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2018-08

新海誠の承認欲求 - 2016.11.13 Sun

原作 新海 誠さん マンガ 山口つばさ さんの「彼女と彼女野猫」です。

承認欲求とは?

心理学者のアブラハム マズローは自己実現理論の中で「マズローの欲求段階説」を提唱し、欲求を5段階(欲求のピラミッド)に分けました。 下から生理的欲求(腹減った)安全欲求(屋根がある)社会的欲求(日本人でよかった)承認欲求(俺すげぇ)自己実現欲求(よっ社長!)の5段階です。 生理的から社会的の3つは低次の欲求で憲法に保障された基本的人権の部分です。 紛争国ではこの生きるために必要な欲求が保障されないので問題になっています。 残りの2つは高次の欲求で個人が勝手に手に入れなければならない、個人差がありやっかいな欲求です。 
承認欲求は生きるの死ぬのには直接関係ないのですが、生きるためのモチベーションのためには必要な欲求とされています。 文化的に生きるには当然の欲求なんですが、近年はネット社会等でこの承認欲求が過剰になっている傾向に感じられます。 自己啓示欲とも近しい関係で、欲求が強すぎるややこしい人も多くなっていますね。
物語のテーマになるものをザックリと分けると生きるためのサバイバルやレジスタンス、凶行、ゾンビなど低次の欲求を満たす作品と、自己実現を目指すような高次の欲求を満たす作品に分かれます。 「死ななくてよかったぁ」とか「平和は守られた」っていうのが低次な作品で、「幸せになりました」とか「優勝しました」っていうのが高次な作品ともいえますね。

 新海 誠監督といえば今では宮崎 駿監督と並ぶくらい有名な名前ですね。 言わずも「君の名は」が観客動員1000万人突破、興行収入130億以上という久々に景気のいい作品の監督です。 同時期にやっていたゴジラの話題なんか吹っ飛んで、アンチ怪獣やアンチ庵野の人たちにとってはシメシメですね。 アンチ庵野だからといって新海ファンってわけでもないから君の名はは観ていません。どうせ日テレがかんでいる作品なので、金曜ロードショーでやるのを気長に待っています。さすがに観てない作品の批判はできないけど、新海 誠ブームに便乗して「彼女と彼女の猫」を取っかかりに、自分が観たことのある新海 誠作品について書きたいと思います。
このマンガは新海 誠さんのデビュー作といえる「彼女と彼女の猫 Their standeing points」5分くらいの自主制作アニメを、今年になって山口つばささんに作画でコミカライズされたものです。新海 誠さんがゲーム会社に勤務中に万能アニメ制作ソフト Shaded で個人制作したアニメです。 パソコンがあれば誰でも勝手にアニメーターになれることを証明した画期的な作品ですね。今でもYouTubeなどで観ることができると思います。 拾われた猫のモノローグで“彼女”を語る構成で、ショートストーリーながら彼女の生きているボリュームが描かれてます。 作品を観ればわかることですが、緻密な背景のスゴさに対して動画部分はほとんど動かない紙芝居アニメです。 これはアマチュア作家が振り向くや走るとか格闘や爆発など、絵を動かすことに躍起になってるのと逆の方法論です。 新海 誠作品の背景がスゴい(動画はヘボい?)という一般のイメージは一作目から狙っていたようです。

  ブログ画像 彼女と彼女の猫 JPEG

 この自主制作なチープアニメな作品以外にも「彼女と彼女の猫 -Everything Flows-」というテレビアニメとして制作されました。 こっちは坂本一也さんという監督、脚本は小説版の「彼女と彼女の猫」を書いた永川成基さん、作画・キャラデザインは海島千本さんというプロの方々が参加しています。 新海 誠さんが関与していない新海 誠作品という微妙な作品です。関与してないっていうことはないんでしょうけどね。
元ネタのチープアニメの情報量があまりにも少ないのでテレビ版もマンガ版もストーリーを補完して作っています。 新海 誠作品は情報量の少なさを情報量が多い風に観せる作風で「アレはこういう意味だよ」って観る側が勝手に考えてしまうことを狙った感じです。描かれていない行間の部分をそれこそアニメファンが大好きな補完というコトバで補ってくれるんですよね。 
5分の内容ではテレビで放映できないからテレビ版では元ネタのアニメはまるっと無視して、飼い猫ストーリーというか野村不動産のCMというかオリジナルストー-リーです。
マンガ版は元ネタのOLと猫の関係性を単行本一冊分に膨らませたストーリーです。 アニメのキャラは小学生からずっと飼っていた猫という設定なのか、あきらかに幼い印象の社会人1年生って感じです。 アニメ=美少女=萌えっていうステレオなパターンをそのまま周到してるのかな?元ネタのアニメのキャラを萌え少女と取るかどうかはセンスなんでしょう。 本編のセリフ「彼女は長い電話のあと彼女が泣いた」っていう部分を作品のキモと考えるのなら、それなりに社会でいろいろあるだろう女性をキャラデザインするほうがしっくりきます。 アニメの女の子だから可愛く描くっていうのが必ずしも正解ではないっていうことです。 しかしカワイイ女の子のアニメが作りたいだけだったら正解だけども、それじゃ元ネタのタイトルに便乗する意味が無くなっちゃうと思います。
マンガ版の作者の山口つばさ さんのほうが元ネタの女性のイメージを素直にくみ取っています。 一人暮らしのOLというちょっと淫靡なアイテムを残しつつ愚直な性格もデザインされています。 新海 誠さん自身がそーいうことを考えてデザインしたのかは疑問ですが、そーいう“描かれていない部分を他の人が勝手に補完してしまう”トコロが 新海 誠作品の真骨頂なんでしょう。 マンガ版のほうも格好いい的なモノローグで結ばれていますが、だからどうした?的なモヤモヤは残っちゃいました。 この手の“彼女”と“猫”しか出てこない作品は彼女か猫かどっちかを好きになれなければ「だからどうしたの?」って思われちゃいます。 元ネタのほうが ~的なだけの映像なんだからそこからマンガが何かを足すのは難しいのかもしれませんけどね・・・

 先日、新海 誠さんは「君の名は。」の好調をウケてのインタビューで、新鋭アニメーターっぽく言われて憤慨?したそうです。 「ボクは10年アニメを作ってるのに」ってね。そんな新海 誠さんが過去に作ってきた作品を並べてみました。

  • 彼女と彼女の猫 2000年 自主制作モノクロアニメ 5分 日常

  • ほしのこえ 2002年 フルデジタルアニメ 25分 SF

  • 雲の向こう、約束の場所 2004年 初長編作品 日常 SF

  • 秒速5センチメートル 2007年 オムニバス3本立て 日常 青春

  • 星を追う子ども 2011年 ジブリ系ファンタジー

  • 言の葉の庭 2013年 日常 青春

  • 君の名は。 2016年 新海 誠作品の最大ヒット SF

ちゃんと観たのは彼女と彼女の猫、雲の向こう、秒速、言の葉の庭の4作品です。 テレビで放送した作品ばっかですね。 ほしのこえはアニメを観た記憶がうっすらなので、気持ちの中ではちゃんと観ていなかったのだとい思います。 ほしのこえは佐原ミズさんがコミカライズを担当したのを読みました。 新海 誠さんの繊細なイメージを繊細名タッチがウリの佐原ミズさんがマンガにしたのだから、繊細さが二乗してより意味不明なストーリーになっていた記憶です。

 作品には必ず何らかのテーマがあり、何かのメッセージを伝える手段として作家は作品を作るものです。 しかし作品の評価にそのメッセージの善し悪しはあんまり関係ありません。 素晴らしいことを伝えてる作品と低俗なことに終始してる作品のどっちがよい作品か? そんなことを比べることに意味はないですよね。 しいて言えば面白い方がいい作品なんですが、この面白さは笑える作品ってことではありません。
一般に広まっている新海 誠 作品の魅力は映像の美しさと一貫した作品のテーマです。 コレは自分が思っていることではなく、あくまでも一般の新海ファンの集約された意見です。あの背景を観ると新海だなぁって思うんでしょう。自分が一番最初に観た新海 誠さんの映像シーンは秒速のラストの山崎まさよしさんのPVのところでした。 こーいうシーンや彼女と彼女の猫のようなカット割りなどはスゴい才能って思いますよね。でも本編を観た印象は絵が下手なアニメだなぁって感じでした。 
今のアニメファンはどうなのかわかりませんが、一昔前のアニメでファンになった世代にはアニメは絵が上手な人が描くモノという想いがあります。 現役のアニメファンが今と昔でアニメの画力を比べたら、現在のほうが上手だって思うことでしょう。でも昔は大塚さんとか安彦さんとか湖川さんとか出崎さんとか板野さんとかとかとか・・・絵が上手い人がアニメを描いていたんですよね。 実際に描くのは分業作業なのでクオリティーは保てないんですが、ここ一番では金の取れる画力や構図でアニメファンを唸らせてました。 

 新海 誠さんの背景は丹念に取材し膨大な写真をトレスして精密な背景にしています。 写真かと思うほどの美しい背景の正体は実は本当に写真を描き起こしたものだったりします。 逆に背景の魅力を最大限にアピールしてるのですが、アニメの本質はキャラ絵であることは間違いありません。 では、そのキャラ絵は?って見てみると、どの作品もキャラがなんだか平べったいっていう印象です。 背景に関しては小物の質感など異常なまでの作り込みでとくに代名詞の空や雲の描き込みは新海 誠 作品を象徴するだけのことがあります。 でもアニメの背景はあくまでも音楽でいえば伴奏のようなもので、メインのボーカルを引き立たせてこその背景でしょう。 フル・オーケストラで演奏しているのに、どこぞやのアイドルグループのセンターの子がボーカルっていう感じかな?
新海 誠さんがキャラの魅力を前面に出そうとしないのは1作目の彼女と彼女の猫の登場人物の“彼女”が顔の映らないアングルで描かれていることにうかがえます。 普通、自主制作でアニメ作品を作る場合は女の子を前面に描きたがるモンです。 新海 誠さんも女の子を前面に描いてるんですが、顔を描かないというコトに自身のなさを感じます。 何に対しての自信のなさなのかは説明しにくいのですが、ソコに自身がないと女の子以外にもキャラ全般が平べったくなっちゃいます。 この自信のなさで平べったいキャラの代表が押井 守さんですね。 押井さんも女の子キャラに自身がないので、キャラ全般に理屈をつけなきゃデザインできません。 この傾向は絵が描けないアニメーターに多いような気がします。 自分で絵が描ける人はたいがいキャラの感情がイメージできるし、それが描ける人が絵が描けるというからです。そしてその表情や心情が作画で描けてるのかをチェックし描かせる能力こそがアニメ監督に必要なスキルです。
見返す機会があれば秒速とかでもわかるんですが、新海 誠 さんの特徴の画面からあふれる切なさというのは、背景と音楽が作るシチュエーションによる切なさです。 そのシーンでのキャラの顔はやっぱり平べったくて、そのシーンの主人公が吐露している心情はまるで国語の時間の作文の朗読のようです。

 それまでの新海 誠さんが作品の中で一貫して感じられることは承認欲求だという印象です。 作品というモノはテーマありき?キャラありき?って考えてきましたが、一貫してるコトはすべて承認欲求のアニメなんだなってことでしょう。 

「僕たちの前にはいまだ巨大過ぎる人生が 茫漠とした時間が どうしようもなく横たわっていた」

自分が観た作品のキャラはこういう感じのモノローグを朗読しています。 作者としての新海 誠さんがこだわっている作家性なんでしょうけど、何言ってんだか判りませんね。 自分はこーいうセリフを言う主人公の人生での葛藤がメインテーマだと思っていました。大人になる時の通過儀礼みたいなすっぱい頃を描きたいのかな?って感じでね。 自分もどちらかといえば十分に大人ですから、すっぱいアニメってやだなぁってくらいの感想です。 しかし、それにしても作品の統一性が感じられません。新海 誠さんの中で何が一貫してるのかを探したら、承認欲求に行きついちゃいました。
新海 誠さんはアニメを作ることで新海 誠 というアニメ監督を認められたいという願望を満たすためにアニメを作り続けているんでしょうね。 認められたいとかヒット作を作りたいというのはどの監督でも同じですが、作品が評価されたいというよりも新海 誠という名前が評価されることに意味があるんです。他人に評価されたい作家で評価される方法論ばっかり考えてるので、作品のメッセージも背景描写も新海誠を評価するためのアイテムにすぎないんです。そもそもハナシの面白さよりも「これは新海 誠作品です」と言われることのほうが重要なんでしょう。 したがって新海ブランドはCMとかプロモーション映像が向いてるんですね。

 それでは最大のヒット作になった「君の名は。」はどうなんでしょう? 観ていないから何ともいえませんが、観た人たちの満足度はかなり高いです。 今までの新海作品は背景が綺麗と主人公が切ない以外の評価が聞こえてきませんでしたが、君の名はは劇作としてかなり好評価です。 逆に今までの新海 誠テイストがなくなってがっかりとかも聞こえてきました。「君の名は。」の成功によって、新海 誠を世に知らしめるという目的は最大限に達成されました。 彼の名前を日本中もしくは世界が承認したんでしょう。
新海 誠さんの弱点だと思っていたキャラの作画もこの作品ではキャラデザインと作画監督を安藤雅司さんというジブリでバリバリの作画スタッフだった人を召喚しています。 それまでは新海 誠さんがジャッジしていたんだろうけど、安藤さんはスタジオジブリのクオリティーなので人物の作画のレベルが向上してるのが予告編でも伝わってきます。 この作品は制作作委員会方式なので資本が乗っかってる分だけマスコミの露出も多く、今までのインディーズ・アニメ臭さはなくなりました。 この作品のあらすじを聞くと『他人に評価されるための方法論をすべてつぎ込んだ』っていう印象ですね。 
それは新海 誠さんのキャラ的に言えば「僕はそれを手に入れるために誰かと取引をしたんだ。最初に彼女と彼女の猫を見つけてくれた人たちを裏切って・・・」って感じかな?


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● COMMENT ●

君の名ははスタッフさんに恵まれたんですね。
新海さんばっかり目立っていますが、アニメ制作はチーム作業ですからね。

甘エビさん、いらっしゃいませ。

庵野のゴジラみたいに誰が作った映画なのかをはっきりさせることは
映画宣伝には欠かせないんでしょうね。
アニメは絵を描く人の優劣がまんま作品に反映しちゃいますから・・・


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