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2018-10

似て異な作品 - 2016.01.24 Sun

いくえみ綾さんの「私・空・あなた・私」です。

 いくえみ綾さんの綾という名前は“りょう”と読みます。 自分はマーガレットコミックスのころまで“あや”だと思っていました。 イクエミリョウだと“おきあみ漁”みたいなイメージですよね。 女流作家の名前だったら“アヤ”だと思うじゃないですか。 誰かといくえみ綾さんについての会話をしたことないから気がつかなかったんです。 そんないくえみ綾さんは「潔く柔く」で有名な少女マンガ家です。 自分はマーガレットコミックス時代から単行本化された作品は大抵読んできましたが、超代表作の潔く柔くだけは読んでいません。 それまでのいくえみ綾さんの単行本は2~3巻くらいの中期連載が多かったので全巻完結してから読めばいいかなって思っていました。 しかしこれに限って6年間、全13巻の長期連載になりまして完結したら今さら読むのも大変なコトになっちゃいました。 さらに少女マンガの映画化ブームとかで話題になっちゃってさらに面倒くさくなり読むのをウエイトしています。 文庫版が出たら読もうかなって思っていますが、いつになることやら・・・

 今回の「私・空・あなた・私」という作品はホームグランドの集英社ではなくて幻冬舎の「コミックスピカ」で現在連載中でコミックスが2巻まで出ています。 私・空・あなた・私というタイトル名もトリッキーな感じですが、この作品は別の意味でちょっと話題になりました。 それは作品の登場人物の基本設定が某有名マンガの設定とそっくりだということです。 某もなにも吉田秋生さんの「海街diary」なんですけどね。 海街といえば綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの美人4姉妹ですが私・空・あなた・私でもほぼそっくりな設定になっています。 ただ3姉妹(4姉妹)で母子家庭や親がいない設定、長女に育てられたっていう設定だけならけっこうありふれた設定です。 稚野鳥子さんなんかもいつもこんな設定です。 でも吉田秋生さんといくえみ綾さんの設定はたまたまっていう感じではありません。 異母姉妹の末妹を大人ばかりの母、姉妹が引き取るところとか、その末妹が旧姓を名乗っていることなど意図的すぎますよね。 しかしパクリ疑惑とか盗作騒動といったネガな記事はあまり見かけません。 いくえみ綾さんのファンの読者から似てるっていう指摘はありますが、ジャンプ系など少年マンガ家に見られる炎上も起こっていません。 自分が気がつかないだけかも?
そもそもマンガにおけるパクリというのは才能がない作家が実力以上の結果を求めてこっそりとやるモンです。 今回のケースでは物語の基本設定がそっくりなので『ドラクエみたいなパーティーが旅するマンガ』とか『海賊が航海するようなマンガ』など2匹目のドジョウ型のパクリの典型にも思えます。 しかしパクリの定義にある才能がない作家という部分にいくえみ綾さんが当てはまるのか?しかもまったくこっそりしていないのもぱくりとしてどーなんだ?って感じです。 私・空・あなた・私ではどう考えても海街diaryにワザと似せてきたとしか思えません。 似せた真意はあんがい悪ふざけだったんじゃないのかな? いくえみ綾さんの“作風”を考えるとその答えが一番しっくりきます。 出版元が幻冬舎コミックスというのも怪しいですからね。 もし古巣の集英社で連載だったら、吉田秋生さんが看板をはってる小学館はきっと黙っていません。 まあ集英社の編集部はこんなあからさまに似た設定なんかを通すとも思えませんけど。
  
 

 以前、吉田秋生さんの海街diaryの作風については書いたことがあるので、今回は吉田秋生さんといくえみ綾さんとの比較を考えてみましょう。 読めば一目瞭然なんですが私・空・あなた・私と海街diaryは冒頭の家族構成以外のストーリーはまったく似ていません。 むしろ少女マンガ界の大御所の二人が同じ設定でこれほどテイストが違うマンガになるのかっていうのが興味深いくらいです。
吉田秋生さんの描くテイストはあくまでも写実的な日常の中のドラマ。 稚拙な4コママンガが多くアニメ化されたせいで(言い過ぎ)日常系というヘンなジャンルができちゃったのですが、日常をドラマにするというのは脳みそを使わないで作品を創るということではありません。 ましてや頭を使わずに観れるコトがジャンルであるハズもありません。 海街diaryは少女マンガもジェンダーもバイオレンスも一通り描いてきた吉田秋生さんの集大成のシリーズです。 吉田秋生さんが闘ってる相手はマンガ家ではなくて向田邦子さんとかだと思います。 実写との親和性が高いのはマンガとして現実の世界とくらべても何の破綻もないからでしょう。
逆にいくえみ綾さんは極めてスタンダードな少女マンガ的手法で描かれています。 甘々な少女マンガに比べてかなりトンガったストーリーだからイメージが違うと思いますが、作品の描き方はまんま少女マンガです。 作画の違いを上げてみると吉田秋生さんのマンガには風景描写のコマが多いです。 いくえみ綾さんのマンガではトーン背景が多いです。
吉田秋生さんがマンガの中で一番こだわっているのは泣くシーンではないでしょうか? 数えたわけじゃないのでイメージなんですが物語の分岐になるようなシーンでは登場人物はいっつも泣いてるような気がします。 泣くシーンを描くのが最も上手いマンガ家の一人だと思います。 他に泣くシーンが上手いマンガ家が思いつかないんですけどね。 登場人物が心の内を吐露するようなシーンでは、いかに泣かすかに情熱を描けてるって感じです。 読んでる読者を泣かせるのが目的ではなくてキャラを泣かせることが目的なんでしょう。

 対するいくえみ綾さんのマンガがこだわっているのは笑ってるシーンです。 学園モノから人妻不倫モノまで幅広い設定で描いてますが、大体の登場人物はみんな笑ってるってイメージがあります。 明るい女の子が主人公でいつもニコニコ笑ってるのなら気にならないんですが、いくえみ綾さんの描く主人公に“ただ明るいだけの女の子”っていうタイプの主人公がいたためしがありません。 相手役の男にDAIGOさんのような明るいだけのタイプっていうのあまりないです。 いくえみ綾さんの特徴は本音と建て前の心理戦です。「いつもニコニコしてるけど心の中はイラついてるんだよバーカ」っていう感じのマンガです。 その心理戦の攻防が作品の魅力でしょうけどね。
いくえみ綾さんは「誰だって顔では笑ってるけど心の中では別のことを思ってる」っていうコトを表現してるのかな? あだち充さんが描く主人公のピッチャーは努力していないフリをして軽口をたたくキャラになっちゃうのに似ています。 あだち充さんは主人公がたまに見せるマジ顔でストーリーにメリハリをつけようとしてますが、そのパターンを使いすぎて読者もウンザリっぽいですよね。
この主人公たちの作り笑顔は相手を軽蔑しているときの笑顔です。 なんていうかいくえみ綾さんが得意なのは相手のことを軽蔑してるようなシーンです。 ストーリー全体が相手をバカにしたようなセリフで進むのもいくえみ綾さんの毒をちりばめた演出の妙でしょう。 いくえみ綾さんと西炯子さんは作品の中に平気で悪意を入れられるマンガ家だと思っています。 そこら辺が男性ファンにウケる少女マンガの秘訣かな?

 「私・空・あなた・私」は軽快なセリフ廻しと予想とだいぶ違う展開に転がるのがテンポよくて引き込まれるのですが、主人公の中学生の女の子に共感がわきません。 前記の通りにキャラは相手を小馬鹿にしたようなスタンスがどーにもイラっとするんですよね。 まったくの個人的な感想で申し訳ないんですが。 思えば過去作を考えても好きになったいくえみキャラってあんまりいませんでした。 人事としてストーリーは面白いんだけどキャラが好きになるとかはないですね。 吉田秋生さんは末っ子のすずを中学生の女の子として描いていますが、いくえみ綾さんは末っ子の檸檬をオンナとして描いています。 中学生キャラがオンナでもいいんだけど、だったらオンナとして恋愛対象になる歳に設定を変えればいいのにね。
なんていうか大人の話に子どもが口を挟むなっていう感想です。 どんな感想だよ・・・
 

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