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2019-10

オジサン向けマンガ 2 - 2013.07.27 Sat

楠みちはるさんの「8エイト」の続きです。


  愛しのBebyはいるのさ  Very 気をつかうよ
  理想的な daddy になるのさ 危ない薬もケンカもしたことないよ
  「Rockは詳しいぜ」
  過ぎた事ばかりがなぜ 眩しく見えるのかな あの頃よりも少しは大人だろ? Baby
  死にたくなる程嫌な事 なんてひとつもないぜ だから今日も空っぽで陽が暮れる
  冷たい部屋のベットで一人 訳もなく泣けて夜 心の中身を少しだけ捨てた
  永久未来 続くものなどあるはずはないから これで行くさ僕は僕を壊してく・・・


 前回の日記で書いた楠みちはるさんの作品は、すべてクルマやバイクがテーマでした。 しかし、新作「8エイト」のテーマは“ロック”です。 上の歌詞は「Rockは詳しいぜ」というフレーズを思い出して書いただけで、本編とは関係ありません。 とくにファンというわけでもないですし、誰の曲か憶えてる人っているのかな? 
「8エイト」は、往年のミュージシャンの息子のニーナやエイトらが商業高校の学祭でバンドを組んだり東京を目指したりってお話です。 ニーナもエイトもパートはギターですが、すでに将来バンドを組むだろう時のボーカル候補の女子高生も東京にいます。 ざっくりな説明だと「音楽に取り付かれた高校生が、バンドに情熱を捧げる青春謳歌」って感じですよね。 歴代のロックマンガだと「気分はグルービー」や「BACK」がメジャー作品ですね。 「NANA」や「デトロイト・メタル・シティ」はロックマンガでいいのか?とか、「けんおん!」も入るの?って難しいところです。 最近の作品だと「日々ロック」とか「青春ポップ」などでしょうかな? 古い作品で惣領冬美さんの名作「3 THREE 」が「8エイト」にタイトルが似ています。
それでは「8エイト」は過去のどのロックマンガに似ているのでしょう? 実は「8エイト」は楠みちはるさん自身の「湾岸ミッドナイト」に似ているんです。 「ロック=反抗」というのはあまりにもステレオですが、盗んだバイクで走り出さなくても優等生のためのジャンルではありません。 ロックンロールはもともとエルビスらの“腰の動き”に象徴されるような隠語が元ネタです。 以前、誰かがロックはLOCK(錠前)のことで「入れて廻す」という意味だとか言っていました。
「湾岸」のときにL型エンジンとか悪魔のZとか言っていましたが、それが今回ではドラゴン・ギターという海外のレプリカギターで通販向けの量産品だけどそのマザーモデル(別注扱い?)という、スゴいのかスゴくないのかわかりにくいギターです。 シャア専用のズゴックみたいな? 「あのギターは違うんだよ」って言いたげな、いつもの楠みちはる節です。 「来い、来い、来い・・・来たー!」とか「ドラゴンに乗れていない」など音楽マンガの比喩表現とは思えない独特の話法です。 こーいうオリジナルの表現ができるマンガ家が一流なのでしょう。

 80年代ならまだしも今の世の中が「ロック=不良」という図式じゃないのはわかります。 でも、親や先生が「おまえはビッグになれる」って後押しするのもヘンですよね。 最近は子供がマンガ家を目指すためにマンガ専門学校の月謝を親が出す時代です。 なんでもかんでも子供の夢を尊重すればいいというモンじゃありません。 親や先生が最初に立ちはだかる壁にならないでどうする? 子供がギタリストやマンガ家になろうとしたら、真っ先に反対するのが正しい親の役目です。 反対されることで情熱(思い込み)の沸点が上がるんですよね。 親や先生とケンカして家出同然で上京、退路をなくしてこそ夢の実現が可能です。 作中の主人公は高校を中退して東京に行くつもり(2巻現在)なのですが、綺麗なお母さんは容認のようです。 せめて黙認(勝手に家出)するくらい出なきゃ青春マンガ感が出てきません。 そもそもこのマンガには大人の折り合いがをつけられない若モンがひとりも出てきません。 これはロック少年たちの青春マンガなのでしょうか? 本当はロック少年たちに理解があるオジサンたちの“青春回顧マンガ”というジャンル?です。
回顧といっても「僕はビートルズ」の場合は60年代そのものにタイムスリップしてビートルズのデビュー前夜を描いています。 「3丁目の夕日」などのような物語の時代考証そのものを60年代にするやり方が一般的です。 しかし楠みちはるさんはあくまでも現代劇のなかでオジサンたちが「昔はよかった」的な思い出話を語るマンガです。 したがって過去に自分たちが通った道をたどろうとしている若者(主人公)たちに目を細めてしまうんです。 これって「湾岸ミッドナイト」で作られた手法です。 昔話をしてくる長老や主人公にアドバイスする教え魔が出てくるお話は多いです。 スポーツもののコーチやOBなど。 それは本来落語のご隠居のように「そういう役目」のキャラです。 しかし楠みちはるさんは物知りのご隠居をメインにして、夢にむかう若者を「ウンチクを聞かせる相手」というキャラと位置づけています。 宮崎アニメの女の子が一様に「大人の言うことを聞く利発な子」なのと同じで、楠みちはるさんのマンガの若者は一様に「大人の昔話を興味深く聞く利発な子」というキャラです。 宮崎駿さんの理想のキャラがラナならば、楠みちはるさんの理想のキャラはリカコ嬢です。 でもベースがキャバ嬢っぽいお水系が好みなのは言うまでもありません。

 単行本の合間や後書きに楠みちはるさんの音楽履歴エッセイが載っています。 「中1でストーンズを聴いた」とか、よくある感じの思い出話です。 「8エイト」は作者自身の音楽街道まっしぐらの青春時代をベースに描かれたマンガです。 そしてもう一つの夢中になっていた、バイクで街道をまっしぐらの青春をベースに「あいつとららばい」を描いたようです。 自分が好きなこと(得意分野)で勝負するタイプなんでしょう。 村上もとかさんのような、常に新しいジャンルをさも得意分野のように調べて描くタイプのマンガ家もいます。 
楠みちはるさんの新作がエンジンじゃなくて音楽だったのは必然のようです。 バイクブームや誰もがクルマを買い替えていた時代のマンガは、ミニバン、軽自動車しか売れない時代になって立ちゆかなくなっちゃいました。 なのに新作が衰退の一途をたどっているポップス産業が舞台というのはなぜなんでしょう? それはこの作品の対象年齢が「昔、一生懸命にレコードを買った世代」だからです。 音楽が配信やiPod、YouTube、握手券の世代には理解できないことでしょうが、昔は一生懸命音楽を購入していました。 金を払うから真剣に聴くし、音楽の嗜好も偏ってくるから聴く音楽のジャンルは若者の生き方やイデオロギーを表す指標になっていました。 巨人ファンか阪神ファンか?とか馬場派か猪木派か?くらいのイデオロギーですけどね。 クルマの車種やグレードよりもカセットテープの曲のチョイスが重要な時代です。 聴く曲のセンスで人間性まで計られる世の中です。 べつに最新チャートが偉いのではなく、岡本真夜系の女の子を乗せていて、ミック・ジャガーとか流しちゃったらアウトってことです。

 実は、一番音楽を活用して生きてきたのが団塊の世代です。 この世代を中心に新しいロックもポップスも生まれていました。 しかもこの世代がもっともマンガの全盛期を体験しています。 ここより上の世代はマンガは子供のものていう固定観念があった世代です。 団塊の世代から-15歳くらいまでがマンガに金を出せる世代です。 それよりも下の世代はマンガ離れの世代で、今の子供はマンガの読み方すらわかんない世代です。 この団塊前後あたりが音楽でもマンガでもボリュームゾーンで、この層に向けたマンガが、これからの時代では一番需要がありそうです。 生意気な口をきく若者キャラよりも、大人(読者層)の昔話を聞いてもらえる若者キャラが好まれます。 彼らは自身の青臭い記憶が読みたいわけじゃありません。 自分たちの華やからしき青春を肯定して欲しいだけです。 もう楠みちはるさんあ大人向けマンガしか描かないでしょう。

 自分の洋楽遍歴ですが、とてもお話できるレベルではありません。 過去に買った洋楽CDはサイモンとガーファンクルのベスト盤(緑の箱入りの3枚組)とアバのベスト盤(GOLDの黒と白)とビリージョエルの2枚組ベストだけです。 ビリージョエルは誰かに貸したまま行方不明です。 あとマドンナの10枚組(紙ジャケ)を貰ったんですが、まったく聴いていません。 洋楽ファンでなくても「何じゃそりゃ?」っていうくらいのテイタラクです。 
ポップスの中もメロディが好きな人やビートが好きなひと。 サウンド重視、歌詞重視、演奏重視など様々です。 漠然と音楽が好きといっても人によってこだわる部分が違うでしょう。 もちろんすべてを含めてトータルに良いのが名曲なんでしょうけど。 自分の場合はポップスとは歌手がメッセージを伝える手段という認識でした。 それは人生を歌ったり、平和や反権力じゃなくてもかまいません。 ラブソングでろうとコミックソングであろうと、奏者が伝える手段として音楽があるんだと思っていました。 だから曲を聴いて「ノリノリになる」とか「ご機嫌なサウンド」といったことはあんまり感じません。 
お茶の間の歌番組ではないポップスと初めて出会ったのは小5のころです。 父親にラジカセ(日立のパディスコ)を買って来ました。 そこでラジオという「それまでにないカルチャー」を知ることになりました。 そこには歌謡曲じゃない音楽がたくさんあって、一日中マンガだった脳みそに新たな音楽というフォルダーができました。 そこで楠みちはるさんは「レット・イット・ビー」を聴いてレコード屋に行くが紆余曲折の末「ブラウン・シュガー」に落ち着くわけです。 思い出話にしても勝ち組って感じで格好いいですよね。 自分がラジオで出会った曲はさだまさしさんの「主人公」でした。 たぶん本人の番組を聴いていたので、さだまさしさんのキャラと曲の両方を同時に知ったのですた。 5分程度で人生を全部語れることに感動したんですよね。 普通の方々は音楽に出会うと楽器に手を出して挫折するんでしょうが、自分に楽器が無理なのは重々承知していました。 そんな才能はあるわけがありません。 そのかわりヘンなスイッチが入っちゃいました。 それまでのマンガ好き少年といっても、クラスに必ずいるようなお絵かき少年にすぎませんでした。 でも、さだまさしさんを知ってから「自分でストーリーを考えるべき」という使命感が生まれました。 ようするにメッセージを発信する側になりたかったんでしょう。 唯一親にねだって買って貰ったパイオニアのオーディオセットで、初めて買って貰ったレコードがさださんの「私花集」でした。 次が中島みゆき嬢の「親愛なるものへ」 3枚目が荒井由実さんの「ひこうき雲」(中古)でした。 歌手(芸能人)にはなれっこないし興味もないですが、マンガ家にならなれるだるし歌よりも多くの内容を込められると考えたのでした。 子供だからマンガ家にはなれるつもりだったんですよね。 バカですね。 

 「8エイト」の作中に興味深いセリフがありました。 2巻目の学祭でのライブステージでのこと。 エイトのアドリブでのギター演奏にニーナが乗っかり、ベース、ドラムもアドリブでセッション。 ボーカルのミックも即興で英語の歌詞をつけられるか?っていうシーンで「見事にボーカルもアドリブナンバーに入ったー」ていう見せ場のところです。 そこでのオジサンのセリフが「適当な英詞で歌うコトが逆にリアル感を出している」とのこと。 適当な英詞で歌うってなんだよ?って思いますよね。 一番イメージしやすいのは桑田佳祐さんの即興かな? 自分の音楽の導入がさだまさしさんだったので、適当な歌詞というのが理解できません(笑) 
当時、日本人だから日本語の曲じゃないと理解できないから、なんで洋楽を聴くのかも理解できませんでした。 日本語でなきゃ歌手が伝えたいメッセージを理解できないから。 でも世の中の多くの音楽ファンは歌詞に思い入れが少ないようですね。 歌詞のことなど考えずに聴いてる人も結構いるみたいです。 「歌詞を考える」というのは歌詞カードを読み込むということではありません。 歌っている曲を聴きながら意味が伝わってこない曲やボーカルは自分にとっては「つまんない曲」なんです。 極論だとマライヤキャリーがどんなに美声で歌っても、技術がスゴいだけで曲には感情移入できないです。 クリスマスだなぁっては思いますけどね。
日本語の歌詞でも文脈的にデタラメな歌詞だとイラってします。 歌詞なので文法はどうでもいいのですが、文脈は気になります。 たとえば踊るポンポコリンな歌詞では、文法はデタラメでも文脈は正しいです。 余談ですが、アニメでがっかりさせられる場合はストーリーの文脈がデタラメなことが多いです。 日本語のアニメなのに意味がわからないアニメが多いのはなぜなんだ?

 歌い手が歌詞にメッセージを込めていても、聴く側が歌詞に関心を持たないケースも多いです。 カラオケで自分の持ち歌?でミス・チルの「over」という曲を歌っていたら、一緒にいた女の子が「この歌って失恋ソングなんだ」って言い出しました。 歌っている曲を聴いて気がづいたのではなくて、画面の歌詞を読んでいて気がついたそうです。 その彼女も知っている有名な曲なんですが、曲を聴いていても歌詞の意味が伝わっていないという実例です。 たぶん彼女の理解力の問題ではなくて、音楽を聴く時の情報を処理する脳の場所が違うんだと思います。 自分のまわりをリサーチしたら、歌詞に興味がないっていう人は結構います。 似た現象でアニメや映画を一回観ただけではストーリーが頭に入らない人や、事前にストーリーを聞いてからじゃないと映画を観ない人もいます。 自分はどんな作品でも予備知識ゼロで観たい派なんですが、そうじゃない人は「映像+物語」と「メロディ+歌詞」を脳の中で同じように処理しているんではないでしょうか?
同じ曲でもリズムが退屈に感じる邦楽ファンと歌詞が退屈に感じる洋楽ファンに分かれるんでしょう。 どっちがより音楽ファンかといえば洋楽ファンのほうがマニア度が高いと評価される傾向にあります。 でも、自分にとってはサイモンとガーファンクルの代わりにさだまさしがいて、ビリージョエルの代わりに佐野元春がいて、アバの代わりにバービーボーイズ(え?)がいました。 去年「僕はビートルズ」を読みました。 マンガは面白かったんですがビートルズには感動も関心もしたことがありません。 「8エイト」によく出てくるストーンズにも何の影響も受けていません。 
ミックジャガーよりも世良公則さんのほうが渋いと思います。  

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