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2018-05

今はまだ落語を語らず - 2016.01.16 Sat

雲田はるこさんの「昭和元禄 落語心中」です。

 雲田はるこさんというよりもテレビアニメ版の「昭和元禄 落語心中」です。 原作のマンガ版は未読なのであんまり語るすべがありません。 雲田さんは完全にBLの作家さんだと思っているたので、あえて読まなかったところがあります。 それはBLというジャンルへの偏見っていうわけではなくて、ジャンル違いには踏み込んじゃいけないという不文律みたいなモンがあるからです。 女性がアダルトコーナーに入るのはマナー違反なのと同じ感じです。誰に対してのマナーなのか?
したがってテレビ版のアニメの1話を観ただけでのレポートなのですが、くもハルのファンのお叱りもあろうことでしょうけど寛容にお願いしたいです。 ファンでもないくせに「くもハル」とか書くなって感じですよね。 くもハルって何だかアイドルグループのメンバーみたいだな。
昭和元禄 落語心中はタイトルの通りに落語家が主人公の作品です。 元々はマンガ版の特典DVDとして2話をOAV化したものを再構成してテレビ版の1話目にしたとのこと。 おまけDVDにしてはクオリティーがやたら高いのと、落語マンガの特典だから一般のアニメの対象になってる中高生男子にウケる必要がないので、深夜アニメ特有のお約束な演出がまったく無いアニメにしあがっていました。 お約束や女の子が観たいアニメファンには肩すかしでしょうけど、久々に作品を作ろうっていう心意気を感じるアニメでした。
原作を未読なのでストーリーは初見で観たのですが、何でOVA2本分を1話にまとめちゃったのかが疑問です。 ストーリーの核がキャラの心情描写なのでそのやり取りは省けません。 そうなるとエピソードのあいだを詰めるだけ詰めてサクサクと展開しちゃってます。 刑務所から出所した主人公がすぐ弟子入りしてすぐに高座に上がってすぐに破門になって。 なんだか「居残り佐平次を15分でお願い」っていう感じですよね。 作中のネタは「死神」だったんですけど。 展開のあいだの間や時間の経過を端折らないで欲しかったです。 むしろ1話目を3~4話に分けてじっくり描いて欲しいです。
しかし近年のテレビアニメに比べれば相当に頑張ってる作品だと思います。

 

 これだけ褒めたのはそれなりのレベルだと思ったからです。 1話目はちょっとかけ足だったけどじっくり創ろうとするスタッフの意気込みみたいなモノを感じました。 今期では「アクティヴレイド-機動強襲室第八係」というセキュリティ会社みたいな警察の設定のアニメも観たんですが、頑張ってるんだけどもアニメファンの求めるだろう期待に応え過ぎちゃって痛々しかったです。 本当にこの作品が創りたかったのなら純粋なアニメファンが創ったアニメなんだろうけどね。
でも自分は「昭和元禄 落語心中」をもう観ないと思います。 そもそも1話目もたまたま放送を観ただけですし、内容には及第点を付けられますが自分の好みではありませんでした。 この作品を腐女子向けとかBLだからっていう批判をするアニメファンに対して「コレは落語アニメだ」とか「何でもかんでもBL言うな」って反論が多いようです。 しかし昭和元禄 落語心中は間違いなくBLです。 一般のアニメやマンガファンにとっては雲田さんってあんまりイメージがないけど、実態はガチガチのBL作家さんです。 たまたま「昭和元禄 落語心中」の掲載誌が講談社の「ITANイタン」という同人誌くさい新設マンガ誌でした。 一応一般向けという扱いなのでBL色をあえて抑えた作風にしたのが落語というニッチな層に上手くはまったみたいです。
女性の同性愛をテーマにした作品にはジェンダーを題材にしたレズビアン、ポルノとしてのレズ、幻想を描いた百合というパターンがあります。 BLはすべてが幻想であって本質的には同性愛ですらないモノもあります。 当然ジェンダーの世間への問題提起なんてこともありません。 一般のBLファンが同性愛者の人権について語ってるってあんまり聞きませんよね。 雲田さんは過去のインタビューでBLマンガを描く理由はBLを描きたいとか描けたら楽しいという欲求からだそうです。 またBLはボーイズラブであればどんな世界観でも許容する懐の広さで自主制作心を大いに刺激してきました。 BL作家の中にはもったいない?くらい高度な技量の作家も多いです。 雲田さんは「大奥」のよしながふみさんなどのようにBLマンガの手法を使ってメジャーになった成功者です。 マイナーを貫く方々が敗者ってことでもないんですが・・・

 「昭和元禄 落語心中」は雲田さんがやりたいBLを一般向けとも思える作品の中にBLのテイストを絶妙にブレンドした作人なんだと思います。 それを作者の制作意図を無視して「これはBLなんかじゃない」っていうのもどーかと思います。 マンガ版を読んでないので言い切れないんですが、テレビアニメ版の1話目を観てたら「完璧にBLじゃん」って思わざるを得ませんでした。 しかし自分がこのアニメを観ていて作品に入り込めなかったのはBLだからじゃありません。 落語を題材にしたっていう部分が受け付けなかったんです。 主人公はムショ帰りの与太郎クンですが、雲田さんが描きたいのは間違いなく八雲師匠です。 このドSでツンデレな八雲がメインなのはアリアリです。 2話からは師匠の前座時代にストーリーがタイムスリップします。 原作もそーいう構成らしいのですが、これこそ描きたいコト(シーン)だけを描く同人誌系のマンガ家さんならではでしょう。
自分がこのアニメがダメだった理由のその1はこの有楽亭 八雲という落語家が好きな落語家のタイプじゃないんです。 このアニメは劇中で高座で「死神」という落語を演るシーンがでてきます。 声優の方がきっちりと落語のシーンをこなすので大したモンだなぁって思ったのですが、八雲の落語が嫌いなワケではありません。 こーいう八雲みたいなタイプの落語家が好きじゃないんです。

 ダメな理由のその2は主人公の与太郎みたいな落語家が好きじゃないからです。 自分が落語家に求めるのはこーいうタイプの笑わせる落語家じゃなくて聴かせる落語家だから。 理想の落語家の芸風はむしろ八雲のほうのイメージが近いですね。
自分は落語家に笑わせともらおうってコトはあんまり考えたコトがありません。 演芸だから当人たちは笑わせようと頑張ってるんでしょうけど、爆笑するほどの落語にはそんなに出会えません。 先代の三平師匠や談志師匠の全盛期は落語家が爆笑を取っていましたがあの頃と今とでは笑いのレートが違うんですよね。 地下鉄がどこから入るのかで爆笑していた時代です。 今のほうがレベルが高いとか低いではなくて時代が違うんでしょう。 昭和元禄 落語心中の時代背景はちょうどその頃の昭和なので、落語=爆笑王なんです。

 自分が落語を認識したのは小学生の頃にテレビで観たのは柳家小三治師匠です。 子供心にあんまり面白い人じゃないけど日本語を上手に使う人だなって思ってました。 比較対象が喜久蔵師匠やこん平師匠など笑点メンバーだったから、談志師匠や小三治師匠みたいな東京の落語家がホンモノで田舎モンはバッタモンっていう失礼な解釈をしていました。 当時の全盛だった小さん師匠や爆笑落語の枝雀師匠は田舎モンの最たるモノで、まったくひかれませんでした。 漫才のほうが兆k説的に面白いから笑いたきゃ落語より漫才(色物)のほうがよかったしね。
この流れでダメ理由その3は劇中で伝説の名人、有楽亭助六の落語を褒めちぎるところ。 キャストが死んだ助六がいかにスゴい落語家だったのかを熱く語るんですが、コレがなんともむず痒いというか何というか・・・大学の落研部員のマンガじゃないんだから熱く語らないで欲しいんです。 何がムズムズするのかは明確に説明しづらいんですが、百人の落語家がいたら百通りの落語があるっていうのが落語家のいいところです。 百人に誰が順番を付けるのか? 大名人の小さん師匠が嫌いだった小学生はダメなのか? 死んだ師匠の歳を数えていたら150を超えちゃいます。

 落語は語るまいと思いながら語っちゃうのが面白いところなんでしょうね。 昭和元禄 落語心中は登場人物が好きになれなそうだから観ないことに決めたんですが、普通に落語に興味がある方や落語ファンには良質のアニメだと思います。 某じょしらくよりはナンボかマシな・・・
原作のマンガも良質だと想像しますが、絶対にBLトラップ仕掛けてあると思いますから気をつけて。 このマンガのテーマは芸事なんだから。 一般向けマンガといっても雲田さんは歪みねぇ・・・

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