topimage

2017-06

百合作品の12の質問 - 2017.03.19 Sun

「異性愛者への12の質問」という、LGBTの界隈ではあまりにも有名な質問があります。心理療法博士のマーティン・ロシュウリンさんが論文の中で発表したものです。同性愛者が異性愛者(いわゆるノーマル)の方々から執拗に質問される事柄を逆に質問してみたという皮肉をこめた内容です。後にケンタッキー大学のジューン・キャラハン教授が授業で使ったことで名が知れることになったのですが、当時はアカデミーの同性愛擁護とか性プライバシーとか話題も紛糾したそうです。日本でもちょっと遅れてネットで話題になりました。12の質問はLGBTを語るうえでは知っていて当たり前の知識なんでしょう。

 異性愛者への12の質問

1  あなたの異性愛の原因は何ですが?

2  自分が異性愛だと初めて判断したのは何時、どのようにして?

3  異性愛は貴女と発達の一段階ではないですか?

4  異性愛なのは同性を恐れているからでは?

5  一度も同性とセックスしたことがないのなら何故異性とのセックスが良いと決められるのか?

6  誰かに異性愛者であることを告白したことがありますか?

7  何故多くの異性愛者は他人をも異性愛者に引き込もうと誘惑しようとするのか?

8  子供に対する性的犯罪の多くが異性愛者です。あなたは自分の子供を異性愛者(特に教師)と
   接触させることを安全だとおもいますか?

9  異性愛者は何故あんなにあからさまで性的嗜好を見せびらかすのか?公衆の面前でキスしたり
    結婚指輪をはめるなどして異性愛者であることを見せびらかすのか?

10 男と女というのは肉体的にも精神的にも明らかに異なっているのにあなたはそのような相手と
    本当に満足いく関係が結べますか?

11 異性愛の婚姻は完全な社会のサポートが受けられるにもかかわらず今日では一年間に結婚する
     夫婦の半分がやがて離婚すると言われています。何故異性愛の関係はうまくいかないのか?

12 このように異性愛が直面している問題を考えるにつき、あなたは自分の子供に異性愛になって
     欲しいと思いますか?セラピーで彼らを変えるべきだとは思いませんか?

 初見の方はコレを読んでどう感じたでしょうか?「異性愛」というワードを「同性愛」に置き換えるとLGBTの方々が日々質問されている内容ということです。くだらない質問と思う人も哲学的とかジェンダー問題を思う人もいるでしょう。あえて正解を決めるとしたらくだらない質問だと思った方々の解釈が正しいです。同性愛者の方々は日々こんなくだらない質問を言われ続けてきたということなんでしょう。
日本でもこの質問の日本語訳が出まわってきて「異性愛者への12の質問に答えてみた」みたいなことが広まりました。そんなことでサブカルに理解があるポーズを取ろうとしてることはミエミエです。そもそもの文脈は『同性愛者たちは日頃からこんなくだらない問いかけに答えさせられてる』というコトを、頭の中が石化してる性的に保守な人やマジョリティーにあぐらをかいてる人たちにも理解出来るように作った質問という名の皮肉です。ケンタッキー大学の授業で学生にプリントを配っちゃったから“回答”が集まっちゃっておかしな議論に発展しちゃったんじゃないかな?アメリカの若者の“正しい性嗜好”の実態を調査するのにもってこいな質問集だから。
読んですぐに「何だよこのくだらない質問は?」って思ってもらうことで授業が先に進むのに「私が初めて異性愛を知ったのは高2の夏休みに・・・」って回答を書いちゃう人が多数でした。なんでサブカルに理解があるポーズなのかといえば、まったくLGBTに関心がない人たちはこの質問の存在自体を知らないからです。
前回の記事で登場した小雪さんや裕子さん、牧村さんたちが闘っているのは突きつめればこの12の質問なのかもしれません。法律や社会制度、行政サービス、慣習など改善を求む声は多いのですが、少数派であることと特異であることは意味が違うってことです。普通の人がぽっちゃりが好きとかスレンダーが好きとか余計なお世話なのと同じくらいに、同性が好きとか両方が好きとかは余計なお世話だよってことです。究極 LGBTの活動の目的は認めてもらうことではなくて当たり前に思ってもらうことなのでしょう。その過程で集まろうと呼びかけてるのが小雪さんたちで、LGBTだけで固まっていたら当たり前の世の中にはならないっていう疑問を提示したのが牧村さんです。

 創作の百合のストーリーでは主人公がこの12の質問をされる展開がけっこうありますね。それは同性愛を真摯に表現する意欲がある作家ほど、無自覚に質問してくるキャラを出して現実感を出そうとするからでしょう。逆に最近の作品で見かけなくなった表現は脇役のキャラが同性愛設定の場合に主人公が「うわっ レズ(ゲイ)なの?キモっ」っていう感じの露骨なアレルギー反応です。人種問題と同じでさすがにその差別意識なネタはヤバいってことくらいは浸透したようです。そもそもこの12の質問はLGBTの方々が言われたくない「ウンザリ・クエスチョン」なんだから、この質問をされる主人公のシナリオで主人公が楽しいシーンになるハズもありません。作中の登場人物の中にLGBT擁護派ではなくてフラットな意見を述べる第三者が出てくればいいのですが、多くの百合作品って当事者のカップル以外はモブしか出てこないんですよね。愛し合うふたりと理解しようとしない世間の声みたいに。12の質問もスミスとかボブなど固有の相手が想定されているワケではなくて「よく言われる」っていうスタンスです。理解するキャラとしないキャラの両方が同じくらい重要なのに、親や親友っていう設定でLGBTに無理解なキャラをアイコンとして描かれちゃうケースが多いです。ここに同人で描きたいこと(百合)だけ描いてきたマンガ家と、商業誌で描いてきたマンガ家との差が出てると思います。シナリオの都合で同性愛を肯定するあまりに同性愛を理解出来ないキャラをすべてを敵キャラって決めつけるのも片寄った印象です。

 逆に誰もが自由な恋愛が認められている世の中っていう設定にするとどうでしょう。牧村さんの望むLGBTと非LGBTなんていう分け方が必要ない世の中という設定です。そんな社会はまだ来ていないのでちょっとSFのような作り話感が気になっちゃうでしょう。単純に同性愛に理解がない人をストーリーから排除すればイラっとしない作品になるかもしれません。でもそれだと王子サマに見初められる使用人の娘みたいな上滑りなストーリーになっちゃいます。おとぎ話として百合を描くのは百合というジャンルが幼い恋愛というレッテルを貼ることにもなりますからね。
ふたりだけの世界っていうマンガではドラマ作りがしょぼいし、何故同性愛なのかの言い訳や説明に終始するのも恋愛ものとしての魅力とは言いがたいです。結局は登場するふたりが同性だからという理由ではなくて個として魅力があるという作品にしなきゃダメなんでしょうね。異性愛者を題材にしたマンガでも相手がオンナだから欲情したっていうマンガには共感しにくいでしょう。
百合マンガの中で相手ことを好きになった理由の多くが「私はレズビアンだからオンナしか愛せないの」っていう感じです。オンナだからオンナが好きということと恋愛感情は別の次元だと思います。ヤリチンがオンナを取っ替え引っ替えっていうお話は恋愛ものというよりもポルノです。百合という恋愛ものが描きたいのか?レズビアンのポルノが描きたいのか?で印象が違ってきます。ポルノだって立派に作品のジャンルだからポルノが悪いわけではありませんけどね。
一概に百合といっても同性愛を性癖と捉える人や生き方や選択の自由と捉える人、障害と捉える人やサブカルのジャンルと捉える人・・・様々なイメージがあるでしょう。でも一番多いのは百合作品=可愛い女の子ものっていう安直な感じです。いわゆる大っきいお兄さん向けですね。このジャンルはウケる鉄板のラインがあるので、おっきいお兄さんの希望が叶うような作品ばっかりです。しかしその内容は小さい子向けの少女マンガのレベルにも満たない幼稚な作品が多いです。これでいいの?って心配になっちゃうマンガでも百合だからってことで誰かのニーズには応えちゃってるんです。この事態は百合というジャンルを良くしようとするチカラにはなっていません。
先日ラジオにアニメの歴代プリキュアシリーズのプロデューサーの方が出演していました。彼曰く「制作中におっきいお兄さんのことは微塵も考えていません」とのこと。あくまでも小さい子向けの少女アニメというジャンルを作ってるという自負があるそうです。お兄さんたちしっかりしろよ!

 リアルの世界のLGBTの人で思い浮かぶのは元女子サッカーアメリカ代表でレジェンドのワンバック選手です。澤さんの永遠のライバルで盟友の通称ワンバック兄貴ですね。ワンバックさんが現役中にチームメイトのサラ選手とハワイで挙式しました。当時はLGBT界隈でもビッグニュースでした。世に兄貴と呼ばれる女性は名実ともに人格者でありしかも他の追随を許さない実績ですが、ワンバックさんも女子サッカー界のキング オブ キングスです。クイーンなんだけど。
今年になってそのワンバックさんの新たなニュースが入ってきました。何と彼女はいつの間にかサラさんと離婚していて、作家のグレノンさんと再婚したということです。いろいろビックリなんですが同性婚の道のりの大変さは小雪&裕子さんたちを見ていればよく判ってます。だから同性愛のカップルは一生添い遂げるモンだというイメージがあったみたいです。考えてみれば異性の恋愛も同性の恋愛も、恋愛という感情は何ら変わりないもののハズです。自分自身も創作の百合設定に引っ張られて勝手な幻想をもっていたんでしょうね。
ついでに見つけた元なでしこの川澄ちゃんが当時のチームメイトのチ・ソヨンさんとの熱愛疑惑?の頃のまとめ記事の管理人のコメントがありゃ?って感じでした。スポーツ界での同性愛者は多いですね的なザックリとした記事なんですが、『同性愛者だからといって批判するのではなく、温かく見守りたいですね』っていうシメのコメントを書いてらっしゃいました。記事全体はLGBTを批難するでもからかうでもなく、それこそ温かく書かれていました。でもこの一文は小雪さんたちがイラっとするだろうセンテンスが含まれています。コメントの中に「同性愛も許せるグローバルなオレ」っていう感じですかね。きっと温かい気持ちで書いたんでしょうけどお前何様なの?っていう風にも読み取れちゃいます。
つまり百合作品を手掛けるときにはこの作品を読んだ小雪さんや裕子さん、牧村さんたちがイラっとするかどうかを頭の中でシミュレーションしてから作るとよいでしょう。何がイラッとするのかは彼女たちをちゃんと理解しなきゃ気付けません。だからLGBTを学ばなきゃいけないんでしょうね。


「ほぉ」って思ったら押してね

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://likea777.blog33.fc2.com/tb.php/355-bf7a46fd
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

LGBTの T «  | BLOG TOP |  » LGBTと百合 2

管理人のらいかです

マンガを描くという事を目標にして
マンガの描き方を考えるブログです
(ネタバレの可能性があります)

は記事の内容に「ほぉ」と
思えたら押して下さると嬉しいです

最新記事

訪問していただいた人数

月別アーカイブ