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2019-10

海街diaryについて - 2019.05.26 Sun

平成最高の少女マンガの続きです。

 平成の少女マンガを振り返るネタの最終回です。ベテラン作家ばかり選んじゃいましたが、新しいマンガ家さんはまだ自身の最高傑作を描いていないと思っています。彼女らの傑作は令和最高の少女マンガとしてノミネートされることでしょう。「おいしい関係」が集英社、「のだめ・・・」が講談社、そして今回の平成後期の最高の少女マンガの「海街diary」が小学館です。偶然ながら3大メジャー出版社を平等に選んだみたいです。折しも3作品ともメディアミックスで実写化されています。「のだめ・・・」はアニメ化もされてました。しかし、自分は全ての実写化作品を観ていません。したがって浅野すずは広瀬すずさんではないし、ましてやシャチねぇに綾瀬はるかさんの顔は浮かびません。それから、綾瀬千早も広瀬すずさんは浮かびません。
3姉妹の母親役に大竹しのぶさんがキャスティングされていますが、いつもの怪演してたら観たくないなぁって思います。観るつもりは一切ないんですけどね・・・


平成後期(平成21年~平成31年)の最高の少女マンガ

「海街diary」 吉田秋生 著 小学館 月刊フラワーズ 平成18年~平成30年掲載

あらすじは・・・
鎌倉で暮らす3姉妹が離婚して家を出た父親の訃報が届く。葬式で異母妹の浅野すずの存在を知り、鎌倉で4姉妹として暮らすことになる。その後、サッカーをしたり、不倫を精算したり、叔母が現れたり、亡くなる人や遭難する人など・・・病院も信金もてんやわんやな鎌倉ライフ物語です。


 自分にとって吉田秋生さんは特別な存在の少女マンガ家です。小学生の頃は生粋の少年ジャンプっ子で、唯一親に買って貰っていたのがジャンプでした。マガジン・サンデー・チャンピオン・たまにキングは、母親の知り合いの長距離の運ちゃんから貰ってました。それまでは少女マンガという存在はまったく認識していませんでした。
たまたま、同級生の家へ遊びに行った時にそいつの妹が読んでいた別冊少女コミック(別コミ)で読んだのが吉田秋生さんの「カリフォルニア物語」でした。掲載されていたのはストーリーの終盤で、主人公のヒースが刑務所でレイプされ相手のチンポを噛みちぎる場面でした。まだ赤ちゃんがどこから来るのかにも諸説があった年頃だったのに、最初に読んだ少女マンガはBLどころか本場マンハッタンのハード・ゲイでした。妹も「何ちゅーモンを読んでるんだ?」って思ったものの、当時の少年ジャンプの掲載作品がキン肉マンだったので「何だこの精神年齢の差は?」って愕然としました。
吉田秋生さんの「カリフォルニア物語」の硬派少女マンガ?と、川原由美子さんの「前略・ミルクハウス」のキュートなラブコメの二極に「少年マンガを読んでいる場合じゃない」って確信しました。自分の人生のターニングポイントは別マだったんです。
この衝撃で自分はジャンプを買うのをやめて、白泉社の LaLa を買うようになりました。「エイリアン通り」やお涼さまの「日出処の天子」などの頃です。お目々キラキラは抑えめで少女マンガ誌としては、マンガファンに人気の読みやすい編集でした。一方、少年ジャンプはこのあと空前の発行部数になるんですけどね・・・

 「カリフォルニア物語」は当時の“ニュー・シネマ”に影響された作品というよりも、映画そのものの演出をマンガで実践した快作でした。自分はニュー・シネマも普通の映画も詳しくないんですが、後半のニューヨーク市警とヒースのやり合いはリアル指向というよりも写実マンガっていう感じでした。読み応えは映画そのものだから。後の「BANANA FISH」につながるハードボイルド路線は「カリフォルニア物語」で確立していました。ちょうど大友克洋さんと同時期くらいでしょう。
吉田秋生さんにはハードボイルドやミステリー路線と青春群像路線の二本柱があります。吉田秋生作品の青春群像劇とはアッパーなお姉ちゃんたちのうだつの上がんない日常と、“カウパー腺液”過多な男子高校生の臭そうな青春です。
ハードボイルド系と青春群像系の違いは『事件に巻き込まれるのが主人公のドラマ』と『主人公のドラマの中に事件がある』という感じです。極端に言えば物語を描くために、キャスティングとして主人公や悪玉、仲間や敵役が配役されてるのがハード・ストーリーです。逆に主人公を描くために、ストーリーやエピソードが構築されてるのが青春ドラマです。
「吉祥天女」は青春+サスペンスという少女マンガと少年マンガのハイブリットな作品で、中心人物の小夜子を取り巻く彼女への印象が男と女で全然違うということが主題?のお話でした。今から思えば「吉祥天女」のストーリーのメインになる叶家の親族問題は「海街diary」の家族ドラマのベースになっているんでしょう。

「吉祥天女」後は「BANANA FISH」と「櫻の園」に作風が二分していきます。もうキャリア的にパリピな若者がパンツ下ろす田家の青春マンガは描かなくなったようです。「BANANA FISH」は大友克洋さんの「AKIRA」に匹敵するハードボイルドマンガでした。「AKIRA」は巻が進むにつれて個人的には失望感がまさっていき最終巻はケジメのつもりで買った記憶です。協力者の“おばさん”が出てきてちゃぶ台でみんながご飯を食べてるあたりから、急速にアキラ熱が冷めちゃいました。SFハードボイルド・マンガだとおもっていたんですが、段々とSFアニメ化していったストーリーに「思っていたのと違ってきた・・・」って感想でした。思っていたのは「童夢」のようなSFハードボイルド・マンガです。結局は漫画アクションとヤングマガジンの誌風の違いだったのかな? ラストのイメージは大友克洋さん自身がアニメをイメージしてたんでしょう。
「BANANA FISH」はマンガファンの読むハードボイルドを満足させる傑作でした。こーいう作品が好きな人が「コレを読みたかった」とか「コレを作りたかった」っていう作品でした。ただし作風に「AKIRA」(もしくは大友タッチ)が影響されてるのは疑わざるを得ません・・・
バナナの終了後に隠れた名作の「櫻の園」と「ラヴァーズ・キス」が発表されました。「櫻の園」は映画化もされて、映画版は「女子校特有の閉鎖空間のヘンな百合作品」扱いされてました。中原俊という監督に対して「いい加減にしろよな!」っていう記事を書いた記憶があります。
実際には初体験にビビる子、男子を軽んじてナメていて彼氏に怒られた子、男性コンプレックスの優等生、身体が大きくて可愛くない役回りの子・・・そんなお悩みのお話です。百合がテーマか?って言われると、優等生のハナシがそうなんですけど、LGBTやジェンダーのための作品っていう感じでもありません。それゆえか過度にジェンダー・メッセージ性もなく過剰に百合サービスもない良質の百合作品として認知されました。だから中原俊さんの勘違いっぷりがイラっとするんですね・・・
「ラヴァーズ・キス」は鎌倉の青春マンガです。後の「海街diary」のベースになる設定がココにあります。両作品を通じてテルさんの尾崎酒店が設定の中心にあります。内容は boy meets girl と boy meets boy と girl meets girl の3本立てです。こっちの作品のほうがよりLGBTに寄った感じです。
boy meets boy は平たくいえばBLなんですが、boy meets girl と続けて読むとBL作品特有の過剰さがなくて“普通な嗜好”を自負してる人や男性にも読みやすいです。続けて読むと恋愛マンガにおいては性差などは大した問題じゃないことに気がつきます。

 ここまできてキーワードは「過度に描かない作風」です。「カリフォルニア物語」も「吉祥天女」も「BANANA FISH」も、過度に盛り上げる作品です。多くの人が死に、復讐や怒り、警察にまみれた作品でした。ギスギスした妬みや憎しみは少女マンガの十八番ですが、正義と悪意、殺意、復讐は少年マンガの真骨頂です。そのジャンルを少女マンガ誌でやられ、しかも過度に盛り上がっちゃうから「こちとら商売上がったり・・・」なんです。
一方の「櫻の園」や「ラヴァーズ・キス」は少年マンガには不可能なジャンルです。こっちは過度に盛り上げるのではなく、キャラを等身大以上でも以下でもなく描かれています。「BANANA FISH」がアニメ化されるけど「海街diary」が実写化されるのは、マンガでありながら実写世界のリアルがあるからでしょう。吉田秋生さんの作画が写実的というのではありません。
吉田秋生さんは過度に盛り上げる作風と過度に盛り上げない作風の二つの武器を持っています。作風を変えていく作家は多いのですが、作品ごとに使い分けられる作家はそんなに多くいません。しかしスゴいマンガ家たちはそれを使いこなせるからこそ作品にメリハリと奥行きが出るんでしょう。
吉田秋生さんはその後、どっちの作品を描くのか楽しみにしていましたが、新作は「YASHA 夜叉」というハードボイルドでした。内容はほぼバナナ味の作品で、読んだけどストーリーはうろ覚えというか忘れちゃってます。戦う組織も最近のアニメ的な秘密結社っぽさで、吉田秋生さんが描きたいストーリーがこっちならば仕方がないって感じでした。続編の「イブの眠り」まで惰性で読んだのですが、自分の中で求めていた吉田秋生はやっぱりこっちじゃないって思ってました。
しかしこれらの作品に臨場感を与えているのは登場人物の質感です。その質感は過度に盛り上げない「ラヴァーズ・キス」などの登場人物のタッチで描かれているからでしょう。

 そして表題の「海街diary」です。この作品は「ラヴァーズ・キス」と共通の世界観なので、過度に力まないほうの作品です。朋章のストーリーがちょっと過度にサスペンス調でしたが、全編通して鎌倉ストーリーを満喫するマンガです。吉田秋生さんは少年マンガの人々が大好きなガンファイトを作中に取り入れるのが最も上手なマンガ家でしたが、彼らの期待する殺害シーンや暴力シーンは出てきません。そもそも少女マンガの読者がガンファイトを期待してるのか?というのも疑問です。
しかし葬式シーンは多く、亡くなる人の多い作品であることは「海街diary」の特徴です。銃で撃たれる人にリアルさを感じないのは日本人特有のことなのかもしれませんが、やっぱり銃で撃たれるのは絵空事のハナシって感じがしますよね。射殺事件というニュースもめったに聞かないから、ガンファイトそのものがファンタジーの世界です。魔法使いや異世界が出てくるストーリーで、リアルな演出って言っても限界があります。吉田秋生さんにはできれば普通の人々の設定のマンガを描いて欲しかったので、「海街diary」は「やっとこっちサイドの作品を描いてくれた」って思いました。
「海街diary」は4姉妹を中心に鎌倉でかかわる人々の物語で、少年サッカーから遺産相続、不倫、死別、進路、妊娠、遭難・・・様々な普通の出来事で綴られてます。吉田秋生さんが何を作品のテーマにしているのかは解りませんが、『身内ゆえに解りあえたり解らないこと。他人ゆえに解りあえたり、解らないこと』がテーマだったと思います。「身内だから話せない」とか「他人だから解ってしまう」というサスペンスでも何でもないことが吉田秋生さんの描きたかったことだと思います。
もっとも読んで欲しいのは恋愛マンガファンです。4姉妹のそれぞれの恋愛をそれぞれゆっくりなペースで描かれています。いろんなエピソードに絡めて恋が進展するので、上質な恋愛マンガを何本も読んだ満足感です。とくに見所は初々なチュー坊たちの恋愛に対比して「愛の旅人」のアラサーな恋愛のグズグズ感と「愛の狩人」のシャープな寄せワザの見事さです。ほかにも黄昏流星群ばりにカフェのオッちゃんと定食屋のおばちゃんの恋?とか・・・ 
自分の一番お気に入りなのは糸切屋のお姉さんと直人(すずの従兄)の恋愛。糸切屋のお姉さんはチカ(三女)を上品にした感じの人で、そーいう高度なキャラデザインはめったに見られないです。

 一部情報では次回作はハードボイルド路線ではなく『鎌倉三部作の完結版』になるとのことです。予想しますと、すずが26~7の時代で、4姉妹は話しの中心にはならないから「海街diary」の続編ではないでしょう。キーマンは「妙さんと呼べ!」の妙が鎌倉に登場するハズです。そこですずと妙が何を話したのかがわかるハズです。過去の吉田秋生さんの傾向では・・・多分。


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