topimage

2019-08

おいしい関係について - 2019.04.30 Tue

平成最高の少女マンガについて。

 前回の日記で唐突に平成の最高少女マンガを決めました。何かのランキングの結果とか受賞の有無ではなく、自分が30年ちょいの期間に読んだ少女マンガの中でコレはスゴいって思った作品です。30年を通して連載された作品というのも少ないし。ダラダラと連載することはそれ自体がマイナス査定になります。逆に単行本1巻のみとか読み切り作品だと最高を語るほどのボリュームが足りないです。おおまかに10年単位で3等分して前期・中期・後期で3本選んでみました。
あくまでも読んだ記憶の中での最高作品なので、読んだ当時よりも評価が上がっています・・・



平成前期(平成元年~平成10年)の最高の少女マンガ

「おいしい関係」 槇村さとる 著 集英社 YOUNG YOU 平成5年~平成11年掲載

あらすじは・・・
『主人公の百恵は父ゆずりのグルメのおかげでで一度食べたおいしい料理を忘れない才能がある。その百恵は父が急逝後、洋食屋プチ・ラパンのシェフの織田圭二のコンソメに惹かれてコック見習いに就職。その後は織田の兄弟弟子シェフの高橋薫と三角関係とか、恋敵の可奈子の登場。ゆくゆくはプチ・ラパンの廃業を経て、自らがシェフになってプチ・ラパンの復興を目指す・・・』

 少女マンガというよりも女性誌マンガ(当時はレディースコミック扱い)なのですが、「おいしい関係」は、これからのあるべき少女マンガの自立する女性像を提示した作品でした。女性誌マンガは少女マンガ特有のファンタジーを卒業した読者へ向けたマンガ誌です。オトナの恋愛とお仕事、人生観をテーマにした作品で少女マンガとは差別化していました。
しかし、少女マンガ家が繰り上がって描いていたので、生徒会長や猫を拾う優しい不良が大手商社マンやデザイナーに変わっただけっていう作品が多かった印象でした。少女マンガファンタジーではキス~両思いがストーリーのゴールでした。女性誌では結婚がストーリーのゴールだから、少女マンガとの違いはセックス解禁くらいでした。
人生において小中学生とオトナではオトナのほうがいろんなことが出来ます。子どもができることのパターンは優勝や世界を救うとか、せいぜいクラスの王子サマやマドンナと両思いになるくらいでした。オトナの女性はあんまり優勝することも世界を救う機会もありません。しかし、学校を卒業すれば様々な人生をおくる可能性が出てきます。そーいう人生を描くのがマンガの醍醐味だとしたら、女性誌のほうがストーリーに広がりが出せます。多くの作品はセックス解禁でポルノ化しちゃったんですけどね・・・

 この作品は一流シェフたちが一流のレストランを持つということを目標にするストーリーです。今の子にはピンと来ないかもしれませんが、バブル時代はデートでフランス料理を予約するって結構普通なことでした。フランス料理といっても超一流ばっかりではなくて、貧乏サラリーマンも頑張ってミエをはってた時代です。
「おいしい関係」のタイトルは西武百貨店のキャッチコピー『おいしい生活』のパクリというかインスパイアされてると思います。セゾングループは当時のバブル経済の象徴的な企業でした。「おいしい関係」の連載はバブル崩壊後に始まったんですが、一流シェフとか高級フレンチとかバブルの浮かれた空気感が感じられた作品でした。マンガの世界では現実の風俗よりも数年遅れになるところがあります。現実ではとっくに飽きられてる流行が、マンガ内では流行ってるとか・・・
連載当初は高級フレンチが普通の世界観でしたが、途中からレストラン業界の不景気がストーリーに反映してきます。最初は桃井かおりさん主演のドラマ「ちょっとマイウェイ」っぽいストーリーだと思ってました。洋食屋のプチ・ラパンの向かいに大手商社系列のフレンチレストラン(バブルっぽい設定?)に潰れそうになるところも似ています。
実際のストーリー展開はメインシェフで大黒柱だった織田圭二は独立し、主人公の桃子も織田のライバルの高橋薫の店に転職(修行)に出ます。結局、ストーリー半ばでプチ・ラパン自体も廃業してしまいます。

 タイトルに“おいしい”とあるのでグルメマンガという紹介もあったかもしれまさんが、この作品はむしろ飲食業界マンガです。個人的な趣味ですが、料理の知識や店の情報をウンチクするタイプのマンガは読まないようにしてきました。マンガに「食べログ」や「クックパッド」を求めていないからです。そーいうマンガが描きたいのなら「クックパッド」を写せば誰にでも描けるでしょう。あくまでも百恵の成長の物語でした。
少年マンガで料理人として大成するストーリーだと、百恵の成長を邪魔する卑怯な敵や足を引っ張るライバルが登場しがちです。槇村さんのスゴいのは登場するシェフ全員が料理をリスペクトしているし、ライバルのシェフにも敬意を払ってることでしょう。その中で絶対神たる千代バァの存在が作品をきゅっと締めています。千代バァが出るまでは本当に「ちょっとマイウェイ」のマンガ版が描きたいのかな?って感じでした。

この作品の全ての登場人物が弱点を抱えています。

*主人公の百恵は技術が足りない。
*織田圭二は共感できない
*高橋薫は浮ついている
*プチ・ラパンのオーナーは料理に自信がない
*日比野ミキは心が足りない
*可奈子はコンプレックスに勝てない
*千代バァは時間が無い

百恵が戦う相手は恋愛対象になりにくいが尊敬する師匠の織田圭二。女を捨てて男女の別がない職人を目指す日比野ミキ。だんだん狂気じみてくる完璧美女の可奈子。最終的には織田を挟んで百恵と可奈子の対決構図になり女性誌マンガとしての読み応えもタップリあります。
槇村さんは同時期に「イマジン」という母子の確執?をテーマにした作品を描いていました。こっちの方が自身の代表作っぽかったんですが、これは槇村さんの理屈っぽい過去作の延長という感じがしてました。
「おいしい関係」のほうは、万人に向けたキャラでエンターテイメント要素が多い作品です。その中で可奈子というキャラが槇村さんの描きたかったテーマの集大成だったように思います。「心が壊れる」というのを描くマンガ家は男女とも多いですが、少年マンガでもキャラの心が簡単に壊れるのですが、心が壊れたキャラの復活や再生はありえません。一度狂ってしまったキャラは、主人公にとってはゾンビと同じような扱いです。
震災で心が折れた日比野ミキも親子関係で屈折していく可奈子も、百恵と対峙することで心が再生されていきます。それは槇村さんが百恵というキャラを意図的にデザインしたというよりも、作中で百恵とうキャラがどんどん成長し、過去作では上手く描けなかった可奈子キャラを浄化出来るようになったんでしょう。
槇村さんの少女マンガはそれこそ少女マンガ時代から読んでましたが、どこか理屈に囚われている印象でした。ストーリーの理屈は解るんだけど心にはしみない感じでした。槇村さんの作品は「おいしい関係」の前後で変わったと思います。槇村さん自身は「イマジン」で変わったと思ってるかもしれませんけど・・・

 つまり、この作品はグルメマンガではなくキャラの葛藤と成長のストーリーです。ラストも都合いいけど目標達成のカタルシスもあります。単行本で16巻でしたが最後まで読んで損した気分にはなりません。少女マンガでのサクセスストーリーは恋愛と同時進行というお手本なマンガでした。


「ほぉ」って思ったら押してね

● COMMENT ●

雰囲気の柔らかなページ♪

 管理人さんの犬の絵…題字の部分…文…雰囲気の好いページですね♪

ひでわくさん、いらっしゃいませ。

雰囲気モンですが、毒突くこともたま~にありますんヨ・・・


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://likea777.blog33.fc2.com/tb.php/434-4b9f23fc
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

のだめ・・・について «  | BLOG TOP |  » 平成最高の少女マンガ

管理人のらいかです

マンガを描くという事を目標にして
マンガの描き方を考えるブログです
(ネタバレの可能性があります)

は記事の内容に「ほぉ」と
思えたら押して下さると嬉しいです

最新記事

訪問していただいた人数

月別アーカイブ