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2014-02

ゆっくりとダイビング - 2014.02.25 Tue

天野こずえさんの「 あまんちゅ!」です。

 インドネシアのバリ島沖で日本人ダイバー7人が遭難した事故。 5名救助、1名死亡、1名不明という結果でボランティアも含めてすべての捜索が終了しました。 亡くなられた方と不明の方は気の毒ですが、助かった方々も奇跡的だったようです。 この事故は発生から日がたつにつれ報道のニュアンスが変わっていきました。 最初はベテランのダイバーたちと信頼出来るインストラクターという伝え方でした。 でも、今回事故を起こしたダイビング会社の「 イエロースクーバ 」という会社はダイバー愛好家にはあまり評判のよくないダイバーショップとのこと。 最初に助かったインストラクターの人にも同情しがたいような態度でした。 最初に帰ってきた船長が業務上過失容疑で逮捕され、天候悪化が原因から人災事故にかわるようです。

 もともとダイビングなんて敷居の高いスポーツなんだと思っていましたが、実際はマリンレジャーの範ちゅうに入るようですね。 試しにバリのダイビングを検索してみたら、ダイビングとエステがセットになったパックとか格安ツアーって感じの広告がいっぱいありました。 スキーやスノボをするのに「 スキー&温泉バスツアー」を利用するイメージですね。 スキーに行くのに日頃からトレーニングしてる人は少ないと思います。 競技としてオリンピックを目指すスキーもありますが、多くの方々にとってはウインタースポーツはレジャーという意味合いのモノでしょう。 同じマリンスポーツとしてサーファーとダイバーを同一視しがちですが、むしろジェットスキーに近いカテゴリーかもしれません。 サーファーとはボードに立てる人のことですが、水上バイクは乗せてもらったら全員がマリンスポーツだから。 スキューバダイビングのツアー広告はどれも「 初心者歓迎 」というフレーズやすてきな珊瑚礁やおさかなの写真で誘っています。 実際にお金さえ払えば安全で楽しく快適にダイビングが出来るのだろうと思われます。 でも、水をまったく信用していない自分には「 本当に安全なのかな?」っていう疑問があります。

 専用の機材を使い講習を受けてインストラクターと同行するのが条件のスポーツというのは、それなりのリスクを考えているからだと思われます。 実際に事故が起きることは想定済みなので自己責任の誓約書を書かされるようです。 当然ながら保険も利きません。 リスクと自己責任を考えると冬山登山に似てるというイメージがあるようです。 事故になると捜索で大騒ぎになるところも共通しています。 今回のバリ島沖での事故の当事者の方々が観光気分なのかマリンスポーツのアスリートなのかは、シロートの自分にはよくわかりません。 ラジオで現役のダイバー経験のあるアナウンサーが「 彼女らは遭難したときに出来る最善の策を尽くしたので助かった 」という説明していました。 確かにサバイバルして助かったのですから、ただの観光客とは違います。 自分なら半日持たなかったことでしょう。
それじゃ今回の事故の原因がすべてダイバー会社の責任なのか?といえば、それも違和感があります。 インストラクターが危険を判断しなかったことや船長がポロッポーだったことが事故の要因かもしれません。 でも危険度は自己責任で判断するのが原則ならば、参加した5人も全員が判断ミスをしたと言えます。 遭難したことが業務上過失委ならば全員が共犯と言えます。 添乗料が発生してるプロだから会社に責任があるとも考えられますが、生きるや死ぬを任せるのに金銭契約があるほうが危険だと思います。 「 3万円は払ったんだから命を守れ 」っていう金銭契約は、4万円の危機が来たら今回の船長のようにトンズラされちゃいます。 バリ島の現地の人に格安パックで自分の命を預けるほうがスゴく勇気のある話だという気がします。
今回の事故で露呈した問題はダイビングが危険なスポーツということではありません。 危険なのは講習会で習うだろうから。 ダイビングという業界全体が安全をシェア出来ていないということです。 それはインストラクターやショップのオーナーや従業員だけではありません。 ゲストと呼ばれているお客さん(ダイバー)もシェアしなきゃいけないんでしょうね。 事故があった海域は潜ると流される(ドリフト)する上級者向けのポイントらしいです。 上級者向けというのは中級者以下では事故が起きるかもしれないということです。 上級者というのはたとえ自然相手でも事故を起こさないレベルじゃなきゃダメなんでしょう。


 「 あまんちゅ!」は天野こずえさんの代表作「 ARIA 」の連載終了後に、次回作として月刊コミックブレイドにて連載中のマンガです。 前作が火星が舞台のベネチア物語だったのに対して「 あまんちゅ!」は伊豆の県立夢ヶ丘高校が舞台のガチガチの学園マンガです。 元気でマイペースなぴかりと内気でハズかしがり屋のてこがダイビング部に入って部活をしたりだらだらしたりするお話です。 「 浪漫倶楽部 」の夢ヶ丘中学とは因果関係が無いと思われます。 たぶん天野さん自身があんまり深く考えていないんじゃないのかな? 
天野さんといえばファンタジーですが、今回はダイビングがテーマなのでびっくりするほど現実的なストーリーになっています。 それでも普通のマンガに比べたら何倍もふわふわしてるんですけどね。 



 天野さんのマンガの描き方は徹底した“性善説”に基づいたシナリオがベースです。 ほかの作家の作品でもいい人が主人公のマンガは多いのですが、ほとんどのマンガは悪役が出てきてその対比で主人公がいい人ってパターンです。 最近は悪や心のダークさを残忍に描けることがリアリティーだと思ってる作家が多いです。 残虐に描けることが描写力とでも言いたげな風潮です。 でも、天野さんは徹底的に悪意を排除した作品を描いています。 キャラも基本的に“いい人”だけしか登場しません。 まるで「 750ライダー」を思い起こさせるほどの善人っぷりです。 ファンタジーにしてもただの夢物語っていうわけにはいきません。 普通の作家は悪意のあるキャラを作品に入れることで物語に起伏をつけようとします。 「 雪の女王 」はわかりやすいですよね。 
では、天野さんの描くファンタジーの定義はなんでしょう? 

 素敵なこと ✕ 不思議なこと = ファンタジー

 天野さんの作風は、一見すると「 日常系 」のマンガと同じカテゴリーにい思われちゃいます。 でも、日常系のマンガは素敵なことや不思議なことが起こらないからこそ日常です。 そんなマンガの何が面白いのかを説明するのは難しいですね。 何も起こらないマンガなら描くのは簡単ですが、それではファンタジーにはなりません。 天野さんは素敵なこと以外は描きたくないんだと思います。 こーいう作家は意外と少ないようですね。
初期の作品では、ファンタジーを詰め込みすぎて一般の人には読みづらい印象でした。 描きたい世界ははっきりしてるので、ファンタジーに着いてこられない読者には読んでもらわなくても結構って印象でした。 正直自分も読むのが面倒っぽかったです。 それは描きたいモノを詰め込みすぎてしまう同人誌的なマンガって印象でした。 転機になったのは「 ARIA 」シリーズからでしょう。 ファンタジーを詰め込みすぎないでマンガの中の時間をゆっくりにすることで、ファンタジーがあまり得意でない一般の読者にも読みやすいマンガに進化しました。 この「 ファンタジーを詰め込みすぎない 」というのはビームコミックスの作家さんたちも考えたほうがいい気がします。 同じ過ちをしてるように思えます。 
「 ARIA 」はまさに天野さんの出世作なんですが、この“ゆっくりとした時間”は新作の「 あまんちゅ!」にも生かされています。 ダイビングの進捗度はプールでの講習をして3巻で初じめ海で潜りました。 現在7巻まで出ていますが、マイ・ドライスーツを作ったところまでです。 この後、協力なライバルの登場や全国大会に出場などの派手な展開は望めそうにはありません。 このペースで素人のてこがダイビングの基礎からゆっくり上達していくマンガなんでしょう。

 自分はゆっくりな感じの「 あまんちゅ!」を読んでいたので、前記のダイビング事故にはちょっとした違和感がありました。 助かった人のニュースは「 あまんちゅ!」のいうバディの精神?なんだなぁって思っていました。 しかし、周辺の報道を聞くにつれてマリンスポーツの厳しさよりもマリンレジャーの気楽さを歌ってるような印象でした。 普通に考えて10メートル海に潜るって命がけでしょ? ゲレンデ以外の林の中を滑るスキーやリタイア後の登山、ハングライダーなどは楽しさよりもリスクを周知させないとダメなんじゃないのかな? それは当事者たちが楽しむために。
天野さんは非常に丁寧にスキューバダイビングを描くことで、ダイビングというスポーツの素晴らしさと難しさをとてもフェアに伝えられています。 それには焦らない、急がない、ゆっくりな感じがぴったりなんでしょうね。
しかし、自分はこのマンガを読んでもダイビングをしたいという気持ちにはなりません。 水もバディも機材も信じていないから。 それはなんなるビビりなだけです。 ジェットコースターはビックサンダーマウンテンが限度で、スペース・・・のほうは無理です。 そんなにリスクを負ってまで潜る人たちの気持ちは永遠に理解出来ないでしょう。 じゃあ、何で「 あまんちゅ!」を読んでいるのか?ってことですが、それはファンタジーですから。
 
一生懸命に潜ってる人たちはクストーでも目指してるのかな?

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