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2020-06

全てが許された - 2020.03.17 Tue

   TBS系ドラマ「グランメゾン東京」です。


 日本に初めて世界のサッカーを教えてくれたのはドイツ人のクラマーさんでした。それまで何となくサッカーっぽいことをしていた日本代表に、蹴り方と止め方を教えてくれたのがクラマーさんでした。そればっかり練習していたのではなかったでしょうが、後のメキシコ五輪の銅メダルにつながる指導者だったそうです。メキシコ五輪で日本サッカー代表はフェアプレー賞を取っています。
その後、日本サッカー界に世界のサッカーを教えてくれたのはオフト監督やオシム監督です。オフトさんは「トライアングル」を教えた監督で、オシムさんは「水を運ぶ」を教えた監督です。それ以降も日本サッカーは発展したり迷走したりしながら、何とか頑張っています。押し並べてプレースタイルはフェアプレーを重んじるのは日本の伝統のようなものです。

 彼ら以外のも世界のスタンダードを説く人はたくさんいました。今でいえばイニエスタなんかは最先端の世界基準を見せてくれています。Jリーグが始まった頃の世界基準だったのが何故か鹿島アントラーズに加入していたジーコさんです。後に日本代表監督になり「散々な野郎だった」と批難されますが、当時は別格な選手でした。彼が日本に持ち込んだのが「鹿島イズム」という精神論?なんですが、鹿島サポではないので言及はしません。それ以外に日本人が知らないサッカー用語を日本に出ろ目ました。それが「マリーシア」です。マリーシアはポルトガル語なのですがブラジルの言葉で「ずる賢さ」という意味です。サッカーに詳しい人が読んでいたら「今さらマリーシアの説・・・?」って感じなので省きますが、勝つためには多少のズルさもアリだよねってことです。

 日本人サッカーファンがジーコを観ていて「そんなこともするんだぁ」と驚かされたのは相手チームがPKを得て、キッカーがボールをマークにセットしたときに、PKと関係ないジーコがボールに近づき唾を吐いてレッドカード(退場)になったシーンがありました。勝つためには何でもするというブラジル精神を加味しても理解に苦しむシーンでした。
日本でのマリーシアの解釈はズル賢さから賢さが抜けてズルいと理解されちゃっています。サッカー通が言う「本来は賢く時間を稼ぐ、賢くファウルを貰う、賢くマイボールにする・・・」っていうことなんでしょうが、日本人の気質は「時間稼ぎをしない、レフリーを欺かない、有利なジャッジよりも正しいジャッジ・・・」ということです。Jリーグの掲示板の意見も概ね「正々堂々とサッカーしろよ」です。それはクラマーさんの教えでもあるはずで、せっかくのサムライ・ブルーなんだから武士道精神こそが日本代表のスタイルって言っちゃってもいいんじゃないかな?

 今回は前回に続きまして作中に出てくるウソについてです。前回の記事「リメンバー。ミー」に出てくるウソつきの説明は、サッカーのマリーシアで説明がつくことに気づきました。要するにマリーシアが好きなサッカーファンと、嫌いなサッカーファンがいるっていうことです。どっちもサッカーファンには変わらないんですが、ズル賢いヤツらに正々堂々と勝つほうが痛快でしょう。
でも得することが異常に好きな人が増えてるように思えます。同じ値段ならポイント還元されるほうとか、今ならもう1セット付いてくるなど。お得な情報満載の主人公が都合よくクリアしていくストーリーが小気味いいと思う人もいます。しかし主人公が要領悪く窮地におちいるストーリーに引かれる人もいます。ようは「勝ちゃいい」というストーリーと「筋を通す」というストーリーです。前者はサクセスストーリーで後者は人情噺です。




 「グランメゾン東京」はTBS系で2019年の年末に放送されたキムタク主演のドラマです。同時期にいくえみ綾さん原作のドラマ「G線上のあなたと私」も放送されていました。同時に両方を観るのは不可能?なので、キムタクのほうは録画して今年になってから観ていました。録りだめなのに何故か1週間に1話ペースで観ていたら最終回が3月になっちゃいました。したがって視聴した方に取っても「今さらグランメゾン東京?」って思われるでしょうが、このブログはだいたいネタがずれずれなのでご了承下さいです。
自分が観たキムタクドラマは2000年の「ビューティフルライフ」(美容師)2004年の「プライド」(アイスホッケー選手)に続く3作品目です。「ビューティフルライフ」はTBS系、「プライド」はフジテレビ系でしたが、TBSはウエットに落とすドラマ作りでフジテレビはスカッとした作り方で曲の個性が出ていたと記憶してます。今回の「グランメゾン東京」はスカッとした勝ち負けの中にウエットを入れたがるキムタクの「格好つけしい」がよく出せていた作品でした。

 ストーリーは『 フランスで二つ星レストランのオーナーシェフだった尾花(キムタク)の店で日仏首脳会談の昼食でアレルギー食材の混入事故を起こしてしまう。フランス政府関係者をいつものキムタクのように殴っちゃって尾花は逮捕、レストランは倒産、尾花とその仲間たちはフランス料理界?から追放されてしまう。そしてチンピラな生活をしていた尾花はフランスで就職活動していたシェフの倫子(鈴木京香)と出会って「オレが三つ星を取らせてやる」と宣言』 ここまでが第1話でオールフランスロケという破格の制作費をツッコんだドラマです。
その後、かつての仲間(全員が尾花を恨んでいる)を巻き込んで倫子がオーナーシェフのレストラングランメゾン東京で三つ星を目指すというドラマです。
ストーリーのキモ「尾花は欠陥シェフだから相手にするな」という共演者のセリフと「そんなはずはないキムタクはいい人のはずだ」という視聴者の思いが違和感なく両立できているところです。尾花の人物像は口が悪い、他人に配慮しない、利己主義で料理バカって感じです。
シナリオだと倫子や京野の視点(視聴者の視点)から尾花が語られるので、尾花の真意が判りかねる演出になっています。あくまでも100%キムタク・ドラマだから尾花を中心にストーリーが進むけれど、じつは主人公は倫子だったという印象でした。尾花の過去を知る人たちから色々言われている尾花像と、倫子自身が尾花と接して感じる尾花像の変化がドラマの見所になっています。
「尾花という料理人を信じていいのか?」と迷い続け、クライマックスでは倫子は尾花の料理よりも自分の料理を信じます。それがラストにどうなるのか・・・?

 前回の「レメンバー・ミー」でウソつきなキャラについて言及しましたが、「グランメゾン東京」でも主人公の尾花は真実を語りません。他の登場人物から悪者のレッテルを貼られていても、ほとんどの人が「キムタクに限って悪役じゃないだろう・・・」って思っていたはずです。
言われっぱなしの尾花は強気な姿勢(キムタク流のオラオラ感)を崩さずにつっぱらかっていますから、「オイオイ、お前は本当に悪役じゃないのか?」って心配させる演出でした。しかし絶妙な塩梅で白キムタクを見せてくれるので、「本当は何か事情があったんだろ」って安心させてくれます。
第1話でアレルギー混入の事故は尾花が直接関与してないことは表現されていますが、尾花自身が潔白を証明する努力をしないので方々からグランメゾンを潰す圧力(陰謀)を受けます。コレが一つ目のストーリーの軸ですが、もう一つの軸は倫子が三つ星を取るといストーリーです。
尾花がことあるごとに「三つ星を取らなきゃダメなんだよ」とか「それで三つ星が取れるのかよ?」っていうから、尾花が三つ星を取るために倫子の資産(土地や店の権利)を利用してる感じになってますます尾花がイヤなヤツになっていきます。
倫子の資金と京野が引っ張ってきた融資話でやりくりするグランメゾン東京と豊富な資金のi一流レストランの guku 。どっちが三つ星になるのかというレースが最終回へ向けてのメインエピソードになっています。guku のオーナーで飲食店のプロヂュースをしている江藤のエセ関西弁が視聴者をイライラに導き、ナゾの美女リンダも敵か味方か?って思っていたら思いっきり敵だったり・・・
二つ目のストーリーの『どっちの店が三つ星を掴むのか?』は最近流行りの企業サクセスストーリーっぽい展開です。グランメゾンの尾花が勝つのか? guku の丹後(パリ修行中の同期)が勝つのか? それ以上にやられっぱなしの尾花が妨害工作を仕掛けた敵をどう倒すのか・・・?

 自分はこのドラマが主人公がライバルを土下座させるストーリーだったり、フランス時代の尾花を貶めようとした真犯人が誰なのかっていうストーリーだったら観るのを辞めようと思っていました。同じTBSの大ヒットドラマの「半沢直樹」のような倍返しとか土下座とかのような痛快なストーリーって苦手なんですよね。ギスギスしたストーリーって面白いと思えないし、仕返しとか逆転とか小学生かよって感じです。
「悪役が最後は倒されていい気味だ」っていうのは現代のネットリンチに通じる気味悪さです。悪人を制裁したくてウズウズしてる人たちが悪人は罰を受けなきゃ気が済まない人が増加しています。
このご時世だとコロナウイルスの何たらで「アノ政治家の発言が」とか「感染者のくせに」とかを観んなで怒るという風潮がヘンだと思わない人が過半数を超えたような印象です。「悪い人は裁かれるべき」というのは正論なんでしょうが、制裁を好きな人はみんな正論が大好きです。
以前にブームだったアオリ運転や高齢者の死亡事故で日本中の正義が湧き上がりました。SNSもテレビのワイドショーも「許すまじ」という勢いがヒステリックなほどでした。悪い人を許すまじは正論であり正義なんでしょう。しかしヒステリックになってしまうと正論から離れていっちゃうような気がします。
ドラマなどでも視聴者がヒステリックになれるイベントを置くことによってSNSでの拡散(炎上)を狙ったと思われる演出が増えているようです。ようはアオリ運転のようなキャラを登場させたり、性格破綻者(用語がムスカシイ)や社会適応上アウトなキャラを好んで登場させます。
それらのキャラは正論で論破できるからヒステリックな視聴者には大歓迎のようですが、シナリオが陰湿で殺伐としてしまうので「楽しいかそれ?」っていつも思います。犯人が最後まで明かされない系のミステリーは、最後まで全員が悪い人かもしれないというのはイヤな人だらけですよね。
それと「最終回で全てのナゾが明かされる」ストーリーと「最終回で予想外のクライマックス」というストーリーは意味が違います。前回の記事で書いた「ちゃぶ台返し」は論外ですが「ナゾが明かされる」はなぞなぞの答え合わせです。「予想外の・・・」というのは観てる人が思ってることと違う終わり方のことです。

 「グランメゾン東京」が予想外の展開だったのは1話目の日仏首脳会議の昼食でのアレルギー物質(ピーナッツオイル)の真犯人と三つ星を取るクライマックスのシナリオでした。
真犯人はどーせいるんだろうと思っていましたが、推理ドラマでも刑事ドラマでもないので祥平(フランス時代の下っ端)がやらかしたっていうのがバレバレな展開です。「驚愕の真実が明らかに・・・」っていう盛り上げではなくて、キムタク(尾花)は「そんなの初めから判ってたんでよ」という格好つけな演技が光ります。「えっ?許しちゃうの・・・」という懐の広い演技はキムタク臭さ満載で、こーいうキムタクドラマをみんなが待っているんだと思わせます。(あまりドラマ観てないけど・・・)
祥平だって許しちゃうんだからライバル店 guku のオーナーの卑怯な妨害や女フィクサーのリンダからの因縁なんかも、尾花はそんなに怒り心頭にはなりません。「訴えろよ」「土下座させろよ」って悪者を糾弾したい正論好きな人たちも、主人公が許しちゃったら怒りのやり場もありません。
尾花は真犯人の祥平やミシュランに圧力をかけるリンダも、ことごとくセコい手を使ってくる江藤もみんな許しちゃいます。ライバルにレシピを流していた公一も、料理に毒を盛った久住も許しちゃいます。
特筆すべきは guku のオーナーの江藤はビジネスライクに丹後をシェフの座から追い出す。しかし後釜に入ったシェフにあっさり逃げられて guku はボロボロな状態になっちゃいます。そんな状態を観た丹後もまた江藤を責めずに guku のシェフに復帰。視聴者全員が「江藤、ざまあみろ!」っていう展開のはずだったのに、江藤ですらストーリーの中で許されちゃいます。


   グランメゾン東京 JPEG 


 最後はグランメゾン東京が三つ星を取れるかどうか?っていう最終回なんですが、ここで第1話の尾花のセリフが伏線になっています。「オレが三つ星を取る」ではなくて「オレが三つ星を取らせてやる」というニュアンスの違いです。
結論としては尾花は三つ星を取らなかったんですが、もし尾花が授賞式で三つ星を貰っていたら、しまりのないストーリーになっちゃうと思います。1話から三つ星を取るのは尾花か丹後どっちか?っていうストーリーで、衝撃のラストシーンっていう期待感はありません。そりゃキムタクの勝ちに決まってるから・・・
昔に観たキムタクドラマの「ビューティフルライフ」は失う悲しさのエンディングでした。「プライド」は成し得る歓喜のエンディング。そして「グランメゾン東京」は黒澤の「用心棒」のようなエンディングです。いろいろ思うところはあっても歯切れのよい最終回でした。

 この作品であまり語られないことかもしれませんが、じつは尾花と倫子のイチャイチャが一番の見所です。尾花は47歳(当時のキムタクの実年齢も47歳)倫子は49歳(鈴木京香さんの実年齢はなんと51歳)この二人が中学生のようなレベルの口げんかを楽しむドラマでした。ここに京野 年齢設定は49歳(実年齢52歳)が横恋慕という部活の先輩女子を後輩ふたりが取り合う酸っぱいんだかしょっぱいんだか・・・ の展開です。日曜のゴールデンでこれはいいのか? 観ていて死にたくなる人、多数じゃないのか?って心配なドラマでもありました。
制作サイドでは祥平役のキスマイ玉森裕太クン(当時も実年齢29歳)をドラマの華にしようって魂胆だったんでしょう。でもおじさんとおばさんのイチャイチャしか記憶に残っていません。何よりもキャスティングが秀逸すぎて玉森クンが普通の男の子にしか見えないって感じでした。丹後役の尾上菊之助さんなんか存在からして歌舞伎顔だし、江藤役の人はリアルにイラつく顔だし、相沢役は神戸クンだし・・・ 

「グランメゾン東京」のテイストは二ノ宮知子さんのマンガのような爽快感ってイメージです。二ノ宮作品の特徴のトップスキルな主人公たちでニヒル系男子と振り回され系女子、脇役もトップスキルでヒドい目に合うキャラは多いけど不幸になるキャラは出さない。イチャイチャのレベルも二ノ宮作品級の中学生っぽさでした。


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● COMMENT ●

以前の仕事の関係で小学生の時から和食・フランス料理の厨房に出入りしてたことから身近に感じているからなのか自分では作れないのに料理ドラマが好きで、
今回も楽しめた作品でした。
俺は丹後を尾花が最後グランメゾンに呼んで仲間にするのかと思ってました

山下達郎さんも好きで、らしさが出ていてお気に入りの曲となりました。





マースケさんいらっしゃいませ。

このドラマはお料理のヒントやアイデアレシピといった日常系のお料理ドラマではなく
見たことも聞いたこともない料理ばっかりがよかったと思います。
ストーリー中にお役立ち情報が入るのは興ざめしちゃうんですよね。
そーいうのはヒルナンデスでやればいいんです・・・

丹後のグランメゾン入りのルートはアリだったと思いますよね。
しかし丹後の江藤ラブの展開でその線は消えました。
祥平の guku → グランメゾンをやっちゃったから、丹後まで取っちゃダメだったんでしょう。
guku もちゃんと救済されるのがストーリーのテーマかな?

山下達郎さんを起用するのはもう禁じ手ですよね・・・


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