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2013-12

アニメ の設定について  - 2013.12.10 Tue

アニメにおける“設定”についてのお話です。

 スカパーのCMでガンダムの初代監督の御大、富野由悠季さんが「 アニメを作るならアニメを見るな 」って言っています。 富野さんのコメントには過去にもいろいろあったので、アニメファンの間ではすっかりおじいちゃん扱いです。 ナベツネ発言、石原発言とともに三大老人発言? アニメファンのネットでの「何言ってんのぉ? 」「 大人はいつもそう言う!」ってガンダム的発言で非難ゴーゴーでした。 アニメファンにとっては「 アニメ観ないでアニメ作れるのかよ?」とか「 お前が言うな!」って意見なんですよね。 反論するアニメファンの気持ちもわかりますが、自分も実感としては富野さんの意見に共感できます。 
多くの方々は富野さんが「アニメばっか観てないで映画や小説など広い視野を持て」って言ってると解釈しているようでした。 でも、本当は言葉の通りに「 アニメを作るのにアニメを観てる人(アニメファン)には可能性がない 」って言ってるんだと思います。 宮崎さんも高畑さんも出崎さんもアニメを観て育ったわけではありません。 その下の世代はアニメという業種が認知された時代のアニメーター、今の主力スタッフはその世代のアニメを観てアニメファンになったアニメーターです。 ここが 「アニメを見て・・・」っていう世代でしょう。 「 昔のほうがアニメは面白かった 」なんて言うつもりは毛頭ありませんが、最近のほうが面白いって印象もありません。
前回の日記で新旧ヤマトを比較しましたが、昔のほうが面白いとかつまらないとかっていうことではないです。 自分にとっては旧作だってあんまり面白かった記憶がありません。 ただ旧作に対して設定の不備を見直した新作が「 なんか違わないかい?」ってことです。 この設定というモノがアニメの作り方に大きく影響していることが新作ヤマトで浮き彫りになりました。 今回は前回の補足も兼ねてアニメの設定についてのお話です。 
「アニメを作るならアニメを見るな」に対する反論は富野さんが言ってることなので、反論は富野系サイトで受け付けてると思います。 みんな反論してましたよ。

 設定というのは広い意味でキャラの名前から髪型、人間関係、住んでる地域、すべて含めてアニメ設定です。 しかし、ここでは物語を作る上で普遍的な設定ではなくて“アニメ作品特有の設定”について考えてみましょう。 銀河鉄道999で言えば「 機械のカラダ 」とか「 銀河鉄道 」とかです。 鉄郎の容姿とか性格は普遍的なキャラクター設定なので、今回の特有の設定には含まないで考えてみます。自分は「 設定はストーリーじゃない 」というのが持論で、以前の日記でも書いてきました。 本来設定とはストーリーを考える上で必要な作業です。 先にストーリーがあって「 それじゃ、どんな敵にするか?」とか「 どんな時代背景がいいのか?」って考えることが重要です。 特有の設定のいうのは普遍的な設定と違って視聴者や読者が知らない設定です。 したがってその都度、視聴者に説明しなければいけません。 この説明して理解させるというのは、ストーリーを作る時には必ずやらなければいけない手順です。 
アニメを観る場合、事前にある程度ジャンルがわかるのでロボットと人間が暮らしていようと不思議なコスチュームを着ていようと「 ああっ、そーいう世界観のアニメなんだな 」って理解してもらえるところがあります。 それはアニメを見慣れた方々には通用しますが、一般の視聴者や子供たちには通用しないと思います。 
たとえば塀の外に巨人がいるとしましょう。 そこは地球なのか地球によく似た星なのか? 地球の未来なのか過去なのか? それを視聴者にわかりやすく説明しなきゃいけません。 そうしなきゃ何時、何処で、誰が、何をしてるのかさっぱりわかりません。 アニメファンの方々には「 わかりにくい作品こそが名作 」という発想もありましょうが、観ている人がわかるということが基本なのは当たり前のことです。 投稿マンガの場合、ほとんどのSFマンガがマンガの中で設定を説明できていない理由で落選しています。 塀の外の巨人のマンガも集英社に応募したときにボツにされています。 マンガの世界では読者が理解されないと読んでもらえないので、特有の設定はよりシビアに考えられているようです。

 その作品特有の設定は原作者や監督がオリジナルな発想ででっち上げた設定です。 他人に理解させるにはそれなりの説明が必要ですし、観る側にも「作品の特有の事象を理解する」という負担を強いることになります。 したがって、特有の設定はなるべく少なくしたほうがわかりやすい作品になるといえます。 1話目のストーリーがゲームの取説のように本気で説明口調になっちゃってる作品も結構見かけました。 本気で説明しなきゃ理解できない設定っていうのもどうかって思いますよね。 明らかに設定を盛りすぎちゃってるケースです。
では、特有の設定はどれくらいの量がちょうどいいのでしょう。 だいたい一般向けのSF作品でも2つがベターなんじゃないでしょうか? 理想は特有の設定が1つだけというのが感情移入しやすいです。 3つくらいが標準でそれ以上だとシナリオをまとめる能力が足りないような」印象になっちゃいます。 あと、シナリオを書く上で「 最初に決めた特有の設定は“絶対に増やしてはいけない”」という大原則があります。 設定は作品のルールですから途中でルールを変えることは御法度です。 しかし、多くのアニメが後半で前半と言ってることが違っちゃうのが現状です。 そうならないためにも特有の設定は少ない方がシナリオを作りやすいんです。 
特有の設定が1つだけのアニメの例は「 機動警察パトレイバー 」があります。 設定は「 作業用ロボットのレイバーが実用化された世界 」というだけです。 それに付随してレイバー犯罪、特車2課、グリフォン・・・って設定されています。 未来の日本という設定も特有の設定なんですが、なるべく現代社会を踏襲した世界観をめざしてました。 そこに描かれていた東京は「 攻殻機動隊 」のようなサイバー・シティじゃありません。 一番見せたいモノ(レイバー)だけを架空の設定にして、それ以外のすべてを普遍的な設定でまかなう方法です。
2つだけの例だと「 機動戦士ガンダム(初代)」があります。 ガンダムでは「 コロニーに移民した側と地球との独立戦争 」と「 モビルスーツ 」という2つの設定でできています。 後半にニュータイプが出てきますが、これは特有の設定というよりもストーリーそのものです。 初代以降の続編ではニュータイプや強化人間等もガンダムという特有の設定になっちゃってますけど。 この2作品はSFという非日常を描いた作品ですが、最初から何をやってるかがわかる作品でした。 オープニングのナレーションで特有の設定についてクドいほど説明していたからです。
これらの作品は設定以外の部分にストーリーが存在しています。 ガンダムのストーリーは一年戦争の終結がラストですが、戦争の勝ち負けはアムロにとってあまり関係ありませんでした。 最終回のタイトルは「 勝利 」ではなくて「 脱出 」です。 あくまでも戦争に関わったホワイトベースのクルーたちの物語です。 パトレイバーはテレビ版を観てないので何ともいえませんが、ゆうきさんのマンガのほうではシャフト対警察という物語です。 

 昔のアニメは特有の設定が比較的少なかった印象です。 大まかに「 悪の組織 」と「 正義の組織 」くらいあればお話が作れたからかもしれません。 しかし、そーいう子供だましなお話ではアンパンマンでは通用しますが、おっきいお友達には物足りません。 複雑な設定のほうが複雑な内容のような気がしますよね。 これは盛りすぎっていうアニメのハシリは「 超時空要塞マクロス 」でしょう。 バルキリー、宇宙人、超時空要塞、アイドル・・・てんこ盛りですね。 結局、初代マクロスは意欲作でありながらバラバラな作品に」なっちゃいました。 「 愛おぼえてますか 」はそれをまとめた作品です。 マクロスはやりたいストーリーというよりも、こーいう設定のアニメを作りたいっていう感じが当時からしてました。 おりしもガンダム以降の作品だったので、アニメファンの「 こーいう設定のアニメを待っていたんだ 」という声に応えた作品でした。 バルキリーの設定も秀逸で、SFな基礎設定と板野さんのミサイルと美樹本さんのキャラだけで名作になりました。 内容はけっこうヒドいところもあったんですけどね。
この特有の設定をフルに生かした作品が「 エヴァンゲリオン 」です。 庵野さんは特有の設定ありきで初回に状況を一切伝えないという妙な手法で設定好きのアニメファンの心を掴みました。 この作品は是非も含めて社会現象にまでなりましたが、1話目を観たときから「 このストーリーは終われないじゃん 」って思ってました。 まさか10年以上たっても完結しないとは思えませんでしたけど。 エヴァは設定だけがストーリーという作品の完成形でした。 主人公だとおぼしき少年少女には何の裁量も決定権もなく「 最初にぶち上げた“設定”が何なのか?」という疑問を投げかけ続けることで視聴者の興味を維持し続ける作品です。 「 使徒って何?」っていう疑問には答えず「 サードインパクト 」とか「 リリア 」とか“別の設定”を上乗せすることで興味を延命させる手法です。 ちょっと詐欺師の口上に似ています。 作品の世界観はとても巧妙で複雑に構想されていますが、ストーリー事態は状況説明ばっかでたいしたドラマではないっていう印象でした。 主人公のシンジが「 何かをする 」というストーリーならば主人公目線でお話を追えるんですが、結局はエヴァを取り巻く群像劇にしかできなかったようです。

 設定だけがストーリーのわかりやすい例として「 スターウォーズ 」をあげてみましょう。 ざっくり帝国軍と反乱軍が宇宙戦争をしています。 帝国軍は最終兵器デス・スターを作っていたが、紆余曲折でジェダイになったルークがレイア姫を助けてデス・スターの爆破も成功。  要するにデス・スターを壊すというだけのストーリーです。 「 壊せばお終い 」というのは」SFアニメのほとんどが採用しているストーリーです。 たいていの最終回では主人公が何かを壊しています。 しかもその最終兵器は特有の設定上存在するモノで、「それさえ壊せば地球は助かる」みたいなアレです。 スターウォーズは子供の頃にテレビで観たんですが、あまりにもペラペラなお話でびっくりしました。 いろんなジャンルの要素をぶち込む手法はエヴァに通じる部分もありますね。
アニメの設定偏重が主人公を魅力的に描くという原則を作り手が怠る原因の一つだと思います。 作る側も観る側も 設定イコール作品では無いって考えたほうがいいと思います。 何やってるのかわからない作品を観せられて「 あーこういう意味なのか 」ってわかることが「 面白いアニメ 」ってことではありません。 
それじゃクイズ番組みたいですよね。
 

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