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2019-06

福井晴敏の空母いぶき - 2019.06.23 Sun

劇場映画版 「空母いぶき」です。

 自分は映画館へはほとんど観に行きません。10~20代前半は洋画中心に夢中で通ったんですが、あるときから映画館に行くのが苦痛になって映画館へは行かなくなっちゃいました。そもそもはマンガのシナリオの勉強という意味合いが、映画館通いを正当化する自己暗示だったのです。しかしマンガのシナリオはマンガを読めば解ることなので、映画そのものにはマンガに参考になる要素はほとんどありませんでした。マンガはマンガで勉強するのが一番だし、ボクシングだったらニワトリを捕まえるよりスパーリングしろってことです。
映画を娯楽として観ればいいんですが、そもそも色めがねで観るクセがあるせいか「ココが気になる」とか「腑に落ちない」などの突っ込みどころが気になっちゃいます。誰でも映画を観たあとに茶店などで感想戦をすると思いますが、自分は観た作品を全てにケチをつけていました・・・
一概に公開映画と言っても玉石混交なので玉と石を選り分けられればいいんですが、宇多丸さんが絶賛している玉な映画でも自分基準では石だったりします。自分は映画が好き過ぎて評価基準を高くしてるんだと思っていたのですが、どう考えても映画が嫌いなだけだろうと結論になりました。
一緒に観に行った人が満足してる場合は、自分の感想がその人を不快にすることにもなるので「コレは今年一番の駄作・・・」という言葉を飲み込んだ経験も多々ありました。
映画から離れるとレンタルビデオやテレビで映画を観るということもほぼ無くなりました。だから映画代の問題ではなくて本当に観て「ココが・・・」とか考えることが面倒くさくなったようです。
それまで映画を観ると「こうすればいいのに」とか「何でそうしちゃうんだろ」っていちいち思っていました。しかしそれは映画監督をリスペクトしてないんでしょう。ならば観ないことが最大のリスペクトってことなので映画から離れちゃいました。同様にテレビドラマもちょっと苦手です。
それでもたま~に映画館へ行くことがあります。どちらかといえば受動的に映画を観なくなっただけなので、観に行こうと誘われたら断る理由も映画を否定する論拠もありません。むしろデートだったらご機嫌取りでひょこひょこ観に行っちゃいます。
過去一番悲劇的な映画デートは「インディペンデンス・デイ」を観に行かされた時です。「流行ってるから観たい」というリクエストだったんですが、当然ながらSFスキルがゼロなので劇場を出たあとに「昔、宇宙戦争って映画があってね・・・」と説明させられた経験があります。何が悲しゅうてあんなヘンテコ作品をフォローしなきゃあかんのか?って感じですが、観た直後に駄作認定しちゃうとデートそのものが崩壊しちゃいます。そのコは劇場版「エヴァンゲリオン」も流行ってるから観たいとか言ってましたが、自分は大の庵野嫌いなのでそれは断りました。

 先日、サッカーJリーグの浦和レッズ対サガン鳥栖の試合をFクンと観戦したんですが、彼が「試合前にイオンで映画観ようぜ」と唐突に誘ってきました。試合はナイターだから日中がヒマなのですが、チョイスした作品が「空母いぶき」でした。
「空母いぶき」についての知識は、かわぐちかいじさんのマンガの実写化である。いぶきは現実の海上自衛隊の護衛艦いずもである。総理大臣役の佐藤浩市さんがうんこ総理発言?で炎上。そもそもマンガの実写化は「ドカベン」の実写版で痛い目にあってから絶対ムリって思っていました。前回取り上げた「海街diary」の実写映画も評判は高いようですが、あえて絶対に観ないでしょう。それは「櫻の園」の映画版で懲りてますしね。
Fクンはマンガや映画オタクとはほど遠いし、かわぐちかいじさんのファンでもありません。右や左の佐藤浩市さんの炎上にも興味はない(むしろ知らなかったレベル)ようでした。実はFクンとは広島の呉にある大和ミュージアムに行った仲なんです。これもサンフレッチェ広島とのアウェー戦に行った時に観光したものでした。大和ミュージアムの隣に「てつのくじら館」という施設があり、本命はこっちだったんですが、道路脇にゆうしお型潜水艦 “あきしお”が置いてあります。鉄のくじらとしか言いよいうのないその姿に圧倒され、戦艦大和のディスプレイ模型で喜んでる場合じゃないです。
ようするにFクンは単純に護衛艦いずも(映画上は空母いぶき)が観たかっただけです。自分としてもどうせ試合開始時間まではヒマなんだし、お話はともかく戦艦を眺めてるだけでも・・・ってノリで観ました。護衛艦いずもにもイデオロギー的な批判や意見がありますが、ストーリー好きにとってはそんなことは気にしていません。


 この後の文章は大きくネタバレと映画批判(批評ではない)が含まれています。これから映画館へ行こうとしてる人やDVDや配信等で観る予定の人、日本映画ファンや原作ファン、福井晴敏氏の支持者や西村秀俊さんのファンに対してなんおフォローもできません。
今後「空母いぶき」の鑑賞を楽しみにしている方にはオススメできない内容だと思われます。自分がこの映画を観たイオンシネマ・浦和美園では6月27日(木)で上映終了と発表されてました。
観る予定の人はお早めに・・・


 それでは観た率直な感想ですが、想像していたよりも楽しめました。どちらかといえばお金を払った分の満足感はありました。Fクンも誘った手前クソ映画だったらヤバいかな?って思っていたようなんですが、そこそこ楽しめて安心したようです。
原作はそもそも中国の尖閣諸島の領海侵犯事件寝たいする脊髄反射的に始まった連載です。当然ながら自衛隊が戦う相手は明確に中国なんですが、映画版では尖閣諸島が初島に、侵攻する国は中国から東亜連邦にと微妙に変更されています。
福井晴敏氏に対中国で映画を撮る勇気があるとも思えませんが、架空のお話にするというコトは原作の尖閣問題と護衛艦いずもの空母化問題をネタにするという制作意図を踏みにじることになります。何故ならかわぐちかいじさんはわざわざこのヤバめのマンガを描いてるんだから。福井晴敏氏は過去にも「宇宙戦艦ヤマト」や「機動戦士ガンダム」といった大ネタを先人の制作意図を踏みにじってきたので、当人にとってはへっちゃらなんでしょうけどね。
上映時間は134分で2時間越えの大作?ですが、『初島に上陸された~解決した・・・』のクリスマスの24時間のストーリーです。大半が飛んでくるハープーンや魚雷を迎撃したりしています。制作サイドは人間模様も描いてるつもりなんでしょうが、戦闘シーンばっかりです。「NHK特集」やBSなどの海外ドキュメンタリー番組の自衛隊や米軍密着モノを観ている感覚です。「自衛隊が交戦する事態になったらどうなるのか?」というイフのストーリーとして楽しめました。「実際の自衛隊の運用はあんな作り話とは違う・・・」という専門家気取りな意見も多いようですが、そこは娯楽映画という雰囲気モノなので気にしたら負けなんでしょう。自分やFクンは軍事オタクや国際政治ウオッチャーではなくて、純粋にメカメカしいものが大好きな機械好き男子です。きっと庵野版の「シン・ゴジラ」がヒットした理由も自衛隊等のメカメカしいシナリオや「撃て(てぇーぃ)」というシーンを眺めてるだけで満足な人が支持したんでしょうんね。「金かけたNHK特集だなぁ」っていうのが大まかな映画の感想でした。

 本編のシナリオがクリスマスの1日に起こった出来事だけで、回想シーンなどの時系列が逆行するような演出もありませんでした。重厚なストーリーが好きと自負してるマニアの方々は過去と現在が混在するシナリオに満足感があるようです。しかし回想シーンというのは全てが説明シーンであり言い訳シーンです。現実に生きてる人の時系列では回想シーンなど見る事はできません。
登場人物ひとりひとりの過去のアナザーストーリーを入れ込まずに、24時間モノに徹したことがまず評価できるところです。逆に原作の国際紛争の大河ドラマが1日で完結する作品になってるということは、原作をしっかり読んでる人は観ないほうが賢明でしょう。100% 腹立つから・・・
シナリオは西村秀俊艦長、佐々木蔵之介副長の海自パートと斉藤由貴上司、本田翼記者、小倉久寛記者の同行取材パートと中井貴一店長、深川麻衣店員のコンビニコントの三つのシーンで構成されています。サスペンスのシナリオの定石である乗員の無事を祈る家族のシーンは省かれてるが、緊張を弛緩させる目的で斉藤由貴さんや中井貴一さんが笑かしを担当してました。
緊張をほぐす必要があるほどの緊迫した映画にも見えなかったし、国際紛争という重さと対比指せるほど重い作品でもありませんでした。中井貴一さんと斉藤由貴さんのベテランの演技がドキュメンタリー感ゼロなので、「これは架空だけど本当の日本が突きつけられてる現実です」というメッセージがあるなら、その現実感を喪失させるほどリアリティーがないキャスティングだったと思います。
「人類滅亡の瞬間だけど人々は普通に晩ご飯の心配をしている」という演出をリアルだと思い込んでいる監督やマニアなファンが多い印象ですが、それはちょっとみっともない演出って感じがします。

 批判が炎上に発展してこの映画で唯一の話題を振りまいた佐藤浩市内閣総理大臣ですが、本編中は本当にウンコを我慢してる演技が冴え渡っていました。中盤で個室から出てきて手洗いのシーンは、脚本がワザと狙ってるンだろっていうレベルでした。
閣僚パートでもう一つ気になったのは、中村育二外務大臣です。彼は「防衛出動!防衛出動!」って騒いでお腹が緩んだ総理大臣をこまらせていたんですが、中村育二さんの顔が鳩山由紀夫を思い出してしまってイライラしちゃいました。なまじ中村育二さんという俳優を存じ上げなかったので、「この外務大臣、腹立つ政治家顔だな」って印象です。中村育二さんは役者としてなにも悪くなかったンですけどね・・・
この作品への批判の半分は戦闘シーンの特撮の是非で半分は閣僚パートの政治力の描ききれなさでしょう。自分は6割が福井クンのアニメドリーム。2割が中井貴一店長。1割が斉藤由貴パートと小倉&本田の潜入記者パート。残りが官邸の密室対応です。
原作を読んでいないんだけど、かわぐちかいじさんの作品だったら海戦3割、内閣7割くらいなのは想像つきます。原作ファンが怒っているのも当然だと思います。いっそのこと名作「Uボート」のように全編を潜水艦のみのシーンで作ったほうが、評価が上がったのかも知れませんね。本気で「防衛出動!」と叫ぶ映画を作るのなら海戦シーンに2時間かけて、政治家シーンにも「小説吉田学校」ばりの重厚感で合計5時間大作にすれば原作ファンも納得でしょう。
自衛隊が敵国と交戦中なのに何もしない内閣をリアリティーと取るかシナリオの無策と取るかによります。結局、お腹が痛いだけの総理と関係なく国連軍のおかげで有事を回避できたクライマックスにどう盛り上がればよいのかを見失うエンディングでした。政治手腕を発揮しないことがリアルな政治家を描いてるというのなら、それは福井晴敏氏がアニメの観すぎでしょう。自衛隊や内閣は宇宙世紀ではないので、彼の得意なヒロイズムでは「小説吉田学校」は作れませんから・・・

 ストーリーのベースになっている「専守防衛」か「防衛出動」かという議論をクドクドとしてたり、従軍記者のふたりは自衛隊広報の「この部屋にいて下さい」という言いつけを本気で守ってたりしています。映画全体の印象が“行動しない、判断しない”というコトが日本人の立場というスタンスなので、盛り上がるか?と言えばそんなに盛り上がるシーンの少ない映画でした。
上司の斉藤由貴さんがガンガン攻めのジャーナリズムだったら、もっとイケイケなストーリーになったんだろうけど、斉藤さんは本田翼さんの連絡待ちだし、その本田翼記者は机にうずくまっちゃってるし・・・ 彼女の仕事は戦争の現実の映像をネットで配信する事じゃなくて自衛隊初の防衛出動のプロセスを取材することでしょう。ユーチューバーじゃないんだから。
斉藤さんも送られてきた戦場の映像を、正義づらで世界に映像を公開するんじゃなくて、極秘映像を立てに益岡徹官房長官と取引して革新の情報を掴むくらいのアクションを起こして欲しかったです。何もしないネットニュース社とクリスマス・ブーツを作り続けるコンビニ店長が、何も起きない映画のストーリーをより何も起きない映画にしていました。斉藤由貴さんと片桐仁さんのコンビが従軍記者として乗船していたら、もっとアクションな映画になっていたかも知れません。可愛い枠の本田翼さんはコンビニ店員Bにすればいいんだし・・・
そもそも初島が占拠され日本人が拉致されているために空母いぶきが向かっているのに、初島に着く前に事件が解決しちゃうストーリーが「何も起こらない映画」なんですよね。何か起こっちゃったら2時間映画じゃ収まらないから最悪の事態が回避されるストーリーに逃げたようです。結局はいぶきも何もしなかったことで自衛隊の矜恃を保てたんでしょうが、何もしないことで映画が盛り上がるというのは舐めたハナシです。

 ささいなディテールで気になった部分はたくさんあります。
最初にハープーンの攻撃を迎撃するときに、都合よく1発だけ撃ち漏らしてしまい空母いぶきの艦載機用のエレベーターリフトに直撃してしまいます。これはいぶきが艦載機を使えなくするシナリオ上のことなんですが、セリフで西村秀俊艦長が「20時間で直せ」というアニメではお決まりのセリフが出てきます。こーいうのって誰が直すんだろう?石川島播磨の社員が常駐してるのかな?福井晴敏氏の大好きなヤマトでは真田工場長が直しちゃうんですけどね。
いずもの艦載機が一機やれれちゃうんですが、ステルス戦闘機なのに追尾ミサイルにロックオンされるんだって思いました。実際のところはどーなのか知りません。
「沈黙の艦隊」や「特攻の島」では魚雷発射管の魚雷口が開く音に非すれリックなほど過敏になっていました。この映画では魚雷とか撃ち放題なので、船特有の沈むことへのリスクと恐怖がまったく感じられませんでした。
鳩山由紀夫似の外務大臣の顔にイラつくと書きましたが、外務大臣やお腹を壊した総理大臣以上に観ていてイライラさせられたのが西村秀俊艦長の顔です。なんだかニヤニヤした口元と死んだ目の迫真の演技がいっそイラつきます。船乗りとかパイロットとかの演技プラン以前に、人として不気味な人が主人公というのは受け付けませんでした。無性に腹が立つのは店長もです。161番艦(艦名がわからん)の大阪弁で主砲をぶっ放してた船長はこの作品で唯一人間味があるキャストでした。
佐々木蔵之介さんと西村秀俊さんのツーショットは福井晴敏氏がいけないんじゃなくて、かわぐちかいじさんの無味無臭な好青年像にマッチしてるんでしょう。むしろ最近流行りの大企業の不正を暴く映画の同期社員ってイメージでした。
クライマックスのネタばれの多国籍軍の潜水艦が動じに浮上してくるオチは、福井晴敏氏が「沈黙の艦隊」へのオマージュだったんでしょう。福井晴敏氏は制作活動の大半がオマージュでできているのですが、「この人はヤマトもガンダムも、ちゃんと観てきたんだろうか?」て思わせるほど同じ作品を観てきたとは思えないほどもオモージュっぷりです。そもそも、その作品を愛する人はそのネタで自作をつくろうとは考えないし・・・

 結論をまとめますと、「空母いぶき」は観る人を選ぶ作品だということです。

ミリタリーのドキュメンタリー映像好き ○ 軍艦好きなら○ 戦闘機好きは△

軍事オタク ○~△ 所詮は模型やCG特撮なのでリアル指向なら△

ナショナリスト 右派 △~× 国際紛争を扱えるほどのシナリオではない

原作ファン × 原作は忘れて娯楽映画のつもりで観るなら△

本田翼ファン △ たいした見せ場もなく船室でうずくまってるシーンばっかりうです

福井晴敏氏のファン ○ 何が良いのか解らないがファンにとっては許容範囲なんでしょう

時間が2時間ちょっと余った人 ○ 観終わっても深く考える事も無いので次に予定に影響しない

 この作品に限っては監督の若松節朗氏の責任よりも企画の福井晴敏氏の責任だと思っています。それは、企画ありきの作品だから、監督がやりたくてやった仕事なのかは不明だからです。中井貴一さんと斉藤由貴さんを入れたのは福井氏と若松氏のどっちか?ということが審議されるべきですが・・・
「空母いぶき」が「宇宙空母IBUKI」として艦載機がモビルスーツだったら良かったのかもしれません。それくらい映画に登場する自衛艦がアニメっぽい印象というか、アニメ畑な感じの人が作った映画っぽい印象でした。いっそ海上自衛隊の持つ秘密兵器のローレライを使えばよかったのに・・・
 
 だいたい映画を観るとこーいう不満が鑑賞中に湧いてきて、精神衛生上よくないからあんまり映画を観ないようにしてます。終わるまで不満を言えないし、言ったところで一緒に観に行ったひとに不満をぶちまけるのも不幸を増やすだけだから。映画を観る度に泣き寝入りしてる感じがします。
今回の「空母いぶき」では艦内の映像のみがもどころでしたが、正直いって2月にBS日テレで放送した「こくりゅう潜航せよ」のほうが観ごたえがありました。それはやっぱりホンモノだからか・・・?
この作品は余計なシナリオがないことが良かったのか、悪かったのかで評価が二分されたんだと思います。シナリオを考え無かった人は辛うじて及第点だろうし、シナリオ抜きの映画を楽しめない人にとっては2時間が意味不明でした。自分はそんなモンだと思いながら観ていたんで腹も立たずに観ましたが、その日の本番のJリーグで浦和が鳥栖に劇的逆転勝ちをしたことで「何でも許せる気分」だったのかも知れません。
きっとFクンはもう映画の内容を覚えていないでしょう。自分ももうじき忘れちゃいそうです・・・


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