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2013-03

野暮なマンガ、粋なマンガ - 2013.03.04 Mon

日暮キノコ さんの「 喰う寝るふたり 住むふたり 」です。

 このマンガは徳間書店のゼノンコミックスから出ているで、「月刊コミックゼノン」というあんまり聞かないだろうマンガ誌で連載中です。 「月刊コミックゼノン」は新潮社の「週刊コミックバンチ」廃刊にともない、新たに引き継いだマンガ誌です。 「週刊コミックバンチ」とは、集英社の「週刊少年ジャンプ」の編集長だった人が、「シティハンター」の北条司さんや「北斗の拳」の原哲夫さんなど、ジャンプの旧スタメンメンバーを引き連れて立ち上げた「夢をもう一度」的なマンガ誌です。 ジャンプから“大人向けマンガ家”に変わりそびれた作家の救済の意味もあるのでしょうが、なぜ出版社がコロコロかわるのか?とか疑問の多いマンガ誌でした。
自分の日記の関連では佐原ミズ さんの「 マイガール 」などがコミックバンチでの掲載していました。 「 喰う寝る・・・」は、コミックバンチ系列?のマンガでは佐原さん以来の購入でした。

 「 喰う寝る・・・」はタイトルのイメージ通りに“同棲モノ”というジャンルのマンガです。 高3の冬から付き合いだして10年、同棲8年目の恋人同士の物語です。 お料理は作れるが朝が弱い彼女と、優しいんだか優柔不断なんだかっていう彼氏。 アパートというよりも賃貸マンションで所得も両者の収入はそこそこ。 寝間着兼部屋着のジャージとか、28歳で結婚がちらつくなどの同棲マンガの王道のストーリーです。 「彼女が合コンに誘われて彼氏がヤキモキ」っていう定番のエピソードもあります。 画面上ではファッショナブルなシーンは皆無です。 しかしマンガファンの中にファッショナブルな読者が皆無なので問題はありません。 ファッショナブルな人はマンガなんか読んでないですし。 まぁ、どちらかといえば野暮ったい主人公のマンガです。 
このマンガは日記の表題の通りに「野暮なマンガ」なのですが、それはキャラが野暮ったいからではありません。 このマンガ独特の形式によるものです。 「 喰う寝る・・・」は1話の中に“リツコ編(彼女)”と“のりちゃん編(彼氏)”のザッピング形式のマンガです。 「男女両方の目線で読める」というのがウリなんですが、前後編じゃなく1話の中でふたつのマンガが続けて掲載されるということです。 リツコさんの主観で「のりちゃんに腹を立てている」ストーリーの後に、のりちゃんの主観で「なぜ怒らせちゃったのか」という事情を読むことができます。 このマンガが野暮なマンガなところは主人公たちの容姿や暮らしぶりではなく、この“お互いの事情や本音を見せる”ザッピングという形式が野暮なんです。

 それでは「野暮」ってなんなのか辞書で調べてみました。

野暮 1)世情に疎く、人情の機微を解さないこと、そのような人。

    2)洗練されていないこと、垢抜けていないこと、そのような人。

    3)遊里の事情に疎いこと、そのような人。

 3は論外ですが、2の「垢抜けないキャラ」は平成版の「神田川」な雰囲気を狙ってるのでOKでしょう。 問題なのは1の「人情の機微を解せない」という部分です。 そもそも恋愛ドラマの醍醐味は相手がとう思っているのかが解らないところです。 解らないからといって推理小説のように謎(相手の気持ち)を解明することが重要ではありません。 気がつかない相手に気づかせたり、読者にも気づかせたりするのがテクニックの見せ所です。 それを「その時、のりちゃんはこう思っていました」というマンガを描いちゃうと、せっかくの機微がもったいないです。 なんだか「答え合わせ」とか「正解のVTRを見てる」ようです。 なぜ答え合わせが必要なのかといえば、彼らがお互いの機微を解せないからでしょう。 でも恋愛中の答え合わせを読ませるのは野暮な話ですよね。 その答え合わせの部分を含めてマンガにしたのがザッピング形式なんでしょうけど。

 では、「野暮」の反対に「粋なマンガ」とはどんなマンガでしょうか? 粋といえば落語に出てくる旦那さまなど江戸っ子などがイメージされるでしょう。 これは「江戸っ子=都会っ子」というくくりで「田舎モン=野暮」との対比です。 前記の2の部分ですね。 粋なマンガの本質は「都会マンガ」かどうか?ではなく、マンガの内容にかかわる1の部分「人情の機微」がポイントになります。 この2を極めた「もっとも粋なマンガ」は西村しのぶ さんのマンガです。 描きかけを含めたくさんの作品を発表していますが、どれも基本は「オシャレな女の子とヤサ男の日々の駆け引き」がテーマです。 神戸の元町や芦屋などの聞いたことある土地のハイソなキャラが買い物や飲み食いをするマンガばっかりです。 そのキャラの容姿も「喰う寝る・・・」のジャージと違って、オシャレさんばっかりです。 マンガの中で取り上げられるのは「高い服」や「高い飯」が多いんですが、重要なのは値段よりも品質なので「チープなのに優れている」も好評価されます。 西村しのぶ さんは、2の「洗練されたモノ」だけで暮らしたい(マンガを描きたい)人なんだと思います。
同じく「買いものブギ」なマンガを得意にしているマンガ家に稚野鳥子さんがいます。 稚野さんも実際に取材(購入)し、それを作品に生かすという豪気な作風です。 でも稚野さんはマンガ家として売れっ子になったからブランド品が買えるようになったけど、西村さんは初めからブランド品を手にしているひとがマンガも描いてるってイメージです。 あくまでもイメージですけどね。

粋と野暮

 野暮なマンガの定義が1の「人情の機微が解せない」でしたが、粋なマンガの定義は「人情の機微が解る」ということでしょう。 「察しがつく」ということです。 西村さんのマンガのキャラは「察しない」と笑われちゃいます。 怒られるとか馬鹿にされるよりも、笑われるという感じです。 同じレベルの会話についてこられないキャラも読者も主人公は相手にしてくれません。 いい暮らしの中で洒落た男女が軽い会話を冗長に続くというのが西村マンガの神髄です。 何じゃそりゃ?っていう感じですが、こーいう「粋なマンガ」が描ける人が、西村さんのほかに見当たりません。 大抵のマンガは浮遊するストーリーに耐えられずに現実を描いちゃうんですよね。 稚野さんのマンガもすぐに妊娠しちゃうし・・・
日暮さんの「野暮」と西村さんの「粋」を融合させた作品が鳥飼 茜 さんの「おはようおかえり」です。 ふたりの姉が西村キャラで弟クンが日暮キャラです。 姉の強烈な個性によって弟や社長の野暮ったさが際立っています。 全体の狙いは野暮なマンガですから、これもOKです。

 そもそも野暮なマンガはダメなのか?ということですが、全然ダメじゃないです。 むしろ恋愛マンガというジャンルは全てが野暮なマンガですから。 スカしたキャラで面白いマンガが描ける西村さんのほうが特別なんです。 でも「相手の気持ちがわからない」から面白いんであるし、ふたつに別けなくても普通の恋愛マンガは1話のなかで両方が描けてると思います。 あだち充さんは相手の「気持ちは察する」というコンセプトでマンガを描き続けています。 リツコ編とのりちゃん編を同時に見せる以上、ネタがくり返しになっちゃ面白くないです。 それでは一度読んだ内容を2度読むことになっちゃうから。 後攻の「のりちゃん編」のほうがより面白い(感動的)必要があります。 ザッピングに向いたエピソードを用意する必要もあります。 お話を作るのに想像できる苦労を考えると、正直ザッピングしてるから面白いのか?という疑問もあります。 
ザッピングストーリーの解説で「男女にありがちな些細なすれ違いの原因が一目瞭然。 ちょっとした謎解き感覚が味わえます♪」と書いてました。 「ありがちな男と女の視点の違い」みたいな漠然とした話より、リカコとのりちゃんの違いを明確に描くほうが重要だし面白いハズです。

 絵のタッチは最近の少女マンガから青年誌へ移籍する方々のハヤリの画風です。 コマ割りはきっちりしていてとても読みやすいです。 こーいう野暮な主人公の生活マンガは個人的には大好きですし、いい同棲モノが少なくなっているのでこの作品は貴重です。
10代でツッパラかった女の子が長く同棲してるとリカコさんのような女性になるんだろうなぁって感じです。 

やっぱりマンガは野暮に限りますねっていう結論でした。

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