topimage

2020-04

誰がワニを殺したか? - 2020.04.16 Thu

きくちゆうき さんの「100日後に死ぬワニ」です。

 今年、一番話題になったマンガが「100日後に死ぬワニ」です。200万人以上のフォロワーが読んでいた計算になります。しかし200万人が読んだからといって、200万人のフォロワーと200万部の発行では意味が違います。突然クローズアップされた「鬼滅の刃」は累計2500万部です。果たして今年の終わりに「そーいえばワニのマンガも今年だっけ?」ってなるのは目に見えています。
この作品の印象を一言でいうなら「いろいろ間の悪い作品」っていう感じでした。クライマックスの100日目が近づくにつれ不自然な感じでテレビのワイドショーに取り上げられ、いざ100日目の日には朝から全国放送でネタばらしをされちゃいました。
自分も朝のワイドショーで紹介されたコマと最終回のオチを見ました。ラストの花見エンドは全国的に花見は自粛と言われている中でした。ワニが死んで一週間後には日本のエンタメの至宝ともいえる志村けんさんの訃報で、普通の人たちはワニの死なんかどーでもよくなっちゃいました。
どーでも良くなかったのは電通案件で炎上させたアンチの人たちだけで、そのヒステリックなニュースに普通のワニ・ファン?もシラけちゃったようです。



 先日、TBSラジオの「伊集院光とらじおと」のゲストに「100日後に死ぬワニ」の作者で時の人のきくちゆうきさんが出演しました。何を聞いてもOKということで、何だか不祥事を起こしたお笑い芸人のような扱いでした。きくちさんの弁明は3日目ころにはすでに出版化のオファーが来ていたとのことです。これは電通ではなくて小学館だと思われます。ネットで炎上していた電通のプロジェクトというよりも、小学館の編集部のアンテナの感度が良かったというのが真相っぽいです。
真相という日本語は“本当の事情”という意味なので、伊集院さんときくちさんが真実を話したという証拠はありませんが、ネットユーザーの推理のことではありません。推理とは“判ってる事実から判っていない真実を想像すること”です。
ネットの中で流通している真実はすべて想像似すぎないという認識が必要です。書いている人のすべてが当時じゃではないから。某専門家とか某ジャーナリストなども当事者ではないので、彼らも想像の発言に過ぎません。
自分はこの作品に関する世間(という名のネット住人)の反応に初めから違和感がありました。最初にワニのことを知ったのは、もしかしたら「伊集院とらじおと」で伊集院さんから聴いたのかもしれません。100日をカウントダウンしていくネットマンガがあるって知ってから、しばらくして日テレの「ZIP!」で紹介されて実際の絵を見ました。
意外だったのは想像していた以上に絵が上手だったということでした。もっとシロートが一発ネタで始めたのかと思っていたら、きくちさんはプロのイラストレーターの肩書きがある方でした。
鉄拳さんのパラパラ漫画のような絵だと想像していました。とくに最終回のラストのカットはわたせせいぞうさんのイラストをヘタにしたような感じでしたね・・・
テレビが反応しだしたころにはネットで話題になっていたんでしょうが、200万人のフォロワーはこれらのマスコミ露出からの追っかけフォローだと思います。だから批判している多くのコメントにある「100日間読んできて最後に裏切られた」はアヤシいですね。
小学館は3日目の段階で「100日後まで読んだ読者は、こーいう気持ちになる」と推理したんですが、クレーマーの方々は100日後に初めて読んだのに「もしオレが100日間コレを読んでいたら、裏切られた気持ちになるハズだ」と推理して批判してるんでしょう。何しろ、きくちさんが電通とグルじゃないという証拠がないのと同じように、すべてのクレーマー読者が1日目から読んでいたという証拠もありません。



 今回の批判が集中した原因についてはラジオに出ていたきくちさんも、あまり理解していないような印象でした。最終回から初七日も済まないうちにメディアミックスがスタートしたことに対する迂闊さは反省していましたが、一貫して動き出した大きなチカラは自分では止められないとのことでした。大きなチカラ=電通という邪推にもつながるコメントですね。
実際には電通ほどじゃないけど代理店的なプロデュースは受けていたので、商業主義的な何たら・・・の言い訳にはなっていません。ワニ擁護論派として現役クリエーターの方々が「儲けて何が悪い?」って言い出しちゃっいました。きくち さんはプロのイラストレーターだから、100日間も利益のでない仕事をしてちゃヤバいです。自分たちのような趣味じゃないんだから・・・
しかしこの手の反論はきくちさんにとって何の援護射撃にもならなかったようです。マスコミが炎上のほうを取り上げちゃったんで、よりファンをシラけさせることになっちゃいました。
さすがにラジオを聴いた後に1日目から読みたくなって、菊池さんのサイトへ行ってみました。それまでは全く興味がなかったのだから、炎上効果と言えるかもしれません。正直な感想は100日のうちにテーマを意識した日が数日、日常の展開としても面白い日が数日、残りは日にちを埋めているだけっていう印象でした。
ネットの評価や伊集院さんの評価で多かったのは『一見するとどってことない日常なんだけれど、そコマの下に死ぬまであと○○日って書いてあるとマンガの中の日常が別の意味をもってくる』ということでした。この意味を持つっていうのは「ああっワニ君、そんなコトしたってあと何日で死んじゃうのにね♡」ってワクワクしながら読むっていうこと? それとも「死にことなんか普通は考えずに暮らしてるんだから、自分も一日一日を大切に生きなきゃ」って思うこと? 
この作品の正しい感想は「ワクワクしながら読む」ではないようです。正解が「日々を大切に」だとしたら、先程の商業主義の是非のほうの正解とくっつけると「日々を大切に生きる話だけど、それで儲けるのは賢いやり方」っていう感じですね。
自分の基準でこの4コママンガの単行本が売っていたとしても買わないと思います。せっかく設定で勝利したのに、マンガを面白くすることをしないのは何でなのかな? あえて面白くしないっていうマンガは結構あります。きくちさんも「どってことない日常だからグッとくるんです」って考えたんでしょう。でもその考えって、4コマのネタがつまらないことの言い訳になるのかな?


 死を扱う作品なんだから笑えるかどーかの問題ではないっていうのも一理あります。別に笑えなきゃ面白くないということでもありません。しかし4コママンガだったらマンガで引き込まれなきゃ、やっぱり面白くないと感じてしまいます。
きくちさんを批難していた人たちは「感動を商業主義の論理で台無しにされた」という言いますが、ワニが死ぬのを心待ちにしていた人たちほどガッカリしたと思います。100日後に1日から一気に読んだ人たちにとっては、カウントダウンは残りページ数でしかありませんでした。
ラジオできくちさんは伊集院さんに「自分の幼なじみの親友が突然死んでしまった過去を話していました。それが「100日で死ぬワニ」を作った動機であり、自身が1年間、何も手につかないような状態だったとのこと。このハナシが真実なのか電通のシナリオなのかは判りませんが、さすがに疑うような筋のハナシではありませんよね。
自分はワニに思い入れも嫌悪感もなかったのですが、この言い訳だけガッカリしました。そのことで話題になりたいのなら初めから「このワニは亡くなった親友の思い出です」っていえばいいです。そーいうハナシ強くシンパシーを感じるネットユーザーも多いです。元ネタを隠すのなら親友のプライドも含めて最後まで隠すべきでした。金儲けの作り話と言われたことへの反論のために「作り話ではなくて実際にあった本当の話です」って言っちゃうのはナシだったと思います。
物語は真実が偉くて架空は欺瞞ということではありません。ましてや物語で儲けるのは不純で無償が尊いのでもありません。自分はむしろ作者の経験や人生の不幸などを作品にするタイプの実話ストーリーを作る人に期待をしていません。身内の不幸を作品にするのは作家人生で1度しか使えない禁じ手です。死んだ恋人のことを書いてヒットしたら次は親との死別を書くの?その次は誰が死にの・・・? こーいう作家を自分は柳 実里タイプって呼んでいます。
べつにワニの死が本当のことかどーかが問われていたんじゃありません。そもそもワニなんだからファンタジーの世界で成立していた話です。だったらネズミがきくちさんだとか先輩って誰のこと?とか「隠された謎が明らかに・・・」っていう類いの作品でもありません。
今回のワニも読者が「殺さないで」っていくらお願いしても、作者のなかのワニの中の人は死んでいるんだからそーいうシナリオは聞き入れられませんでした。作品のタイトルが「100日後に死ぬワニ」なんだか100日目でキッチリ死ぬのを見たい読者を裏切ることもできません。
伊集院さんのように制作意図を拡大解釈して評価してくれるスピーカーがいたので賛否が上手いことわかれたんですが、一般マスコミ(テレビ、ラジオ、一般誌)では絶賛されネットなどでは酷評っていう印象です。まさに電通などのチカラが及びやすい利害関係のありそうな人は擁護派で、一銭にもならない人たちが言いたいことを言ってる図式ですね。


 不幸だった経験を作品にする人よりも幸せなのに不幸な作品が作れる人のほうを信頼しています。できればハッピーエンドな作品が読みたいんです。
自分は人が死ぬことでは感動はしません。生きている人に感動したいんだから・・・


「ほぉ」って思ったら押してね

NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

管理人のらいかです

マンガを描くという事を目標にして
マンガの描き方を考えるブログです
(ネタバレの可能性があります)

は記事の内容に「ほぉ」と
思えたら押して下さると嬉しいです

最新記事

訪問していただいた人数

月別アーカイブ