topimage

2014-01

銀の匙のこと その4 - 2014.01.06 Mon

荒川 弘さんの 「 銀の匙 Silver Spoon」 の続きです。

 前回の日記で「 銀の匙 」のテーマについて書きましたが、食育マンガとしての意義について異議を唱えるご意見が寄せられました。(韻を踏んでみました) 食育とか命の尊さのメッセージは「 銀の匙 」の重要なファクターであり、「1~6巻はいらないだろう 」という自分の意見はあまりにも乱暴だろうという意見でした。 ファンの方々からすればしばし当然なことであり、しかもすべての方々が紳士的な文面で感謝の至りでありました。
「 銀の匙 」についての記事は前回で3回目に当たります。 当初3巻まで読んだ段階だと思っていましたが実際は4巻まで読んでの意見でした。 7巻以前の本は処分済みなので記憶が頼りの話になっちゃうんですが、自分の書いた日記を手がかりに追記したいと思います。 まず、当時の日記を並べておきます。

 「 銀の匙のこと その1」   http://likea777.blog33.fc2.com/blog-entry-90.html
 「 銀の匙のこと その2」   http://likea777.blog33.fc2.com/blog-entry-92.html
 「 銀の匙のこと その3」   http://likea777.blog33.fc2.com/blog-entry-183.html

 その1では八軒やアキなどキャラクターの魅力について。 その2では食育マンガについて。 そしてその3では作品のテーマについて書いてきました。 便宜上日記のタイトルを前回とそろえてみました。 今回寄せられた意見の多くはその2で書いた食育というテーマについてでした。 いわゆる豚丼のエピソードです。 このお話はアニメ化されたこともあって世間でも反響が大きかったようです。 自分の意見としても「 生きているブタを育てて、ソレを食べる 」ということを考え直すテーマ事態に異論も反論もありません。 命の尊さや食肉も元々は生きていたと実感することが、読んだ子供たちに何かを考えるきっかけになるのかもしれません。 
作中でも同級生とは命の価値観が違う八軒の行動は希有に見られてましたが、やがてクラスでの議論に発展します。 そーいう行動の積み重ねが八軒というキャラを作り上げていったのも事実です。 そーいう部分で1~6巻が必要ともいえます。 でも、当初は名前をつけて愛着のあるブタを食べることを受け入れられなかった八軒も、結局は食材になることを理解し自ら買い取ってベーコンを作ります。 まわりの同級生の中にも「 可哀相だから殺すなよ 」っていう意見は出ません。 ドラマの中でベジタリアンになる生徒は一人もいませんでした。 だって、みんな酪農家のせがれだから。

 このエピソードの考え方やドラマの作り方には異論はないし、みなさんの言うとおり「 いいお話 」なんだと思います。 でも、日記のその2で書いたようにやっぱりお子様向けのテーマだという印象でした。 自分に寄せられた意見もネットでの一般のマンガやアニメファンの方々も「 子供にとって大切な問いかけ 」っていう意見や感想でした。 小中学生のコメントはリサーチしていないので確かなことは言えませんが、多くの意見は「 自分はこの作品を読んで目から鱗が落ちた・・・」ってわけではないんですよね。 それは、豚肉が生きたブタを殺したモノという衝撃の事実を知らない大人なんていないから。 マンガってこーいう哲学とか宗教とか生き方とかをテーマにするのが向いていないジャンルです。 よく言われるパターンに「 子供が命について考えるきっかけになる 」という言い方があります。 じゃあ「 豚丼(八軒がブタにつけた名前)は経済動物だから殺しとよい 」って子供が思ったら正解だったのか? 作中では当然これが選択されました。 「 世の中には可愛いだけじゃ通用しないんだよ 」って諭すのが正解なのか? 答えが無いというのが答えなのか? 

 殺される家畜の命を尊ぶのならブタに感謝しながら食べるべきなのでしょうか? 犬や猫は可愛いからその命は尊ばれていますが、ブタの命も尊重するべきなのか? 尊重しながらも食べるべきなのか? それでは野菜は? 植物が枯れても尊重しなくていいのか? 畑を荒らすイノシシやシカを駆除したら、ソレも食べるために必要な命の犠牲といえるのか? 畑を荒らすけものは人間が成長するために必要な命ではなくて、生産効率を上げるために犠牲になる命です。 でも、その生産効率は農家の方々にとっては死活問題でもあります。 
突きつめれば理屈と屁理屈、思い入れと思い込み、ごちゃごちゃです。 そんなことは農業高も農業も経験者の荒川さんは百も承知です。 承知の上で「 銀の匙 」を描いているんだと思います。

 豚丼のエピソードで多くの方が思い出したのは「 命の授業 豚のPちゃん 」という本でしょう。 内容はタイトルから推測できる通り豚丼と同じお話です。 こっちは小学校で実際に行われた“授業”の実話です。 荒川さんもこの話をたたきに使ったのかは定かではありません。 いろんな作品がたたきに使われている印象がある作品だから。 このときに感じた違和感は今回の「 銀の匙 」をみんなが評価する雰囲気とは比べものになりませんでした。 八軒は高校生ですが実際の小学生がこの問題に向き合うということを想像出来るかがキモだと思います。 当時の黒田先生はかなり無責任というのが自分の感想でした。 もしかしたら創作のほうが自分と離れた視点で命を考えることが出来るから、マンガで表現するほうが正しいやり方なのかもしれません。 世の中の真理として命を教えることより、心情にそった命を教えるほうが子供には必要だという気がしますよね。 
その意味では「 銀の匙 」というマンガで豚丼を扱うのは間違っていませんが、その2で取り上げたのは黒田先生の「 命の授業 」は小学4年生だったということです。 先ほどの通り、この問題を考える多くの人は「 子供がこーいう作品を見るのはいいことだ 」っていう意見でした。 では、子供って何歳くらいのイメージなんでしょう? 年長さんか小学校の低学年、もしくは理屈で説明する条件で高学年かな?って感じです。 中学生は不条理を面白がるので一番考えるだろうけど、それは食育とは違うモノとして受け止めるでしょう。 そして八軒は高校生です。 掲載誌の少年サンデーの対象年齢を何歳に設定しているのかはわかりません。 荒川さんはコロコロコミックのヒットメーカーだったのですが、その世代を狙ったマンガには見えません。 その2でも書いたのですが、主人公が小学生だったら何の問題もありません。 
 
 小さい子供が必ず疑問に持つ大命題に「 空はなんで青いの?」というのがあります。 お母さんならきっとこの手のややこしい質問攻めが日常だと思います。 空がなぜ青いのかは省きますが、この質問は何歳までなら許されるでしょう? 幼稚園では行き当たりばったりの疑問を口にしているだけです。 だから面倒くさいんでしょう。 当人も理解する気がないから。 小学生なら理科に興味があるな!って感じがします。 中学生なら自分で調べろって感じ。 では高校生が聞いてきたら? たぶん高校生は聞いてこないでしょう。 だって聞くと自分からバカだって言ってるようなモンだから。
空が青い理由はまっとうな疑問ですが、それを疑問に持っていていい有効期限があります。 八軒の「 大事に育てたブタを食べるのか?」という疑問は「 空はなんで青いの?」に似ていると思います。

「ほぉ」って思ったら押してね

NEW ENTRY «  | BLOG TOP |  » OLD ENTRY

管理人のらいかです

マンガを描くという事を目標にして
マンガの描き方を考えるブログです
(ネタバレの可能性があります)

は記事の内容に「ほぉ」と
思えたら押して下さると嬉しいです

最新記事

訪問していただいた人数

月別アーカイブ