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2012-07

森薫の後継者か? - 2012.07.13 Fri

笠井スイさんの「ジゼル・アラン」です。

 このマンガはエンターブレインの「Fellows!」という隔月刊のマンガ雑誌にて連載されているマンガです。 Fellows!(フェローズ)っていう名は馴染みがないかもしれませんが、森薫さんの「エマ」や「乙嫁語り」の中でよく出てくる名前です。 これらの単行本の背表紙に「BEAM COMIX」って書いてあります。 この「コミックビーム」というマンガ雑誌が改名したのがFellows!という雑誌でした。
隔月刊という形式は連載陣にたっぷり描き込む時間を与えるためのようで、当社調べで平均ヤンマガの3倍の描き込み量です。 しかもここの読者も編集もマンガ家に作家性を求める傾向で、新人の育成も成功しているようです。 一定量の描き込みが出来ないと掲載されないのかと思えば、しおやてるこさんのような“さっぱり系”のマンガ家も載っているのでバランスを取ってるのかな? 
メジャー作家では前記の森薫さんと「放浪息子」の志村貴子さんがツートップですね。

Fellows!では森薫さんが絶対的なエースです。 ではポスト森薫のマンガ家はだれでしょう? 森薫さんと同じくらいキャリアのある入江亜季さんや福島聡は別の路線っぽいです。 「描き込みのくどさ」と「目の作画」で選ぶなら「玲瓏館健在なりや」の冨明仁さんか「ジゼル・アラン」の笠井スイさんです。 両者とも同じ頃に連載が始まったと思います。 描き込みのくどさもいい勝負です。 キャラの自由度の高さでは冨明仁さんのほうが手慣れた感じがします。 では、どっちがポスト森薫に近いかといえば笠井スイさんだと思います。

ジゼル・アラン

「ジゼル・アラン」は「エマ」の時代背景に似た世界観で(きっちりとした年代や国は不明)真っ向から挑戦しています。 パクってるのかもしれませんが、森薫さんに挑戦するのなら潔い選択です。 読む人が必ず「エマ」と比べますから。 でも「エマ」の1巻目よりも笠井スイさんのほうが圧倒的に上手です。 森薫さんは今でこそ「画力魔王」の座に君臨していますが、当時はまだ情報量が少ない作画のマンガを描いていました。 エマの連載中に「ニュータイプの覚醒」があったようです。 高橋留美子さんの「めぞん一刻」で1話の響子さんと最終回の響子さんが別人なのと一緒ですね。 覚醒した森薫さんを読んでからマンガ家になったのであれば、笠井スイさんのほうが有利です。 現在の森薫さんの画力で描けばいいという明確な指針があるのだから。
「ジゼル・アラン」では描きたいテーマ(世界観)があるマンガ家さんにありがちな空回り感もちょっとあります。 主人公のジゼルが「好奇心旺盛なお嬢様」で「何でも屋」という設定故にお転婆冒険アクションコメディーを頑張りすぎちゃってジゼルという女の子像が定まっていなかった感じです。 正直、1巻目あたりではポスト森薫なんて全然思っていませんでした。 連載途中でこのマンガが少年探偵団を目指したい訳じゃないと気がついたのか、ジゼルはこんな女の子っていうイメージが読者に伝える方向にストーリーを切ったようです。 ここら辺は以前からこの日記で指摘している「物語は謎解きが重要なわけじゃない」の良い例です。 主人公の素性をあえて謎にしてるため「本当はこんな魅力の子」って作者が頭で考えていても、どんな魅力か隠しているので読者に伝わらないなら読み続けてもらえません。
あと物書きのエリックや執事のモネやアラン・パパ、編集者のモニクなどのキャラに魅力が足りない気がします。 わき役力が低いと森薫さんには勝てません。 あっちはお屋敷の大勢のメイドのひとりにまで油断しませんから。 だいたいエリックがつまんない男すぎます。 ウイリアム坊やは面白いキャラでした。
第2話でエリックがジゼルに「(髪の毛)昔はながかったんですか?」というセリフがあります。 でも第13話では“長髪”のジゼルが初めてエリックと出会うエピソードが描かれています。 新しく過去を描こうとすると、こーいうミスが起こりがちです。

ジゼル・アラン

 では冨明仁さんはどうでしょう? 「玲瓏館健在なりや」は笠井スイさんの空回りをそのまま作品にした感じでした。 主要キャラ(住人)が12人も出てくるけどお話全体が他人事って印象でした。 キャラも設定もシナリオも作者当人は細かく考えたんだろうけど、お話には最後まで興味がわかなかったです。 キャラの表情やコマ割りや背景などの情報が非常に多いのがかえって鬱陶しい感じです。 路線でいえば石黒正数さんの系統ですね。 マンガとしてのサービス精神はすごいんだけど・・・

 Fellows!の編集部は笠井スイさんには森薫さんの後継者と踏んでるハズです。(たぶん) 実際、1巻ごとに内容が向上してるようなので10巻目には「エマ」をしのぐマンガになってることでしょう。 きっと・・・  

 

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