topimage

2018-12

日常への共感ポイント - 2018.05.05 Sat

あずまきよひこさんの「よつばと!」第14巻です。

 前回の記事はゴールデンウィークに読むべきお薦めマンガについて書きました。ガチ少女マンガなので読むのに抵抗がある方も多いで背負うけど、ペットを飼ってる方はとにかく読んで欲しいです。問題提起はあるんですが頭ごなしに批判的ではなくて、何よりも作者が動物を愛しすぎる動物びいきなマンガです。
そんなゴールデンウィークにもっとメジャーにお薦めするべき作品も出版されていました。お休み中に近所の本屋さんへぶらっとしていたら、何と「よつばと!」の最新刊が平積みされていました。13巻が出たのが2015年の秋なので、実に2年半ぶりの新刊です。あずまきよひこさんも休載情報の常連ですから新刊なんか誰もあてにしていません。でも11巻が2011年、12巻が2013年なのでだいたい2年プラスくらいのペースだから通常営業なんでしょう。本の帯に『国内累計1370万部+翻訳版300万部突破』と書かれてました。13言語に翻訳され、24以上の国と地域に売れているそうです。みんな知ってるマンガなんだから、もうお薦め云々じゃありませんよね・・・

  ブログ画像 よつばと!JPEG  

 「よつばと!」についてはまさに今さら何を・・・ですが、日常系マンガの金字塔です。日常系マンガというのは定義が難しいんですが、一番有名な作品は「サザエさん」と思って間違いないでしょう。厳密に言えばストーリーとはその作品の世界観の中での出来事のことなので、前回記事にした「とんがり帽子のアトリエ」は魔法使いの修行する弟子たちの日常だし、「島耕作シリーズ」はサラリーマンの日常といえなくもありません。「ちはやふる」はかるた部員の主人公が百人一首のクイーンの座に挑戦するとういう“高校生の日常”の物語です。日常といいながらも、何から何まで非日常な感じです。基本ストーリーというのは現実的な世界観と非現実的な世界観しかありません。同じく日常を前面に出すのか非日常を前面に出すのかによります。「北斗の拳」や「名探偵コナン」は非現実で非日常です。
判別が難しいのは吉田秋生さんの「海街diary」とか森 薫さんの「乙嫁」などです。かたや鎌倉に住む4姉妹の日常というえその通りですが、確固たるドラマが存在します。かたや遊牧民の暮らしぶりや鷹狩りだけのエピソードなどの日常を扱っただけの回も多いですが、舞台は史実の考証にのっとった非日常な歴史ファンタジーです。

 日常系は主に美少女アニメ的なキャラの日々のどーでもいいようなことをマンガにしているタイプと美少女ではないキャラでどーでもいいようなことをマンガにしているタイプがあります。総じて波風が立たない淡々と作品中のお約束な展開をこなしていくという作風になっています。当然波風のない淡々としたマンガがそんなに面白いワケもなく、多くの作品は箸にも棒にお引っかからないです。
それでも中には多くの読者の共感を集める作品も存在します。共感のポイントは日常系ギャグマンガで本当に面白い場合、萌えキャラでオタク系の指示を勝ち取った場合、作中の日常に共感出来る場合などです。
日常ギャグ系はマンガの中でもっともスキルが必要な“面白いマンガを描く”ということが必要なのでハードルが一番高いです。作中の日常を共感させるのも高度な技量が必要です。共感できるということは当たり前のことと同義になっちゃいます。当たり前のことを描いてるだけのマンガを読んで面白いか?という難題があります。安直にできそうなのが萌えオタク系のマンガです。このタイプの作品をオタク系の人以外が描くのは考えにくいので、美少女大好きな人が描くマンガなんでしょう。このタイプはオタク受けする“定型”が存在するのでオタクっぽい知識があれば“誰でも描ける”というメリットがあります。とくに萌えオタク系日常マンガは難しいプロットを考えるクセがない人にとっては“定型”と“誰にも描ける”という都合のいいジャンルのマンガです。ただし簡単に描けるということは価値ある作品をつくるのが大変ということでもあります。
これらの日常系マンガのジャンル分けは描き手のスキルの都合だから、そこに作品論を乗せて語るのはあんまり意味がない感じがします。

 あずまきよひこさんの日常系マンガの出世作は「あずまんが大王」です。それまでは同人誌系アニパロマンガの人だったようです。「あずまんが大王」は日常系の中でもオタク系美少女萌え路線ですが、そこに面白さや日常共感をぶち込んでヒット作にしました。萌え日常は定型で作れると描きましたが「あずまんが大王」はその後のオタク系4コママンガの定型になった作品でもあります。この作品は主人公の卒業を期にスパッと最終回になり、そして「よつばと!」が始まりました。
「よつばと!」も最初の頃は「あずまんが大王」のちよちゃんに引っ張られていた感じですが、日常描写をリアルに描くというありそうでなかったジャンルが“日常に共感”につながりました。日常を劇画タッチで描くのは結構スタンダードですが、マンガ絵を細部にまでこだわって描写するのは今でも珍しいです。単純な話ですが、よつばが栗拾いに行くだけの話であんなに背景を描き込む必要があるのか?っていうことことです。たかだか日常のことをマンガにするのに、書き込み量がハンパありません。だってもともと日常系マンガって「大作を書くよりもラクだから・・・」っていう描き手のスキルの都合で描かれるモンだから。

 「よつばと!」のマンガの魅力は多くの方々が語り尽くしているでしょう。逆にカタルシスに描けるので趣味じゃない人も多くいると思います。でも累計1370万部だからおおくの人から愛されているというひょうげんがピッタリの作品です。ストーリーというようなものはほぼないんですが季節は確実に進んでいます。「ちびまる子ちゃん」的に何度もクリスマスがくるのにえいえんの小学3年生ではなくて、春から始まって夏休み~秋に季節は移ろっていきます。ちなみに14巻の最後の話は11月23日です。自分の予想では冬になって春になりようばが小学校に入学する頃には2023年頃になって連載が終了するんじゃないかな?ばーちゃんにランドセルを買ってもらって最終回って感じです。そこで終わらなきゃ終わるタイミングがなくなるしね。
1巻の頃はそんなにスゴいマンガという認識はありませんでした。「あずまんが大王」の人が新連載っていうくらいの認識でした。面白かったんですけどスゴい絵っていう感じでもなくて萌え絵出身の日常マンガだなぁって印象でした。よつばの人物設定もヘンな子というキャラが立ちすぎて、幼児の日常というリアリティーに欠けるギャグマンガテイストの強い印象でした。
現在の「よつばと!」を支えているのは緻密に描かれた背景や超現実的な人物像です。その方向への転機になったのは3巻の第17話「フラワー」という回だと思います。ジャンボの実家のフラワージャンボという花屋が初めて出てくる話です。ここら辺からマンガの画面内の空間の密度が変わります。
それと第1話ではムチャな幼児というテンプレが強すぎたんですが、だんだん今のよつばに落ち着いてきた感じです。

 現在ストーリーの中で進行してるのは僅か半年ですが、このなかでもよつばが成長してる部分があります。よつばって当初は男の子か女の子か判別できないキャラでした。むしろマンガ的な記号では男の子の記号が多かった感じです。しかし作中でだんだん女の子的な嗜好にかたよっていきます。大人がどんなに男女平等とか人類は皆兄弟とか言っても幼児のうちから自然に男女の嗜好の別が現れるようです。空間密度が変わったように人物設定もよつばをリアルな女児に寄せていってる意図をかんじられます。この作品の連載当初のテンプレは間違いなく男児的な破天荒キャラでした。動物もアクセサリーも可愛いモノが基準だし、お姫様指向も強いです。とーちゃんらの人間関係に可愛いアイテムがゼロなんですが、恵那とのやり取りはガールズトーク?です。こーいう部分は日常系の萌えテンプレのマンガ家たちの苦手なところです。逆に風花とのやり取りとかは描きやすいんですけどね。

 「よつばと!」の優れているのは全てのコマの中の人物が動いていることです。動きがあるから観ていて楽しい。逆に原作のマンガに動きがありすぎてアニメ化ができないみたいです。アニメって動画なんですけどあんまり動かせないんですよね。


「ほぉ」って思ったら押してね

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://likea777.blog33.fc2.com/tb.php/395-75e64fc3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

再犯率の分母 «  | BLOG TOP |  » GWの推薦図書

管理人のらいかです

マンガを描くという事を目標にして
マンガの描き方を考えるブログです
(ネタバレの可能性があります)

は記事の内容に「ほぉ」と
思えたら押して下さると嬉しいです

最新記事

訪問していただいた人数

月別アーカイブ