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2012-11

京都の人間模様 - 2012.11.23 Fri

鳥飼 茜 さんの「おはようおかえり」です。

 鳥飼 茜 さんは講談社の「モーニング・ツー」にて連載中の女性マンガ家です。 元少女マンガ家が青年誌に鞍替えする最近ハヤリのパターンです。 女性マンガ家は一般に少女マンガで活躍するモンですが、少女向けの作風に馴染めないとかの場合に心機一転で男の子向けのマンガが当たることがあります。 男性マンガ家が女性誌で描くというのはあまりないんですけどね。 でも、マンガというメディアの規模が縮小されているせいか、以前ほど読者が少年マンガとか少女マンガとか気にしなくなっているようです。 「NANA」や「のだめ」や「ちはやふる」は男の子でも読みますし、その逆もしかりで青年マンガだって女性読者はたくさんいます。 面白い作品ならばどっちでもいいってことですね。
どっちでもいいと言ってもどっちでも同じていうことではありません。 女性が描くマンガと男性が描くマンガとはやっぱり違います。 よく絵柄やコマ割りで区別されがちですが、「モテキ」や「銀の匙」のような男っぷりのいい画風の女流マンガ家さんもいます。 彼女らは少年マンガの世界ではまだ作者が女性だと偏見を持たれる時代から少年誌で活躍していました。 そのためにオンナであることが解らないようなペンネームをつけています。 単純に画風だけでいえば男性マンガ家が全て島本和彦さんのような少年マンガ絵ばかりじゃありません。 少女マンガを取り入れた線の細いキャラのマンガも多いです。 以前は男には難解すぎた少女マンガのコマ割りも、男女ともに進化しすぎて同じくらい難解になっています。 それでは女性マンガ家と男性マンガ家の差異はドコに出るのでしょう? それは作画ではなくて文章に色濃くあらわれます。 今回はマンガにおける文章力についてのお話です。
 
 マンガを描くというのは絵が上手な人じゃなきゃ無理だと思われがちです。 それからストーリーやギャグを生み出すアイデアも必要とか。 絵が上手でしかも想像力が人並み外れた人ならマンガを描くのに役立つだろうけど、そんなに常人離れしたマンガ家ばっかりじゃありません。 マンガ誌の掲載されているマンガ家のなかで「このマンガ家は絵が上手いよなぁ」って思えるのは半分以下でしょう。 中にはワザと下手に描いてるようなマンガ家もいますが、ちょっとお絵かきが好きな方は「オレのほうが上手いじゃん」って思ったことがあるハズです。 アイデアに関しても30分で「ドラえもん」の新しい道具を考えるという課題があれば、誰だって5~6個のアイデアは出てくると思います。 藤子Fさんが最初にドラえもんを考えるのは大変ですが、道具のパターンを考えるのは意外と簡単だったりします。
では、マンガを描くのに必要なモノはなんでしょう? それは文章力です。 画力も想像力も練習すれば多少は向上するモンです。 どんなマンガ家だって投稿作は妙ちくりんなマンガです。 以前より投稿マンガを読むのが趣味で、マンガ誌の「なんとか賞入選」とか見かけたら読むようにしてました。 キャラが区別できないとか独りよがりなセリフなどは脳内補正してなんとか理解しますが、文章がヘンな作品は読むのが面倒なだけです。 新人に限らず、つまんないマンガの多くは文章力のないことが原因だと思います。
では、マンガの文章とはなんでしょうか? マンガはキャラ絵や背景画、セリフやナレーション、擬音や効果線、コマ割りなどの様々な表現でストーリーを表現するメディアです。 それらを小説の場合は全て文章だけで表現します。 マンガは小説が文章だけで表現していることを伝えやすくするために絵を描いているともいえます。 絵もセリフもすべて文章の変わりだから小説と同様に文章力が必要ということです。 文章がおかしいマンガというのは、まさに「何が言いたいのかわからない」マンガです。 それと「何をやってるのかわからない」マンガですね。 
ちょっとでもマンガを描いたことがある方ならわかるんですが、マンガって描きたいシーンだけを描きたいんですよね。 描きたいシーン願望に忠実なのが同人誌です。 多くは前振りなしに描きたいシーンから始まって、その後の展開もなく終わるって感じです。 同人誌で2千ページの大作というのも勘弁ですけどね。 アクションやラブシーンなどの作者が描きたいシーン以外にも、物語の背景になるシーンや状況を伝えるシーンも描く必要があります。 
曲でいえばAメロ、Bメロ、サビ、って感じです。 サビの部分だけのマンガが短編マンガとか同人誌系のマンガの作り方です。 CMソングになってる曲でサビだけが耳に残ってるが、曲全体を聴くとAメロが退屈ってパターンも多いです。 全てを合わせて“イイ曲”にする為には、やっぱり文章力が必要になります。

 「おはようおかえり」は京都を舞台にした草食系男子の弟と肉食系女子のふたりの姉を中心にした人間模様のお話です。 「肉食系女子」というのはイケイケ系という意味もありますが、このお姉さん方は実際にお肉を食べるのが大好ききです。 肉以外にも作品中でしょっちゅう何かを食べています。 弟は家事全般が得意な「社内一嫁にしたい男」(中野さん調べ)なのでいっつも美味しいご飯を作ってます。 強気なお姉さんたちが便利な弟をこき使う4コママンガの家族モノにありがちな設定ですね。 他にも貪欲(ベットの上で)な恋人や横恋慕する“語り出す”男、暑苦しい系の先輩、ボンボンの社長、謎多きOL、タリーなOLなど草食系な弟の苦手っぽい人間関係で物語りが進みます。

おはようおかえり

1巻目ではキャラを並べただけという感じが強かったんですが、話が進むに連れて各キャラがハッキリしてきます。 最初のころの「いじけた弟とお姉さんたちが鬱陶しいだけのマンガ」ってだけで判断しちゃうと勿体ない気がします。 「銀の匙」で設定を並べただけのキャラがつまらないって書きましたが、鳥飼 茜 さんは全ての登場人物を実際に存在しうるようなキャラで描いています。 「銀の匙」がアニメ的な配役でキャラが作られているのに対して「おはようおかえり」は極めてマンガ的なキャラの作り方です。 アニメ的な作り方のほうが効率の良い方法ですが、均一で個性に欠けるイメージです。 「おはようおかえり」ではキャラ全員が「わかりやすいイメージ」と「イメージとは違う部分」を合わせ持っています。 それは普通に生活している中で同僚や友達、恋人、家族でも相手を全て知りうるのは不可能す。 その差異こそが人間模様を生むストーリーの元になります。 だから前の日記で取り上げた「銀の匙」では、そーいった人間模様の深みの部分に物足りなさを感じていました。
鳥飼さんの文章力がスゴイと思えるのは、そーいった人の多面性の描き方の上手さと伏線を使い切る巧みさです。 多面性とは「やな男だと思っていたが実は優しい男」とか。 少女マンガの大半の男の子はこのタイプなので基本中の基本ですね。 鳥飼さんは全ての登場人物の以外な一面を作中に盛り込みます。 そのためにお話の中のキャラはどんどんややこしくなっちゃいます。 でも、それが人間模様です。 それを解りやすく描けるチカラがマンガにおける文章力です。 ややこしい話のマンガを読んで、ややこしいと思われたらそれは文章がヘタってことです。 マンガの一番の利点は「バカでも読める」という解りやすさですから。 この日記もすでにややこしいだけなので、自分にも文章力が欠けているのは重々承知です。

 「おはようおかえり」のもう一つの魅力になっているのは、今ハヤリの“京マンガ”というところです。 マンガに出てくる食べ物やお店の場所などが実在の京都のモンが描かれています。 「東京ばな奈」まで実名です。 自分は東京生まれですから「東京ばな奈」を食べたことがありません。 静岡の人は「こっこ」を食べてるのかな? そーいった京都アルアル的な楽しみ方で読まれているファンもいるようです。 巻末に京都の地図と作中に登場した「京都モノ」の開設が付いています。 
でも物語があまり「世間が思う京都特有のイケズな感じ」の内容じゃないですね。 嫁ぎ先の姑が家を守るとか子どもを産めだとかの展開も、京都というより田舎の家長制度のなごりっぽいです。 批評の中に「京都を知らない作家が描いたマンガ」っていうのがありましたが、鳥飼さんは学生時代に京都に住んでいたそうです。 あまり京都色を強くキャラに乗せちゃうと「京都のオバサンだからぶぶ漬けキャラね」ってなっちゃいそうです。 それじゃ「銀の匙」と同じですし・・・ でも、京都というのが作品の魅力になっていたのは間違いないんです。 その分5巻目以降が大丈夫か心配でもありますね。    

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