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2019-10

藤村真理さんの遠回り - 2013.08.11 Sun

藤村真理さんの「きょうは会社を休みます。」です。

 この作品は集英社の「Cocohana」という大人の女性向け少女マンガ誌に掲載されています。 大人の女性向けといってもレディースコミックではなくて、あくまでも大人の少女マンガというコンセプトらしいです。 くらもちふさこさんや槇村さとるさんを少女時代に愛読していた“当時は少女”だった読者に向けたマンガ誌です。 マンガ家も読者もそれなりに大人になったので、相応の内容の少女マンガで大人の購読に耐えられるような出筆陣をそろえています。 「コーラス」と「ヤングユー」がくっついたようなマンガ誌ですね。 現在でもいくえみ綾さんやくらもちふさこさん、森本梢子さん、吉住涉さんなどわかりやすい往年の少女マンガ家さんたちが頑張っています。 集英社系列のベテランどころはかなり網羅していますね。 昔は少女マンガを読んでいたけど「君に届け」とかは「青春すぎて、ちょっと・・・」というお姉さま方には、ちょうどいい読み込める“少女マンガ”がそろっています。
自分の一番のお気に入りの榛野なな恵先生の「Papa told me 」がしぶとく連載されています。 あと西村しのぶさんの新作も読めます。 「Cocohana」の名前の由来は「心に花を」です。 レディースコミックというドロドロな人間関係やエロエロな恋愛関係はイヤだけど、少女マンガのキュンキュンは好きという少女マンガファンにはオススメのレーベルです。

 今回取り上げる「きょうは会社・・・」は藤村真理さんの久々の平台マンガです。 「Cocohana」レーベル初の単行本で、1巻目の帯のキャッチは「33歳、まだ処女」というものでした。 大人向けをアピールするのが目的なので「33歳」の部分に引っかかるアラサー前後の方々が対象です。 「処女」の部分に反応する中高生男子が買っちゃうと、とんちんかんなコトになっちゃいます。 実際の内容も「33歳のOLが処女だけどオトコを手玉にとって・・・」みたいなレディースコミック展開ではありません。 あの頃(いつだよ?)のような奥手なアラサー女子?の恋愛マンガです。 バクマン風にいえば「王道少女マンガ」ですね。

きょうは会社休みます

藤村真理さんは「マーガレット」の主力作家でした。 ストーリーの構成が凝っていて「見せるマンガ」というよりも「読ませるマンガ」っていう感じでした。 絵柄は80年代までの「お目々ぱっちりな平面画」から「丸っこさが強調され立体的になった」80年~90年代の主流のタッチです。 「NANA」の矢沢あいさんの初期作品のようなタッチかな? その後だんだんとストリーや人物の“構成”に力を注ぐようになっていき、ややこしい展開を駆使した少女マンガになっていきます。 藤村真理さんは少女マンガの面白さを追求したかったのかもしれません。 でも、せっかくの可愛いタッチのキャラなのにギスギスしたP話や疑心暗鬼な女の子ばっかりの印象が強くなっちゃいます。 元々の優しい絵柄のロマンチックなお話を期待しているファンには、シビアな展開を期待していませんでした。 よく「読者がついて来れない」と言いますが「ついて行かない」場合のほうがほとんどです。 読者の反応が予想外だったので藤村真理さんは方向転換を計ります。 「隣のタカシちゃん。」です。 

 大昔の少女マンガの主人公像はクラスの中では目立たないけど優等生で非行や不純異性交遊とは無縁のタイプでした。 だから先生と恋愛したり不良と恋愛したりってお話が成り立つんです。 そーいうキャラ像は読者の対象をクラスに一番多くいる「目立たない子ちゃん」に合わせていたからです。 少女マンガに夢見るタイプがちょっと真面目でガリ勉でも不良でもない子だから。 90年代以降、少女マンガの世界に自由恋愛(フリーセックス?)と本音をしゃべるキャラのブームがきます。 明るい少女マンガの時代なんですが、それまでの読者を優等生と設定していたのに対して、街に繰り出して遊んでるイケてる女の子に読ませるようにシフトしていきました。 べつに読者が全員「イケてる女の子」になったわけじゃありません。 出版社やマンガ家が勝手にそう判断していったんです。 この頃から使われ始めたキーワードが「合コン」とか「たらし」など。 当然ながら本来の女子中高生の読者層が「合コン」してるわけじゃないでしょう。 でも時代が「合コンもセックスも普通じゃん」っていう雰囲気を作っちゃっていました。 
このあたりから現代までの流れで少女マンガの主人公が以前よりもバカになったという印象があります。 単純に見ても、登場する女の子がケバくなっています。 当初の少女マンガが優等生だったのから考えると、いまの女の子はバカばっかりという読者設定なのかもしれません。 それは非常に失礼なことですよね。  

 前記の日記「中野純子さんの一周忌」で読者の期待に応える必要性を書きました。 中野さんは少女マンガファンの読みたいマンガをが描けずに「ヤングジャンプ」に移籍していきます。 そこで少年マンガの期待に応えて成功しました。 
藤村真理さんは「隣のタカシちゃん。」で主人公の女の子をバカな子にしちゃいました。 勉強ができない子って設定なんですが、素行もモラルもいろいろバカな子です。 それまでの主人公はいろいろ思案しすぎるタイプだったのに、この作品は単純にバカっ子を笑うマンガです。 それはマンガやドラマや映画を軽く楽しめる時流には合っています。 でも元々の藤村真理さんファンには違和感がありました。 ソレまでは一生懸命にストーリーを構築していたのに「隣のタカシちゃん。」はチカラが入っていないという印象です。 ややこしいストーリーで失った読者を取り戻すために「今風のノリ」のマンガを描いたら、ソレまでの固定ファンの読者の期待に応えられなくなっちゃったって感じです。 藤村真理さん自身はコンスタントに作品を発表しているのに「アノ少女マンガは今・・・」的なイメージがあるのでしたら、それは「隣のタカシちゃん。」行くを読んでいないからでしょう。 ここを境にべつの少女マンガに変わっちゃいました。 
マンガを描く技術レベルはプロ中のプロですからそれなりの需要はあったみたいですが、平台マンガかといえばそーいう部類ではありませんでした。 そんな藤村真理さんがもう一度変わるのが「少年少女学級団」という小学生が主人公のマンガです。 その前の短編で小学生の日常に活路を見いだしたようです。 たぶん作者自身もバカな女を主人公にすることにかなり無理をしていたんだと思います。 でも、主人公が小学生だったら「初めからバカで当たり前じゃん」ってことになります。 小学生がバカでも読者には違和感がありません。 男オンナ(ありがちな設定)の遥が高校生の健に憧れるっていう“他愛もない少女マンガ”です。 これを遥たち小学生の読ませるのではなく健たち高校生以上の読者に読ませるマンガです。 この作品の中には昔ながらの少女マンガのちまちましたお話がてんこ盛りです。 全ての読者がファッショナブルでイケてる少女マンガを読みたいわけじゃないことが、「少年少女学級団」のヒットで明らかになりました。

 そして「きょうは会社休みます。」です。 集英社の「Cocohana」で昔少女マンガを読んでいた読者の掘り返しという狙いと、古典的な少女マンガに需要を見つけた藤村真理さんとの思惑が合致した作品です。 少年マンガに必要なものが“正義”なら、少女マンガに必要なものは“憧れ”でしょう。 おかざき真里さんが少女マンガから夢や幻想を取り除くことによって大人向けの女性マンガを確立しました。 それは大人の女性が読んでも耐えられるクオリティーのマンガですが、少女マンガではありません。 みんなが間違えていたのは大人になると少女マンガから卒業しなきゃいけないと思い込んでいたことです。 おかざき真里さんは少女マンガを卒業することで少女マンガを卒業しちゃった読者を獲得しました。 でも少女マンガを卒業したくない読者だってたくさんいます。 聖千秋さんの「四百四病の外」もタイトルは相変わらず聖千秋さんらしいややこしさですが、中身はベタベタの少女マンガです。 昔は「あっちの天秤、こっちの天秤・・・」ってややこしいマンガを描いていましたが「ヤなオトコ→実はイイオトコ」という王道少女マンガです。 作家陣はどなたも超ベテランなので本誌(マーガレットやりぼん)の駆け出しマンガ家さんたちよりも安心して読めます。

 「きょうは会社休みます。」についての書評などで「現代社会のなんたら・・・」とか「作者が言いたいことは・・・」なんていうのを見かけるかもしれません。 学者は社会学とマンガを一緒にしたがりますが、そーいう分析じゃこの作品を説明できません。 だって、この作品は昔からある少女マンガそのものだから。

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