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2015-02

ラブストーリーとは? - 2015.02.18 Wed

花田祐実さんの「 不埒な求婚者 」です。

 NHK Eテレにて「岩井俊二のMOVIEラボ」という番組が放送されていました。 映画監督の岩井修二さんがホストになり、SF、特撮、ラブストーリー、ホラー、ドラマ、と週替わりのテーマで各ジャンルの映画スタイルを考察するという番組です。 初回の出演者が岩井さんと樋口尚文さん、岸野雄一さん、そして庵野秀明さん、樋口真嗣さんと「 いかにも怪獣映画 」なキャストでした。 宇宙人や怪獣の映画の考察だったら適任なんだろうが3回目に予定されてるラブストーリーに庵野さんが“何の役にたちのか?”っていう心配がありました。 しかし自作の「 花とアリス 」のアニメ版を宣伝するための番組とあって、さすがに抜かりはありません。 コメンテーターが庵野・樋口のガイナックス組からガラッと変わって、蒼井優さん、鈴木杏さん(岩井さん監督作「花とアリス」の主役のふたり)と行定勲さん(岩井さん監督作「スワロウテイル」での助監督)というチーム岩井にチェンジしていました。
SFや特撮は単純にマニアックなウンチクを披露するいつものオタク談議でした。 この番組の趣旨は映画に関心がない人へ向けた映画啓蒙ではなくて、映画や映像に携わっていきたい若者たちへの講義という形式です。 その番組企画の意図を考えるとオタク談議でいいのかな?っていう気もしましたが、個人的には次世代の日本人SF監督なんか求めていないからぼーっと観ていました。 映画を語る人たちの多くは“知識=過去に観た作品の思い出”なんだけど、作品の歴史を語ることと創作の未来を考えることは別物だと思うんですけどね。

 ガイナックス系の人たちとは意見が合わないのは百も承知だったのですが、メンツが一新した「 ラブストーリー編 」にはちょっと期待しちゃいました。 まあ・・・冒頭のところから、げんなりしちゃうんですけどね。 
岩井さんが初めて認知したラブストーリーものは、ロボットアニメの「機動戦士ガンダム」だったそうです。 なんでもアムロとララァが出会うシーンが僅かしかないのに戦闘中にわかり合えるという大恋愛ドラマという解釈らしいです。(ニュアンスはちょっと違ったかも?) あの頃、ガンダムファンたちはニュータイプ論を語りながら盛り上がっていたのに、岩井さんはなーんも理解してなかったんだって思いました。 
岩井さんの応援部隊として呼ばれたゲストの鈴木杏さんにとってのラブストーリーは殺し屋映画の「レオン」。蒼井優さんにとってはスタローンの出世作「ロッキー」でした。 まあ、この作品も「エイドリア~ン」だから恋愛ものだと言えなくもないんですけど「ガンダム」や「レオン」や「 ロッキー」は一般的に言ってラブストーリーっていうカテゴリーなの? 

 テーマを語るときにもっともダメなことは「 そのテーマに対する知識や見解がないからといって、テーマの趣旨を改ざんしたり別の話題にすり替えたりすること 」です。 今回の出演者が全員「 ラブストーリーとは何か?」を語る気がないようでした。 映画論の中で話題のすり替えの典型は「ロッキーのコノ部分が恋愛ドラマ」とか「ガンダムのココがラブストーリーと言えなくもない」などの言い回し。 でもそれってラブストーリーを語る企画になっていないじゃん。 ラブストーリーってメグ・ライアンやジュリア・ロバーツが主役でマライヤ・キャリーっぽい感じのストーリーの映画のことでしょ? そーいうベタな恋愛モノの引き出しがないからって「 映画論に逃げる 」のは“こそく”な感じがしますよね。
「コレも恋愛モノと言えなくもない」とか「 コレも恋愛モノの要素が含まれている」とか、その映画を観た個人の解釈は個人の感想であって作品論ではありません。 映画ファン独自の理論を語り合う集いなのでしたら、それはラボとは言いません。 『 様々な名作映画の中に隠されているラブストーリーの要素がもたらす効果 』というのがテーマでしたら、「ガンダム」のフラウボウの心変わりへの持論もアリでしょう。 かなり幼稚な意見だと思いますけどね・・・
では、ラブストーリーが何によって構成されているのかを正面から考えてみましょう。 自分は邦画、洋画、ジャンルを問わず映画はほとんど観ていません。 「 レオン」もどーいうお話かは知っていますが観たことはありません。(観ていないのに知ってる映画って多いですよね) だから「 レオン」を観た方々が「 あれはどー考えても恋愛ドラマだろ 」って言うのでしたら否定できないけど、殺し屋のシーンが出てくる恋愛映画なのか恋愛要素がある殺し屋映画なのかはわかります。 
自分はどちらかといえば映画よりもマンガのほうが得意なので、マンガを題材にしてラブストーリーを考えてみたいと思います。

 今回取り上げる「 不埒な求婚者 」というマンガの作者、花田祐実さんはキャリアが25年以上の大ベテランマンガ家です。 女性マンガ誌「 ヤングユー 」の初期の執筆メンバーです。 自分が持ってる一番古い単行本の「 あかるい夜のむこう 」の奥付には1989年2月となっています。 ちょうど山下和美さんの「 ダンディーとわたし 」や、岩館真理子さんの「 うちのママが言うことには 」などが連載されていたころです。 去年、記事に取り上げた榛野なな恵さんの「Papa told me」もこの頃が連載スタートです。
それじゃあ「 花田祐実さんって知ってる?」って聞くと「 誰それ?」って思われることでしょう。 よほどマンガが好きな方じゃないと上がってこない」名前です。 しかもマンガにスゴく詳しいマニアの方々や、マンガを人に紹介するくらい読み込んでるマンガファンの方々にはあんまりウケが良くないマンガ家です。 大ヒット作とか説明出来るような代表作など、人に説明出来るような有名タイトルが一つもありません。 実はこれが花田さんのスゴいところで、ヒット作がないのに25年間もマンガ家を続けている希少なマンガ家です。 ヒット作があっても生き残るのが大変なマンガ業界で、25年間以上もひょうひょうと描き続けるのは大変なことです。 20年以上のキャリアがあるマンガ家さんは結構いますが、毎年コンスタントに単行本を出しているのは希です。 しかも「 ガラスの仮面 」や「 こち亀 」のような継続性だけのマンガ家とは違い、単行本読み切りの短編ばっかりを描いてきました。 ヤングユーが廃刊になってからは集英社~白泉社~幻冬舎~秋田書店と都落ちというか活動の場を変えていきました。 
現在では主に秋田書店の「恋愛 Love MAX」というガチ・レディースコミックス誌で描いています。 今月号は『 誘惑する上司、調教する先輩、強引な部下。 狙われたら逃げられないエロスなワナ、ケダモノだらけの社内恋愛、スーツの色気、オフィスの野獣たち 』というコピーです。 ちょっとクラクラするようなエロ・マンガ誌ですね・・・

 

 花田さんのマンガは掲載誌こそレディースコミックですが、その内容はとてもレディ・コミとは言えないような乙女向け少女マンガです。 一般の方々の思い浮かべるような“エロスのワナ”や“ケダモノだらけの社内恋愛”といったハードな展開はまったくありません。 本来の目的?で「恋愛 Love MAX」を購読している大人のお姉様たちには「 カマトトぶってるんじゃないわよ!」って感じでしょう。 カマトトって言葉を久々に使いました。 レディ・コミなのにチューが精一杯で、ベッドが出てきても「 ページをめくると、もう朝!」っていうようなお子様っぷりです。 エロさでいえば「別マ」の10分の1もエロくありません。 そんな花田さんが25年も読み続けられてきたのは何故か? それは花田さんのマンガには一貫してラブストーリーの全てが詰め込まれているからです。 少女マンガだったらラブストーリーが入っていて当然だと思われることでしょう。 でも普通のマンガ家たちは長いキャリアの間に代表作というか“評価される作品”を描きたくなるものです。 花田さんもデビュー当初は女性向けマンガを模索していたようでした。 しかし自分のスタイルを確立してからは一貫して同じようなラブストーリーを描き続けています。 それでは花田さんが確立したラブストーリーとはどーいうモノでしょう?

花田祐実さんの作品のヒロイン(主人公)の特徴
 たいした才能(スキル)や容姿(スペック)ではないけど中流以上(そこそこ)
 仕事や学業は腰掛け程度だが、強烈な恋愛思考と結婚願望あり
 特に努力や精進することもなく、達成させたい人生の夢や目標もない
 年上設定だとダメダメなお姉さんキャラ 年下設定だとわがままな妹キャラ
 おしゃべりでお調子者 世間知らずのお嬢様タイプ つねに相手を振り回す言動
 タレ目でたぬき顔

花田祐実さんの作品の相手役(彼氏)の特徴
 売れてなくても才能あり フリーの○○や小説家など自由業
 精神年齢が父親級 ヒロインに対して保護者のような振る舞い
 モテ男なのに恋愛思考や結婚願望でないために現在フリー
 女心がイマイチ解っていない不器用さでヒロインを怒らすけど、すぐに反省
 長髪で目が隠れるくらいが好み チャラ系ロックシンガーのロン毛は不可

花田祐実さんの作品の脇役の特徴
 適当に相談にのるヒロインの友人 アドバイスは一般論のみ
 彼氏のなじみのショットバー?のマスター アドバイスはほぼナシ
 たまに出てくるヒロインのライバル 昔の彼女や会社の上司など
 ヒロインの弟や彼氏のお姉さんなど肉親の関係者 だいたいヒロインを心配している
 彼氏の仕事上の関係者 あまりストーリーに絡まない

ストーリーの基本は苦労知らずの主人公がさして苦労もせずに恋人をゲットするマデのお話です。 大体がベットまでたどり着いたらグッドエンド。 その先にストーリーが続いても破局とか死別などのバッドエンドな展開は皆無です。 確実にハッピーエンドなストーリーを読みたいのなら、花田さんの作品を読めば間違いないです。 主人公が成長するとか大切なことに気づくなどの少年ジャンプの編集部が言いそうな展開も皆無です。 「 彼氏と上手くつきあえるようになる?」っていうような恋愛ゲーム的な要素もありません。 だって主人公はつき合えるに決まってるから!
花田祐実さんの描くキャラは槇村さとるさんの作品の中の主人公が最も嫌うタイプのキャラです。 たしかにストーリー=主人公の成長と考える槇村さんはこーいうキャラを描きません。 しかし恋愛ストーリーはキャラの成長のストーリーではないと考えたらどうでしょう? “恋愛しながら成長する”と“ただ恋愛するだけ”ではどっちがよりラブストーリーか? それは恋愛のみに特化している後者のほうでしょう。 本来の恋愛には成長なんか必要ありません。 なぜ槇村さんの描く恋愛マンガは主人公の成長を伴うのかといえば、それは成長しないとキャラクターがバカに見えるからです。 自分の描くキャラは作者を投影してますから、描いてる自分がバカに思われるのがいやなんでしょう。 槇村さんは作品に自分を投影させて作品を作り上げるタイプなので主人公のバカさには厳格です。 その点、花田さんは世間がイメージしている“お花畑のお嬢様”を普通に主人公にしちゃいます。 

 では、本題の花田さんの描くラブストーリーは何で構成されてるのでしょう? クレープを思い浮かべて下さい。 原宿とかのクレープ屋さんで売ってるようなアレです。 あのクレープって専門店はもとより縁日や学園祭でもおなじみのジャンクフードですよね。 ノウハウはあるんでしょうけどある程度の習熟で誰にでも作れそうです。 クレープ生地の焼き方云々は手で持ってドバーってならない程度に薄く焼ければそんなにアジの違いはないような気がしますよね。 大抵のお店では具とクリームのバラエティーで勝負していて、なるべく女性が好みそうな甘いモノをいかにコスト内でボリュームよく入れるかがカギです。 このイチゴとかチョコとかクリームなどの具が、ラブストーリーに置き換えると恋愛アイテムになります。 憧れの先輩とか、幼なじみの再会とか・・・ 
それではクレープ生地はなんでしょう? 生地こそがラブストーリーのシナリオそのものです。 先程、生地は誰にでも焼けるって言いましたが、ラブストーリーのシナリオは極論すれば誰にでも作れるものです。 じゃあ作ってみろって言われて作れるモノなのか?ってことですが、ある程度のレシピ(ルール)を守ればクレープもラブストーリーも作れちゃいます。
花田さんの作品はクレープの中に入れる具がクレープ好きの期待を裏切らないんです。 王道の甘いモンをたっぷり入れた特製のラブストーリーです。 しかし当然クレープなんて夕食にはならないし、たくさん食べたいとも思いません。 栄養も期待出来ないし、男性にはウエッってなっちゃうかもしれません。 とびきりのスイーツを食べようってときにクレープを選ぶ人も少ないでしょう。  

 岩井さんたちがラブストーリーを正面から語れないのは恋愛映画という題材にクレープのような安っぽさを感じているような気がします。 岩井さんの映画評は「 オレは一流のパティシエでだから高級スイーツについてしか語らない 」っていう気位が感じられました。 別に一流のパティシエが高級な材料でクレープを作ってもかまいません。 今ではお店でお皿にのった何千円もするスイーツなクレープだってあります。 でも中学生の初デートで食べるクレープは千円を切らなきゃね。 チープでジャンクだが、期待通りの甘さがいいんです。 お互いに別々のを買って「 そっちも、ちょっとちょうだい 」て言いながら間接キスっていうのがラブストーリーの王道でしょう。 クレープなんかアルバイトの兄ちゃんでも屋台のおっちゃんでも、よほどの不器用でなければ誰にでも作れます。 
そして花田さんのクレープのような恋愛マンガも誰にでも描けるような作品です。 難しいマンガのテクニックや考えさせられるようなドラマ性はまったくありません。 でも25年以上クレープのようなチープでスイートなマンガを描き続けてきた実績は評価されるべきモンでしょう。 行列が出来るようなヒット作もなく、明太子入りなどヘンテコなオリジナルメニューに逃げたりしません。 街のクレープ屋さんでも25年続けばそれはもう名店として評価されているんでしょう。
職人のようにコツコツと積み上げたラブストーリーは、花田祐実という作風にまでなりました。 職人と形容するほど花田さんのマンガは職人っぽくないんですけどね。  
 

  

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