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2018-12

「 はだしのゲン 」のこと - 2013.01.20 Sun

昨年、12月19日に「 はだしのゲン 」の作者の中沢啓治さんが肺ガンのため死去いたしました。

 「 はだしのゲン 」といえば自らの被爆体験を元に描かれた世界一有名な反戦マンガです。 読んだことがない人のほうが実際は多いんだと思いますが、このマンガの名前を知らない人はあまりいないでしょう。 日本のマンガシーンでも核廃絶運動でも有名なマンガ家さんでした。 報道されたのが12月の25日で新聞各紙やネット等で一報は伝えられました。 しかしその偉業?が称えられることも、人となりが解説ともなく、自分の感覚ではマスコミは“スルー”したような印象でした。 「 はだしのゲン 」にはあんまり触れないでおこうみたいな。 
「 はだしのゲン 」には昔の共産党とか昔の日教組とかなんたらとかが、どーしても付きまとうイメージです。 FC2の注目記事によく出てくる「正しい歴史認識なんちゃら・・・」というブログの方が唯一「中沢さんの業績について」大きく取り上げていました。 それは中沢さんが“極左プロパガンダマンガ家”で「 はだしのゲン 」は“デタラメマンガ”という扱いでした。 確かにそー言われるだろうなぁっていう人物ですが、このブログの方は信念をもって書いているんだろうし文責を取る覚悟もあるんだろうから全然問題はありません。 ちょっと面白かったのは一般紙の扱いの少なさです。 おりしも総選挙で自民圧勝したのが12月の16日でした。 日本中が安倍総理って動き出した時でした。 次の日本は「ちょい右」と国民が選択しちゃったんです。 ここへ中沢さんの訃報がはいってきたんですが、「 はだしのゲン 」を解説しちゃうと核全廃とか戦争責任は天皇とか“非常に面倒くさい解説”をしなきゃいけなくなります。 だからといって「中沢啓治は売国奴」っ書くわけにもいきません。

 自分が「 はだしのゲン 」を読んだのは小学生のころです。 内容は今でいうジャンプ版のエピソードです。 友子が死んで葬列のシーンで終わるやつですね。 自分は去年の12月までコレが「 はだしのゲン 」のお話の全てだと思っていました。 まさかその後に続編があったなんて知らなかったんです。 どーやらブログの方が怒ってるのはジャンプ掲載以降の「続編」の部分らしいのです。 読んでないからなんとも言えないけどね。
自分が小学生だったんで反戦とか反核とかアメリカとか朝鮮とかは、あんまりどーでもよかったような気がします。 読みながら戦争を考えるとかイデオロギーとかを考えるような子供でもなかったですし。 子供ながらにこのマンガが忘れられなかったのは「その時代の描写力」です。 論者たちが言ってるような「正しい」とか「間違っている」はマンガの世界じゃどーでもいい問題です。 むしろウソでも作り話でもいいんです。 マンガがウソを描いたってことで捕まるんでしたら藤子不二雄さんは逮捕です。 では中沢さんがこのマンガで描いたのは何かといえば、戦中、戦後、原爆を投下された広島の本当の姿の記録です。 初めて広島の原爆資料館に行ったときに、「 はだしのゲン 」のイメージと展示物が同じイメージだった記憶があります。 ジャンプ版のお話は主人公のゲンの見ている世界だけで描かれたマンガです。 ソコには戦争の怒りや国家への怒りよりも、目の前への怒りで溢れています。 このマンガの特徴は人の殴り方です。 大人も子供もぼこぼこ殴ります。 たぶん戦時中にこーやって殴る人がいっぱいいたんだと思います。 あと、どんどん死んでいく人の描写も全て中沢さんが実際に見た光景なんでしょう。
記録なら日本ニュースがあるだろって思いますが、映像は当てにならないんですよね。 ウソが映っちゃうから。 現代のマンガ家で中沢さんのような表現が出来そうなのは、福本伸行さんあたりかな? でも中沢さんは全部のコマが同じテンションで描ける珍しい技術があるんですよね。 これは淡々と大騒ぎできるワザで、説明しにくいけどたまに見かける技術です。

 マンガはよく調べてから描かないといけないんですが、調べて描いたマンガは知ってるひとが描いたマンガには勝てないんです。 知ってる人と同じだけ調べるか知ってることを描くしかないんですよね。 そーいう意味で知ってる中沢さんが「 はだしのゲン 」を描いたってことに意味があったんです。 同じことをこうの史代さんが「 この世界の片隅に 」で描いています。 こっちは調べて描いた原爆マンガの代表です。 中沢さんと こうの さんの違いは、やっぱりしっているか知らないかです。 こうの さん自身も広島出身なので原爆マンガを描く正当な理由があります。 でもマンガが頭で理解して描いているから、制作意図がハッキリしてるんですよ。 最終的に善悪に持っていく感じで。 「 はだしのゲン 」には善悪じゃなくてヒドイ時代という描写です。 善も悪もそれどころじゃないっていう・・・ しかし続編以降は善と悪になったんだと思います。 そーして欲しいと要求されたんだろうから、いろんな団体に。

 個人的には続編なんかを描いていないで、もっと愚連隊やら無頼者のマンガを描いて欲しかったんですけどね。 生涯を反戦活動に費やすのは立派ですが、それはもうマンガ家の仕事ではありません。 ましては思想をマンガで世界に広めていくなんて「一番危険なマンガの利用方」です。 たとえ善でも悪でも。

マンガで世界を変えようとか思っちゃだめだし、世界もマンガごときで変わっちゃだめです。

そういう風に考えれば「 はだしのゲン 」にみんながこじつけたメッセージ抜きで、純粋にマンガとして読めるようになりますよ。 そもそも週刊少年ジャンプに連載していたマンガなんだから。
だいたい夏目房ノ介さんとかはなんでコメントしない? あんたの仕事なんだから、逃げてどーする! 

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● COMMENT ●

はじめまして。

私は「はだしのゲン」は全部読みました。正直ジャンプ版の頃の方が漫画として純粋に面白いと思います。その後はよくある教育に使う説明口調の内容になってしまい、ストーリーとしてあまり面白いものではなくなってしまっていました。掲載紙や編集者が変わればそうなるのは仕方ないことかもしれませんが、最初と同じような描き方で単純に中沢さんが描きたいものを描き続けて欲しかったなぁと少し残念です。

みはゆーの さん、いらっしゃいませ

「 はだしのゲン 」の続きって、やっぱりそんな感じでしたか。
ジャンプ版は殺伐とした戦中~戦後を描いているのに、妙に明るくて面白いマンガでしたね。
自分は「マンガは面白くなきゃ意味がない」という考えですので、勉強になるとか正義を教える
なんていうコトには価値がないと思っています。(勉強になったほうがいいんですけどね)
「手を洗いましょう」とか「友だちと仲良く」なんていうマンガが面白いわけないですし・・・

中沢さん的な描き方ができるマンガ家がいなくなっちゃってるんですよね。

なるほど...^3^

はじめまして。

漫画の考察、この記事以外も的確で素晴らしいです。「はだしのゲン」は小学校のとき学級文庫で読みました。とにかくウジ虫の描写などが気持ち悪くて怖かったのですが、もの凄いインパクトでした。最近小学生の時に読んだ漫画やアニメが自分に及ぼした影響が気になって色々読み直しているところですが、自分に理屈抜きの反戦意識を植えつけた「はだしのゲン」は外せません。
”善も悪もそれどころじゃないっていう”・・・このリアルさは凄いですね。
福本伸行さんの描写が似ている、というのも面白いです。

soifon さんいらっしゃいませ

納得いきましたか?
よかったです(ニコ)

ようこん さん、いらっしゃいませ

このマンガは小学生の頃に読まないと駄目なのかもしれませんね。 中学だともう主義主張のバイアスがかかっちゃうし、高校以上だと軍事とか世界情勢とか「マンガの話じゃない部分」を読んじゃうから。
ウジ虫は文献を調べたって描けない真実の典型です。 
あんな怖いシーンはマンガ史上でもあまりないですね(笑)


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