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2016-11

終わらない人 - 2016.11.15 Tue

NHKスペシャル 「終わらない人 宮崎駿」です。

『3年前、もう長編映画は作らないと突然引退宣言をし表舞台から身を引きました。もう終わった、誰もがそう思っていました。でも実は、終わっていなかったのです・・・』

「となりのトトロ」のメイちゃん役だった坂本千夏さんのやさしい声の語りで始まったこの番組は、NHKお得意のジブリ密着シリーズの最新版です。宮崎アニメの公開前には必ずやっていた制作現場のドキュメンタリーで、公開された本編よりもはるかに面白いし興味深いものでした。 今回はジブリ美術館で公開する12分の短編アニメーションの制作現場のドキュメンタリーです。
この番組は放送される前からネットでは話題になっていたそうです。 IT企業のドワンゴの会長が国営放送(NHK?)でやらかした的な発言をしていて、そのやらかしたのがこの番組でした。どれくらいやらかしたかといえば、オトナがあんなに叱られてる映像は珍しいってほどでした。 
問題のシーンはドワンゴが開発した人工知能で動きを学習しアニメーションを作るソフトのデモを、スタジオジブリ内で宮崎 駿さんにプレゼンするところです。 誰が観てもナンじゃこりゃ?っていうデモ映像を観せられた宮崎 駿さんがブチ切れたってことです。 色々と説教していましたが宮崎 駿さんの「どこへたどり着きたいのですか?」というコトバが言い得ていたと思います。
プログラムで自動的に絵を描くというのは絵が描けない人にとっての悲願です。 しかしその発想は絵が描ける人に必ずしも受け入れられるものではありません。 絵を描くということは絵に意味を見出すことなので、その意味を理解しない人がただ計算式で絵を作ってもダメなんでしょう。
このシーン自体はほんの数分にすぎないので本編とはほとんど関係ありません。 今回のテーマが「ジブリのアニメ制作スタッフをすべて失った宮崎 駿さんの現在」なので、過去の放送のような若手(よその制作会社では十分に中堅クラス)を怒鳴り散らしたりのシーンがありません。 このシリーズの見所は「怒れる老人」なんですが、そこにドワンゴの会長がぴったりハマっちゃった感じです。 彼らが呼ばれたのは鈴木敏夫とNHKの番組デレクターの陰謀以外に考えられず、ドワンゴサイドも紅白出場くらいのギャラは出ているんだと勘ぐっています。
ネットでは老人と若輩者が争って場合は老人側が「老害」とか言われるモンですが、さすがにこのケースではドワンゴの会長をかばうコメントも少なかった感じですね。 

 番組の本編はリタイアして失業中の宮崎 駿さんが、20年間暖めてきた短編アニメの企画をスタートさせるお話です。 偉大なるアニメーターの密着という側面と、リタイアしたキャリア後の人生と向き合う高齢者問題という側面があります。 この番組のメインテーマは「残された時間をどう生きるか」です。若いCGアニメのスタッフと出会って「毛虫のボロ」という虫が主人公のアニメ制作に、それまで近づこうとしなかったフルCGアニメに取りかかります。
前回の記事で新海 誠さんのオール自主制作アニメが5分弱だったように、アニメーションをひとりで作るのは大変なことです。 盟友のパクさんだったら12分くらいのセルアニメはひとりで作っちゃいそうですけどね。でも完成に10年はかかるのでその頃は90歳をこえちゃう・・・ 作画スタッフを全員解雇しちゃったんだから新たに絵を描く人材を集めなきゃいけないので、CGスタッフに作画を任せるというのは“なるほど”って思いました。 
一見だと「CGも結構やるな」って面白がっていた宮崎 駿さんも、制作が進むに連れてCGは「魔法の小箱じゃないだね」って感じになっていきます。 CGの毛虫がイメージの毛虫とずれてるようなんですね。 コレはアニメがCG化される過渡期の現在に直面してる問題です。 絵のイメージがCGで具現化されないのに、CGの作画のほうが正しいという世の中の流れになることは危険だと思います。 宮崎 駿さんの言う「全部、この何十年かの積み重ねがパーになる瞬間ですよ」が未来を暗示してる感じです。 ディズニーは自分らが発明したセルアニメのノウハウを、一切捨ててしまいました。 しかしフルCGアニメに移行するにあたり、妥協を許さないスタッフの労力と膨大な演算をする道を選びました。 ピクサーのDVDのおまけ映像とかスゴいですよね。 それは「マウスでここを引っ張れば形が変わる」とか「ほら便利でしょ?」じゃダメなんです。 
原画マンにどうやってイメージ通りの作画を描かせるかを悩んできた宮崎 駿さんには、CG制作スタッフにイメージを伝えるかに悩んでいます。 原画マンは絵描きなんだけど、CGスタッフはオペレーターなので絵のハナシが伝わりにくいようです。 絵描きがCGを操作すればいいんだろうけど、両者は学んできた道筋が違いすぎます。NHKのアニメ「山賊の娘ローニャ」のメイキングで監督の吾朗クンがCGスタッフのいいなりになるまいって頑張っていたのを思い出します。 このときは吾朗クンも絵描きではないので、よりおかしな動画になっちゃっていました。

 最後に鈴木敏夫さんに新作長編アニメの企画書をこっそり見せて、お金(制作費)を無心するシーンがありました。でもやるからには制作中に亡くなることも考えておかなければいけないとのこと。 「宮さんが死んだら映画は大ヒットする」というジジイトークでしたが、もし長編アニメで復活したら最大の老害として讃えられることでしょう。 みんななんだかんだで観てみたいと思ってるんじゃないかな?

 この番組にて知ったことなんですが、オンエアの中でに宮崎 駿さんが保田道世さんの訃報を知るシーンがありました。 報道では10月11日ということだったようですが、自分は保田さんがお亡くなりになったことを知りませんでした。 一連の宮崎 駿さんに密着ドキュメンタリーでも必ず保田さんが映り込んでいましたね。 今回のドキュメンタリーの裏テーマである「時間がない」っていうことが身にしみます。 
詳しくは知りませんが保田道世さんはジブリで彩色設計責任者というスゴい肩書きの持ち主でした。 彩色設計とは旧来からある色指定という仕事に対して、彩色に関しての全権を持たされた人なんでしょうね。ジブリ作品の色味を決定していたのが歴代監督ではなくて保田さんだったとのことです。 アニメーションは現実の映像ではないので画面の印象をすべて作り手がコントロールできます。 ジブリアニメの画面の美しさは保田さんの手で決められていたんでしょう。
折しも先日録画した「紅の豚」を追悼のつもりで観ながらこの日記を書いています。


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