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2020-06

新しいマンガの神様 - 2020.02.28 Fri

TAZUKA2020 の「ぱいどん」です。

 野球にもサッカーにも神様と言われる偉人が存在します。野球で言うとベーブルース、サッカーで言えばペレですね。日本の野球の神様は川上哲治さんだと思っていましたが、彼は打撃の神様だったそうです。サッカーの神様もペレかジーコか悩ましいところですが、ジーコは「白いペレ」の異名があったので本家サッカーの神様はペレなんでしょう。神様が何人いてもかまわないのですけどね。それこそ八百万のジャンルに神様は存在するようです。
マンガの神様と言えば手塚治虫さんです。このことにかんしては異論はないと思います。今さらながら手塚治虫さんは「鉄腕アトム」や「火の鳥」を描いたマンガ家で、60~70年代の多くのマンガ家に多大な影響を与え、マンガ家以上にサブカルや創作に携わる人や経営者などのエグゼクティブ層にも影響を語る人が多いです。
そんなことを言っても手塚治虫さんは30年以上前に亡くなっています。「マンガの神様」と言われても現役でマンガを読んでいる世代にはピンとこない歴史上の人物かもしれません。サッカーで言えば「鹿島でジーコを観てサッカーを目指した小学生」なんていうのも今の世の中では皆無です。キング・カズに憧れているサッカー少年なんかいませんよね。ましてやベーブルースを崇拝している野球少年なんていたら、ちょっと不気味ですよね・・・

 自分は「新宝島」も「鉄腕アトム」も知らなかった世代です。「ブラック・ジャック」は読みましたが、すでに手塚治虫さんのマンガをマンガファンが求めなくなっていた頃でした。「ブラック・ジャック」は1話完結のストーリーなのでマンガのシナリオの勉強にちょうどいいマンガでした。テレビドラマのサスペンスものをマンガに焼き直した感じで、そんなに面白いストーリーじゃなかった印ような記憶です。
手塚作品で唯一単行本を買って読んだのが「アドルフに告ぐ」でした。今でも文庫化で購入可能だと思います。「火の鳥」は多くの方々がそうであるように学校の図書館で昼休みに読破しました。「手塚治虫のライフワーク」という評価ですが、ありがちなSF短編集っていう印象でしたね・・・
自分はマンガの神様がマンガを創造した時期を知りません。知っているのはむしろキャリアの晩年、劇画に押されて「時代遅れのマンガ家」って揶揄されていた頃です。当時、手塚治虫さんを「マンガの神様」と言っていた人たちはすでにマンガを卒業していたと思います。現役でマンガを読んでいた世代には「大友のマンガのほうがナウい」って思っていました。しかしその大友克洋さんは手塚治虫さんを神と崇拝してるのでヤヤコシイです。いわば神の晩年に立ち会っていたのでしょう。
そんな「マンガの神様」を本当の神様にしようとする動きがありました。何とAIで手塚マンガを復活させるとのことです。

 それは「TEZUKA2020」というキオクシア株式会社(旧東芝メモリ株式会社)の企業プロジェクトで企画されたそうです。概要は過去の手塚作品のプロットやキャラ原案をAIに覚え込ませ、AIが「手塚治虫が描きそうなマンガ」を自動生成して人間がストーリーやネームを作ってマンガを描くということです。一部ロボットアームで下絵を描くそうです。
このプロジェクトは近未来のハナシではなくてもう1話目が「週刊モーニング」に掲載されました。スタッフはキオクシア(株)のスタッフ、ご子息の手塚眞氏、公立はこだて未来大学の副理事長 松原仁氏、同 システム情報科学部教授 迎山和司氏、慶應義塾大学理工学部教授 栗原聡氏、栗原研究室の学生。シナリオライター あべ美佳氏、キャラデザイン 手塚プロ 瀬谷新二氏、マンガ家 池原しげと氏、つのがい氏、ネーム作成はマンガ家 桐木憲一氏 キャラ作画は つのがい氏、背景は池原しげと氏。
ちょっと面白いマンガを作るために集まった人たちとは思えないような人選ですね・・・ 一番つまらない要素が満載なのがAIが作った130本のプロットをもとに発想を膨らませてシナリオ化したのが手塚眞氏ということです。自分が知る限りで手塚眞氏がインタビュー等で面白いことを言ったのを観たことがありません。それはマンガの神様の息子という宿命もあるんでしょうが、意味や理屈は述べるけど聞いていてユーモアとかウイットとかまったく感じられません。同じことが宮崎 駿さんの息子にもいえます。
参加メンバーの中で名前の知っていたのは作画担当のつのがい氏とネーム担当の桐木憲一氏です。つのがい氏は手塚作品のパロディを描いているマンガ家ですが、あまりにタッチが似ている(上手)なので手塚家公認のパロディマンガ家になっています。梅宮辰夫さんとロバート秋山さんの関係のようですね。手塚治虫さんのマンガを復元させるにはつのがい氏の存在が不可欠なんでしょう。
ネーム担当の桐木憲一氏は「東京シャッターガール」とか「金沢シャッターガール」などのマンガ家です。作品自体は記憶に残っていませんが、今回の記事を書くにあたって調べてみたら桐木憲一氏は手塚治虫さんの長女 手塚るみ子さんの旦那様ということでした。つまり、そーいう意味での抜擢なんでしょう。

作品は読んでいませんがAI制作の「手塚治虫31年ぶりの新作?」の「ぱいどん」のストーリーは『合理的なデジタル社会になった2030年の東京、進んだ管理社会に背を向ける記憶を無くしたホームレスの男 ぱいどん。小鳥ロボットのアポロとともに事件に解決すべく立ち向かう』っていう感じです。
この作品は「手塚治虫さんがもし生きていれば描くだろう新作」という発想のようです。仮に手塚治虫さんがご存命だったとしたら91歳になってるはずです。「さすがに新作はなぁ・・・」って感じがしますけどね。
キオクシア(株)さんや手塚家の方々はあんまりマンガに詳しくないだろうから気がついてないだろうけど、AIが計算で導いたデータはどの時代の手塚治虫さんのマンガなのでしょうか・・・?
AIは過去の手塚作品の傾向から「手塚治虫なら描きそうな作品」は作れるようです。そーいうのはAIが得意な分野だから。しかし、それは清水ミチコさんの持ちネタ「勝手にユーミンの新曲を作ってみる」とやってることは同じです。
世代によって手塚治虫さんのマンガの記憶は違っていて当然です。貸本~マンガ誌創刊ラッシュという黎明期に読んでいた人にとっては神様のような存在です。劇画の台頭~少年マンガ迷走の頃に読んだ人にはブレブレなマンガ家っていう印象です。「ブラック・ジャック」~青年誌向けの時代の人にとっては、さいとう・たかをさんや弘兼憲史さんよりも格下なマンガ家っていう位置づけでしょう。
時代に取り残されたマンガの神様の望みは新しいマンガを手に入れることだったと思います。それまでの「手塚治虫というマンガ家のストック」では、新しい時代のマンガが描けないことを手塚治虫さん自身が判っていたハズです。新しいマンガと言ってもそれは80年代のマンガですけどね。
生前の手塚治虫さんの信望者たちは現役のマンガ家の新作を評価しようとせずに、過去作と功績をもって神様と崇めていた空気がありました。それは現役のマンガ家にとっては苦痛だろうし、失礼なことのようです。
なにより手塚治虫さんが天国で「ぱいどん」を読んだら「違う!ボクはこんな古くさいマンガが描きたいんじゃない!」って叫ぶと思います。生前の手塚治虫さんの映像を観れば怒るに決まってるじゃないですか。

 今回のプロジェクトは神様が本物の信仰になる過程のような感じがします。真言宗の檀家でありながら無宗教派の自分ですが、神様って残された人たちが勝手に作った設定だと思っています。ブッダは戒律なんか作ってないだろうし、キリストは聖書なんて思いつきもしなかったでしょう。マンガの神様の没後も、弟子たちが新たな経典を作ろうとしてるようで「うわぁ」ってします。コンピューター将棋でプロ棋士と対戦してる人たちのイヤ~な感じにも似ています。
「AIでマンガが作れる」というプロジェクトも成功すれば全てのマンガが50点のマンガになっちゃう未来しか想像できません。統計でマンガを作れば万人向け=平均点が満足するマンガになるんでしょう。しかもAIは人件費がかからないかし、AIが出した答えには人類は逆らえないから出版社も安定した50点マンガを乱立します。それを見ても見なくても定額料金だから、誰も見なくなっちゃいます。そーいう2030年の東京を舞台にしたマンガができそうですが、笑えませんよね。
最近「鉄腕アトム」のリメイクを寄ってたかって出版したり、「どろろ」の新作アニメが放送されたりっていうのも信者っぽくってイヤな傾向だと思っていました。そーやってマンガの神様を本物の神様にしようとしているんでしょうか?


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