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2014-10

セリフのないマンガ? - 2014.10.22 Wed

SILENT MANGA AUDITION (サイレントマンガオーディション ) についてです。

マンガ好きの方々やサブカル系の方々にも「 サイレントマンガオーディション 」という言葉はあまり聞きなれないと思います。 知ってるからって偉いわけでもマニアってワケでもありません。 国際的なマンガのコンテストなんですが、日本人の読者にはまったく関係のないようなマンガコンテストです。 自分も最近になって知ったくらいです。 2013年が最初で今は第3回目の募集中です。 以前にこの日記で取り上げた「 アングレーム国際漫画祭 」とは意味合いが全然違いまして、世界中のマンガ愛好家っぽい人が投稿してるようです。
主催者は(株)コアミックスの堀江信彦代表です。 「 堀江さんって誰?」ってことですが少年ジャンプの編集長で「 北斗の拳 」の担当者、ジャンプを辞めてから「 週間 コミックバンチ」や「 コミックゼノン 」を創った人です。 そのコアミックスが主催で行われるのが、SILENT MANGA AUDITION (サイレントマンガオーディション )というコンテストです。 募集しているのは挿し絵や風刺画のような広い意味のマンガ的なモノではなくて、日本で一般的なコママンガの“MANGA”です。 ただ、サイレントというだけあってセリフや擬音等の文字を一切禁じ「 絵だけで表現する 」というマンガのコンテストです。

 そもそも「 何でセリフなしのマンガ 」なのか?という疑問がありますよね。 主催者の堀江さんによると、日本のマンガは成熟、複雑になりすぎてセリフに頼った“文学化している”という指摘でした。 文学化したマンガでは表現の演出力よりも言葉に頼る(セリフなどで説明する)ようになっちゃいました。 そのために海外へ日本のマンガを輸出しても内容を正確に伝えられない「 翻訳の壁 」があるとのこと、最近は諸外国で「 日本のマンガってつまらなくなった 」との声があるそうです。 堀江さんの考えでは手塚先生のころのマンガは最小限のセリフだけに抑えていて基本は絵を動かして表現していたとのこと。  言葉に頼らない(セリフのない)マンガを描くことによって演出力というマンガの原点に立ち返れるという意図のようです。
その理論や効果については異論を唱える方々もいるでしょうが、「 ONE PIECE 」のコマ割の細かさと説明口調のセリフを見ればなるほどと言えなくもないですね。 しかし、言葉に頼らないマンガというのは音階に頼らない音楽とかと一緒なようにも思えます。 堀江さん自身も“文学化したマンガ”もそれはそれで素晴らしいマンガ文化だと認めています。 でも海外のマンガ事情はまだ黎明期以前なので、日本流の文学的なマンガを模倣するよりも手塚マンガまで戻ったほうがいいとの判断で、それは作家ではなく編集者の発想なんでしょう。

 このサイレントマンガオーディションは成功したのでしょうか? 
『 最新のお題は「ラブレター」なんだけど、それには半年で54カ国から507編の応募があった。これはすごい数だね。その作品を見ていると、翻訳なしで、作者の気持ちが全部わかるんだよ。だって言葉がないからね。54カ国の「ラブレター」にまつわる気持ちやストーリー、作品の意味がすべて分かる。これは小説には絶対できないよね。』 (堀江さんのコメントの抜粋)

大絶賛じゃないですか! このコメントを読むと主催者的には成功と言えるようです。 もう第三回のお題の募集も始まっているようです。 
マンガの評価には絵の魅力、ストーリーのドラマ性、設定の奇抜さ、テーマの意義、キャラの魅力、画面の綺麗さ、作者の人間性、マンガへの情熱・・・いくらでも上げられます。 でも、突きつめればマンガの評価は「 面白いか?つまんないか?」だけになります。 しかし面白さには個人差もあり、読み手側の好みによっても左右されます。 まったくの新人が爆笑を取ったり感動を振りまくのもハードルが高すぎるでしょう。 言い方をかえれば「 この作者のほかの作品(次回作)を読んでみたいか?」ということになります。 もっと簡単に言うと「 二度見させたら合格 」ってことでしょう。 読者がその作品を読んで「 見つけた!」って叫ばせたら勝ちです。 投稿マンガの批評で「 光るモノがある 」とか「 荒削りだが魅力がある 」というのはあんまりマンガを正当に評価していないですよね。 それなら作品を描かせなくても面接すれば解ることでしょう。
そーいう面白さだけでこのコンペの作品を観ると面白い作品が一つもありませんでした。 作品は公式ホームページで読むことができますが、507編がずらーと散らばってるので入選作がどれなのかはさっぱり解りません。 受賞作はコアミックスの出版してる豪華本(値段が)で読むことができるそうです。 マンガを募集して面白い作品が集まらなかったのなら失敗と思うんですよね。 面白い作品が集まることまでは初めから期待していないというのなら、それも間抜けな話だとおもいますし・・・ 
作品の傾向では堀江さんのコメントの通りに「 翻訳なしで、作者の気持ちが全部わかるんだよ」の部分がつまらない要因だと思われます。 つまりセリフを書かないけどセリフの部分が解るようなて展開に終始しちゃってるんですよね。 セリフなしで解る展開っていうのはセリフありで過去に読んだ経験のあるような展開です。 それをセリフなしに置き換えただけって印象しか残んないんです。 パントマイムはセリフナシですが、その動きに注視しちゃうのは観ていないとどう展開するのか解らないから。 でもサイレントマンガの多くはテレビドラマをボリュームを絞って観てるだけって感じです。 そこには堀江さんが強く主張していた「 セリフがないから生まれる表現力 」がまったく感じられませんでした。 一様にラブレターだなって解るだけですが、解ることはマンガの最低限の約束事でその先がマンガの良さです。 このコンペは世界中から当たり障りのないマンガを山のように集めちゃっただけのように思えます。

 そもそもサイレントマンガというのはマンガを描き始めたばっかりの人かマンガの表現に行き着いちゃったベテランが試行錯誤するモノです。 石ノ森章太郎大先生が一通りのマンガ理論を実践して、その先に実験的にやってみたというくらいハードルが高いマンガです。 シロウトでしかもマンガ後進国の人たちが日本のマンガの見よう見まねで描けるようなモンじゃありません。 
お題のラブレターだって識字率の低い地域やそもそも手紙の風習がない地域では、堀江さんの思っているようなラブレターの風習があるのかも疑問です。 お題とかセリフなしとかマンガは大喜利じゃないんだから・・・ プロのマンガ家でもテーマをつけて描かせたアンソロジーでは、ほとんどの作家のマンガがあんまり面白くさりません。 こーいうテーマに即したマンガを描くのは普通のマンガの技術とは違う能力が必要なんでしょう。 大原則でマンガ家は自分が描きたいことを描くためにマンガを描いてるんだから、お題を決めるなんていうのはマンガ家じゃない人の発想でしょう。 歌丸か?って感じですね。

 ここまで書いておいて自分でもサイレントマンガを描いてみました。 我ながらサムライだと思います。 よく野球観戦で三振したバッターに「 辞めちゃえ~」とかヤジると、「 じゃあお前が打ってみろよ 」ってなります。 自分はそー言われると打席に立っちゃうタイプなんでしょう。 
堀江さんの主張するサイレントでユニバーサルマンガを目指してます。 おっぱいは共通言語だと思います。

  

  

 自分はマンガをジャパンカルチャーという文化人も、エンターテイメント産業という貿易商人も、メディアコンテンツというマンガを読まない文化庁の役人も信用していません。 アジアや欧州でヒットすれば大儲けでしょうが、そのためだけにマンガを描くことは困難です。 彼らが必ず言うのがマンガのグローバル化です。 だったら歌手も英語やスペイン語で歌ったほうがグローバルですよね。 でもJPOPは日本語で歌いたいんでしょう。 マンガも本来はグローバルよりもドメスティックなんだと思います。 例えば吉田秋生さんの「 海街diary 」は日本の冠婚葬祭の風習は倫理観がストーリーのキモです。 それは国際化じゃないからダメなんでしょうか? これは結構怖い話で、アメリカではユニバーサルなストーリーじゃなきゃダメっていう方向に向かってるようです。 ダメっていう言葉が創作の世界では一番危険なんです。
それじゃマンガ後進国にどうマンガ文化を根付かせるのか?っていう話ですが、それは現地でマンガの出版に従事するしかないでしょう。 その国ごとの自国向けのマンガが必要なんです。 インターネットは国境を越えられるぶん自国からの評価から逃げる傾向にあります。 シンガポールのマンガ家は日本人に褒められるよりもシンガポール人に褒めて貰うように努力すべきだしね。

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