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2021-05

新しいの日常とマスク - 2021.03.10 Wed

弘兼憲史さんの「相談役 島耕作」と、あだち充さんの「MAX」です。


 「島耕作シリーズ」と「MAX」は何の関係もないマンガです。しかも弘兼憲史さんとあだち充さんにも共通点はありません。あえて似ているのは「オーバー70歳でバリバリ現役のメジャーマンガ家」というくらいです。
ネットニュースのしょっぱい情報ですが、テコット(旧 初芝電産)の相談役の島耕作氏がコロナウイルスに感染したようです。いつも食べているカレーの味がわからなくなった島耕作がPCR検査で陽性反応が出るストーリーです。隔離生活など実体験談を元に描かれているそうです。
日本経済新聞に載っていた弘兼憲史さんのコメントで『 知人から療養生活や後遺症の実態を聞き「これは描かねければ・・・」と島自身が感染する展開を決めた 』とのことです。弘兼憲史さんは「島耕作シリーズ」を情報マンガと位置づけているそうです。コロナ問題もM&Atや敵対的TOPと同じように経済的なマンガの題材としてこれ以上のモノはありません。
そもそも「島耕作シリーズ」は、現実社会とリンクした経済ドラマとオフィスラブが中心のストーリーです。当然ながら現実社会の中で一番ホットな話題はコロナウイルスなんだから・・・
自分は「島耕作」を1話も読んだことがありません。弘兼憲史三部作でいえば「人間交差点」と「島耕作」は読んでいませんが「黄昏流星群」はベテラン世代のガチロマンスが珍しい作品なので読んでいます。読み切りマンガを描く技術は弘兼憲史さんの実力の確かさを証明しています。近年は単発のストーリーを量産できるマンガ家が少ないのです。マンガを勉強する人なら起承転結がしっかりしている「黄昏流星群」はテキストとして有効だと思います。70代のラブシーンとか、見たくないモノも読まなきゃいけないけどね・・・


 2020年の初頭、屋形船~クルーズ船という船舶問題から始まったコロナウイルスは、休校、卒業式中止、オリンピック延期、志村けんさん死去、緊急事態宣言、謎のアベノマスク配布、10万円全員プレゼント・・・そして甲子園やインターハイの中止という・・・てんやわんやな一年でした。
そもそも飲み歩くとか外食に頼っている生活スタイルでもないので影響は少なく、売り上げに関係なく固定給は貰えるサラリーマンのメリットのおかげでそれなりの生活を維持してきました。このことは次の記事で書こうと思うんですが、世の中の大変さと自分の日常の大変さを混同しないということは重要な気がします。
困った事といえばJリーグが中断&無観客開催になっちゃったことですね。自分にとってはJリーグなんですが、その他のスポーツ、音楽、演劇、演芸、映画、講演会・・・様々なメディアカルチャーが痛手を負った1年でした。
マンガの世界で気になっていたのは「作中の日常のシーンにコロナ騒がどう影響するのか?」です。正確にいえば「マンガ家がコロナをどう作中に取り入れるのか?」ですね。去年の春頃までは「この騒動が早く収束してくれないかな・・・」って誰もが思っていました。
オリンピックにしても今年(2020年)は無理だから来年(2021年)に延期したのですが、だったら今年(2021年)はできるのか?っていう疑問が日本だけでなく世界中が思っていることでしょう。
これはコロナという厄災が、短期的にどうにかなる問題ではないということです。最初に問題になったのは発表する媒体がコロナ対策で閉鎖や規模縮小になったことです。スタジアム、ライブハウス、イベント会場・・・すべて三密なのでNGになりました。テレビはアクリル板や画像編集を駆使して、三密じゃないよアピールで乗り切っています。「十分に配慮して撮影しました」という言い訳テロップなどや、出演者に過剰なほどの配慮アピールをさせたりしてね・・・
ドラマのシーンでは役者が誰もマスクをしていないけどの撮影以外はちゃんと配慮してます。次に問題になるのはドラマやCMで他人と会話するシーンでマスクをしていないコトの不自然さの扱いです。
もうバラエティー番組やロケ番組っでのノーマスかは有りえませんが、ドラマなどの創作モノにマスクが必要か?という問題です。
大河ドラマや朝ドラなど、2020年以降の時代設定ではないストーリーはノーマスクが当然です。しかし現代ドラマがノーマスクというのは、街角の景色としても違和感があります。最初は日常がいつ戻るのかの目処が立たない状況でした。しかし今では誰もが2019年以前の日常ではない景色がこれからの日常になると覚悟した雰囲気です。
象徴的なことがこれからもマスク無しで外を歩いちゃ行けない社会が続くということでしょう。政府や自治体が「コロナは収束しました。もうマスク無しで生活しても大丈夫です」と宣言できるとは思えません。


 日常が変わることが直接ストーリーに影響するのが部活マンガですね。スポーツマンガというジャンルはルールや大会様式をベースに世界観が作られています。そこでウソを描くことは作品の説得力を失うコトに繋がります。難しいことに、競技のルール変更はかなり頻繁に行われています。ボクシングなどのより安全に考慮した新ルールやサッカーのVARの導入など。「あひるの空」では大会中にもバスケットのいルールがどんどん変わっていくので、作者が割り切ってこーいうルールの時代の設定と言い切ったりしていました。
野球は多少のルール変更があっても、やっていることは変わらないので問題は無かったのですが、新しくタイブレークが導入されると野球マンガのストーリーが変わってしまうと思われます。スポーツマンガだからルール通りに進行するのが正しいのですが、予選1回戦ではそんなセリフがなかったのに、準決勝からルールが変わりましたっていうは読んでいて何だかなぁって感じです。「野球は7回でイイじゃん」などの極端なルール変更がいつあってもおかしくないんですよね。
その最たるものが甲子園やインターハイの中止でした。その他の国際試合も含めてプロ・アマほとんどの競技者が影響を受けた1年でした。運動部だけじゃなくて学校生活そのものが新しい日常に対応することになって、卒業式。入学式、修学旅行、学園祭、はダメ。授業もリモートで同級生に会ったことがない、音楽の授業だは歌うこともダメ。その影響は学園マンガの普通の景色を一変させるくらい異常な事態です。
これらのコロナ対応の“新しい日常”をマンガのストーリーに反映させる場合は、すべてのキャラクターをマスク着用を義務づけなければなりません。もし自身の作品を2020年、2021年に設定しているのならばマスク無しの日常描写はありえません。
大抵のマンガ家や出版社は、マスクの義務化や観客数を規制した世界を例外的なことのように思い込もうとしています。「今は特殊な状況であって、ストーリー上はそれまでの日常のままで・・・」っていう考えだったと思います。もし「こち亀」がまだ連載中だったら飲食店の自粛やマスク、給付金詐欺なんかをネタにしていたでしょう。


 2020年の5月にあだち充さんの「MIX」が「ゲッサン」の6月号から休載するとの発表がありました。前後してさいとう・たかをさんの「ゴルゴ13」が52年の歴史で初の休載決定とのニュースがあったばかりでした。さいとう・プロは完全なマンガ製作会社なので、御大の健康はもとよりスタッフのことも考えて活動休止を選んだようです。
あだち充さんにいたっては、自身のセキュリティー以外にも甲子園の中止がウワサされる事態(後に開催中止が決定)に「野球マンガ処じゃないだろ」っていう思いもあったようです。それを思い出したのは「MIX」の最新刊17巻に当時の休載期間中に発表した「リハビリ読切 足つりバカ日記」が収録されていました。この作品が本編の第96話と第97話の間に載っているので、ここが休載したタイミングだったのでしょう。
この段階であだち充さんも「甲子園が開催されたとしてもアルプス・スタンドが満員の応援団で埋め尽くされるような状況にはならない」と考えていると思います。「MIX」は歴史的名作の「タッチ」の後日談で、あれから26年後の明青学園の野球部のストーリーです。いかにも「タッチ」の続編っぽい宣伝だったのですが、ストーリーで引きずっているのは上杉達也が甲子園で優勝した年の翌年のメンバーです。最初に読んだ時に感じたのは「これじゃない感」でした。
「MIX」が明青学園でなく、懐かしいキャラが出てこなくても、それなりにあだち充クオリティーの作品になったと想像します。逆に「タッチ」のキャラが重要な役まわりってわけでもありません。今後、いい年増女?になった上杉南(旧姓 浅倉)が投馬の前に現れて・・・」っていう感じになるんだったら続編の意味があるんですけどね。達也はとっくに死んでいて南は未亡人ていう設定で!


 あだち充さん自身はコロナの社会に思うことがあるでしょうし、それは当時のインタビューなんかでも語っていました。しかし作品内では「このマンガの世界ではコロナも甲子園の中止も存在しないこと」にすることを決めたようです。そうしなければアルプス・スタンドが描けなくなるから。
単純に作中の夏の甲子園大会が何年度の大会なのかを明記していません。マンガは最短でも2~3ヶ月前に描かなければいけません。単行本は雑誌掲載から1年~数年経たなければ出版されません。そのズレは緊急事態宣言が出たり解除されたりの現実社会をマンガに反映させることの難しさになっています。
さいとう・たかをさんは「ゴルゴ13」の連載再開にあたって「ゴルゴの世界でコロナは反映させない」と公式に発表しました。デューク東郷は目で語るからマスクしていても問題は無いらしいのですが、世界に振り回されずに読者と向き合いながら創作していくとのこと。
うっかりコロナ対策で主人公にマスクをさせちゃうと、そのマンガはもうすべてのキャラをマスク顔で描かなければいけなくなっちゃいます。これはテレビドラマにもいえることですが、多くの創作に携わる方々は2020年~21年を無かったことにしたいんだと思います。
安倍夜郎さんの「深夜食堂」も小池百合子知事が「緊急事態宣言中だから、みなさん深夜の外食は控えて下さい」と口を酸っぱく訴えていますから、営業が立ちゆかなくなりそうです。「深夜食堂」で「持ち帰りランチ弁当始めました」っていうのも作品の世界観に関わります。いっそ、ある深夜に常連が店の前で「閉店しました」という張り紙の前で立ち尽くすラストの最終回だったらスゴいメッセージだと思います。「深夜食堂」はもともと不定期連載なんだから、日常が戻るまでは休業でも読者に違和感はないんだろうけどね。
 

 今後、甲子園に観客が戻らないとしても地区予選を再開させたあだち充さんと、すべてのキャラクター(モブも含めて)にマスク着用の義務化を選んだ弘兼憲史さん。どっちの選択が正しいのかの答えは誰にも判りません。
オリンピック開催の頃には今までの日常が戻ってくるのなら、空白の2020年は無かったことにして連載は可能です。マンガの中の時間の流れは大ざっぱなので1年や2年くらいは読者も気にしません。だってマンガは原則的にフィクションだから・・・  


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