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2014-10

スイート&ビター - 2014.10.11 Sat

榛野なな恵さんの「Papa told me」です。

 前回の日記で取り上げた「 ああっ女神さまっ」は1988年からの連載でしたが、「Papa told me」はそれより1年前の1987年からの連載です。 「 女神さまっ」は無休連載で全48巻でしたが「Papa・・・」は不定期連載&休載期間アリだったので旧シリーズ27巻+新シリーズ7巻が出ています。 旧シリーズは集英社のヤングユー誌にて連載されていたのですが、同誌の廃刊に伴い最終回がないままうやむやになっちゃったようです。 最終刊らしいクレジットもなければクライマックスを感じるお話があったわけでもありませんでした。 かなりの読者は「 ああっ終わっちゃったんだな 」って思っていたようですが新設のコーラスなどで不定期連載になり、今はCocohana にて不定期連載中です。 旧シリーズは絶版だろうから入手困難でしょうけど、コーラス版とCocohana 版は今でも本屋さんで買うことができます。(在庫はないだろうけど・・・)
旧シリーズのファンで「 まだ連載してたの?」って人と、最近知ったファンで「 これ昔から続いていたマンガなの? 」って意見に分かれています。 ここら辺は「 女神さまっ」の感想に似ていますね。 似てるといえば変わりばえのしないストーリーを永遠に繰り返すのも「 女神さまっ」に通じるトコロでしょう。 途中で絵柄(キャラのタッチ)が変わるあたりも似ています。 現在のタッチは全シリーズ中もっとも顔が丸くなっています。

  

 そもそも榛野なな恵さん自身が画力に頼ったマンガ家さんってイメージではありません。 榛野さんが描きやすい?ように描くことがベストで、25年間も同じタッチで描くマンガかさんのほうが珍しいです。 それよりも「 辛辣さや既存の価値観や理不尽な事象をズバズバ切る感じが薄れた 」っていう感想が多いようです。 自分も「Papa・・・」は「 解ろうとしない想像力のない人たちと闘う物語 」って印象でした。 そーいう部分は以前からの榛野作品に必ず含まれていた要素だったし。 
80年代は少年マンガから青年誌へ拡大される流れにのって、少女マンガも女性マンガ誌やレディースコミックに拡大されていきました。 少女マンガという学園中心の恋愛劇では学校を卒業して大人になった読者にはもう物足りません。 少女マンガでは描ききれないモノや物足りないモノを補うために女性誌は作られました。 お姉さんになってもマンガを読んで貰うために。 女性誌も二極化し、足りないモノが「 社会の中の女性という立場 」という女性マンガ誌と「 快楽のためのセックス描写 」というレディスコミックに分かれていきました。 社会性を求めたほうはOLという立場や自立、恋愛と結婚など卒業したら女子が直面する問題がテーマになりました。 快楽を求めた方は行き過ぎた体位やマニアックなプレイが度を超しちゃってポルノ規制に引っかかっちゃいました。 最初は華々しかったレディースコミックも今じゃ細々と続けているみたいです。

 少女マンガを卒業した女子をターゲットにうたったヤングユーに小学生が主人公っていうのは妙なモンでした。 このお話は奥さんを病気で亡くした作家の的場信吉(おとうさん)と娘の知世(主人公)の暮らしを中心に描いた作品です。 設定では育児マンガと言えそうですが、子育てに苦労してるような話はありません。 おとうさんはいろいろ大変そうですけどね。 むしろ知世もおとうさんも個人の人格として尊重され対等なつき合い方をしています。 対等な人格の中で究極のファザコンマンガであり子煩悩マンガであり。 しかしこの作品がただの小学生の日常だと思ったら大間違いで、小学生の知世が思う疑問ははOLにも心当たりがあるような真理だったり、作品の中で知世が可愛いと思うモノたちはOLさんたちが小学生のころに可愛いと感じていたモノたちだったりします。
25年以上も同じようなショートストーリーを続けていますが、短編読み切りの構成でこの長さは特筆だと思います。 「 女神さまっ」は初期は短編読み切りのエピソードだったんですが、次第に何巻にもまたがるロングエピソードになっていきました。 「 はじめの一歩 」などは1試合を1話てして扱えるので、長期連載といっても考えるエピソードの量はそんなに多くはありません。 永遠に小学生のままの知世なのに何度も繰り返される夏休みやクリスマス。 サザエさんシステムなので「 もう、飽きた 」っていう読者もいれば「 この変わらない世界がいい 」という読者もいます。 マンガの中の世界観は普遍でもそれを読む読者の「 モノの見方 」も年齢によって変わっていくもんです。 この作品をずーと読んでる愛読者は自称“マンガ好き”って人が多いと思います。 たまにしかマンガを読まない人がたまたま榛野作品を読んでるとは考えにくいです。 それ以外の普通の読者にとっては自然と読まなくなっても不思議じゃない作品なんでしょうね。

  

 「Papa told me」は小学生が主人公ですが大人向けの寓話として描かれています。 ほとんどのストーリーが70%くらいしか描かれていません。 本来の物語の結末や顛末の30%くらい手前でお話が終わっちゃう感じです。 起承転結でいえば、“転”の当たりまでしか描かれていません。 これは寓話の暗示的な終わり方で「 主人公の行く末は描かなくてもわかるよね 」という榛野さんの表現方法です。 この「 わかるよね 」のトコロにこの作品を読むための資質が問われています。 
知世はクラスに一人か二人くらいいる違う景色を見ているような子です。 こーいうタイプの子はマンガの世界だけではなくて一定数は必ずいます。 「 みんなが白というけど本当に白いのかな?」って思うタイプです。 「 白じゃない!」と叫ぶ子も思っていても口にしない子もみんな知世の仲間です。 この作品は白じゃないことに気づいた人々のお話です。 それが善悪や道義のことでも、街角の誰も知らない素敵なお店でも、気づいちゃったり考えちゃったりする瞬間がこの作品のテーマみたいなモンです。 気づくところまでがストーリーで、その後がどーなってしまうかは読者の想像に任されてます。
初期のヤングユー掲載時はイケイケ時代のOLさんたちに気づかせるために描いていたんだと思います。 でも今の読者は歳を重ねて当時のイケイケを卒業した人たちとイケイケなんて知らない新しい世代です。 榛野さん自身も以前のような「 言ってやる 」っていう気負いがまったくないので、とんがったマンガっていう印象はもうありません。 
以前はハートフル・マンガなのにビターな感じだったんですが、今のシリーズはどちらかといえばスイート多めっていう感じです。 掲載誌の要望なのかかなりガーリーなマンガになってるようです。 小沢真理さんのマンガに似たスイートさになってるのかな? 小沢真理さんもスイートとビターのさじ加減が上手なマンガ家さんです。

 個人的には「Papa tolud me」は北原さんが登場する回を読むために買ってるといっても過言ではありません。 最新刊では北原さんの出演はナシでしたので、次回はもう少しがんばってほしいですね。
Cocohana ver の最新刊 Papa toludo me 3 薔薇色の休日 と旧シリーズのヤングユーコミックスの27巻(最終巻)の表紙を比べると同じような「 本屋さんから出てきた知世とおとうさん 」という構図です。 見比べると新旧の違いが面白いです。

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