topimage

2016-12

新しいお仕事マンガ - 2016.12.16 Fri

Rootport さん原作、三ツ矢彰さん作画、「 女騎士、経理になる。」です。

 元来よりファンタジーが苦手ゆえに、勇者や騎士にはとんと縁がありませんでした。 物語のプライオリティの上位に伝説とか宿命とかは上がってきません。 指輪を捨てに行くハナシとか魔法学校の生徒が棒を振ってるハナシとか、どーにも飲み込めないんですよね。 勇者だろうが姫サマであろうが恋愛要素があると何とか消化できるんですが、多くのファンタジー作品の恋愛はお子ちゃま向けだからねぇ。 そもそも魔王に勝って暗黒に支配された世界を復活させるコトがメインのお話です。 みんなそんなに世界を救いたがってるのかなぁ?
荒川 弘さんの「銀の匙」が2015年に13巻が出てからピタッと止まっています。 かなり前に連載休止の情報があったので「そんなモンかなぁ」って思っていましたら、先日本屋さんに「アルスラーン戦記」の新刊が平積みされていました。 何で牛をほっぽいて“戦記”を描いてんだよ!って感じですね。 そもそも錬金術師のマンガ家さんだから牛よりも戦記のほうが本業なのかもしれません。 でも第一次産業を家業にしてるんだから牛メインでお願いしますよ。 
田中芳樹さんはアニメ版の「銀河英雄伝説」がテレビ放映された時に頑張って観ていました。 そもそも何のために戦ってるのかが理解できず、大銀河を少数先鋭のキャラたちだけが支配している世界観の狭さに匙を投げちゃいました。ファンタジーの中に人間関係のストーリーがあればまだいいのですが、設定がストーリーっていう感じのファンタジーは設定資料を作る事が楽しくなっちゃってるようですね。
「 女騎士、経理になる。」の作画の三ツ矢彰さんというマンガ家についてはこの作品で初めて知った方です。 経歴を調べてみたんですが過去に出版社のブログで担当編集者がアシスタント募集の中で男性ですということと勤務地が文京区ということくらいでした。 原作の Rootport さんは個人なのか集団なのかもよくわかりません。 原作が元々ツイッターかブログのSSらしいのですがよくわかりません。本名かペンネームかは別にしても名前に人名を使わない人って何だかうさん臭い感じかしますよね。自分の想像上の Rootport さんは冲方丁さんのようなうさん臭さです。 あくまでもイメージなんですけどね。 電気屋的にRootport という単語はLANケーブルを連想しちゃいます。
   
  ブログ画像 女騎士経理になる。 JPEG

 今回、取り上げる「 女騎士、経理になる。」の設定は『新大陸を発見した人間国の人々植民を開始し飢餓と貧困は過去のものになると思われた。入植地の西方、山脈の向こうには魔族達が暮らし独自の文化・社会を発展させていた。人間達は魔族の居住地域を魔国と名付け討伐軍を派兵した。こうして人間国と魔国との100年を越える戦争が始まった・・・』っていう感じです。 コテコテな RPG ファンタジー設定で、主人公の女騎士は魔剣デュランダルを操り“アークドラゴンの討伐”というクエストの途中でオーク一族に捕らえられてしまうところから始まります。 ちなみに魔剣とは三省堂 国語辞典によると「ぬけば必ず人を殺すおそろしい剣」と出ています。ちゃんとした日本語になってることにビックリですね。
自分は人間国が魔国に負けたらどーなるかなんて、知ったこっちゃないのでほん本来なら華麗にスルーするような作品です。タイトルの「女騎士○○になる」も「俺の○○が○○なわけない」っぽい頭の悪い感じで普段なら絶対に手を出さないタイプの作品です。 こーいうファンタジーのパロディを狙った感じのタイトルは本気のファンタジー以上に何だかモヤモヤします。 でもこのマンガを買っちゃった理由は本屋で見かけたときに「経理になる」というフレーズが引っかかったからです。 たとえ知らない作者のマンガでも本屋で気になったら取りあえず買う主義です。逆にネット等の評判はあんまり参考にしていません。 買ったマンガの当たり外れは自己責任だし、その目利きこそがマンガファンの醍醐味だったりしますからね。

「 女騎士、経理になる。」はタイトルから想像できる通り女騎士だった主人公が簿記を勉強して経理のお姉さんになっていくお話です。 この作品は広い意味ではドラクエ風 RPG ゲームのパロディなんですけど、経理というファンタジーとは正反対の現実社会のリアルがモチーフです。「くっ・・・殺せぇええ」の口癖もお約束みたいなんですけどね。タイトルの経理になるというのが比喩ではなく、本気で簿記2級を取って経理として人間国で活躍するストーリーです。
これはずーっと書いてきたコトなんですが、そもそもマンガで社会問題を提言するとか読者に知識を与えるとかを目的にするのはマンガ家の驕りだったりします。 社会問題は然るべき方法でちゃんと提言すればよいのであって、知識もそれ相応の書籍がいくらでもあります。 ストーリーの中に専門知識が入ってるのはいいのですが、専門知識を語るためのストーリーでは本末転倒になっちゃいます。 
たとえば二ノ宮知子さんの宝石やオーバークロックを題材にした作品は、PCや宝石について詳しくなりたい人が読むワケじゃありません。 マンガは安易に理解しやすいという特性があるのですが、参考書には成り得ないんですよね。PCや宝石についてのウンチクは身に付きますが、それ以上のことを学ぶのであれば専門書を読むべきでしょう。 グルメマンガも情報が行き過ぎちゃったジャンルで、グルメのウンチクはスゴいけどマンガとしてのポテンシャルが低い作品が多いです。 店情報ありき料理レシピありきの作品だったら、ぐるなびやクックパットを見たほうが早いですよね。

 この作品は設定もストーリー進行もすべて RPG のセオリーに乗っ取っています。 その中で主人公が経理になるというのは、モンスターを現代社会のスキルで倒すといったタイムループモノにありがちなアレではありません。 魔国でも人間国でも商取引や銀行が存在するという当たり前?な発想から「商売をするには台帳をつけなきゃいけない」から主人公が経理を勉強させられるお話です。 世界観はファンタジーですが内容はビジネスマンガですね。 本編で出てくる経理エピソードはオーク族が生産している棍棒の原価計算、肉屋の複式簿記、ミノタウルスの肉の 原価計算、損益計算書、貸借対照表、為替手形、小切手・・・作中ではファンタジーなストーリーですが経理の知識は現実の経理の基礎を踏まえています。 作者のインタビューにて『簿記を身近に感じてもらうため、簿記・会計の高度な知識がなくてもわかる内容にするよう心がけています』と答えていました。簿記の解説書ではなくて簿記をもっと勉強したいと思うきっかけになれば・・・というコンセプトの作品だそうです。
実際に簿記の資格を取る目的のある方やすでに経理事務のお姉さんな方が、このマンガを読んで参考になるとは思えません。 マンガの本編でも図解入りでシロウトにも判りやすく説明されていますが、経理を本業として志すのであれば大原に行くなり専門書を読むなりしたほうがよいです。「本気になったら大原」ですよね。 経理課の人たちやましてや会社経営者の方々にとっては当たり前の知識を仰々しく語ってるだけですから。 サッカーマンガでオフサイドの図解があるようなモンです。 実は 
このマンガは簿記の資格なんか目指していない人にこそ読んで欲しいマンガなんです。 中高生が読んでもピンとこないどころかファンタジーの冒とくするようなパロディ展開なので馴染めないかもそれません。それこそ「アルスラーン戦記」のほうが読んでいて楽しいんじゃないかな? では誰が読むべきマンガなのかといえば、それは全ての新入社員と就職が内定した学生たちです。

 社会人一年生のころは配属された部署で言われた仕事をこなすことに精一杯です。そこで経理課に入ったら台帳のイロハを叩き込まれるんでしょうけど、特に男子は実践の場に出ていくことになると思います。そうなると実務は覚えられても経理の基礎は身に付きません。社員育成のしっかりした会社は研修期間に習うのかもしれませんが、専門学校に通うくらいの知識を1時間そこそこで先輩社員に教わったところでぼーっとしてるのが関の山です。 ウチの会社の研修がそうですから。
製造でも販売、サービス、物流、どんな業種だろうと経理の知識は絶対に必要な知識です。 全ての仕事はお金を払ったり受け取ったりする行為に置き換えられるからです。 営業のいない会社や物流のない会社はありますが経理のいらない会社はありません。 仕事の根本的な部分の利益を上げるというのは経理によって具現化されます。 だから、たとえ自分の仕事が組み立てだったとしても、お金の流れは理解しておいたほうが知らないよりもマシな社会人になれます。 しかし、経理が本業でなかったらそこまで教えてもらうチャンスはありません。 自分で勉強するのもかったるいですよね。 そんな人にこそ、このマンガがピッタリなんだと思います。知識はホンモノですが物語の流れに上手に組み込んでいますので参考書を読むような虚しさはありません。 マンガとしての出来もそうとうレベルが高いです。 物語の中心に経済からの視点でファンタジードラマを作るというものみたいなので、ストーリーの中に「宿命やチカラ」などのファジーな逃げがありません。 したがってファンタジー嫌いな方々(自分)にも現代サラリーマンものというつもりでも楽しめます。 同じ内容を弘兼憲史さんが描いたなら、信憑性が増してもっとサラリーマンに読まれていたかもしれません。

 マンガを人に奨めたり奨められたりするのは本意ではないのですが、「 女騎士、経理になる。」は新社会人の必読にしてもイイと思います。 もちろんベテランサラリーマンも今さら手形のコトとか聞けないなら、こっそり読んでおくのもアリでしょう。しかしファンタジーマンガを利用して経理マンがを描いてる感が強いので、本気のファンタジーマンガのファンにとってはあんまり評価が高くないのかもしれません。 電子書籍のサイトでマンガのレビューを書いて小銭が稼げる趣旨に投稿してる人の文章を転用します。

『絵的な意味でオークに見えない、描いた人は何を参考にしてこんなオークを描いたのか?これでは「くッ殺」っとみせかけての経理の誘いという、ギャグが滑ってる。 
ファンタジー経理モノとかシュールで面白いネタが絵描きの力不足で台無しです、実際女騎士のデザインも地味すぎて記憶に残らないくらいです、ダークエルフと並ぶとモブキャラにしか見えない。
絵は下手な方では無いようですがデザインとかキャラ演出が致命的に駄目、もっとファンタジー物に造形のある描き手さんに依頼し直してダークエルフの視点で話をリスタートするとかないですかね?
ホントは☆1にしたいですが、話は面白いしダークエルフは可愛いので☆2にしました。
サンプルとか無料Web版を見ても 「この絵がイイんだよ」 「経理漫画って興味あるから読みたい」
って人にしかお薦めしませんが。』

オークというものに定義があるっていうことすら知りませんでした。 この方のレビューはだいたい的を射てると思います。 自分も三ツ矢彰さんのキャラデザインはあんまり得意な絵柄ではありません。 ファンタジーマンガに詳しい人の感想はこうなんでしょう。 面白いのは「経理マンガって興味あるから読みたいって人にしかお勧めしませんが」っていう最後の捨てゼリフが自分とも原作の Pootport さんとも意見が一致してるところです。 
この方のようなファンタジー好きは「アルスラーン戦記」を読んで、サラリーマンは「 女騎士、経理になる。」を読んで、ピザが好きな人は「銀の匙」の連載再開を望みましょう。


「ほぉ」って思ったら押してね

NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

管理人のらいかです

マンガを描くという事を目標にして
マンガの描き方を考えるブログです
(ネタバレの可能性があります)

は記事の内容に「ほぉ」と
思えたら押して下さると嬉しいです

最新記事

訪問していただいた人数

月別アーカイブ