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2017-08

谷口ジローさん死去 - 2017.02.19 Sun

「孤独のグルメ」などの作画で知られるマンガ家の谷口ジローさんが、2月11日病気のためお亡くなりになりました。

 「孤独のグルメ」は久住昌之さんの原作でウンチク・食レポ的な有名マンガです。どちらかといえば久住さんのことがあんまり得意ではないので、自分の個人の感想はあんまり面白くなかったです。でも世界中で翻訳されてるから評価は高いんでしょうけどね。「孤独のグルメ」と双璧となす久住さん原作の「花のズボラ飯」はほとんど読んでいません。80年代サブカル系+マンガっていう組み合わせが嫌いなんでしょう。何で「孤独のグルメ」がウケたかの要因に谷口ジローさんの描く主人公の五郎のキャラデザインがあります。『ハードボイルドな男に酒を語らせるように定食を語らせるギャップ』のおかしさでウケたんでしょう。久住さんやタモリ倶楽部系の人たちのくだらないことへ真面目に取り組む面白さっていうアレですが、そーいうのって「80年代まででもう結構」って感じです。
みうらじゅんさんなんかも無理してまで面白いことをしなくてもいいのにって気がします。今、みうらじゅんさんで一番面白いのはいとうせいこうさんと仏像を観に行く番組です。ミスマッチやギャップを笑うのではなく正面から仏像に向き合って唯一無二の仏像番組です。コレに勝てるのはNHKの「美の壺」くらいでしょう。

 故人の話から離れちゃってるので谷口ジローさんに戻します。「孤独のグルメ」はハードボイルドのパロディ的な意味合いで谷口ジローさんに作画の依頼があったんだと思います。それまでの作風と比べて「コレは谷口ジロー案件ではないどろ」って思ってました。ヒット作になったんだから当人は満足なんでしょうけど、同じく故人になった松方弘樹さんが武の番組にでるようになった時の違和感に近かったです。松方さんもノリノリでバラエティー番組に出ていたみたいですけどね。
谷口ジローさんのキャリアで代表作といえば「欅の木」とか「坊ちゃんの時代」だと思います。ぼんやりしてるのは自分が谷口ジロー作品をほとんど読んでないからです。読まなかった理由はつまんなそうなマンガだったからです。
谷口ジローさんを評するときに必ず出るのが画力の高さですね。谷口ジローさんもマンガの売り上げのイメージでは意外なほどの主要マンガ賞を受賞してますし、画集すら出版されています。マンガを芸術のひとつだと思い込んでいるフランス人からの評価も高いようです。マンガが写生大会だったら美大生にまじってもそこそこなレベルだと思います。でもマンガ絵としたらどうなの?っていうレベルなんじゃないかな?同時期にひたすら絵が上手いことで一世を風靡したマンガ家に大友克洋さんがいます。マンガを描く上で大友を模写(パクる)するというのがトレンドになった時代です。両者とも骨格からキャラを描くので「正しい人体」は描けるんですが、一世を風靡する絵と風靡しない絵にはどこに差があったんでしょう。マンガでいう上手な絵というのは正確な描写ではなくて的確な表情を描き分けることにあります。

 イラスト画家とマンガ家の大きな違いはイラストは求められる絵を描くことですが、マンガではストーリーの都合上出てくる絵はすべて描くということです。よく言われてきた投稿マンガでのアドバイスに「1作品で1コマだけでも読者を引きつけるカットを入れましょう」っていうのがあります。逆に言うのならば「ほかのコマでは読者を引きつけなくてもいいからストーリーを展開させる絵を描け」ってことです。キメ絵だけを頑張ってるマンガじゃダメなんですよね。大友克洋さんはイラストでもキャラに表情があるので著名な絵画よりも人々の目に入ってきます。そりゃ人気も出ますよね。
マンガの作画ではシチュエーションにあった表情が描けなきゃ高い評価はされません。マンガにおける絵が上手というのは誇張したり省略するセンスが求められるからです。マンガを読んでいて引き込まれるのはそーいう作画の部分だったりします。一般の読者は「この絵は丁寧にかいてるなぁ」っていう基準でマンガを読んでいません。絵が下手なマンガ家の代表として上げられがちな福本伸行さんですが、マンガ絵のレベルでいえば谷口ジローさんよりも上でしょう。谷口ジローさんに福本伸行さんの描くような後悔や懺悔、猜疑心、絶望、妬みを表情だけで伝えられるマンガ家は数少ないです。御大、高橋留美子さんは作画でいえば疑問があるのに表情の生き生きさや可愛さで一世を風靡しました。マンガ絵の序列でいえば大友克洋ー高橋留美子ー福本伸行ー谷口ジローって順番になりますね。

 谷口ジロー作品をほとんど読んでこなかったんですが、自分が谷口ジローさんを最初に認識した作品が「事件屋稼業」でした。当時は少年マンガに見切りをつけて少女マンガばっかり読んでいた頃でした。少コミや別マが全盛期でレディスコミックから本格派の女性マンガが台頭してきた時代でしょう。バランスを取るためか漫画ゴラクやアクションといった劇画誌系のマンガも読んでました。その当たりで見つけたのが「童夢」を描く前の大友克洋さんや「事件屋稼業」の谷口ジローさんでした。別に自分に先見の明があったはずもなく、後にふたりともがフランス人に崇められる存在になるなんで思っても見ないことでした。この頃のエピソードを「坊ちゃんに時代」など多くの谷口ジローさんの作品の原作を担当し、40年来の親交があったマンガ原作者の関口夏央さんが読売新聞に追悼のコラムを寄稿していました。『絵は上手いが話が作れないマンガ家がいる、助けてくらないかとマンガ雑誌編集者に頼まれた』っていうエピソードが出会ったきっかけだそうです。この編集者のいう「話が作れない」というのが絵が上手い人の共通の悩みのような気がします。同様の絵がメチャクチャ上手なのに原作者に頼ってるマンガ家は池上遼一さん、たなか亜希夫さんなどが浮かびますね。比類無き絵の上手さなんですが「それ原作が必要なほど複雑なハナシかな?」って思うことがあります。マンガを描きたい多くのシロート(同人誌など)さんたちはストーリーに絵が追いつかないか、絵は描けるがストーリーが思いつかないかのどっちかです。
絵が描けなくてストーリーも浮かばないけどマンガを描きたいって方もいますが、まったく描けないのにマンガを作りたいっていうのは、野球をやったことがないのに草野球チームに入るくらい無謀かもしれません。一般論で絵が下手というのは諦めがつきやすいです。野球でいえばフライが捕れないとか。でもボールは取れるが投げるのがダメ、打つのがダメっていうのは判断が難しいです。マンガ家は美大出身ばかれではありません。ベースとしての絵の基礎をすっ飛ばしてることが多いので技術的にあやしいマンガ家も多いです。ボールが取れないプロ野球選手はいませんが、絵が苦手なプロマンガ家はいっぱいいますよね。

 関口さんのコラムには『絵が上手いのは承知していたが、話が作れないのではないとすぐにわかった。70年代のこけおどしな劇画の特徴を嫌っていただけなのだった』とフォローしています。しかし『谷口は私の書いた設定、セリフ、ナレーションをいっさい変えなかった』と書いています。原作と作画の関係ではなくて企画・脚本と撮影・監督の関係だと。当時の劇画をこけおどしというのも判るい気がしますが、こけおどしが描けないというのはマンガのキャラの表情に対するマイナス要素って思います。「探偵屋稼業」そのものがアメリカ映画や松田優作さんや原田芳雄さんのパロディ的な狙いっていう感じだったような記憶です。さらにそのパロディが「孤独のグルメ」ですね。関口さんは出会って3年目に「探偵屋稼業」が始まって谷口ジローさんの絵にユーモアの味が加わったと書いています。初めから絵が上手と言われているマンガ家の中で表情がついていない人は、その後も面白いマンガが描けるようにならないようなイメージです。絵の上手い・下手で分けるよりも魅力あるキャラかどうかで分けると、精密な絵よりものびのびとした絵のほうが魅力的です。現役マンガ家でもっとも画力が高い作家のひとりの森薫さんも、デビュー時の画力は同人誌系では十分な喰らいの画力でした。単行本の「シャーリー」は2巻まで出ています。1巻目はデビュー前に同人誌で描いたシャーリーで、2巻目は「エマ」の連載終了後に描いたシャーリーです。比べてみて違うところはキャリアからくる画力のアップ。変わっていない所はシャーリーというキャラを可愛く見せる表情。画力アップの目的が上手さをひけらかすためではなくて、女の子を可愛く描くためという歪みない努力がスゴかったんです。「エマ」は長期連載だったんですが1巻ことに描き方を変えて進化してるさまがわかります。それでも表情こそがマンガ絵のキモだということを一番知ってるマンガ家なので、劇画風のタッチになりがちなシリアスな絵でも多くの読者が不得手感を持たずに読むことができるんでしょう。

 谷川ジローさんの記憶に残るのが「孤独のグルメ」だけじゃ可哀相なので「坊ちゃんの時代」をお薦めします。本当は「探偵屋稼業」がいいんですが絶版だと思うし古本屋チェーン店で見つかるような代物でもないですから。「坊ちゃんの時代」は豪華本とかさらに豪華なカラー豪華本とか出ているので、さすがフランス仕込みって感じでしょうか?ストーリーは関口さんが担当していますので保障出来ると思います。読んでいないから知らんけど・・・


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