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2021-05

疑似親子の同居譚 - 2020.09.02 Wed

深海 紺 さんの「春とみどり」全3巻です。

 まずは、マンガやアニメ、小説、映画などの創作の障害者表現と差別表現についてです。現代社会ではテレビやマスコミ、著名人のSNSなどで差別発言をしたら、即 炎上、謝罪、打ち切りという事態になっちゃいます。とくにジェンダーや女性差別、人種差別、貧困などが4大炎上案件っていう感じです。
そもそも、差別とはAとBの差を分けるという意味なので、多数が少数を卑下することではないです。有色人種が「この白人野郎」っていうのも差別的発言だし、ネットで流行りの「上級国民」というフレーズも差別的ですよね。
差別発言をする人には差別主義者で差別するのが大好きな人(わざと他者を蔑視する)と、物事を思慮することができない人(教養の無さによる)とがあります。差別主義者というのはも論外ですが、教養が無いというのも看過できるもんではありません。
「うっかり発言をするような人は公の場で発言する資格はありません・・・」っていうのは、うっかりさんへの差別になるというのが差別表現のムズカシイところです。
深海 紺さんが差別主義者ということではありませんし、「春とみどり」という作品が差別的な作品ということでもありません。むしろ、差別とは一番遠いタイプの『優しさあふれる、ふたりの日常』というマンガです。ふたりというのは31歳独身OLみどりと14歳で母親が死別した春子です。

 今回からの記事は「春とみどり」の全3巻をテキストに解説するので、読んだ人のほうが合点がいくと思います。3巻で2千円ちょっとなのでちょっと高めですが・・・
『優しさあふれる・・・』がキーワードの作品なんですが、優しさの表現がどーも飲み込めない作品っていう感じでした。「優しいマンガが描きたい」という目的は評価したいのですが、「意欲的に優しいマンガを描いているのか?」という疑問がありました。酷い主人公のゲスなストーリーは誰にでも簡単に描けるんでしょうが(偏見あり)優しいストーリーは案外ムズカシイです。
優しさ溢れるストーリーの描き方の説明なので、ヒーロー物やミステリー指向、ファンタジーな作品を描きたい人には関係ない内容です。そーいう作品は自由にのびのびと描けばいいのでしょう。ましてやマンガを描く人向けの内容なので、深海 紺さんのファンやマンガ読者の方々に向けた内容でもありません。
自分が読んできたマンガの中で「春とみどり」のような印象のマンガが意外と多いです。こーいう「いい人マンガ」を描くときに陥りやすい部分を考えて見ましょう。
 
 「春とみどり」の単行本の1巻目の裏表紙には次のように描いてあります。
『人つきあいが苦手でどこにいても居場所がないみどり(31)は、中学時代好きだった親友・つぐみと瓜二つな彼女の娘・春子(14)と出会う。 かつて自分に居場所をくれたつぐみ、今度は自分が春子のために居場所を作ろうとみどりは春子を引き取ることを決意するが・・・ 』
ちょっと何言ってるのか解りにくいですが、要約すると『 みどり(主人公)の元につぐみ(中学の同級生)の訃報、みどりが葬式に参列したらつぐみの忘れ形見の春子と出会う。春子には父親がおらず親戚が施設に入れる相談をしているところ、“赤の他人”のみどりが春子を引き取ると宣言する・・・』っていうストーリーです。
ベースになっている「他人の子供と疑似親子」という設定は、ありがちな展開ながら人情モノの鉄板でもあります。子供の視点で「本当のお母さんじゃない」っていう少女マンガは多いです。「本当のお母さんは誰?」っていう感じです。小沢真理さんの「銀のスプーン」なんかは本当のお母さんや本当の弟やらでてきて大騒ぎな作品でした。
宇仁田ゆみさんの「うさぎドロップ」あたりから思わず引き取る系のパターンが確立した印象です。「春とみどり」と同型の作品で誰もが思ったのはヤマシタトモコさんの「違国日記」でしょう。ストーリー冒頭の葬式の展開が「違国日記」の丸パクリです。深海 紺さんにも言い分とかあるのかもしれませんが、同じ題材でここまで類似すれば読者にとっては「パクリ?」ってなります。今回はそこにはあんまり触れませんが、これだけ寄せていった以上は「違国日記」と比較されないというのは都合がよすぎますよね。
現在連載中の作品だと、くずしろさんの「兄の嫁と暮らしています」があります。こっちは唯一の肉親である兄が死んでしまった女子高生の志乃と兄嫁の希さんとの「他人だけど家族」というストーリーです。兄嫁と暮らすという設定は無理がないので、「違国日記」ほど似ている感が少ないですが、「春とみどり」と「兄の嫁と暮らしています」には共通点があります。「春とみどり」の裏表紙には『居場所がないみどりと居場所をなくした春子。そんなふたりが織り成すセンシティブ同居譚』と書いてあります。そして「兄の嫁と・・・」の裏表紙には『日常センシティブストーリー第1巻』と書いてあります。
「センシティブ」って何だよ?ってことですが鋭敏とか慎重に扱われるべきっていう意味ですね。センシティブ勝負をしかけるんだったら比較せざるを得ないです。ちなみに「兄の嫁と・・・」のほうが先に出版されています。
ちなみに「違国日記」はセンシティブというよりも豪腕なストーリーって印象ですが、裏表紙のコピーは『へんな人と暮らしはじめた』です。「違国日記」は主人公の圧倒的な自我と社会性のなさがテーマの作品なので、このコピーは本編の内容をよく言い得ていると思います。

 次回からは「春とみどり」の内容を具体的に分析していきたいと思います。これは「春とみどり」を評論するのではなくて、センシティブなストーリー?の描き方を考えるための記事になります。
深海 紺さんのファンや「春とみどり」が面白かったという方々は、それで十分なんだから次回の記事は読まなくても構いません・・・  今回の記事は言い訳の前倒しです。


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