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2014-03

ナニーって何? - 2014.03.26 Wed

高口里純さんの「 紅のメリーポピンズ 」です。

  義なるものの上にも 不義なるものの上にも
  静かに夜は来る みんなの上に来る
  いい人の上にも 悪い人の上にも
  静かに夜は来る みんなの上に来る

 矢野顕子さんの「 ごはんができたよ 」の一節です。 最初、この歌詞の「 ギナルモノノウエニモ、フギナルモノノウエニモ 」という部分の意味が理解できませんでした。 ラジオのエアチェックだのみでレコードなんかとても買えなかった子供の頃だったので、歌詞カードを見たことがなかったんです。 自分の中に「 義なるもの 」というボキャブラリーが無かったので、ヒアリングでは解るはずもありませんでした。 のちに、歌詞を読んで腑に落ちたのですが、同時にこの歌詞は自分の物語を考える基準の一つになりました。 単純な性格ゆえ、いろんな楽曲から影響を受けているんですけどね。
 

 横浜のお母さんがベビーシッターに乳幼児の兄弟を預けて、2歳児のが死亡するという事件が起きました。 話題になった事件で容疑者も逮捕され、インチキ・ベビーシッターの手口も明らかになっているので事件の概要は省きます。 この事件はあまり知られていない「 ベビーシッターって何なの?」という問題を提起しました。 
タレントの大沢あかねさんが「 見ず知らずの人に、その人の自宅で預かってもらうっていうことはまず理解できません 」という趣旨のコメントをし、それに呼応するように被害者のお母さんへの批判や責任を追求する意見がネット等にあふれました。 お母さんを批判する意見に対してAMラジオのニッポン放送のうえやなぎアナが「 ベビーシッターを利用しなきゃいけない母親をバッシングするのはおかしい 」「 悪いのは国(国会)なんだから 」と反論しています。 大沢さんが発言したというテレビは観ていませんし、ウエちゃんの反論もたまたまラジオを聴いていただけです。 ふたりともマスコミの人だから代表的な意見として名前を出しました。 多くの方々が「 ベビーシッターを使う母親がおかしい 」という否定派か「 仕方なく使ってる 」という擁護派にわかれるようです。 子供が死んだのは母親の自業自得というヒドい意見やベビーシッターすべてを否定するなど極端な意見も多いようです。 しかし、多くの意見は今回の事件のセンセーショナルな部分に反応した意見なんだと思います。 大沢さんの言う意見は“育児、教育”という観点の意見で文科省的な意味合いです。 うえやなぎアナの意見は“雇用、福祉”という観点で厚生労働省的な意味合いです。 この二つはどちらもお母さんにとっての永遠の悩みであり、高度成長期以来ずーっと解決できないパラドックスです。 

 赤ちゃんから幼児の間はお母さんにベタベタくっついて成長していきます。 愛情を湯水のように注ぐことが大切で、この時期の愛情不足は成長後の人格形成やなんたらかんたらに影響が出ちゃいます。 そう考えると他人に預けるなんていうストレスや、ましてや0歳保育など論外ってなっちゃいます。 しかし、お母さんも働かなきゃ赤ちゃんと共に生活していけません。 今回の事件でもシングルマザーだったことが選択を狭めていたようですし。 子供を育てるということには“知性をはぐくむ”ということと“養う”ということが両方含まれます。 うえやなぎアナは「 どの母親だって仕方が無くそうやってるんだ 」という意見です。 しかし、仕方が無いのも保育所が足りないのも仕事が安定しないのも、すべて大人の都合であって2歳児の都合ではありません。 大人の都合というのは親が仕事や娯楽で育児が出来ないとか知人に頼る場所が無いとか待機児童など行政の不備など全部です。 うえやなぎアナの考え方は主語がお母さんで、大沢さんの考え方は主語が子供なんです。 
自分は少女マンガの先の物語をを考えるために児童教育や女性のキャリアの問題などを結構読んだりしてきました。 数十年くらい勉強してきた結論は、「 この問題に正解は無い 」ということです。 誰かの立場や無責任な立場で発言するのは簡単ですが、「 ここが問題なんです 」って指摘している学者たちだって正しさを指摘してるわけじゃありません。 すべてが問題だらけなんだから「 今さらベビーシッターの制度は問題がある 」とか「 ネットで安易に子供を預けるのは危険 」とか、 そんなことくらい誰でも知ってるよことですよね。

 冷静に考えて26歳の独身の男が「 お子さんを格安で預かります 」とネットに広告を出していたら怪しいと思うのが普通でしょう。 「 ルイ・ヴィトンのバックが3千円 」ってネットに出てたら、誰だってクリックする前に本物かどうかを考えます。 今回の事件で気になったのはネット仲介サイトでベビーシッターを雇ってる人が想像以上に多いということでした。 そして、フリーで活動しているベビーシッターがたくさんいるようです。 ネットの魅力は匿名で利用出来るというところです。 もちろんベビーシッター側も偽名や経歴詐称、実績のねつ造などは当たり前です。 そのリスクを負ってまでネットで探すのは、子供をベビーシッターに預けることを他人に知られたくない親側の心理かもしれません。 事件後のアンケートによると利用している多くの親たちも不安やリスク、トラブルはあるって答えています。 どちらかと言えば使ってることを知人に知られたくない孤独に育児をしている人に都合がいいようです。
お母さんにしてみれば「 みんなだって利用してるでしょ」っていう感覚なんだと思います。 ここで言う“みんな”とは近所や同僚、家族など名前の知っているみんなではありません。 ネットの中の同じような境遇の名前も匿名の“みんな”です。 ネットのビジネスはだいたいが匿名のみんなをターゲットにしています。
もう一つ気になったのは子供を預けるというハードルが非常に低くなっていることです。 子供をベビーシッターに預けるのとペットをペットホテルに預けるのが同じ感覚になりつつある印象です。 公園で遊ばせるにも一瞬も目が離せないくらい過敏な世の中ですが、平気で2泊3日も目が離せちゃうというのが大沢さん的に言えば理解出来ないところでしょう。 ここで考えられるのは“責任を転嫁する無責任さ”です。 バリ島のダイバー事故も佐村河内事件も日々誰かの責任を追及しています。 人々の関心事は誰に責任があるのか?とどう責任を取るつもりなのか?です。 すべての行動には責任はついて回ります。 その中で子供を他人に預ける行為は、預かった側に責任を転嫁することが出来ます。 金を払ってるんだから責任を持って子供を管理しろって話になっちゃいます。 犯人の26歳の男にすべての責任がありますが、母親には責任ほ放棄した責任があるような気がします。 死んだ2歳児に対して母親なら我が子を守ら無ければいけないという責任なんでしょう。 

 何でネットのベビーシッターが子供を殴るのか?は簡単に説明がつきます。 例えば、6時間だけ預かるとして1万円の料金だとします。 この1万円の中から経費を引いた額が売り上げになります。 経費の中には交通費や食事代など別途請求出来る部分と人件費に分けられます。 だいたいが込み込みで1万円だろうから削れるのは人件費のほうでしょう。 匿名でベビーシッターをしているんだから従業員という概念はないです。 グルだった仲間はいましたけどね。 あと削れるのが作業工賃です。 これは手間工賃と呼ばれる部分ですから、子供の世話をしなければ原価が下がり利益率が上がります。 彼は子供を殺すためにネットで獲物を探していたんではなくて、いつも通りの作業でたまたま今回は死んじゃっただけだったんだと思います。
保母さんや幼稚園の先生などは子供が好きが大前提でないとやってられない職業です。 でも、ベビーシッターは育児の手際があれば子供好きでなくても出来るようです。 むしろ子供嫌いのほうが作業効率はいいのかもしれません。 26歳の男が異常に子供好きで子供が好きだからベビーシッターをやってるというのも母親からすれば怖いですけどね。
今回の事件で被害者の母親をネット等などで批難するのは、うえやなぎさんの言うとおり的外れだと思います。 それは批判している人のほとんどが子育てにも待機児童にも関係のない人たちだからです。 自分も関係ない立場の側です。 先に書いたように、この問題は50年以上も解決していないんです。 昨日事件が起きて、今日正義を振り回してもたんの解決にもなりません。 うえやなぎさんの本心も正義を振り回したってこのお母さんは救われないってことだと思います。 子育ての真っ最中で被害者の母親と同じ立場という人だって、それぞれ違った考え方があると思います。 法律を整備すれば解決という安易な発想では、現在のグレーな感じだからこそ利用出来たユーザーを閉め出しちゃいます。




 高口里純さんの「 紅のメリーポピンズ 」ですが、高口さんと言えば代表作は「 花のあすか組 」です。 あすか組はすでに高口さんのライフワークとなっていて、水島新司さんの「 ドカベン 」や弘兼憲史さんの「 島耕作 」のように遺作になるまで描き続けるんだと思います。 この「 紅のメリーポピンズ 」はJOUR すてきな主婦たちという双葉社の女性誌で連載中の作品です。 高口さんの代名詞ともいえる“不良少女”や“抗争”や“タイマン”は出てきません。 高口さんは今どき少年誌でも扱わないような任侠不良マンガが得意のマンガ家です。 少年誌がマンガをRPGになぞってライバルをボスキャラ歳か認識していないのに対して、本格抗争マンガや小股の切れ上がった姐さん(中学生だけど)を描かせたら少年マンガを遙かに上回るクオリティーです。 少女マンガの構図の取り方のメリットを活かしていますのでとても読みやすいです。 でも、「 紅の・・・」は主人公は乳母の吏糸双葉ことフタバ リード。 日系英国人でノーランド・カレッジでSNバッチを持ってる、世界で10人といないスーパー・ナニーという設定です。 月額100万円単位のセレブ御用達のベビーシッターなので、今回の2歳児死亡の事件とはまったく関連のないお話です。

 この作品でのベース担ってるのは「 子供を育てる=教育 」という考えです。 これは吉岡たすく先生に通じる教育論で描かれています。 反対に「子育て=生活 」として描かれた作品は「 うさぎドロップ 」です。 保護者視点でリアルに子育ての難しさを描いた名作ですね。 あっちに比べたら「 紅の・・・」はリアルさではかないませんが、絵空事のほうが真実を描きやすいってこともあります。 
高口さんのマンガらしく、あすかやヨーコの啖呵ほどでは無いにせよ双葉さんも決めゼリフがあり、国際指名手配というバイオレンス設定なので警察に追われる身です。 
最初、ノーランド・カレッジは高口さんが考えた架空の設定なのかって思ってましたが実在する機関でした。

http://www.norland.co.uk/ ( 英国のサイトなので読めません・・・)

 今回の日記は一気に書いていたら後半で力尽きました・・・ 
3月の日記は時事ネタを取り込みながらって思ってたんですが、自分には向いていないような気もします。 
4月はマンガ祭りな日記にしたいですね。

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マンガを描くという事を目標にして
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