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2013-04

出渕 裕の作るヤマト - 2013.04.27 Sat

「宇宙戦艦ヤマト2199」の続きです。

 名作と呼ばれる古い作品のリメイクは一定の収益が見込めるからあとを絶ちません。 たとえ有名な作品でも干支を二回りもすれば、元ネタを知らない世代がターゲットユーザーになっちゃいます。 「クララが立った」と言われても実際にはフレーズを知ってるだけで、ハイジを観たことがない世代がアニメの中心です。 知らない世代に名作を継承する目的としてのリメイクには意義があるのかもしれません。
もう一つは、当時のファンに懐かしく思ってもらいたいという懐古趣味的なリメイク。 前者は古くさい演出や作画だとテカテカした最近のアニメになれた子供たちに受け入れられません。 後者は当時のテイストを守らなければ「こんなのは違う」とおっさんたちにそっぽを向かれます。 ヤマトでいえば西崎さんの遺作であり執念だった「復活編」が、リメイクじゃなくて続編にあたるのですが「旧ヤマト世代にヤマトはまだ飛んでいるぞ」と知らしめようとした作品です。 森雪の娘とか出して旧作ファンをくすぐる作戦ですが、若い世代には森雪?ババァじゃねーかってことでしょう。 逆に実写版の「キムタクヤマト」のほうは、思いっきり今の子供に振った現代版ヤマトです。 どーせストーリーすら知らないんだからガミラス星人がタコでもかまないという乱暴な企画でした。 
今回の「ヤマト2199」はその両方のいいとこ取りを狙ったような作品です。

 自分が旧作ヤマトを観たのは再放送だったと思います。 映画版が盛り上がったのは知っていたような気もしますが、観に行ったのは「さらばヤマト」のほうだけです。 3話目で木星の浮遊大陸が出てくるんですが「まーた新しい設定を作っちゃって・・・」って思っていたら、会社の旧作ヤマト世代の人に「初代ヤマトにも浮遊大陸は出てただろ」って言われました。 自分はまったく憶えていませんでした。 
リメイク版を観るというのは中学の授業を大人になってからやり直す感じに似ています。 子供のころ歴史に興味がなくて日本史や古文の授業などをぼおーっと聞いていたが、大人になって勉強し直すと面白いからさくさく頭に入ってくるみやいな。
正直、旧作のヤマトってあんまり好きなアニメじゃありませんでした。 子供のころはヒーローものや巨大ロボットなどの“正義対悪”とか“人類の危機”が苦手でした。 「へんてこな宇宙人や怪人と戦う幼稚なお話」に、素直な感情移入ができませんでした。 小学時代には女子は男子のことを基本的に見下していますが、自分も女子に近い立ち位置でした。 だいたい怪獣とか怪人とかってなんだよ(笑) 

 それでもヤマトが心に残っているのは、ガミラス人が“人間”として描かれていることと地球人がヤマトの乗務員として描かれていることです。 当たり前のようなことですが、当時のSFアニメでちゃんとしたストーリーを描くことは珍しいことでした。 基本が小学生男子の“幼児性”を利用したようなアニメでした。 そういう作り方は「アニメは子供向け番組」という考えでは正しい作り方です。 事実、ヤマトは子供に受けなかったので視聴率が取れず打ち切りになってしまいました。 アニメが作品ではなくて番組だったころの話です。 ちょうど裏番組ではアニメ界の最強のツートップが「アルプスの少女ハイジ」を作っていました。 こっちもアルプスを現地取材(ロケハン)するという、子供向けアニメ番組を逸脱するような本気っぷりでした。 自分はこっちを観てたハズです。 でもギスギスした人間関係がイヤだったんですよね。 まったく、これだから子供は・・・

 新作の「ヤマト2199」ですが、前回の日記に書いたとおり監督は出渕 裕さんです。 彼はイヅブチユタカと読むのですが、自分は当初 デブチユウだと思っていました。 調べてみるとヤマトは出渕さんにとって2作目の監督作品です。 出渕さんはアニメオタクの元祖の世代で、観る側(同人誌活動側)から制作者側(アニメ業界側)へ転身した人です。 80年代にはこーいった文化人だか制作者だかわかりにくいボーダレスな人がたくさん湧いてきました。 評論家や知識人?がサブカルの頂点に君臨していた時代です。 そんな中、デブチ氏は自分にとってつかみ所が謎なアニメ関係者でした。 マニアの世界では「誰と誰が親交がある」とか「なんとかという作品に参加した」とかで評価されたりします。 出渕さんは「何をしてるのかわからないが、よく名前を見かける人」っていうイメージでした。 「あーこの絵は出渕さんのタッチだ」というような固有の意匠もありません。 盟友のゆうきまさみさんには「ゆうきさんの絵だ」ってわかるタッチがあるんですけどね。 
出渕さんの経歴を振り返っても「脇役メカや武器デザイン」とか「特撮ヒーローの衣装」など派手なのか地味なのかわかりにくい仕事ばっかりです。 出渕さん自身が演出や原作に携わることは少なく、設定を考えるのが好きな方のようです。 読んでいませんが大河マンガを途中で投げ出した(中断~打ち切り?)過去があります。 出渕さんは典型的な“設定オタク”ですね。 マンガ好きで絵が上手なのに作品を仕上げられない人の多くは、設定オタクの可能性があります。 「物語を考えることと設定を考えることは違う」ということを理解しないといけないんです。 設定を考えるのが得意な人は「自分は物語を作る才能がある」って思い込みがちです。 たとえば銃器の作画や考証が緻密に描かれたマンガの7割はあんまり面白くないマンガです。 ガンマニアには評価されますが、それはマンガの評価とは別モノです。(3割は面白いのか?というのは逃げです・・・)

 そんな出渕さんがリメイク版ヤマトの監督なのですが、自分はとてもベストだったと思います。 理にかなった人選ですし、出渕さんにとってもヤマトの監督は唯一監督ができそうな作品だと思います。 前記のとおり、今回のヤマトは旧ヤマトを知らない世代と旧ヤマトにしがみつく世代の両方に認められなきゃいけません。 大人も子供もってことです。 リメイクが失敗する要因は「今風に比べて古くさい」のか「旧作品に比べて別モノ」のかのどちらかです。 ようは新しくしていいのか?昔のままでいいのか?という悩みです。 
30年前のSFは30年前の科学力の影響を受けています。 メカの意匠もキャラの風俗も新しくしなきゃ不自然です。 でもなにも知らない若造に「ヤマトの歴史に対する思慮不足な解釈をするのはやめてくれ」というのがおっさんたちの希望です。 もう一つは「実はイスカンダルはひとりひとりの心の中にあったんだ」みたいなストーリー湾曲やねつ造、新事実、新解釈などの「余計なストーリーの改ざんをやめてくれ」という希望。 この二つを奇跡的にクリアしそうな監督が出渕さんだと思います。
出渕さんは旧ヤマトの第一期のマニアの設定オタクで、設定を後付することで生きてきたような人です。 武器設定や軍隊へのこだわりとか誰が観ても右翼っぽいテーマにはうってつけです。 しかも自身にストーリーを作る能力がないから旧作のシナリオに忠実にやってくれそうです。 押井守さんや庵野秀明さんが監督をしたら間違いなく「誰にも思いつかないラスト」になってしまうことでしょう。 誰ひとりとしてそんなヤマトが観たいワケじゃありません。 すでに3話までの間でも「アレ?ここは・・・」とか気になっちゃうディテールはあります。 根本的に「戦艦大和に偽装した新造戦艦」というのが理解できないです。 戦艦大和のボディを利用しないのならヤマトを作る設定上の意味がないです。 イスカンダルに行くのは宇宙戦艦アンドロメダでもいいハズだし、そのほうが出渕さん的なSF考証上でも正しいモノが作れるでしょう。

 今回の新作ヤマトを3話まで観て一番の感想は「観ていて時間が経つのが速い」ということです。 1話があっという間なんですよね。 元からしっかりとした方向性があるお話なのでテンポのいい作品に仕上がっている感じです。 出渕さんがいろいろと気遣いながら作ってる感じがいいですね。 自分としては浮遊大陸すら憶えていなかったので、全くの新作アニメのつもりで観ています。 設定が変わった部分に対しては「なぜ変わったもか?」を推察しながら観るのも楽しいでしょう。 ただ、島大介がバカに見えるのと人類滅亡という危機感が薄いのは何とかしてほしいです。 出渕さんが作りたいのはヤマトのリメイクじゃなくてエヴァンゲリヲンのリメイクって感じちゃうのも気になります。 「モニターに漢字を使うなよ!」っていつも思うんですよね。
結局、リメイク版「ヤマト2199」という作品は誰のための作品なのでしょうか? 

誰のためでもいいじゃないか
みんながその気でいればいい 
    
上手くまとめてみました・・・

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