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2019-11

吾妻ひでおさん死去 - 2019.10.22 Tue

10月13日、吾妻ひでおさんが食道がんで亡くなりました。享年69歳。

 自分は吾妻ひでおさんが食道がんを公表していたことすら知らなかったので、読売新聞にマンガ家の訃報記事としては大きく取り上げられていたのを読んでビックリしました。食道がんというのもビックリですが、69歳だったということのほうもビックリです。
吾妻ひでおさんは人気ギャグマンガ家~ノイローゼ、落ち目エロマンガ家、アルコール中毒、失踪、浮浪者、入院・・・ 長生きできる人生には思えないんですが、この生き様にしては69歳は頑張ったほうだと言えなくもないでしょう。

 吾妻ひでおさんを有名にしたのは「不条理日記」と「失踪日記」です。自分が吾妻ひでおさんを知ったのは、たまーに入手できた週刊チャンピオンに掲載されていた「ふたりと5人」でした。こども心に「あんまり面白くないマンガ」だと思っていた記憶があります。ただ、現在の萌えストーリーのひな形のようなモノがこのマンガで完成していたのかも知れません。女の子をいっぱい出す、ストーリーは気にしないなど・・・ この後、サブカル界にロリコンブームがきて、吾妻ひでおさんはその中心人物になっていきました。
当時のロリコンは今のファッショナブルなロリータや萌えアニメのような幼稚なジャンルではなくて、公安にマークされるくらいガチな変態の一ジャンルです。SM、同性愛、フェチなどと同類のアングラでした。SMとかゲイなどは変態としてのプロ化が進んだジャンルなのに対し、ロリコンは若年層にも参加しやすいヘンタイだったのでサブカル界では一気にブームになりました。SFも世間からみれば十分にヘンタイのジャンルに入っていたので、SF大会(日本中のヘンタイの集まるイベント)で吾妻ひでおさんの「不条理日記」がSF大賞を取ったのは、漢字の変態がカタカナの変態に変わったチュン感でした。
その後、ギャグマンガ家からすっかりロリコンマンガ家に変貌した吾妻ひでおさんは、皮肉なことにロリコンマンガが美少女マンガ~萌えブームとジャンルが成熟するにつれて忘れ去られていきました。だって世間的には江口寿史さんおほうが可愛いしメディア的にも健全だから・・・

 吾妻ひでおさんを語る上で読書家(活字中毒)や映画やSFなぢの見聞の広さを上げる人がたくさん出てくると思われます。「失踪日記」はその内容のスゴさ(浮浪者の実態)や自身のキャラの面白さもありますが、ナレーションやセリフ等のセンスの良さが読者に評価されてるんだと思います。「ふたりと5人」やそれ以降のギャグマンガでもそうなんですが、ギャグの構造が面白いのではなくて作者やキャラがつぶやくツッコミが面白いんです。不条理系の作品も登場キャラが言ってるセリフじゃなくて、吾妻ひでおさんの声はマンガ化されてるから面白く思えるんでしょう。だから作品の評価も「吾妻ひでおさんという人物像ありき」ということになります。この人物像の形成に一番貢献したのがライバルのいしかわじゅんさんです。当時のサブカル界では両者とも重鎮の位置にいましたが、自分はいしかわじゅんさんのマンガも面白とは思ったことがなかったです。

 今の基準の美少女絵では吾妻ひでおさんの作風は、時代遅れで古くさい美少女だと思われます。中高生が好きそうな萌え絵はCG絵がベースなので、手描きの美少女には違和感もあるでしょう。それが過去の美少女を加工して改良してたどり着いたとしたら、吾妻ひでおさんの絵はオリジナルの美少女です。むしろ過去の美少女マンガ家たちが吾妻ひでおさんの本をバイブルにして改良を加えていったのが現在に生きてるんでしょう。
作画の特徴でいえばコマをキッチリ3段や4段に切って、一コマずつに頭身全部と背景を描き込むこと。キャラはあっさり描かれてるけど背景はキッチリ描き込んだりします。作風の不条理感はセリフよりも背景に依存してることが多いです。この特徴も「失踪日記」のようなルポルタージュ作品?でいかされてました。実在する施設や環境を一コマの中の背景でキッチリ説明できるから情報量が異常に高いマンガになっています。
それから最大の功績はアルコール中毒から生還したことを作品にしたことでしょう。普通のアル中の人はわけわからんちんになっちゃうから当人のコメントが取れません。福祉関係のジャーナリストが熱心に取材したところでわからんちんバイアスと社会の落伍者を取材してるバイアスがかかっちゃうので、社会問題としては伝わるけどアル中の個人としてのリアルはなんにも伝わってきませんでした。一つにアル中や依存症になる人たちが知識人ではないから、発信するすべも伝える気もないからです。もう一つは普通のちゃんとした知識人はアル中にならないからです。たまたま知識人というかマンガという表現方法がある吾妻ひでおさんがアル中になって、しかも生還できたということが「失踪日記」につながったんでしょう。

 最近吾妻ひでおさんの個展とか再評価ムックとかを見かけたのは「ああっそういことだったのか」って合点がいきました。自分自身の思い出は「陽射し」という超豪華エロマンガを神保町まで買いに行ったことです。「これは地元で買っちやダメなヤツ」とか「こんな巨大なエロマンガを何処に隠すか?とか思いながら買った記憶です。そもそもコドモが買っていいのか?という漢字でしたが、当時のサブカル系エロは意外と検閲がゆるゆるだったのかな?いい時代だったんでしょう・・・

ご冥福をお祈りいたします。


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