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2015-03

1行の文章力 - 2015.03.10 Tue

川崎中1殺害事件で考える文章力について

『 吹く風に わが身をなさば 玉すだれ ひま求めつつ 入るべきものを 』 在原業平

『 とりとめぬ 風にはありとも 玉すだれ たがゆるさばか ひま求むべき 』 藤原高子

 上文は業平のメールに高子が返信したものです。 意味は古文の先生にでも聞いて下さい。 雅(みやび)の時代では140文字どころか31文字しか使えませんでした。 その中で恋も風景も世情も人生もすべて表現しています。 この時代は和歌が知的センスのバロメーターで、身分・容姿・和歌の三つがそろわないとモテななかったようです。 和歌は知性を手っ取り早く見極める合理的な方法だったんだと思われますね。
では、現代の31文字はどうでしょう? 川崎中1殺害事件の被害者少年の書き込みを題材に、最近のLINE(ライン)を使う人たちの知性(文章力)について考えてみましょう。

 川崎中1殺害事件についての詳細を知らない人はあまりいないと思いますので割愛します。 正直、自分は通り魔殺人事件や中東のジャーナリスト殺害事件などの凶悪な重大事件ではあまり憤らないんですよね。 「 犯人が許せない 」とか「 被害者に詫びろ 」とかの義憤に駆られることが少ないような気がします。 べつに犯人側を擁護する気もないのですが、知らない川崎の中学生が死んだことで泣きながら悔やむほどの感情移入をするのもヘンですよね。 死んで泣くのは親族や関係のある知人まででしょう。 たまたまニュースで知った被害者にそこまでの感情は沸かないモンですよね。 しかし、ネットやマスコミでは中1少年の弔い合戦のように加害少年への過激な叱責が続いています。
マックの異物混入事件などでは謝罪のしかたが悪いとか不買を訴えるなど、ネットで吹き上がる声も聞かれました。 自分が購入したハンバーガーから何か出てきた人なら「 責任者を出せ 」ってことですが、「 オレはマックなんかで食べたことがない 」って公言してる人もいっしょに怒ってるのはあれっ?って感じです。 ネットの声を集約すると彼らは責任の所在と謝罪、加害者への厳罰(極刑)を訴えています。 何かの事件での書き込みで「 容疑者は実行犯だけど情状の余地があるいから懲役17年でいいんじゃないか?」っていう意見は見たことがありません。 ネットで裁判員制度をやると判決が全て死刑になりそうですね。
こーいうことを書くと犯人擁護とかマック擁護とか言われて怒られそうです。 加害者少年の人権や少年法を云々いうつもりはありません。 単純に被害少年への思い入れがないように加害少年への憎しみもないだけです。 事件そのものもキャラが立っていて特殊な事例のようですが、被害者を女子中学生にして殺害を売春強要に変えると、毎年発生している少年犯罪と変わらなく思えてきます。

 加害少年の異常なまでの殺害の残虐さなどの暴力性や加虐性、証言により異なる印象だった多面性などが注目されてますが、この事件で特殊なのは被害少年のほうだと思います。 今回の事件で被害少年は親の離婚や転校という“少年が非行に走る典型的なストーリー”を踏襲してました。 さわやかバスケ少年と地元の不良とつるんでゲーセンでたむろしてるイメージの両方が周囲の被害少年への印象です。 被害少年にはバスケ部の女子とか加害少年以外の不良とか妙に交友関係が広く、土手にたむけられた花束の量が違和感を感じるくらい人気者だったのかもしれません。 殴られて顔を腫らした時の別の不良に相談したり、加害少年の交友関係は「 田舎から出てきた孤独な少年 」という感じではなかったようです。 ネットやマスコミから伝わってくる被害少年の印象は社交性があり人なつっこいタイプって感じかな? 万引きを強要されて断ったから殴られたとか、彼は進んで悪に染まるつもりでもなかったようです。 そんな被害少年はなんで加害少年に取り付かれていったのでしょうか?
自分も中学のころは川崎市に負けず劣らずのバイオレンスな街に住んでいました。 小学生まではクラス全員が“おバカな仲間たち”って感じで平等に遊んでいました。 しかし中学に上がると、優等生(良いコ)と不良(悪いコ)にざっくり分かれていきます。 どんな不良少年も初めからヤンキーなワケじゃなくて、だんだんあっち系のファッションや生き方に染まっていくモンです。 小学生までは一緒に駆けずり廻っていたのに、中学入学で「 何だよてめぇ・・・」って変わっちゃってもなぁ・・・
全ての不良たちが立派な極道を目指してグレてるワケじゃありません。 他人に迷惑をかけて生きていこうと心に誓う中学生っていうのもヘンですよね。 自分が所属する群れの色に染まっていくよう努力した結果が優等生だったり不良だったりなんでしょう。

 今回の事件で注目されたのは加害少年と被害少年、同級生の全てがLINEで交流していたということです。 LINEは閉鎖された子供たちの内々のつながりなので、大人が把握出来ていなかった事を問題視していました。 でもLINEでなくても子供のコミュニティーを大人がわかるハズがないんだから、大人が把握しようっていうのは無理な話です。

マスコミ等で報道されている被害少年と友人とのLINEでのやり取り。 (毎日新聞より)

※ 1月初旬 被害少年の目の周りのアザ(公開されてる顔の画像)を見た友人から
友人 『 どうしたの? 』
少年 『 ただぶつけただけだよ 』

※ 1月中旬
少年 『 つるんでいる年上グループから万引きをしろと言われ、断ったら殴られた 』
   『 やらないと殺されるかもしれない 』
   『 グループを抜けたい 』
友人 『 早く抜けて、バスケ一緒にやろう 』
少年 『 オレもそうしたい 』

※ 1月下旬
友人 『 学校来いよ 』
少年 『 行けたら行くよ』

※ 事件当日 逮捕された17歳の加害少年の一人に
少年 『 合流しませんか 』

 この文章を読んで同世代の若者たちには違和感がないんだと思います。 ましてや「 被害少年の心情がくみ取れる 」って思う人も多いでしょう。 しかし大人というか前世代の人にとっては違和感があるんじゃないのかな? このやり取りは被害少年のLINEの通信記録を抜粋したのではなくて、おそらくは全文なんだと思われます。 最初の殴られた少年を見かけた友人とのやり取りも2行だけなんでしょう。 殴られた説明も3行です。 その中に“ 万引き、殺される、抜けたい ”っていうバイオレンスな用語が並んでいます。 それに対する友人の返信が『 一緒にバスケやろう 』です。 これは当事者の書いた文章なのですが、この事件が重大事件なのかどーでもいい子供のいざこざなのか判りかねぬ感じです。 例えばケータイに知り合いから『 オレはもーダメだぁ(ToT) 』ってメールが来たとします。 そのメールを見て警察に相談に駆けつけるような人はいないでしょう。 被害少年のLINEの文章から少年の心情がくみ取るほどの国語力があれば、冒頭の藤原高子の歌も理解出来ることでしょう。
LINEがこんなに広まった原因は「 無料通信アプリ LINE 」という言葉のせいなのかな? 無料という言葉が中高生にとっては非常にキャッチーだったんだと思います。 しかしスマホの莫大な基本料金は親が払ってるという根本的な市場原理をが解っていない感じがします。 個人的には見積もり書や注文書の送付に使えない通信アプリなんか役に立たないんですけどね。
LINEやツイッターが従来の通話やメールと違うのは、相手に送れる文章の量です。 通信システムの技術的なことではなくて、1回のアクセスでどれだけの情報量を相手側へ送れるのか?という意味の文章量です。 昔話ですが、家電(固定電話)の時代は女の子の家へ電話を掛けると30分~1時間はざらでした。 ケータイが普及し始めると逆に長電話はへったような気がします。 メールの普及で伝言はより簡潔になり、「 おはよう 」とか「 遅れる、ゴメン 」などの会話的な文章ばっかりになっちゃいました。 LINEだといよいよスタンプだけでも意思が伝わるので、すでに文章ですらありません。 同じ現象がポケベル時代にもありましたけどね。

 「 長文、失礼します 」という言葉を見かけた方は多いと思います。 他人のサイトへ長い文章を書き込むときに添えられる一文です。 自分は長文よりもむしろ短く勢いのある文章には怖さを感じるので長文ですが、一般の傾向では“短文は良し”“長文は悪し”って傾向のようです。 勢いがある短文とは「 安倍が日本の格差を生んでいる 」とか「 犯人は底辺だからだ 」など、何かを自信ありげに断言している文章です。 自分が考えて書いた文章ではなく、誰かが考えた書いた文章に乗っかって書いてるだけって感じがしますよね。 自分で考えて書いていない人の文章は内容の善悪や正誤にかかわらずに怖いです。 デマの恐ろしさもこの原理と同じですね。
長文とまで言わなくても電話の会話だってもう少し情報量が多いでしょう。 今どこにいるのかも、何を食べてるのかも、何を見てるかも、明日の都合も、遅刻の言い訳も・・・みんな1行で済んじゃいます。 以前、集団の中で“空気が読めない”という言葉が流行りました。(今もかな?) 子供たちがLINEで苦しんでるのはLINE自体がチャットであるから、特定多数(もしくは不特定)が読めるということです。 やっぱりここには集団が存在しますから“空気を読む”ことが求められますよね。 既読からの返信のスピードと的確なリアクションの文章が、LINEでは送信者の人格の全てを表しちゃいます。 まるで電信の中の存在しない空気を探り合うような不思議な努力に思えます。
被害少年のLINEのやり取りを見てみると1月初旬の『 どうしたの?』は顔面を腫らしたニュース映像のアレです。 友人がアノ顔を見て「 どうしたの?」の一言です。 被害少年が「 ぶつけた 」って返信してますが、友人は「 なるほどぶつけたのかぁ 」って思ったのでしょうか? 中学生でもそこまで幼くはないでしょう。 友人が直接電話を掛けて「 何言ってんだよ、誰にやられた?医者に行ったか?」ぐらいは聞いてあげるのが本当の友人って気がしますよね。 しかし、ソコまでの深入りするのは被害少年のプライベートの問題なのか? 大騒ぎすること自体が空気の読めない行為なのか? LINEのやり取りはそれっきりのようです。(それ以上のやり取りが存在するのなら報道されてるはず)
同じことが1月中旬のやり取りでも感じられます。 万引き、殺される、グループから抜けたい・・・これが被害少年のいつもの愚痴なのか、心の叫びなのかうかがい知れません。 それは友人の返信の内容や返信の返信の内容があまりにも軽いからです。 中村雅俊さんの青春ドラマだったら浜辺か河川敷(いづれも水辺)に呼び出して、殴り合ったり抱きしめ合ったりしてガシッってなるようなシーンのハズです。

 被害少年も友人も相談しているつもりだったんでしょうけど、まったく会話になっていません。 半殺しの目に遭ってる状況を何で3行にまとめなきゃいけないのかな? 友人も相談に乗ってる友人っていうポジションを満足してるだけなのか? 被害少年はこの手のいじめ傷害事件んにしては珍しく交友関係の広いタイプだったようです。 しかし交友関係の広さは1行分の内容しか交わせないほどの軽さゆえに成り立っている広さなのかもしれません。 不思議なのは被害少年が殴られていた事実を周囲の人たちは知っていたことですよね。 事件直後から地元では加害少年のグループの犯行だって解ってたようです。 被害少年も加害少年も子分たちも友人も同級生もバスケ部の女の子も全ての子供たちの親も、物事を1行で考えてしまうクセが出来ちゃってるような気がします。
自分が中学生の頃はメールというアイテムがなかったから、今の中高生のように文章を書いていませんでした。 文章とは「 放課後、どこに行く?」とか「 テスト勉強してる?」とかの1行文のことです。 そーいうことは会話で済ましてましたから、字を書く必要がまったく無かったんですよね。 とくに男子は文章に縁が無かった気がします。 現役でLINEやツイッターをしてる子供たちには実感がないでしょうけど、普通の人が毎日こんなに作文をしている時代は今までなかったことでしょう。 モヤモヤした気持ちや、まとまらない考えも文章化すると自分自身ではっきりしてくるモンです。 それは思考は文章に支配されるから。 それならば豊かな文章力は豊かな思考につながると言えそうです。 毎日作文に余念がない現代っ子たちは文章力が身についてるのでしょうか?

 残念ながらLINEの1行の文章では文章力は身につくどころか思考力も身につきません。 先程の文章力と思考力の関係で考えると、1行で定型文ばっかり作文しちゃってると思考も定型文になっちゃうからです。 映画を観て感動したあとでLINEに『 泣けた 』って一言で書いちゃうと、いろんな感想があったはずなのに「 泣いた 」という表現でひとまとめにしちゃいます。 人はさまざまな感情を持ちながら暮らしているのに文字を書くことによって思考に“Enter キー”を押しちゃうようなところがあります。 短い文を書く習慣のせいで思考も短くすます傾向になっちゃっているようです。
今回の事件のキャラたちが発していた言葉はすべてマンガのセリフのような空虚さを感じました。 主人公だろう被害少年も年上のグループに入れてもらえて得意になっていた風でしょう。 母子家庭の被害少年と奢ってくれる加害少年というキャラ設定だけでもじけんの全容が解っちゃう感じです。 川崎に来てからずーとマンガのシナリオのように演じてきたのでしょう。 加害少年はボスキャラ、友人は脇役、バスケ部のコはヒロイン・・・ 自分で完結しちゃってるストーリーのシナリオだから、ちゃんとした大人(先生など)をストーリーに加える発想はなかったようです。 キャストはLINEに登録してあるメンバーだけだから。
例えば家出して転校前に住んでいた島の小学校の先生の家へ逃げ込むとか。 解決しないかも知れないが問題提起にはなるかも。 実母が状況をまったく把握してのも、彼の中のストーリーではそーいう母親という設定だからでしょう。

 文章力の有る無しは文章力の無い人には気にならないようです。

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