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2018-06

軽いお姫様たち - 2016.01.11 Mon

磯谷友紀さんの「王女の条件」です。

 この作品はエロティクス・エフというマンガ誌に「ふたりの王女」というタイトルで連載していました。 しかしエロティクス・エフが2014年に休刊(実質は廃刊)になっちゃったので、2015年からは白泉社のメロディに移籍しタイトルを「王女の条件」と変えて連載継続中です。 よって単行本の1巻は白泉社から出版されました。
エロティクス・エフは太田出版というちょっとトンガった系の出版社のマンガ誌でした。 雑誌タイトルに付いているエロテックスというほどのエロ本でもなく、サブカルの意識高い系のマンガ家や読者たち向けのマンガ誌って感じでした。 単にエロだけだったら少年画報社や秋田書店のほうがはるかにエロ意識高めです。、休刊の原因は何で意識を高くしたかったのかを見失ったからかも知れません。 タイトルほど絵柄がエロい作家陣が集まらず、どちらかといえばメジャー誌でははじかれちゃうようなマニアックを自称する作家ばかりでした。 「エロが出てくるのは必然ですけど何か?」って言いながら「エロ本」って言われると怒り出す感じでしょ?本屋さんでエロテックス・エフって書いてある本をレジに持って行ける人って選ばれた勇者だけでしょう。 そりゃ休刊になるよ。

 「王女の条件」も元々の掲載誌の要望なのか「14歳と16歳の異父姉妹の王女が、王位継承のためにどっちが早く妊娠するか?」っていうお話です。 愛憎ドロドロのベッドラブストーリーものなので磯谷さんの作風ではどうなの?って思っていたら、案の定っていうかエロい絵柄がおおよそ向いていないのに何でセックスを描くかなぁって印象です。 物語の軸が「女の子を産んで女王になる」しかないからセックスのことしか考えていないお姫様しか出てきません。 一人の“イイオトコ設定”のイトコのお兄様を姉妹で取り合うっていう話だけど、14歳ってあたりが意識高いのか無意識なのか? ただしロリコンポルノを想像して読んじゃうと拍子抜けですから気をつけて下さいね。 磯谷さんの画風はエロテックっていう感じじゃないから。
自分が「王女の条件」を読んだのは背表紙のキャッチに「注目のドラマティック王国ロマン」って書いてあったから。 もっとハーレクイーンなビクトリア・ロマンスものをイメージしてたんですよね。 お姫様好きとしては王女っていうタイトルだけでジャケ買いなんですが、引っかかったのは作者が磯谷友紀さんだということ。 磯谷さんの代表作は「本屋の森のあかり」だとおもうんですが、自分は本屋さんマンガが苦手なので読んでいません。 本屋さんに勤務している主人公のお話やお料理のレシピが書いてあるグルメマンガなどはなるべく読まないようにしています。 何でだか本に詳しいとか料理にうるさい主人公のマンガって読んでいてたいていイラってするんですよね。

  ブログ画像 王女の条件 JPEG

 本屋さんものの内容はわからないんですが、磯谷さんの描く短編は設定がトリッキーで何だか投稿マンガのようなイメージがあります。 まず思いついたストーリーがあって、そのストーリーを描くために都合のいい世界を考える(でっち上げる)という手法です。 本来マンガって作り話だからどんな世界でも描けることが魅力なんですが、読者にとっては作者の都合で作られた世界には違和感があります。 だから普通は設定をでっち上げた部分に対しては細心の注意を払っています。 たぶん投稿マンガなどでは編集者が一番最初に指摘するんだと思います。 磯谷さんの狙ってるのは「意味ありげなファンタジー」というジャンルみたいなので、“解っている”読者たちがターゲットだからいいのかもしれません。 しかし出世作の「本屋の森のあかり」は講談社の女性マンガ誌 Kissに掲載されていたので、短編にもKissのリアリストな女性マンガファンが流れて行きました。 やっぱり普通のマンガを期待する読者層に取っては磯谷さんの世界観には消化しにくいようです。トリッキーな世界観のマンガが全てダメっていうことではなくて、世界観をねつ造するんだったらそれ相応の説得力なある作品にする必要があるってことです。14歳と16歳の少女が妊娠するってネタのための設定だとしたら、まさに「ストーリーを描くために都合のいい世界」ですよね。
軽々しく「文明が滅んだあとの地球」とか「宇宙人が共存するようになった未来」とかのお話を考える人たちって、往々にして作画やシナリオがざっくりしている人が多い感じがします。 絵が横着なマンガ家はなんとなく設定も横着ってイメージもありますしね。 例えば太田垣康男さんは宇宙空間でヘルメットをしていない描写は描かなそうですよね。 作画に信憑性があるマンガ家はしょうもないところにツッコミが入るのを避けますから。 あだち充さんが野球の試合のシナリオでルールの解釈ミスをしたら大炎上だけどひぐちアサさんだったら「まぁそうだろうな」ってふうになるでしょう? これは男女差別ではなくて違うのは作画の持つ信憑性の差です。
磯谷さんのざっくりとした作画は少女セックスというテーマのマンガをまったくイヤらしく読ませないというヘンな効果もあります。 逆に“そーいう目的”の読者にはまったく期待外れなんでしょうけど、そーいう目的の読者が磯谷さんのマンガを読むとも思えません。 この中途半端さこそがエロテックス・エフというマンガ誌のエロに偽りありってところでしょう。

 エロテックス・エフというマンガ誌の編集方針は作家の自由な創作活動の場っていう印象でした。 力量のある有名作家は個性をより自由に出せるんですが、どう描けばいいのか定まっていない作家にはよりマイナーなイメージがついちゃう感じでした。 「王女の条件」も自由に描いてるんだなぁっていう感想しかありませんでした。 せっかくのお姫様ものなのにセックスするだけの作品なんてもったいないってね。 ところがこの作品に変化が見えたのは4話目からです。 ちょうど3話目でエロテックス・エフが休刊になってブランクの後、4話目からは白泉社のメロディで再開になったからのようです。 憶測ながらタイトルも含めて新しい編集者さんからいろんな意見がでたんでしょう。 太田出版にくらべて白泉社はマンガ誌の老舗だから「作家の個性を尊重した自由な創作」なんていう甘っちょろいセリフは通用しません。 憶測ですけどね。
白泉社の少女マンガ誌は花とゆめにしてもLALAにしても他誌に比べてファンタジー要素の強い作家が多い印象です。 それだけご都合設定には慣れてるハズです。 だからこそ「王女の条件」は微妙に方向を変えていくんじゃないかなって思っています。
1話のサブタイトルが「姉姫と妹姫」2話が「憎しみと無知」3話が「処女と少女」 ここまでがエロテックス・エフの掲載部分です。 妹姫が無知で処女ってつなげて読むといい感じですね? 4話から「自由と策略」5話が「偽りと秘密」6話が「裏切りと孤独」 選ぶ言葉がちょっと変わりましたよね。 タイトルも最初の「ふたりの王女」っていうのはグリム童話っぽい響きで「本当はエッチなシンデレラ」みたいな童話パロかな?って・・・しかし「王女の条件」というタイトルだと背表紙のキャッチの王位継承権の争いがテーマっていう感じになりました。
編集が変わってガラっと立て直した作品についてこの日記で過去に書いたことがあります。
「そんなに編集者が悪い?」
小野田真央さんの「花咲さんの就活日記」という作品で2巻と3巻の間で担当編集者が変わって、作品のテーマが一新したという興味深いケースでした。

 2巻以降は新展開のようです。 できれば王女としてというより女性としての尊厳を傷つけないようなドラマになるようにして欲しいですね。 尊厳を傷つけことや大切なモノを壊すことで、何かをが描けた気になってる作家がとても多いです。 気になるのは磯谷さんの考える王位継承の条件の中に尊厳が含まれていないことです。 姉が女王になろうと妹が女王になろうとこの国の将来は絶望って感じです。 妹姫の「姉はかしこく母のあとを継いで王になるそうです」っていうセリフだけが磯谷さんが設定した女王の資質です。 でも姉ほうもそーいうタイプに見えないんですよね。 姉のほうが妹以上にバカっぽいし・・・磯谷さんに指導者(女王)を描く資質があるのかどーかが最終回までこのマンガが持つかどーかの分水嶺でしょうね。
結論は自分は尊厳に関わる部分で女の人をバカに描くマンガが許せないんでしょう。

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