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2018-12

人の性癖で笑えるか? - 2015.08.02 Sun

高野 雀 さんの「低反発リビドー」です。

 高野 雀さんは5月14日の日記で「コミティアの第1位?」という記事を書きました。高野さんは コミテェアという同人誌系主催の2015年のオリジナルマンガでの1位になった新人マンガです。 同人誌系の作家にしては商業プロっぽいテクニックを備えているので、同人誌系アマチュアマンガ家出身がどこまでやれるのか?っていう期待を込めて書いたつもりです。 その高野さんの2冊目「低反発リビドー」が出版されたので期待の答えているのかを考えてみましょう。

 前回の記事では『高野さんの描くマンガは表情豊かながらマンガ的な省略がきいてるキャラデザインや読み飽きる前に終わらすテンポのよさ、セリフの感じのよさなど、とにかく“イイ塩梅なマンガ”なんですよね。 地味で暗めな題材が多いなか絶妙な「からっと感」があり、シンプルな描写も客観的と感情的の微妙なラインです。』って書いていました。 結構ベタ誉めですね。 でも同人誌系だからという新しさという部分は感じられないし、むしろ読んだことがある感じの新人マンガっぽい印象でした。 そーいう同人誌特有の個性ってマンガにはあまり重要じゃないので、「奇をてらうような手法に走らないといいな」って心配もありました。
初のメジャー単行本が祥伝社フィールヤングから出したので女性誌狙いなのかって思っていましたが、2冊目は徳間書店のコミックゼノンからの出版でした。 「WEBコミックぜにょん」というネットコミックで連載した作品を加筆して単行本化したモノだそうです。 コミックゼノンは少年マンガのテイストを活かしつつ、読み応え重視のマンガをマンガファン向けにリリースするっていう方向性のマンガ誌です。 今回取り上げる「低反発リビドー」は前作「さよならガールフレンド」に掲載されているヤングフィール初出作品と同じ時期に発表した単発4ページ読み切りで30作品を集めた本で、女性誌狙いの作風とはかなりイメージが違います。 ゼノン自体が往年のエロ・コメディーマンガにチカラを入れてる感じなので、「低反発リビドー」も全編が下ネタ風ハーフ・エロ狙いな「ありふれた性癖(リビドー)オムニバスストーリー」らしいです。

 高野さんはどちらかと言えば女性向けマンガよりもこっちのほうが向いてるように思います。 主人公の気持ちが冷めた感じとか行動の起伏のなさとかが、少女マンガの読者が求めてるモノじゃないんだと思います。 主人公たちがセックスなどを雑に扱う演出などで「これが女の本音」っていう突き放し方は、少女マンガのファンが求めるような人間関係とは根本と違うんですよね。 当人も少女マンガに対する違和感を売りにするくらいなら少年マンガに絞ったほうがいいように思えます。
作品の内容は全30話がマンションの各部屋でのそれぞれの住人が繰り広げる性癖のシチュエーション・コメディの形式です。 基本の流れは「ヘンな性癖や習慣が恋人や同居人、友人などにバレてビックリ」っていう感じです。 コマ割が統一されていて、1ページ4コマ×4ページで合計16コママンガです。 シチュエーション・コメディには一定のファンというかこの形式を高く評価する人たちが一定数いますから、そーいう方々からの評価はおおむね良好のようです。(ネットのレビュー調べ) なんだかマンガの導入部分だけを描き並べただけなので、このマンガ家は「ストーリーよりもシチュエーションを描くほうが好きなんだな」っていう感じがしました。 おさらいなんですが商業連載とは「ストーリーの顛末を1話から最終話まで描くこと」なのに対して、同人誌は「作者が描きたいシーンだけを描くもの」という傾向があります。 「イヤイヤ、私は同人誌で大河ドラマを連載してますよ」って方もいるでしょうが、同人誌の普通の製作過程では難しいでしょう。 前作の「さよならガールフレンド」の表題作は同人誌発表の作品だったのですがそうは思えないくらいプロマンガ家の作品っぽかったと書きましたが、今回の商業依頼のほうが同人誌っぽかったです。 WEBマンガっていう発表の形態だから、読み流しやすく軽いモノっていう依頼だったのかもしれませんけどね。

 「よくこんなに様々な性癖のネタが思いつくな」っていう感想が多くありますが、じつはアイデアを出すこと自体はそんなに難しいことではなかったりします。 簡単にできるというのは語弊がありますが、思考のルーチンができちゃえばアイデアは量産できるモンです。 めんどくさいのはストーリーの始まり方ではなく終わり方なんです。 「低反発リビドー」の場合はストーリーの冒頭部分の「オレ(ワタシ)本当は○○が好きなんだ」っていう暴露から始まり、それでどーなったという“さげ”の部分が来ないまま終わっちゃうパターンです。 一般の人たちの会話ってオチがあるわけじゃありませんよね(関西は除く) だからってマンガの会話にも「オチがないことがリアリティー」っていうのもヘンでしょう。 この作品は1本づつWEBで観るようにできている作品です。 だから一度に1作品だけだったら気にならないんですが、同じような形式を1冊30話を一気に読み続けると正直途中で飽きてきちゃいました。 「この感覚って何かに似てるな」って考えていたら、大昔に小学校の図書館で読んだ星新一さんのショートショートを読んだ印象に似ていました。 星新一さんの本も読み続けていくと、なんだか読むこと自体が面倒くさくなっちゃいます。
具体的にどーいうパターンが面倒くさいのかといえばツッコミの言葉のパターン化です。

ツッコミのパターン
「その前提、そこ譲れないやつなの?」
「そういう問題じゃない気もする」
「まずはそこ、まずはそこから」
「いや、そこはいいから」
「褒めてないからね」
「問題そこじゃなくね?」

 よく聞くイメージの定型的なリアクションの言葉ですが、自分の会話のなかではあんまり使わないフレーズばっかりです。 セリフに定型文を用いると、そのセリフを言ったキャラが定型文なキャラに見えちゃうんですよね。 作品のテーマの性癖も漠然としたフェチっていう捉え方なのですが、「その性癖に共感できない」というマンガの前提に対して読んでいても共感できない感じなんです。 なんていうか「この作者は性癖について興味がないだろう」っていう読後感です。 描き流してるんだから深く考えるなよってことかもしれませんが、前作がどちらかといえばきっちりとした短編だったのでもったいない気がします。
マンガのスキルが高い人は得てしてシチュエーションに落ちがちです。 高野さんの作風で思い出すのは志村貴子さんの初期のころです。 「どうにかなる日々」などエロが描ける女性マンガ家っていうか成人向けマンガ家でならしていましたが、本音トークな性癖マンガを得意にしていたと思います。 しかしマンガのスキルが元々高かったので、真摯に作品を描く?ようになってからは一気にメジャー作家になりました。 べつにメジャー作家が成功でマイナーがダメっていうワケじゃなくて、シチュエーションではキャラに魂が入らないってコトに気づかなきゃマズいです。 本当は「さよならガールフレンド」の中の短編作品もシチュエーションに頼った印象があったんですが、祥伝社の編集担当の方ががんばってキャラ作りをさせていたんでしょうね。

 この作品はここまで批判するほどクオリティーが低いワケではありません。 作画やセリフ廻しのセンスは新人離れした印象で新人NO1の称号も伊達じゃありません。 ただ2~3話くらい読めばもう十分って思えちゃうのは、描き手が「ライトエロマンガなんてこんなモンでしょ」っていう姿勢が紙面に透けて見えちゃうからでしょうか? 高野さんはもうすこし性癖について向き合って描いたほうが良かったのかもしれません。 飲み会などで「ワタシって、下ネタもいける女子」を気取ってる子を見るとイラっとすることがありませんか? 性癖にこだわりがあるマンガ家さんがこーいうネタを描くのなら消化できますが、マンガのネタとして性癖を並べられてもグッときません。 べつにグッとこなくてもいいんですが、青木光恵さんのおっぱい信仰とか、西炯子さんのド変態モノとか、説得力のあるリビドーを描けるマンガ家もたくさんいます。
こーいう4ページで30本みたいな形式のマンガはアイデアの量が問われるようでいて、実際にアイデア勝負になっちゃうと「アイデアの羅列」みたいなマンガって感じちゃいます。 お笑い芸人だってネタを羅列したのを観ていてもそんなに面白いって感じないじゃないですか? 面白いって思える人はそれはそれでいいんですけどね。

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