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2018-08

未来のミライの評判 - 2018.08.11 Sat

細田守監督作品、劇場アニメ「未来のミライ」です。

 今回は観客動員数が130万人を突破した“大ヒット御礼中”のアニメーション映画「未来のミライ」についてです。自分は当然のようにこの130万人に含まれていません。公開時の初動では前作の「バケモの子」などに比べてイマイチというネットニュースが多かったのですが、日本テレビが得意になって「大ヒット上映中」と言っているんだからヒットしてるんでしょうね。ウチは朝のテレビが日テレなので比較的「未来のミライ」の情報が入ってきますが、他局では公開してるコト自体が黙殺されてるんでしょう。
すでに130万人が観ている作品ですが、お盆休みが始まるとさらに動員数は増えることでしょう。しかし130万人が満足したかというと、ちょっと疑問に思えます。作品論でよく聞くフレーズに「売れた作品がよい作品」というのがあります。これは内容の善し悪しよりもセールスのポイントが成功か否かを決めるという考え方です。コレだとAKBグループが日本を代表する音楽になっちゃいます。
今回取り上げる「未来のミライ」は観にいった人の悪評がやたらと聞こえてくる作品として話題になっています。自分は観ていないけど観にいった人たちの意見から、不評の原因を考えてみましょう。

 以前の記事で細田守さんの「おおかみこどもの雨と雪」について取り上げました。やっぱり劇場へは行かず、観た人たちのレビューの描き込みを読むことで作品の是非を考える記事でした。結果としてテレビでオンエアされた本編を観た感想も、この記事を書いた時の印象に大きく外さない感じでした。自分は「かなり否定派」の意見に一票でしたね。

「おおかみこどもの評判」→ http://likea777.blog33.fc2.com/blog-entry-71.html

今回も映画.COM ほか各種レビューサイトなどの“映画館で観た人たちの感想”を読んだ上で「未来のミライ」という作品を考えてみましょう。

  ブログ画像 未来のミライ JPEG

 細田守さんの「未来のミライ」を制作する意図のようなものがチラシの裏に描いてありました。
『家一軒と庭ひとつ。どこにでもあるたったひとつの家族を通して、生命の大きな循環。人の生が織り成す巨大なループを書き出したい。最小のもチーフを用いて、最大のテーマを語りきりたい。エンターテインメントの作法を用いて、新しい家族を拓きたい。一見穏やかに見えて、実は、大いなる野心を秘めた作品です』(公開用チラシの裏面の文章より)

各種レビューサイトを読んでみると「未来のミライ」のネットでの評価は「つまらなかった」と「つまらなかったって聞いていたが、自分は楽しめた」の二択でした。批判的な意見が集中したのはシナリオが意味不明、つまらない。4歳児の声優が違和感。育児マンガとして共感出来ないなど・・・
反対に擁護派の意見で代表的なものは『子育てを経験したかどうかで評価が分かれる作品ですね。ボクは子供いませんが・・・』っていう感じでした。「子供ってあーいう感じだよね」って共感する人と「あーいう感じだけどだからなんなの?」って人に分かれるようです。共感する育児経験者も多いのですが、一番酷評しているのがホンモノの4歳児の母親なのは前作の「おおかみこども・・・」と同じ反応でした。
「おおかみこども・・・」で育児表現を賞賛していた層は、細田守さんのエア育児アニメと同レベルの未婚男子のエア育児論者でした。興味深いのは4歳児の親でも「これって育児アルアルだよな」って共感してるのは父親っていう傾向です。
楽しめた人の意見で作品の感想の枕詞に書かれているのが「ネットで酷評されていますが、観に行ったら私は楽しめました・・・」っていう一文です。言うほど悪くはなかったというのが面白かった派の人たちの感想で、「観る人を選ぶ内容なので、つまらないっていう人もいる作品ですね」っていう締め方も定番です。擁護したくてもアニメ作品としてモヤモヤする部分が多いのはアニメファンだったら明白な事実のようです。むしろ、つまらない派に意見に擁護派が上手い切り返しが思いつかないほど「理路整然とつまらない作品」なんでしょう。

今回のレビューで欽ドン賞はコチラ・・・
『あえて「くんちゃんやミライたちが世界を救う」ていうお決まりのアニメ冒険もの”を期待した観客に肩すかしを喰らわせるための作品っていう感じでしょう。言葉を選んで穏便な表現を探すとしたら、細田守さんはもう劇場公開作品を作るのはやめたほうがいいんじゃないでしょうか?』

 そもそもこの作品の根源には「おおかみこども・・・」を公開したときに「育児経験も無いオタクアニメーターが育児を描く厚顔無恥さを馬鹿にされた」ことにあると思います。当人は厚顔無恥な売れっ子アニメ監督だからあんなに批判されるとは思っていなかったんでしょう。「未来のミライ」では私生活で二児の父親になったことから「もうエア育児じゃない」として「おおかみこども・・・」を否定したアニメファンにリベンジしたかったんでしょう。作品の制作テーマというのが『世界初の4歳児の視点のアニメ』世界初かどうかはわかりませんが、4歳児をアニメっぽい妥協せずリアルに描くことがテーマのようです。
前作の失敗は「おおかみこども・・・」のように物事に無関心な人が作った作品は、関心がある人が見ると腹立たしく思うというところです。育児や成長に関心が無いくせに親子の成長のドラマっていう格好良さをポスターに書いちゃったことが間違いだったんですが、今回は細田守さん自身が父親になったゆえに「この父親はちゃんと育児に関心があるのか?」という不信感が増大してる感じです。
「スタートレック」や「スターウォーズ」に出てくる宇宙描写に正しいとか間違ってるとか言う映画ファンはいませんよね。しかし「ゼロ・グラビティ」だとココが違う、コレは噓など宇宙の物理に詳しいファンからの辛辣な指摘が出てきます。ケモノ・ファンタジーだったら作者は想像上の子育てが描きたかったと擁護できますが、タイアップした建築メーカーに家の図面を引かせるくらいリアルな家庭を描こうとしたら前作以上にアラ探しされるのは当然です。

 アニメ界での関心事はポスト宮崎駿は誰か?ということです。細田守さんもポスト宮崎駿の候補者の一人です。あとはジブリ直系の米林宏昌さん「君の名は」で実績を作った新海誠さんなど。宮崎駿さんの引退は鈴木敏夫さんの仕掛けた引退商法なんだし、宮崎駿を襲名する必要もないとは思うのですが業界では気になるようです。
米林宏昌さんはジブリを継がずスタジオポノックというアニメ会社を設立。「メアリと魔女の花」のアレです。内容の是非は観ていないから解りませんが、子ども向けアニメを作るという覚悟は感じられました。彼が狙っているのはポスト宮崎駿ではなくて、ポストスタジオジブリだと思います。今年の夏休みは「ポノック短編劇場」を公開するようです。
新海誠さんは「君の名は。」で数字を作れる監督として認知されました。しかし数字が取れるすアニメの手法が新海誠さんの固定ファンを裏切る結果になるような気がします。
片淵須直さんは「この世界の片隅に」で名を上げましたが、経歴でいえば米林さんと同じジブリ系分派といえなくもないです。すっかり反戦アニメーターな印象ですが、根は飛行機マニアで「この世界の片隅に」もゼロ戦が描きたかっただけじゃないかと邪推しています。今後、片渕須直さんが電通の言いなりになるというイメージがわかないのでポスト宮崎駿は遠のいたと思いますが、マニアックなベースは一番宮崎駿さんに近いんだと思います。
今年も新作を公開した神山健治さんもポスト宮崎駿候補だったと思います。しかし、その作品のタイトルを覚えている人が、どれくらいいるんでしょうか?作家性を出すアニメーターとしては細田守さん以上に期待が持てそうでしたが、ちょっとマイナーに沈んでいった印象です。

 今回のレビューで予想外だったのは細田守信者的なファンがもっと擁護してると思っていました。実質、擁護してるのはZIPファミリーとライムスター宇多丸さんだけって感じです。某ラジオでの宇多丸さんの映画批評は知識や造詣の深さで一目置いているというか、彼が映画を解説してくれるので映画を観る手間が省けて助かっています。個人的には映画は一本も観ない方針なので・・・
しかし彼の映画批評でずーっと気になっていたのがメタファーとオマージュへの違和感です。映画ファンの批評で多いのが「コノ作品はアノ作品の・・・」っていう、ほかの映画と比較したり重ねたりするやり方です。宇多丸さんが用いるフレーズだと「未来のミライ」の家族の描き方は「万引き家族」の家族に比べて・・・みたいな感じですね。それと「このシーンはメタファー、このシーンはあの監督へのオマージュ」って言われたら、それに気づかないと映画に楽しめないっていう論法です。
「未来のミライ」の場合は仕掛けが多そうな予告編に対して本編ではメタファーが何もないことが評価を下げた要因みたいです。映画評論とは「メタファーへの推理と答え合わせ」で成り立ってるのでソレがない作品は映画ファンからしたらスッカスカに思えるんでしょうね。作品のテーマや意味、監督の意図やメッセージをそぎ落とすと、その作品が面白いかどうかだけが評価になります。メッセージなんか無くても面白ければ文句ないんですが、逆につまんない場合はメッセージがないと擁護しにくいです。そもそも、つまんない作品を擁護するっていうのもヘンなんです。

 批判の中で「サマーウォーズ」は傑作だが、今回は駄作だったっていう細田守ファンが多いです。自分はそもそも「サマーウォーズ」の段階であんまり面白いとは思わなかったんですが、その原因は細田守さんの考える「アニメの面白さ」と自分の「アニメの面白さ」が違うって思ったからです。それは、ほぼキャラの置き方によるものでしょう。細田守さんはキャラも場面設定も他人に発注してる感じがするんです。宮崎駿さんや永井豪さん、松本零士さんたちが同じようなキャラばっかり出てくるのは、そのキャラが作者の心の中に住んでいるキャラだからです。極論をいえばくんちゃんは4歳児をスケッチしただけって印象です。それだと観客からすれば「そうそう4歳児ってこうだよね」という感想以上のモノがでてきません。宇多丸さんは「このリアルな4歳児の描写がスゴい」って大喜びしそうです。しかし、同じ4歳児の設定だけど「となりのトトロ」のメイは作者の心の中から生まれたキャラって感じがしますよね。どっちが可愛いか比べたら一目瞭然でしょう。その中でメイが一カ所でも4歳児特有のリアルな行動を取ると子供の描写がリアルな作品って思われます。サツキの子供らしさは我慢できなくて泣き出すシーンだけで表現できています。

 くんちゃん以上にイラつくのはお父さん役の星野源さんです。今回に限らず声優を使わないアニメ作品はますます増えてきそうです。ひとえに大人の事情でしょう。そんな中でも星野源さんいは違和感しかありません。その理由は自分が星野源さんが嫌いだからでしょう。星野源さんがかもし出そうとしている雰囲気や、ピントが合わない感じの歌詞がう~ん・・・って感じになるんです。そんな星野源さんに当て書きしたようなお父さんのキャラは中の人同様にイライラします。ソレが作品のシナリオの都合で苛つかせるのか、演者に苛つくのかがわかんないくらいイライラします。「未来のミライ」は順当ならば来年の今ごろには日テレ系で放送されるでしょう。でも自分は星野源さんが出てるから観ないかもしれません。以前の恋ダンスもイライラしてました。みんなイライラしないのかな?
今回のレビューを読んでみて一番評価が高かったのが回想?に出てくる福山雅治さんが演じるイケメン曾祖父でした。この役はオーディションでもキャスティングが決まらず難航していたとのこと。福山雅治さんに会ったときテーマや何やらが一致したと公表されています。本当は電通が福山雅治さんをごり押しで連れてきたのでしょう。細田守さんがあわてて配役を増やしたようなひいじいさんが、一番評価が高いっていう感じがアニメファンにはトホホなんでしょうね・・・


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