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2017-01

大人百合マンガ2 - 2017.01.22 Sun

西UKOさんの「Collectors」全2巻の続きです。

 前回は「百合とは何ぞや?」という定義だてのハナシを書きました。かなり前に「JPOPとは何ぞや?」っていう感じの記事を書きましたが、百合もメデイアのジャンルのひとつって考えられます。メタルはロックの中に含まれるのか?とか、この曲はブルースなのか?っていう感じですね。音楽が好きな人にとってはジャンルの違いはこだわるモンだけど、普通の人にはどーでもいい違いですね。
百合の定義も男の子向けアニメは女子キャラだけにしか反応しないというマーケティングのため、キャストが女子ばっかりになっちゃったっていう感じです。逆に女の子向けにはBLな男子ばっかりの作品も多くなっているようです。市場規模ではGLよりもBLのほうが成熟していると思います。
マンガの百合はあからさまにアニメや萌え絵師の百合ブームに後乗りしてる感じです。昔の作品には同性愛をテーマにするという気負いがあったんですが、最近は「百合ブームに乗っかれ」という感じのカジュアルな作品のほうが多いです。そういうカジュアルな百合といえば今回の題材の西UKOさんの作品は、どれを取ってもとてもカジュアルです。今までにもあるにはあったんですが珍しいファッショナブル百合マンガっていうジャンル?の作品が特徴です。

  ブログ画像 コレクターズ 西YKO JPEG  

 「Collectors」は読書家で初版とか絶版本とか言いながら本が貯まっていく仁藤 忍と、オシャレ大好きで服やら靴やらが貯まっていく関崎貴子の女子カップルのお話です。表題にある「コレクターズ」とは本や服を集めてる主人公たちを表しています。したがって本を買いすぎネタや服を買いすぎネタがクドいかな?って気もします。
ふたりは大学時代に知り合ってすでに恋人になって、両者とも社会人という段階から連載がスタートしています。一般にはオシャレ大好きな貴子のほうが浪費癖がヒドいっていう設定がしっくりきますが、書籍マニアの浪費も相当なモノで作中の設定では裕福な大学生の貴子と金欠な忍という扱いになっています。クール・ビューティーな忍と嫉妬深くロマンチストな貴子という設定もあり、典型的なボーイッシュとガーリーの組み合わせっていう意味合いもあります。でも社会性があってしっかり者なのはガーリーな貴子で、社会への適合力に欠けるのがクールな忍のほうっていうのがキャラ分けですね。そこにクールで社会性があって既婚者の大枝直巳と、もう1人の友人(普通の友達の典型)の4人が主なキャストです。

この作品が大人百合マンガと言われる由縁は、登場人物が大人だからにほかありません。それでも過去に社会人を主人公にした百合マンガや同性愛マンガも多くありました。しかしイチャイチャ・ベタベタな百合バカップルと社会とのつながりのバランスが難しいジャンルなんです。そもそも百合っていうのが前記の通りアニメや萌え絵のような子ども向けをイメージしたジャンルだから。西UKOさんたちが描きたいのは百合っ子萌えではなく、ファッショナブルで胸のデッカいリア充な社会人女性のようです。それまでの百合マンガ=幼い女の子同士という鉄板CPを完全否定した大人百合マンガに、すがすがしさすら感じてしまいます。最近の百合ブームの作品は過剰に男性読者の嗜好を受け入れた感じですが、西UKOさんの作品は恋愛思考の女性のほうがより共感できると想います。
主人公の貴子は大学時代から実家の製造業を継いで社長になったりで、社会とのつながりが妙にリアルに描かれています。ちゃんとお仕事しながら恋愛にとち狂うさまは20代の恋愛の正しい姿です。これは百合に限らず大人向け恋愛マンガだったら最低限クリアしなきゃ“大人が主人公の少女マンガ”にしかなりません。そこらへんが大人向け作品のキーワードでしょう。
百合作品は女の子同士に特化するあまりに「まるで地球上の男性はすべて消えてしまった」ような作品も多いです。そーいうのはもうファンタジーなので、百合と同性愛者との隔たりがより広がっちゃう感じです。ただでさえ百合作品は基本設定に無理があることが多いのですが、そこでファンタジーを使っちゃうとストーリーの骨格が都合いいだけの作品になっちゃいます。都合いい話は作るのが楽なので、実績のある百合マンガ家さんでもワンパターンなご都合展開を描いてる方が結構います。そしてファンの方々も「こーいうベタな展開が百合の定番だよな」っていうのでしょうが、それは描くのも読むのも単に楽なだけっていう気がします。

 そもそも4コママンガなのに8頭身オーバーというのも異色な作品です。背景もモブも描き込んでるので、セリフの文字のポイントが小さくなっていたりします。少年マンガだと劇画調4コマって感じですが、少女マンガでいえばお姉さんマンガっぽい画風の4コママンガです。回想エピソードは普通のマンガ形式になるので、無理してまで4コママンガという形式にしなくてもいいんじゃないかな?って思います。
表題のテーマが本や服を買い過ぎちゃう人たちのマンガなので、その手の定番エピソードが多めになっています。でも百合マンガの定番エピソードな同性愛を周囲に隠してるとかバレたとか、男性嫌悪などはあんまりありません。花見の席で忍の相手が女っていうことに驚くゼミの下っ端と、クライマックスで貴子の交際相手が忍だってことが家族バレするくらいです。マイノリティーな恋愛をしてることに対するありがちな特別扱いがまったく感じられません。

 かなりの百合マンガの登場人物が相手の女性を好きになる理由は『ワタシは同性愛者だから女のひとしか愛せない』とか『同性愛者だから本気で貴女のことが好き』っていうロジックが多いです。この表現がそもそも百合作品を幼く見せてしまう原因ですね。同性愛者だから貴女が好きっていうのは「中学男子だからおっぱいが好き」っていうのと同じことでしょう。恋愛の障壁として同性という壁がひとつ加わるのはわかるけど、壁がメインじゃなく相手をどう想うのかを主題にするべきです。
過去にはマイノリティーへの差別や偏見にあらがうことをテーマにした同性愛モノの作品の名作も多くありました。でも百合作品がいちいちマイノリティーを振りかざす必然はありません。恋愛作品である百合作品が、いちいち社会問題を提起することにも違和感がありました。
百合そのものは恋愛作品の設定のひとつに過ぎないんだけど、その設定だけを描きたいだけの百合マンガが多いような気がしますね。異性でも同性でも同じ原理で恋愛してるんだから、同性愛者だからネガティブていうのはどうなんでしょう?大人なんだから相手が同性でも既婚者でも受け入れらる寛容さこそが大人向けな恋愛作品でしょう。

 当然ながらこの作品では主人公の貴子と忍の友人や大学のゼミ仲間、教授や貴子の家族などが、貴子と忍が恋人同士ということに関しては特別視していません。ココがこの作品の素敵なところでしょう。同性愛ということを公然に宣言する訳でもなく、恋人ということを隠すわけでもないんです。まわりの人たちは「あの二人はつき合ってるから」っていう認識しかありません。違和感といえば「あんなに性格も好みも違うのによく恋人でいられるな」っていう違和感だけです。それこそ同性愛作品の定番である女性が女性への告白、周囲や肉親へのカミングアウト、結婚、子供などイベントはちゃんと出てきます。でもそんなのは軽やかに乗り越えていくんですよね。そーいう世の中こそがリアルなマイノリティーの方々にとってはファンタジーなのかもしれません。でもこのファンタジーはついていいウソなんだと思います。正しくない恋愛って世間に言われる主人公のマンガよりもよっぽど幸せなマンガになると思います。「Collectors」はそんな幸せな恋人たちのお話なんです。


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