topimage

2019-10

オジサン向けマンガ 1 - 2013.07.20 Sat

楠みちはるさんの「8エイト」です。
 
 楠みちはるさんは「あいつとララバイ」「シャコタン・ブギ」「湾岸ミッドナイト」「C1ランナー」と一貫してエンジン付きの乗り物マンガを描いてきた巨匠です。 
「あいつとララバイ」は、もともと不良マンガというジャンルでした。 絵の特徴は、顔の向きや角度に関係なく目や口のパースが同じになる独特な描き方です。 簡単にいえば顔の表情が全員いっしょです。 顔のパースが一定になっちゃう作画はマガジン系のマンガ家に多いイメージがある気がします。 初期の頃はメインのバイクのエンジンの描き方もテキトーっぽかったけど、連載終了時には自他共に認めるバイクマンガの第一人者になっていました。 マンガ家の中でもっともバイクの絵が上手なのは「キリン」の東本昌平さんでしょうが、マンガの中で走る「バイクというキャラ」の見せ方では楠みちはるさんのほうが上でしょう。 イラストだったら東本昌平さんにかなわないでしょうけど。 同じくマンガの中に出てくるポルシェの作画だったら麻宮騎亜さんよりも速いポルシェが描けます。 よーするに誰よりも「乗り物マンガ」が上手ということですね。

ブログ用 バイク

 「あいつとララバイ」は当時のラブコメブーム(飛んだカップル)+不良ブーム(横浜銀蠅)+暴走族ブームに引っかけて始まった連載でした。 自分は不良が出てくるマンガが嫌いだったのでこの作品は読んでいませんでした。 子供の頃からクルマ好きだったのでバイクマンガにも関心がなかったし。 同じ理由で「シャコタン・ブギ」も読んでいません。 クルマ好きなのだけどレース車両にしか興味がなかったので、シャコタン車やナンパにはバイク以上に興味がありませんでした。 しかし連載の後半になるといつの間にか不良の抗争マンガからポルシェとバイクが箱根で戦うというお話になっていました。 以降の湾岸シリーズにつながる元になった展開です。 「速いライバルと対決、決闘の日までバイク(クルマ)をチューンアップするメカニックの登場、決勝は操縦者の技量+マシンの性能」という基本ルーチンが確立しています。 主人公のZⅡを改造する“おやっさん”の登場です。 おやっさんで印象深いセリフは改造したZⅡを「スゴいのに全然スゴく見えねぇ」というところ。 楠みちはるさんは、この頃からチューニングを題材にしたマンガにシフトしていきます。 
その後「湾岸ミッドナイト」でもっともストイックなチューンド・カーの連載が始まります。 伝説の北見チューンの悪魔のZと乗りこなすアキオに挑む人たちのお話です。 なんでZがポルシェより速いのか?とかベースのL型エンジンやZのシャーシを持ち上げすぎな気もしますが、ファンタジーマンガとしては一級品でした。

 「湾岸 …」はアニメ版やゲームにもなって楠みちはるさんの地位を不動のものにしました。 連載も1990年から2008年まで18年におよび単行本42巻という長期連載になりました。 主人公機のアキオのZが連載当初で20年前のクルマでした。 ストーリー上での時の流れとは別なんですが、終了時の2008年ではさらに38年前のクルマということになります。 ブラックバードのポルシェも「一番速いポルシェは一番新しいポルシェ」と楠みちはるさん自身が作中で描いてるのに、空冷964タイプのままでした。 「主人公が愛機を瑠璃変えていくとそれ相応に歳もとってしまう」というジレンマで乗り換えができなかったんでしょう。 でもライバルたちの乗るクルマもGT-R32型やFD3やスープラ80も90年ごろのリリースでした。 それ以降はめぼしいスポーツカーが出ていないので、物語の時間を止めちゃったようです。

 時間を止めている間に変わってしまったのはクルマの性能だけではありません。 クルマに対する社会のイメージそのものが90年代とは変わってしまいました。 「速いクルマ」ということは評価の対象ではなく、ワゴン~ミニバンブーム、エコカー、いっそ電車でよくね?っていう世の中の流れです。 日本全体が不景気で疲弊していくと、速いクルマを求めるユーザーも開発するメーカーもいなくなっちゃいました。 もともとスピード違反者のマンガなので女子供に理解してもらえないのは仕方がないですが、飛ばしごろの男の子にすら共感されにくい題材になっちゃいました。 自分のまわりでも下の世代は免許を持っていない子がけっこういます。 どうせ乗らないし、クルマを欲しいとも思わないらしいです。 クルマが買えないこととクルマに乗れないことは別なんですけどね。 もともと18歳未満にクルマの能書きばっかりのマンガがウケるとは思いません。 でも本来の読者層が免許を持たずクルマにも関心がないと「湾岸ミッドナイト」は成立しません。 首都高の環状線や湾岸線も90年代までのような自由に走れる?空気が今ではまったくありません。 マンガやアニメを真に受けて300キロ出そうとしたら瞬時に捕まります。 あんなにごろごろいた走り屋風情のチューンド・カーも、すっかり見かけなくなりました。

 変わった時間を修正したのが続編の「C1ランナー」です。 まず、ファンタジーだったフェアレディーZ とアキオを捨てる。 読者層もやんちゃな若者を捨てて、昔やんちゃに走っていたオジサン世代に絞る。 登場する若者キャラも大人が気に入るような飲み込みが良くて年上のいうことを素直に聞く若者(ノブやリカコ) マンガの内容自体を前作のような対決色からほど遠いクルマの「うんちく談義」にする。 
ストーリーの中心はやっぱりクルマをチューンしてどっちが速いか?みたいなことなんですが、ベースにGTカーズという廃刊になったカー雑誌を復刻するというサブストーリーがあります。 廃刊になったカー雑誌こそが現代のクルマ人気を象徴していて、楠みちはるさんが時間を修正した部分です。 その語りは独特で、登場するオジサンたちが主人公のノブに噛み砕いて説明することによって、チューニング・カーの知識のない一般の読者にもうんちくが伝わるという方法です。 どうせクルマに興味がない読者には響かないだろうから、響く人たちにだけ読ませることを決めたようです。 しかしR35のGT-Rが発売されてやっぱりつじつまが合わなくなっちゃうんですけどね。 新型GT-Rは改造しないでフェラーリより速いクルマだから。

 歳月の流れというのが「C1ランナー」の最終回のエピソードに表れています。 本編での最後のバトル、ノブのブラックバード対荻島GT-Rでのこと。 首都高の交通量が一番少ない1月2日の深夜に、お台場でおとりの集会を開きます。 そっちに首都高の全パトカーが出はからっているうちに、環状線でバトルをするって段取りです。 18年の連載で「パトカーに捕まるから」なんて、そんなことは1度も言わなかったのに。 そもそもオービスだって完全無視だったじゃないかい? もうあの頃の首都高はどこにもないんでしょうね。 テスタロッサで「踏める」とか「踏めない」とか言っていたころは懐かしい思い出です。 
「湾岸 ・・・」を受け入れるおとのできる読者はクルマに限らず工業製品に対いての誇りがある人たちなのかもしれません。 日本時は機械を褒められるとうれしいんです。 だからビデオデッキの開発史とか新幹線誕生秘話とかがみんな好きなんでしょう。 宮崎駿監督の新作「風立ちぬ」も機械(ゼロ戦)と向き合うお話がみんな好きだから惹かれるんじゃないのかな? それは高度成長期から工業立国として暗影していた頃の日本を知っている人たちの思い出のストーリーです。 コストダウンとかディスカウントという言葉しか知らない世代にはピンとこないのかもしれませんね。

 未計画に日記を書いていたら新作の「8エイト」までたどり着きませんでした(笑) やっぱり次回に続きます。   

「ほぉ」って思ったら押してね

● COMMENT ●


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://likea777.blog33.fc2.com/tb.php/149-7f6fd8fb
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

オジサン向けマンガ 2 «  | BLOG TOP |  » 百合マンガの現在

管理人のらいかです

マンガを描くという事を目標にして
マンガの描き方を考えるブログです
(ネタバレの可能性があります)

は記事の内容に「ほぉ」と
思えたら押して下さると嬉しいです

最新記事

訪問していただいた人数

月別アーカイブ