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2019-05

のだめ・・・について - 2019.05.05 Sun

平成最高の少女マンガの続きです。

 平成の中期の中から最高の少女マンガを選んだのですが、前回の「おいしい関係」のような主人公の成長とお仕事の自立をテーマに選ぶのならおかざき真里さんの「サプリ」が妥当でしょう。しかし同じような作品ばっかり選んだら『平成最高のお仕事マンガ』になっちゃいます。
お仕事マンガで「おいしい関係」と「サプリ」を比べたら、やっぱり「おいしい関係」が1位でしょう。「サプリ」はおかざき真里さんが博報堂でOLをやっていた実体験からのリアルお仕事マンガです。もし、槇村さとるさんがフランス料理の元シェフで、作中の料理や業界のしきたりも実体験だったらさいこうの少女マンガは他の作家になってたでしょう。求めるのはエンターテイメントであってディテールの真実さではありません。専門職だった人がインサイダーな情報を使って作品を描く場合は、評価は8掛けになります。
作品のテーマにそった情報や資料をかき集めるのはマンガ家の当然の作業です。自分の評価基準では調べて描く人と元○○が描くのとでは、調べて描く方が全般的に評価が高いです。「ちはやふる」の末次由紀さんが元クィーンだったわけではありません。「3月のライオン」の羽海野チカさんが女流棋士を目指してたとも思えません。羽海野チカさんは自身の美大時代がテーマの「ハチミツとクローバー」もヒットさせていますが、将棋マンガのほうが500倍はエンターテイメントです。森薫さんは英国メイド協会?の人でも遊牧民でもありません。
おかざき真里さんはオトナになってからデビューしたので、少女=キス オトナ=セックスを地で行く作風でした。本気の美大生出身の群を抜く画力とセンスが特徴のマイナー少女マンガ家って印象でした。マンガ家志望の人って大半が画力がないんで、絵で圧倒できる人が現れると「うぁ」となります。でもメジャーの評価を得たのは博報堂のリアルなブラック業界を描いた「サプリ」でした。それ以前の作品は少女マンガを舐めてるっていう感じがしていたのですが、「サプリ」は槇村さとるさんの「おいしい関係」に匹敵する転機になった作品でしょう。もうリアルなマンガの表現を認めさせたので、空想やヘリクツの恋愛感をマンガにしなくてよくなったからです。おかざき真里さんのエンターテイメント作品は青年誌で描いてる空海のやつです。コレこそエンターテイメント作品なんですが、少女マンガじゃないことと「スラムダンク」の作家の宮本武蔵のような顛末になりそうなので読んでいません。本当は歴史マンガが苦手なだけだけどね・・・



平成中期(平成11年~平成20年)の最高の少女マンガ

「のだめカンタービレ」 二ノ宮知子 著 講談社 Kiss 平成13年~平成22年掲載

あらすじは・・・
『エリート音大生の千秋は隣のゴミ部屋に住む野田恵(のだめ)と知り合い、人としてアレだが秘めた音楽の才能に惹かれて世話を焼くようになる。後に舞台は欧州に移り、プロの指揮者になった千秋とフランス留学中のにだめ。千秋はプロ活動の洗礼を受けるが、のダメは才能をどんどん開花してゆき千秋よりも世界的な有名アーティストになっていく・・・』

「のだめカンタービレ」が優れていたのはマンガとして笑えるところです。マンガにとって一番重要なことは面白いことなのですが、一概に面白いことと笑えることは同義ではありません。悲しくて泣ける作品も面白いし、共感できたり学べたりできる作品も面白い作品と言えます。
「爆笑できなきゃ上手な落語家じゃない」とか「マンガだから腹抱えて笑える」というモンでもありません。たまに少年ジャンプを本気で笑いながら読める人もいるでしょう。悲しいことにオトナになるにつれ些細なことでは爆笑することも減っていきます。幼児期は「ウンコ」という言葉だけで心の底から笑えたんですけどね・・・
爆笑係数が高いマンガが面白いマンガということでもありません。しかし、笑えるマンガはマンガとして正しい方向のマンガです。「のだめ・・・」は笑えるマンガとしては平成でトップクラスの作品でした。そもそもの二ノ宮知子さんの作風はブラックユーモアやジョークを明るい作風に入るだけぶち込む感じでした。ちょっと悪趣味なキャラやギャグなので、ちょっと少女マンガの標準値を大きく外れてる印象です。
「のだめ・・・」の前作は農家の嫁マンガでしたが、この作品あたありから頑張る人達の滑稽さやヘンなキャラたちを温かく表現できるようになった印象でした。ソレまではマンガ好きなマニアにしか評価されなかったが、より少女マンガに近づいてきて「のだめ・・・」のベースになったんだと思います。
同時期に森本梢子さんの「ごくせん」がギャグマンガで大成功しています。平成祖以降の少女マンガの候補としては十分な内容ですが、「ごくせん」はほぼ少年マンガにしか思えないのが受賞?」を逃した理由です。前作の「研修医なな子」からして少女マンガ感がゼロでした。独自のギャグ路線を経て「アシガール」では「のだめ・・・」同様に少女マンガ+ギャグマンガを確立したので、平成後期少女マンガにノミネートしたかったんですが、まさかの未完(終了のはずが連載継続)のために選外になりました。

 二ノ宮知子さんのギャグの根幹になっているのは「変人の描き分け」と「不幸の描き分け」そして「才能の描き分け」です。変人はのだめや千秋、その周辺の音楽を志すキャラ全般が変人として設定されています。
二ノ宮さんのがスゴいのは変人の差別化と使い分けでしょう。新人マンガ家や同人や投稿マンガで「この作家ダメだなぁ・・・」って思うとの第一位は「主人公は何処にでもいる普通の男だった・・・」って感じの作品です。ストーリー重視とか感性重視とか作者の言い分はあるんでしょうけど何処にでもいる人の話を読まされるくらい苦痛なことはありません。
二ノ宮さんは主役級はもちろん脇役からちょい役までフックがあるキャラを描きます。その、ちょいキャラが10巻ぶりに登場してもキャラ+ヘンな個性でスムーズに読むことができます。
二ノ宮作品で必ず出てくるのが主役級に振り回されて不幸になるキャラの存在です。彼らは変人のせいで損害を被るキャラなんですが、同時に変人がのびのびと動けるサポート関係にあります。のだめに迷惑をかけられる千秋、ターニャに振り回される黒木くんなど・・・
作品全体が成功のカタルシスよりも、失敗による負の感情を重視する傾向です。「のだめ・・・」ではコンクールで何度も挫折したり、技術差を見せつけられてヘコむシーンの連続です。ヘコんだキャラにこそ物語があると二ノ宮さんは考えてるんでしょうね。
主人公に敵対する悪役などは、一般の少年マンガでは倒すべき存在として出てきます。主人公をジャマする存在は倒すべき(殺すべき)存在として登場します。「悪役だから殺せ」っていうのは現代社会の「自分と意見が合わない人は存在しなくてもいい」という空気感に色濃く反映してる感じです。自分との関わりの中で「心地よい関係者」を賛美して「耳障りな関係者」を排除(遠ざける)傾向ですね。それに伴い、ストーリーでもイヤなキャラが殺されたり排除される作品のほうが、読者のカタルシスを満足させているんでしょう。
例としては企業ドラマブームなどがそうです。「あの上司、ムカつく」とか「あの卑怯なライバル会社、潰れろ」っていう負のエネルギーの作品です。ムカつく上司が左遷されて視聴者は「左遷は当然なこと、これで正義が守られた」っていう満足感なんでしょう。自分はこの手の企業ものが苦手ななので、ロケットも運動靴もラーメンも観ていません。だいたい会社の仕事の中で勝った負けたって何だよって思いマス・・・
「のだめ・・・」に限らず二ノ宮さんの作品には主人公や相手役に対してジャマする存在や敵役がたくさん出てくるのが特徴です。基本的にほとんどのキャラが誰かにとっての迷惑な存在として存在しています。しかし、迷惑だけど排除しないのが二ノ宮流です。世の中が迷惑な人の集まりで出来ていることを理解してるからでしょう。ストーリーの初期に出てくるハリセン教師には千秋ものだめも大迷惑でしたが、ゆくゆくは「そんなに悪い人でもないし、奥さんも美人だし・・・」って印象に変わります。

 二ノ宮作品で一貫しているのは「スゴい才能」を持ったキャラの共演でしょう。「のだめ・・・」以降の作品では、主人公が特異な才能を持ってることが一貫しています。それは音楽の才能、パソコンを冷却する才能、邪悪な宝石を見抜く才能など、作品によって様々です。
前回に取り上げた「おいしい関係」はシェフが主人公だったので、調理技術や知識の優劣がストーリーの根幹でした。「のだめ・・・」はクラッシック音楽がテーマですが、味とか音楽とかは絵で伝えることが難しいとも簡単とも言えます。「コレは旨い」とか「ナンて演奏なんだ」とか叫ばせれば、読者にはスゴい設定なんだなというコトは説明できます。とくに少年マンガでは強さ=ストーリーな作品が多いので、「強い主人公よりも強いライバルを倒した主人公はどのくらい強い設定にすればいいのか」といったベジータ問題になりがちです。

「のだめ・・・」におけるキャラの音楽の能力比(下に行くほど別格)

桃ヶ丘音楽学園   一般生徒
        <羨望>
R☆Sオーケストラ 国内組 峰 もじゃもじゃ 夜の女王のぶー子・・・
          海外組 清良 高橋 松田・・・

パリ留学生         黒木 ターニャ ユンロン フランク・・・
       <格の違い>
欧米でプロ活動       千秋 Rui・・・

     <越えられない壁>

巨匠            シュトレーゼマン ヴィエラ 千秋雅之 
              ベルリン四重奏のコンマス オクレール・・・    

※ だめは対比不可能な設定ながら最強のキャラ
   
二ノ宮さんの作品のテーマが「スゴい能力を持った変わったキャラ」なので、作中で扱う題材の中のスゴい能力の表現力がマンガ会でもピカイチだと思います。ピカイチのいう表現がマンガのスゴさをちゃんと表現できてるといは思いませんけど・・・

  最終巻の巻末に参考文献リストが書いてあります。ちょっと見たことがないほどの文献量です。音楽監修も業界関係者、プロの方々でいっぱいです。作画も楽器担当の方がいるそうです。二ノ宮さん自身がクラシック音楽にまったく関係してこなかった人ということなのです。現在連載中の「七つ屋志のぶの宝石匣」のために宝石の学校へ通ったくらいうなので、そーいうパワーのある人がヒット作を描くんでしょうね。
「のだめ・・・」の魅力で一番大切なことは恋愛マンガの一線を越えていないことです。音楽マンガというジャンルなのは間違いないんですが、のだめがどう成長するかとか音楽で成功出来るのか?というのを追っかけてもこの作品は最終回を迎えられませんでした。結局は一貫して千秋がのだめをどうしたいのかを決断するお話だったんです。したがって「のだめ・・・」は少年マンガのように優勝することも地球を救うこともなく完結します。主題は「幼稚園の先生を目指す人が同じ上を目指すって変ですよね」というのだめの問いに対する答えを探すストーリーだったんですね。
個人的なお気に入りは黒木クンとターニャです。彼らの恋愛バナシが本編に影響ゼロの中で展開しています。のだめ&千秋は鉄板なカップルなのですが、黒木&ターニャは第一印象最悪の出会いモノの典型な恋愛ストーリーです。どんだけ恋愛マンガが好きなんだ・・・・


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