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2019-10

コミティアの第1位? - 2015.05.14 Thu

高野 雀 さんの「さよならガールフレンド」です。

 高野 雀さんは「コミティア」の2015年第1位を獲得した注目新人マンガ家さんです。 コミティアとは『自主制作漫画誌展示即売会』で、同人誌にありがちの二次作品やファン本、アニパロ等を排して“オリジナルマンガ作品”に特化したイベントです。 同人誌即売会としては「コミックマーケット(コミケ)」が有名ですが、こっちはオリジナル作品なのでサークル単位というよりも個人参加を重視してるようです。 森薫さんや水谷フーカさんなどスカウトされてプロデビューという、マンガ界のサクセス・ストーリーが頻繁に起こっているイベントです。

 アマチュアマンガとプロマンガの違いは何でしょう? 面白いサンプルに同じコミティア出身の森薫さんの「シャーリー」という作品があります。 この作品は現在2巻まで出版されてますが、1巻目は森薫さんが初めて描いたマンガだったそうです。 コミティアの時代ですね。 2巻はプロデビューし「エマ」を連載中に描きためた新作エピソードをまとめた本です。 アマチュアが描いたシャーリーとプロマンガ家が描いたシャーリーの技術の差(森薫さんの進化)が見て取れます。 森薫さんがスゴいのは同人誌(個人誌?)のころに自分が描きたいコトだけをマンガに描いていたのに、プロになったも描きたいコトだけを描いていること。 普通は電通気取りな編集者が「読者が求めるテーマは」とか、ベテラン気質な編集者が「マンガはこう描くべき」などのアドバイスに従っちゃうイメージです。 森薫さんはコミティアのアマチュア時代と現在とで描いているモノが本質的に変わっていないですよね。
プロが描けば面白くてアマチュアのマンガはつまらないというのは大ざっぱな考えです。 アマチュアで面白いマンガを描く人もいればつまんないマンガで食べているプロもたくさんいます。 面白いマンガが描けるアマチュアは「面白いマンガっていうモノが何なのか解ってる人」だと思います。 プロとの違いは作画や演出のスキルや経験不足です。 つまんないプロマンガ家は「面白いマンガが何なのかは解らないけど作画や演出の知識や描く経験は豊富」ということでしょう。 面白いマンガを描くプロマンガ家は「面白いということも解っていて、そのためのスキルも備わっている」人たちです。 売れるマンガ家は面白いマンガ家と似ているようですが、売れるために必要なのは「売れるためのマーケティング」です。 売れるマンガ家には売るための編集者が必要のようです。 でも面白いと売れるは同義語ではありません。

 ドラフト1位指名で祥伝社から商業誌デビューを果たした高野さんは、いかにも祥伝社が好きそうなタイプの作品を描くマンガ家さんでした。 作中の主人公の行動や作者が表現しようとしているテーマについては、この日記の目的が感想文を書くことではないので省きます。
高野さんのマンガで最初に目を引くのは作画の技術の確かさですね。 マンガを描き慣れないアマチュアが描く青春マンガの多くは、主人公の一人語りの大半がコマの中が平べったい傾向にあります。 絵でストーリーをリードできない人に限ってモノローグなコマ割に逃げる印象ですね。 高野さんのコマの中の作画はは立体的で動的です。 それと2コマ続けて同じパース(同じ構図、顔のアップ~アップなど)では描かないのも特徴です。 まったく抑揚のないミリペン風のタッチで女子キャラを不必要に美化しない(可愛すぎない)作風は、好き嫌いが分かれそうですが感情移入できて画面がベタベタしない絶妙なところをついてる感じです。

 
 
 多くの方々がレビューで書いているだろうストーリーについてですが、表題の「さよならガールフレンド」は地方の女子高生がヤルだけの彼氏や閉鎖的でよどんだ地元の空気に我慢しながら、ビッチ先輩と呼ばれる彼氏の浮気相手と交流していくという「王道の青春マンガ」です。 10年前も20年前も30年前もこーいう「こんな地元出て行ってやるマンガ」は描かれ続けてきたテーマです。 優等生と不良の交流とかやりたいだけの男子とか、一括りに親とかも定番ですよね。 表題作以外の作品も基本は鬱積した主人公が気持ちを、はき出したりはき出せなかったりっていうコトがテーマです。
そんなありきたりの青春ドラマなのに何で高野さんはドラフト1位のマンガ家なんでしょう? それはあまりにもマンガが上手だからです。 「さよなら・・・」は初単行本ですが知らずに読むと5冊目くらいのキャリアの人が描いてるんだと錯覚するくらいです。 森薫さんのデビュー時よりも、しっかりとプロマンガ家が描いた作品のように思います。

 マンガファンの間では高野さんを「新しい才能」とか「新鮮な切り口の青春像」みたいなおだてた感想もあるようです。 でも自分が評価したいのは内容ではありません。 コミティアに参加しているオリジナルマンガを志すアマチュアの7~8割の方々が、最終的に高野さんの描くようなマンガをイメージしてマンガを描いてるんだと想像します。 みんな描き方のスタートはバラバラですが、ゴールは商業誌にのっても遜色のない完成度のマンガのハズです。 しかし商業誌というビジネス優先な響きや出版社や編集者と対峙する勇気に気後れして自主出版(同人誌)という道を選んでいるのでしょう。 アマチュア作品の最大の悩みは読んで面白いかどーかの前に『ページ1枚を見てもプロの原稿に見えない』というところでしょう。 相当つまらないプロの作品でも一目で「つまらないマンガ家の作品」って思えます。 しかしアマチュアのつまらない作品は読まなくても見ただけでアマチュアってバレバレです。 内容以前に到達すべきレベルに達していないんですよね。 これはアマバンドとプロバンドにも言えますよね。
高野さんのマンガよりももっと背景を描き込んだ作品や女の子を可愛く描いた作品や哲学的な示唆を盛り込んだストーリーの作品を描く方々がコミティアにはたくさん出展されていただろうと思います。 それでも高野さんが一番評価された新人で、なによりも商業誌デビューに進めた勝者なのは何故でしょう? 高野さんの描くマンガは表情豊かながらマンガ的な省略がきいてるキャラデザインや読み飽きる前に終わらすテンポのよさ、セリフの感じのよさなど、とにかく“イイ塩梅なマンガ”なんですよね。 地味で暗めな題材が多いなか絶妙な「からっと感」があり、シンプルな描写も客観的と感情的の微妙なラインです。
 
 コミティアの読書会?で1位になったというのが一般のマンガファンにとってどれ程の称号なのか解りかねます。 でもオリジナルマンガを描いてるアマチュアの方々にとっては気になる存在だと思います。 先程7~8割の・・・って書きましたが、そのうちの大部分の人が「自分は高野さんとはマンガの志向や思考や嗜好が違うから・・・」って思ってるコトでしょう。 ジャンルが違うっていうヤツです。 でもアマチュアマンガには『マンガとして成立してる作品』と『成立していない作品』の2種類しかありません。 成立している作品になって初めてファンタジーとかラブコメとかジャンルが問われるんです。
俳句は五・七・五なのに、同人誌だから5・6・5でも7・7・5でも良いっていう考えでは何時までたっても俳句が作れるようにはなりません。 商業誌も同人誌も同じルールで描かなきゃ読者に通用しないです。 同人誌即売会が終わらない文化祭を楽しむための場でもあるのはわかるんですけどね。

「さよならガールフレンド」の装丁なんですが、ピンク系のグラデーションの中を主人公とビッチ先輩がスクーターで工場に向かってるシーンを図案化しています。 黒木 香さんという先輩たちには聞き覚えがある名前(別人)のデザイナーさんが手がけています。 とてもきれいな表紙なんですが、キャラがサカナの目をした能面顔に見えちゃいます。 高野さんは絵が上手いと散々誉めたつもりですが、単行本の表紙の絵を初見で似たときは作画には期待できないって思っていました。 デザイン事務所としては良い仕事をしたんだと思います。 でもマンガの読者が新人マンガの本を初見で選ぶ場合、この表紙の絵だったら買わない人もいると思います。 背表紙や帯には作中のマンガのコマがあるので手にとってひっくり返せば「この人の絵って上手じゃん」って思ってもらえるんですけどね。 高野さんは絵が上手というよりもコマが上手な人なんですよね。

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