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2019-10

ニューウェーブ、再考 - 2014.11.01 Sat

高野文子さんの新作 「 ドミトリーともきんす 」 です。

 20世紀でもっとも成功した芸術家にパブロ・ピカソがいます。 最高の画家かどうかは“絵画方面にくわしくない”ので判断がつきません。 でも一番有名な画家なのは間違いありませんね。 ピカソといえば子供でも描けるような絵のイメージだと思いますが、「 本当はスゴく絵が上手だった 」とか「 あれはキュービズムと言って・・・」とかシロウトでも聞いたことがあることでしょう。 実際に画風?がどんどん変わっていき、初めからあーいう絵だったわけでも最後まであーいう絵だったわけでもありません。 多くの方々が思い浮かべる「 ゲルニカ 」はシュールリアリズムの頃の作品で、多くの小中学校の壁画が影響?を受けてるようです。 なぜかゲルニカっぽい不思議な絵やレリーフが学校の壁にはありがちですよね。
極めて俗な意見ですが絵画には「 その絵が好きかどーか?」と「 その技巧やテーマが高いか低いか?」と「 その作品に価値があるかないか?」という選別ができます。 好きかどーかにこだわる人が正しいワケでも、技巧を語る人が一番芸術を理解してるワケでもありません。 ましてや絵画を市場価値でしか判断しない人だって間違ってるワケじゃないでしょう。 

ピカソの作品は多くの人が「 子供が描いたような絵 」って思ってるだろうから「 ピカソのあの絵が好き!」っていう普通の人は少ないでしょう。 芸大出身者や美術評論家には新しい絵画の技巧を探求し続けたピカソは語るネタのつきない画家で、1973年まで生きていたので中世の画家よりも情報が多いでしょうしね。 世界一有名なピカソは世界一たくさんの絵が売れた画家なので画商も大繁盛でしょう。
ピカソの絵は“好きな絵”と“技術的な絵”と“価値のある絵”のどれに入るのでしょう? ピカソは一日一枚のペースでも絵が描けると豪語していました。 史上もっとも多くの作品を残していて、とにかく量産がきく芸術家だったようです。 エピソードで『 買い物した際にピカソが小切手を使えば、受け取った店主は銀行で換金せずにピカソの直筆サインを部屋に飾るだろう。 よって現金を支払わずに済むからピカソはタダで買い物をしたことになる。』とピカソは考えたそうです。 晩年の彼は「 どこまでテキトーに描いてもユーザー(絵画愛好家)は金を出すだろうか?」って感じでワザとあーいう絵を描いてたんじゃないのかな? このエピソードには岡本太郎さんのような端から見て“こんがらがったような思い込み”は感じられません。 「 ピカソ先生、絵はどーでもイイですから落款だけ押して下さい 」っていう会話が聞こえてきそうです。 
絵画を勉強なさった方々には「 無知にも程がある 」と非難されそうですが、全くのシロウトが漠然としたピカソへのイメージってこんな感じですが、これ以上知識がないのでピカソの話はここまでです(笑)

 高野文子さんは1980年前後から台頭した「 ニューウェーブ・マンガ 」の先駆者です。 「 絶対安全剃刀 」という短編集でメジャーデビューしました。 多くのマンガ家に影響を与えたとされ、この頃にやたらと沸いて出た“マンガ評論家”に褒めちぎられていました。 自分には正直いってニューウェーブのおニューな部分の価値がイマイチ理解できなかったんですけどね。 同時期の さべあのま さんのほうが新しさも面白さもあったような記憶です。 おニューだから「 今まで(既存)のマンガの枠ではないマンガ 」という評価だったんでしょうが、当時のアマ・マンガ家のバイブルだった「 絶対安全剃刀 」は“読んだことのあるマンガの雰囲気の寄せ集め”って印象でした。 高野文子さんのオリジナルのマンガ・フィールドというよりも、同人マンガ家が自分の好きなプロマンガ家の要素をパクって個人誌にしたって感じに近かったです。 高野文子さんがマンガ家予備軍たちに影響を与えたとしたら「 こーいうやり方もアリだよ 」という逃げ方でしょう。 こーいうとは「 同人誌的に内輪だけで誉め合ったり、模倣しあったり・・・」 実際に高野文子さんの登場以降、びっくりするくらい高野文子さんを真似た( マンガ業界では影響を受けたという )高野文子もどきが登場しました。 ニューウェーブとは模倣もOKというヘンなブームでした。 
ライバルのさべあのまさんはストーリーがしっかりした作品だったのに対して高野文子さんは行き当たりばったりのマンガって印象でした。 この頃のマンガブームの先導者はサブカルブームに乗っかったマンガ評論家たちなので、高野文子さんを批判するような文献は皆無でした。 評論される内容はだいたいが「 このテーマをこう見せるのはスゴい 」とか「 これをこーいう意味で描くマンガかは今までいなかった 」などなど・・・ おもに技巧についての評価が多くて「 オレは高野作品で感動したんだ 」みたいな直接的な褒め言葉はなかったような気がします。 なぜ高野作品が新人マンガ家のバイブルになったのかといえば、「 これなら自分でも描けるじゃん!」って思えたからでしょう。 だから高野文子もどきもいっぱいあらわれたんだし。 それこそ「 この手があったのか 」と教えてくれたのが高野文子さんの功績でしょう。 この頃、しらいしあいさんが原因で全国の女子中学生が「 私でもマンガ家になれる 」と思っちゃいました。 でも、高校生になって山岸凉子さんを読んじゃうと「 こりゃ無理だわ 」って諦めたんでしょうね。

 当時の自分にはニューウェーブという言葉に懐疑的で、そもそも「 面白いマンガ表現と新しいマンガ表現はあまり関係無い 」と思っていました。 マンガ評論家は「 新しい=面白い 」って感じだったんですけどね。 マンガ奇想天外やガロやCOMなどのマイナー系マンガがかっちょいいと思われて、マンガファンとはそっち系を読んでる人っていう分類だった時代です。 「 綿の国星 」を1冊かけて考察するのは作品の内容に比べて明らかな“オーバー解釈”だったと思います。
高野文子さんは2冊目の単行本「 おともだち 」を出版します。 この作品は「 絶対安全・・・」の実験マンガ的な印象よりも長編ストーリーも描けるっていうトコを見せたかったように思います。 ライバル?とさべあのまさんが「 ミスブロディの青春 」とか「 地球の午后三時 」などの“しっかりとマンガ的なストーリー構成のニューウェーブマンガ”を発表していたから。 ガキんちょだった自分は「 ミスブロディ・・」に激しく影響を受けて、ニューヨークの女新聞記者とウエイターの恋愛マンガとか考えていました。 さべあのまさんの魅力は公園でアスピリンをかじってるオールドミスや父と息子が仲良くしてるのに上手く振る舞えずヒステリーなお母さんなど、登場するキャラが可愛く魅力的なところです。 高野文子さんのマンガの嘘くささは“キャラは新しい?マンガ技巧のための代数”っていう感じだからです。 簡単に言っちゃえば、さべあのまさんは自分の描いたキャラが全員大好きなのに対し高野文子さんは演出上こーいうキャラが登場するだけって感じです。 
マンガを描くことに必要な技術はたくさんあります。 でも、ペンがふらついてもトーンが張れなくてもパースがヘンでもマンガは描けます。 突きつめて唯一必要なコトは「 作者が作中のキャラのことを好きになる 」ことです。 マンガの善し悪しなんかほとんどがコレにつきます。 当時そーいうコトを指摘してくれるマンガ評論家はいませんでした。 “絵のタッチが似てるだけで同じ枠で扱われていた”高野文子さんとさべあのまさんの違いを説明できるマンガ評論家はいませんでした。

 その後、ニューウェーブブームもうやむやになり大友克洋さんも桜沢エリカさんもメジャーマンガ家になっていきました。 「 おともだち 」以降は20年巻で4冊しか新刊を出していません。 仕事量としては異例の少なさですが、出せばやっぱり「 高野文子の新作が出た 」って話題になります。 それは作家としてスゴいことです。 待たされた分だけ高野ファンは期待し、それに応えるように新しい技巧やギミックを取り入れたマンガになっています。 新しい技巧と作者のネームバリューって、なんだかピカソの商法に似てますよね。 ピカソの「 絵に感動する云々よりも、ピカソが描いたという価値 」を買うって感じが・・・ 
80年代に高野文子を体験した世代(当時、こーいう言い方が実際にありました)なら懐古的な意味合いもあるんだろうけど、2000年以降にマンガを読み出した世代には高野文子さんの新作をどう解釈するのかが興味深いですよね。 「 あーこれは新しいマンガ表現だぁ」って思うのかな? 自分は「 るきさん 」と「 棒がいっぽん 」は飛ばして2003年出版の「 黄色い本 」は読みました。 そのとき「 うわぁまだこんなコトやってるんだ・・・」って率直な感想でした。 20年経ってもまだニューウェイブやってるんだって感じです。 アムロが「 こんなモノ・・・」って投げ捨てるような気持ちかな?
高野文子さんを師事していた桜沢エリカさんはとっくにニューウェーブでも何でもない女性マンガを描いています。 ニューウェーブの枠には入っていませんでしたが圧倒的な新しさを発揮していた吉田秋生さんが「 吉祥天女 」を出したのが1983年です。 吉田さんはマンガ表現の完成形にとっくにたどり着いています。 

 そんな高野文子さんの12年ぶりの新作「 ドミトリーともきんす 」です。 12年ぶりとあって「 黄色い本 」のときの中途半端感を払拭するほどのギミックが満載です。 自分が一番ビック入りしたのは本そのものが予想以上にデカかったことです。 それと「 偏差値70以上じゃない人は私の作品を読んでもらわなくて結構 」という冷たさは健在です。 そーいう自己プロデュースの巧みさは流石だと思います。 
きっと頭の良い人なんでしょうね。 ピカソ的な意味で・・・ 

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