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2019-12

みんなが怒ってるアニメ - 2014.01.12 Sun

細田 守監督作品「 おおかみこどもの雨と雪 」です。

 年末のテレビでアニメ「 おおかみこどもの雨と雪 」を録画したのですが、年末はテレビ番組を撮りだめし過ぎてたので今更ながら観てみました。 この作品については12年の夏の公開時にこの日記で記事を書きました。 しかし、この記事は自分は観てもいないで風評だけで書いたとても横着な内容でした。 マンガの場合は「 読んだ作品についてだけ取り上げる 」とか言ってるくせにね。 その記事を読み返すと「 映画。COM 」のレビューから細田作品を考えるという結構面白い内容でした。 書いた当人はすっかり忘れてたんですけどね。 まず、その日記を張っておきます。

「 おおかみこどもの評判 」 http://likea777.blog33.fc2.com/blog-entry-71.html
「 宮崎駿の後継者宣言?」 http://likea777.blog33.fc2.com/blog-entry-74.html

 この作品は細田さんにとって3作目のオリジナル監督作品ですが、観た方々からもの凄く怒られている作品ってイメージがあります。 そもそもエヴァやまどかマギカなど賛否が多いアニメ作品ってあります。 この手のアニメは本来その作品が好きなアニメファンだけが観るべき作品です。 いわゆるアニメファン向けですね。 したがって「 うっかり観ちゃったけどつまんない 」って場合は、間違えて観ちゃったほうに問題があると言えなくもありません。 アニメファンがつまんないって言うのはわかりますが、ファンでも興味もない人が「 意味不明 」とか「 低俗 」とか言うのは筋違いのように思います。 しかしジブリ作品など「 あきらかに一般の方々を対象に興行している 」場合は、アニメファンの評価とともに世間の辛辣な評価も受けるべきです。 難しいのは「 ヤマト 」とか押井作品とか一般客もマニアも両取りを狙った作品ですね。 一般の期待にも応えるべきだし固有のマニアに向けた作品でなきゃ意味が無いですし。 「 コナン 」や「 ワンピース 」などは善し悪し以前の話ですから問題ないんですけどね。

 「 おおかみこども 」は一般の映画ファン向けに企画された作品なので、アニメファンもそうでない映画ファンもファンでもない人も細田監督ファンも観たようです。 興味深いのはそのすべてのタイプの人がこの作品に不満を言っているところです。 中には「 観たけどスゴい面白かった 」とか「 泣いちゃいました 」っていう方々もたくさんいるのはわかっています。 そのことは日記「 おおかみこどもの評判 」でちゃんと書いてあります。 この手の批判は細田ファンには納得しがたいことでしょう。 「 この作品はここが素晴らしい 」という反論もあるんだろうと思いますが、今回はそーいう是非論よりも「 何で観た人が怒っているのか?」を考えてみます。 だって「 この作品はおかしい 」って意見が多いのは、やっぱり変わった現象だと思いますから。



 実際にどーいう部分が怒られてるのでしょうか? 一部を書き出してみます。

「 逆ナンパ、獣姦、避妊しない、おおかみおとこの死 」などオープニングの部分。
「 授乳、アパート、近隣、予防接種、児童相談所 」など都会の孤独の部分。
「 廃墟、畑仕事、田舎暮らし 」などローカルライフの部分。

ほかにも育児問題やキャラクターデザイン、物語のキモの雨の選択についてなど、ほぼすべてのシーンや内容について非難されています。 面白い傾向なのはそれぞれの人が違うところを指摘しているんですよね。 これは観た人によって許せなかった部分が違うことを表しています。 「 キャラは可愛いけどお話がイヤ 」とか、「 花は頑張ってるけど彼は許せない 」とか。 この作品を褒めてる肯定的なファンの人でも「 ここはヘンだけどね 」っていうただし書きが付いてるんです。  
自分がもっともがっかりしたのは大学時代の花と彼の出会いから4畳半暮らしまでの流れです。 いわゆる逆ナンから中だしの部分ですね。 いつかは宇宙人や未来人と戦ったり学園がハーレムだったり特殊な能力が使えるようになったりしなくても楽しめるアニメが出来ることに期待していたんです。 女子小中学生に密着しただけの日常ではなく、普通の人たちの日常から始まるストーリーに。 がっかりしたのは彼氏がおおかみおとこという荒唐無稽なことではありません。 それはタイトルに織り込み済みですから。 観ていてイラッとするのは恋愛シーンがあまりにも陳腐だから。 少女マンガファンにはこのオープニングのエピソードでこの作品の程度がわかっちゃうと思います。 顛末を雪のモノローグで語らすのは、細田さんがこだわり続けている“シーンに客観性を持たせる”ためなんだと推測できます。 子育て(飼育?)のお話がこの作品のメインだから、最初の出会いのシーンはアニメが大好きな設定の説明に必要だっただけなのかもしれません。 

 細田さんの持論の客観性では「 どこにでもいるような若者がありきたりの恋愛をして子供が出来た 」っていうストーリーに見せたかったようです。 「 その父親がたまたま、おおかみだったんだよ 」っていう作り方がしたかったようです。 これは極めてアニメ的な発想で「 戦隊ヒーローだけど普段はアルバイト 」とかと同じ発想です。 悲しいのは作り手とファンが「 コレは意表を突いた!」って思うほど一般の方々は意表を突かれていないことです。 では、彼氏がおおかみおとことして国家の機関に追われている設定で始めればよかったのか? それも違いますねよね。 それじゃ子育てアニメが作れなくなっちゃうから。 正解は「 大恋愛の末に結ばれて、周囲の反対を押し切って雪と雨を生んだ 」っていうストーリーです。 なぜ観て人のほとんどがアラ探しのようなコメントをよせているのか? それはオープニングのシーンまででつまんない作品だと確信し、残りの時間をつまらない原因を探すことに費やしたから。 そんなにイヤなら観なきゃいいんだけど、コレは劇場公開作品だから途中で出てくるのもナンですしね。 実際に菅原文太さんのおじいさんのシーンで寝落ちしてエンドロールだったという感想もありました。

 この作品で一番頑張らなきゃいけなかったのは、花がシングルマザーになることを手放しで応援できるように観客を誘導することでした。 作中では大反対をされても「 おおかみの子を産む 」ということを観ている側が賛成できれば、後の田舎暮らしも雪の反抗期や雨の親離れも花への感情移入で応援出来るようになります。 夢中で観るというのは主人公を応援しながら観ているということと重なります。 細田さんの描き方では社会との接触を避けてきた彼氏にヤりたいだけで接触してきた花という構図に見えます。 ネットでの非難は避妊しない彼氏に向けられちゃっていますが、彼は犬なんだから避妊とか社会性とかは人間の花のほうに責任がありますよね。 誘ったのが花なんだから花の自業自得ってイメージも付いちゃっています。 ソレで学業を捨てて育児に専念っていうのは、今の世の中では共感されるタイプの主人公ではありません。 そんな主人公を上映時間2時間も映画館の中で応援し続けるのは難しいでしょう。

 細田監督は「 時かけ 」「 サマ・ウォ」と順当にヒットしてきて、次世代を担うアニメ監督と目されてきました。 少なくとも神山さんとともに一般に名前が通用するアニメ監督だと思います。 次世代というからには「 今までのアニメとは違う何か 」が求められる宿命にあるのでしょう。 細田さんはアニメファンの支持を得た前作のテイストをあえて使わず、子育てというアニメマニアがまったく興味を持てない題材の作品を作りました。 前作も田舎の大家族がモチーフだったんですが作風はライトノベルズのアニメ化っていう感じでした。 細田さん当人はどういう意図だったのかはわかりませんが、キャラの心情はマニア(オタク)の思考パターンをよく取り入れたようでした。 中心人物のおばあちゃんがもっともアニメファンが好きそうな設定でしたし。 地球を救うのが一軒の大家族という設定は「 戦隊ヒーローだけどアルバイト 」と同じ発想です。 細田支持者のベースはこの方々でしょう。 でもこのアニメファンに向けてアニメを作っていたら、宮代真司さんの言うような宮崎駿さんには勝てません。 勝つ必要はないんだけどね。 それで前作とはガラッと変えた作品にしてみたら前作のような作品を期待したファンから総スカンを食らっちゃった感じです。 若者には育児アニメって言われてもピントきませんし、ターゲット層の家族連れは特に育児のプロのお母さんから非難が殺到していました。 獣姦とかエロアニメっていう噂だけで観たヘンタイさんもがっかりです。 雪のおおかみ顔もあんまり可愛くなかったし。

 観ている方々の共感をことごとく得られないのは、作品の中のディテールがことごとく絵空事に見えるからでしょう。 大学の授業中のシーンも何の勉強をしてるのか伝わってきません。 花が苦学生なのかぼーとした目的のない学生なのかもわかりません。 田舎暮らしの厳しさも口では言うけど厳しさが伝わりません。 廃墟も花ちゃんの魔法にかかればこの通りって感じでした。 大人のファンや宮代真司さんなどに褒められたいからって、アパートの近隣に怒鳴り込まれたり児童相談所のおばさんを描いたり。 ジャガイモの育て方はちゃんと調べてシナリオを書いたみたいです。 
いろいろと調べて作ってるようですが、調べ方がネットで検索したような薄っぺらい情報を元にしているって観る側に見透かされちゃっています。 マンガにもいえることですが、調べて描いちゃダメなんですよね。 ちゃんと勉強して知ってから描かないと本物のストーリーになりません。 特にマイノリティーをテーマに作品を作る場合は完全に調べても差別的に伝わったり、不快に感じたりされがちです。 この作品にはそーいう配慮は全然感じられません。 
前作はネットとかアバターとかバーチャルと得意な世界観だったのが成功した要因だと思います。 観た人がこの監督はこーいうジャンルに詳しいと思っただろうから。 自分は前作では従来のアニメの寄せ集めっていう印象が強かったです。 なんだか新作なのに「 昔からこーいう作品って多いよね 」っていう感じの。 今回も寄せ集め感は払拭できませんでした。 草平におおかみであることを打ち明けるシーンは王道の魔女っ子モノの最終回そのものですしね。 雨が山に惹かれるシーンは本当はこの世界とは別の時空からきたキャラが帰って行くみたいでした。

 細田さんの作品に感じる平べったさは最近のアニメ全般の傾向なのかもしれません。 自分が押井作品に共感できないのも平べったく作ろうとするところです。 一般の感想で多かったのは「 花の笑顔がいい 」という意見です。 全編通して花は苦境の中でも笑っています。 それは作者が厳しさと笑顔を対比させてなんたら・・・なのかもしれません。 しかし、この花の笑顔が作り物っぽくて観ている人をイラッとさせるんでしょう。 いつもビクビクしながら笑っていられると、このアニメって何を楽しめばいいのかわかりません。 みんながおおかみを好きなって、花たちも好きになってもらえる作品にすればよかったのにね。 観ていて面白いギャグやくすぐりが無かったのも不満です。 あったのかな? 

この作品で唯一共感できたセリフがあります。 菅原文太さんの「 笑うな!」 さすが一番星桃次郎! 
花、雪、雨、これって花札のことだったんですね。 書いていて気がつきました。(違うのかな?)

「ほぉ」って思ったら押してね

● COMMENT ●

はじめまして。 「 はづき 」 と申します。
ほとんどコメントはさしあげないのですが、
この作品 ( コミックス ) を読んだことがありましたので思わず
「 残念なアニメだったんですね・・・」 ( アニメはみていませんので )
と、感じました。 
↓ 「 銀の匙 」 も読んでいます。 おっしゃられる通り、テーマ が変わって来ましたね。
ストーリーは生き物のようなもの、という感じでしょうか。
これからもお話を楽しみにしています。
どうぞよろしく。

はづきさん、いらっしゃいませ。

「 おおかみこども・・・」のマンガ版はアニメ版とほぼ同じ内容です。
作画担当の優さんはこの作品が発輦祭だったのですが、それを感じさせないくらい手堅く綺麗な作画でしたね。
かなり、よしづきくみちさんに似たタッチで没個性な印象もありますが、角川的な画風なのでコミカライズには向いてるようです。
アニメでは気になる事もマンガだとあまり気にならないのは面白い現象です。 全く同じ内容なのにマンガだと多少独りよがりな展開でも怒られない場合があります。

「 銀の匙 」はテーマが変わって良かった読者と残念な読者と気にしない読者に分かれると思います。
自分は良かったと思いますが、大半の読者はきにしてないんでしょうね(笑)
ストーリーは生き物というのは言い得てますね。

こんばんは。
普通に見ていて面白いなぁ。 と思っていました。
確かに『つっこみどころ』はあると思いましたが('-';)
いろんな人のいろんな見方。
それぞれが抱える問題なんかも絡むんだろうなぁ・・・と
あれこれ考えながら記事を読ませていただきました。
視点のおもしろさに惹かれたので
また観てみたいと思います。
 

始めまして

私も、何の予備知識もなしに、わくわくしてDVDを見はじめたのですが、最初から最後まで違和感が随所に観られ、どこにも感情移入ができませんでした。ファンタジーと割り切ってみるには、リアルが前面に押し出されていますし、相反する二つが融合せず、それが見ているものをイラつかせるのだと思います。
私も二児の母ですが、同じ母親としても、あんな不安の中での子育ては考えられないし、それを選択すること自体、母親の資質を疑ってしまいます。
子供たちの描写が可愛いだけよけいに、花にいらだちました。
こうやって腹を立てるほどの、存在感のある作品だともいえるのですが・・・。
でもあの観終わった後のモヤモヤ感。これは、見て失敗だったなというのが、正直な気持ちでした。

花さん、いらっしゃいませ。

細田作品のいいところはストーリーが破綻しないところです。
その分、普通に観てるとあまりにも普通のアニメとして観ることができます。
細田監督の作家性を売りにしたイメージでアニメファンや映画ファンの心を掴んでいますが
あんまり深く考えないでシナリオを書くからつっこみどころ満載になっちゃうんでしょうね。
既存のアニメのようなクライマックスなんですが、それもオリジナルなストーリーを考える意欲が
あんまりないからのような気がします。

lime さん、いらっしゃいませ。

自分がリサーチした中でもお母さんたちの意見が辛辣でした。 みんな花が嫌いみたいです(笑)
なんだか「 高校生が大人の物語を描きました 」っていう違和感かな?
子育てアニメを子育て世代に観せて、イライラされちゃったらやっぱり失敗作なんでしょうね。

「 賛否を投げかけることがテーマ 」みたいな映画もありますが、観客が腹を立てるっていうのは
あきらかにアニメの目的には反しています。 立川談志か?って思います。


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