのファンの中では可愛いとの共通認識ですが、アニメを知らない人には「平べったい顔」くらいの感想でした。(自分の会社の人の実話です)
ゆうき氏も効率のいいアニメ的なキャラ割りには違いないんですが、やっぱり個性的な人物像でした。 その違いを説明するのは大変なので割愛します。(えっ?) 荒川さんのほうがキャラを立たせ過ぎるのかもしれません。 キャラはドラマの中で個性が光るモノです。 逆にいえばドラマに登場しないキャラは個性が光ってなくても構わないとも考えられます。

 オブラートに包みながらの意見なので読んでいてわかりにくい文章になっちゃってますね。 だんだん明確な話もしていきましょう。 
「銀の匙」を読んで一番思ったのは「ヒロインの御影アキ(同級生)が可愛くない」ということです。 これは作者が女性であるということが大きく影響しているのかもしれません。 マンガ夜話で「鋼錬」を取り上げたときに登場人物が鋼の兄弟や軍の司令官のおっさんばっかでヒロインとかいないんだなぁって観ていました。 兄弟愛も素晴らしいテーマなのでそれはイイと思います。 でも学園マンガではそーはいきません。 マンガを描く能力の中で一番需要な技術は女性を魅力的に描くことです。 アクションやギャグ、デッサンや難しい構図、緻密な背景など、女性が魅力的ならばどーでもイイ技術ばっかです。 歴史や推理、SF、バイオレンス、どんなマンガでも女性が描けないひとの作品には限界があります。 
ヒロインのアキは「八軒(主人公)の“ほのかな気持ち”なんか全然伝わらない女の子」という設定です。 それで劇中ではその設定通りの無表情な感じの描き方をしています。 作品のあらすじでは正しいのでしょうが、読者から見てアキが可愛いところが何一つないのは問題です。 それはヒロインという設定だから主人公が気になる女の子という役であるだけです。 
「じゃじゃ馬」のヒロインのひびきは主人公の俊平と反目しあうけど、読者にとっては可愛いと思わせる魅力が表現されていました。 荒川さんが女性なのでソコに力を注ぐ必要性を感じていないのかもしれません。 ゆうき氏の描くひびきは可愛げのない女の子という可愛らしさがありますが、荒川さんの描くアキにはただ可愛げがないだけです。 それは少年マンガとしてはとっても残念なことです。 魅力のないマンガの原因の多くはだいたいココです。 でも400万部売れてるから問題ないんでしょうけどね。

 また長くなっちゃったのでこの日記は後編に続きます。 
描きたい女子がいないので牛を描いたんですがつまんなかったのでボツにしました(泣)
次は何か描けたらいいなって思っています。 



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● COMMENT ●

銀の匙

ほぉ、よりコメントを入れようと思いましたが、途中で飛んじゃいましたので再度投稿いたします。
当方すでに孫もおる歳ですが、未だ40年以上少年サンデーを毎週拝読しております。
銀の匙は、毎号結構楽しんで読む事ができ、それなりに大人のファンも多いのではないかと推察いたします。
各キャラクターも個性がありますね。
題材的に食と命を扱っていますが、偏りがなく好感が持てる内容です。
当方、環境関係の世界に首を突っ込んでいる関係で、食と命と環境との係り合いを老若男女に伝えねばならぬ事もありますので、とても参考になる漫画なんですよ。

MK さん、いらっしゃいませ。

「銀の匙」は、なんていうかアニメのキャラ表のような人物像って印象が強かったんですよね。
各キャラごとに描き分けられているので個性的なんですが、じぶんが期待している個性と違うような・・・

内容については日記のその2のほうに書いたんですが、そっちも納得できるような」文章じゃないですよね。

言い訳がましいんですが、得に「銀の匙」がつまらないというコトじゃなくて、自分は読んで「テクニカルな部分」が引っかかっちゃったんですよね。
偏りがなく好感が持てるというのは同意です。 それは最近のマンガでは珍しいくらいに。


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