topimage

2018-10

飛べないエンジェル - 2017.08.05 Sat

きらたかしさんの「ハイポジ」です。

 きらたかしさんは主にヤングマガジンで「赤灯えれじい」や「ケッチン」など不良っぽいマンガやバイクネタなマンガを得意にしているマンガ家さんです。最近ではイブニングで「凸凹 DEKOBOKO」という中学生のオフロードバイクのレースを題材にしたマンガを連載。ちょっと青年誌にしてはキャラの設定が幼い感じでしたが結構面白かったです。でも全2巻であっさり打ち切り終了してしまいました。スポーツマンガの場合は「俺たちの戦いはこれからだ」の次の展開まで連載を継続させるのが難しいんですよね。バイクネタはきらたかしさんの大得意ジャンルだっただけにもったいなかったですね。
きらたかしさんはバイクと共に得意なのが底辺な弱者層を主人公にした貧乏くさいマンガです。出世作の「赤灯えれじい」は道路工事の誘導員のバイトの男の子がヤンキー姐ちゃんとつき合うハナシです。誘導員とか実家の旋盤工場とかトラックも運ちゃんなど、少女マンガでは見かけないような、当時のヤンジャン読者層にマッチした職業設定がリアルなマンガでした。

 「ハイポジ」は長年執筆していた講談社から河岸を変えて、双葉社の漫画アクションでの連載になりました。「凸凹 DEKOBOKO」では中学生の女の子を主人公にしたけれども、きらたかしさんの固定ファン層にはそーいう世代のマンガが求められていないっていうことがはっきりしました。昔の講談社だったら不良、ギャル、暴力、ギャンブル・・・アンダーな世界観が鉄板のテーマでしたが、近年ではアニメ的な美少女やファンシーな作り話のほうが重視されています。きらたかしさんの得意なバイクや生活感のある底辺キャラは編集方針と合わないようです。
そこで救済の手が漫画アクションなんでしょう。このマンガ誌には昭和のマンガテイストがいっぱい現存しています。ストーリーは現実主義でエスパーのようなト書きによる心理描写や、荒唐無稽なシーンはあまりありません。雑誌の対象読者を大人に設定しているからです。大人というのは昭和を経験した世代のことです。きらたかしさんの全ての作品にいえる古くさいマンガのテイストは、昭和からマンガを読み続けているアクションの読者にピッタリなんでしょう。作者が得意な昭和的演出はこの雑誌の読者がもっとも馴染んだテーマだったんですね。

 「ハイポジ」のストーリーは『リストラされ嫁に離婚を切り出された46歳のうだつが上がらない主人公が、フーゾクで火事に合いハダカで焼死したと思ったら1986年の高校生にタイムループ。高校時代から人生をやり直すのだがそこには未来の嫁になる子と憧れていた子がいて・・・』って感じです。
タイムループとか最近の流行りで、うーん・・・っていう感じがします。人生やり直しネタでは「代紋TAKE2」が名作なんですが、「ネガポジ」では現代→過去という出ラマではなくて、単純に1986年をドラマにしたかっただけっていう感じです。毒にSF的なこだわりのある設定でもないみたいです。
だったら展開が窮屈になるようなファンタジー設定よりも3丁目の夕日的な昔話にすればいいのでは?って思います。タイムループにすると最終回では必ず現代へ戻れる、戻れないていうストーリーになっちゃいます。そこが描きたいのならSF大作としてタイムループをテーマでもいいんです。たんに過去に戻ってしまった主人公の日常が描きたいのなら、最後に書かなきゃいけない何故タイムループしたのか?とか、主人公は現代に戻れるのか?とか、過去を改ざんしてしまったが故に現在が変わってしまったなどを描かなきゃいけなくなっちゃいます。多くの作者がそーいうややこしい部分が描きたいワケじゃないんですが、読者は結論を求めるから最終回で読者に怒られちゃうんですよね。
1話目の前半は上記の通りに陳腐な展開ですが、1986年の高校生活になれば安定のきらたかしマンガになります。きらたかしさんの作風は奇をてらわず淡々としたコママンガっていう感じで、個人的には読みやすくて好きなタイプのマンガです。

 「ハイポジ」というマンガの感想とか特筆する部分というのはそんなにありません。今後ストーリーが激しく展開するとか、アニメ化されるとかの目立ったマンガになるともおもえません。なにしろ奇をてらわないマンガだから。タイトルのハイポジという言葉からも判るように、第1話のオープニングからヒロインがウオークマンのカセットを入れる“永井 博のイラスト”のような絵で始まります。永井 博さんって誰だ?っていうことですが、わたせせいぞうさんを上手にした感じの人です。そんな永井 博のようなイラストで連載漫画が描けるワケでもないので、次のページからはきらたかし節に戻っちゃうんですけどね。この時にテープに入っていた曲が劇中でのテーマソングのような中村あゆみさんの「翼の折れたエンジェル」だったんです。
「翼の折れたエンジェル」は85年のリリース。作中の86年では渡辺美里さんの「My Revolution」とレベッカの「フレンズ」がガールズポップスの3強になります。未だに芸能界でゴシップに騒がれてる斉藤由貴さんの「めぞん一刻」の主題歌や小林旭さんの「熱き心に」もこの年です。
ガールズポップス3強の中村あゆみさん、渡辺美里さん、レベッカは女の子のホンネを歌詞にしたことで同性の支持を得ました。中でも渡辺美里さんは売り出すプロデュースのスゴさ、レベッカは本格ロックバンドっていう感じでした。中村あゆみさんはちょっと手売りっぽい印象でしたね。楽曲のイメージ戦略も渡辺美里さんは生き方を主張する女子代表、オピニオンリーダーって感じです。ノッコは女の子の自由の象徴、お行儀悪さも夜遊びも自由っていう感じです。両者とも当時の女子の共感や憧れの的でした。自分の周囲は圧倒的にノッコ贔屓で、渡辺美里さんは女子のウケがあんまり良くなかったと思います。

 中高生など若者が音楽に接する取っかかりは、そのアーティストへ共感だと思います。音楽が好きという人は音楽性とか演奏の技巧などでしょうけど、普通のボンクラ学生たちの心をとらえるのはその歌手や歌を信用できるかどうかでしょう。
中村あゆみさんの印象はどのクラスにも一人入る勉強は全然ダメだけどにぎやかでクラスの中心た子って感じです。共感はするけど憧れはしない、楽しいけどつき合いたいタイプじゃないっていう感じです。渡辺美里さんは生徒会長なイメージ、ノッコは不良や学校からドロップアウトした人たちの代弁者ってイメージ。中村あゆみさんはクラスで一番早く牛乳が飲める子っていうイメージです。
粋がっていても外泊はできないし、クラスの勝ち組にもなれない。そんな一番ごろごろいるタイプの中高生が共感できるのが中村あゆみさんでした。このごろごろいるタイプっていうのが「ハイポジ」の作中の人物像にピッタリで、主人公やヒロインが中村あゆみを聴いてるのも納得なんでしょう。
中村あゆみさんのイメージっていうのは高橋 研さんの創り出した世界観です。
それでは作中にも出てくる「翼の折れたエンジェル」は当時、どの部分が共感されたのでしょう?
なんと次回に続きます・・・ええっ?


「ほぉ」って思ったら押してね

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://likea777.blog33.fc2.com/tb.php/372-72cbe8e8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

共感のポイント «  | BLOG TOP |  » 夏休み推薦マンガ

管理人のらいかです

マンガを描くという事を目標にして
マンガの描き方を考えるブログです
(ネタバレの可能性があります)

は記事の内容に「ほぉ」と
思えたら押して下さると嬉しいです

最新記事

訪問していただいた人数

月別アーカイブ