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2012-06

あだち充の最後の賭け - 2012.06.17 Sun

あだち充 さんの「QあんどA」全6巻です。

 あだち充さんと言えばマンガをまったく読まないひとでも知っている国民的な知名度のマンガ家さんです。 「みゆき」や「タッチ」の大ヒットで高橋留美子さんと並ぶ小学館のエースですね。 そのあだち充さんの「QあんどA」が全6巻で完結しました。 この作品の内容は最近のあだち作品の「同じような顔の似たような設定でいつも通りのラブコメ」です。 定番の「実は能力の高かった主人公」と「幼なじみのうすら片思い」に、鉄板の「死んだ優秀な兄貴」そして「幽霊として弟(主人公)を見守る?」って感じのお話です。
1巻目を読み始めて感じたのはターゲットの読者層をかなり下げたかなって印象です。 前作の「クロスゲーム」にしろ古くからあだち充作品を読んできた読者向けよりも、まだマンガを読むことに慣れていない小中学生向けに描いているように思えます。 マンガの構成がわかりやすいマンガの読み方を覚えられる作品です。 
このマンガの読み方を覚えるというのは重要です。 マンガを読まない子供の中には「マンガの読み方がわからない」という子供がいるらしいです。 今どきの子供のマンガ離れの原因のひとつだと思います。
つまり近年のあだち作品はあまりにもマンガっぽくて以前のようなドラマ性を楽しむことはなくなっちゃいました。 自分はあだち作品がその方向の向かうことを否定しません。 たとえ自分が読んで面白くなくても、自分じゃない違う世代のために描いてるのならそれもアリです。 
「QあんどA」は全6巻で終了しましたが、最終巻の帯になんと「タッチ」の続編の「MAX」というマンガが新連載されるとの宣伝がでかでかと付けられていました。 一見するとまるで最終巻なのか新連載の1巻目なのか判らない装丁です。

Q あんど A

 
「QあんどA」のお話は6巻目で急展開します。 主人公があわてて陸上部で努力し始め小説家のバカ兄貴は芦川さんとよろしくなって、あげくは超法規的措置な最終回でした。 これは明確な連載打ち切りですね。 正直いって面白いマンガではないけど「こんなモンだろ・・・」って思ってましたが、編集はそうは思わなかったようです。 小学館はついに伝家の宝刀「タッチの続編」を始める決断をしました。 奥の手を抜いちゃいましたね。
個人的な意見ですが、シリーズ構成のなかでお話が続く場合以外の続編にはあんまり期待できないです。 とくにしっかりと完結したストーリーの“その後の物語”はファンとしての期待より蛇足になる心配のほうが強いですし。 昔の名作のリバイバルも「名作はそっとしておいてあげて・・・」って思います。 「タッチ」という昔の名作の続編だからこそ期待できる道理がありません。 あだち充さんはもうたくさん稼いだんだから、今さら脚光をあびなくてもいいんでは・・・?

 あだち充さんがどれだけ偉大なマンガ家かは誰もが周知のことです。 しかし「タッチ」の終了後20年以上経っているので、10代~20代のマンガファンは「タッチ」や「 H2 」を読んだことがないのかもしれませんね。 当時、どれだけスゴイマンガ家だったのかは島本和彦さんの「アオイホノウ」の中で詳しく描かれています。 「あだち充のマンガってつまんないじゃん」って言う若い世代の方々は、当時を知らないで最近作しか読んでいないからかもしれませんよ。 アニメの「タッチ」を観たってあだちマンガを語ることは出来ません。 「スラムダンク」などと比較にならないメガヒットマンガだったんだから。(10代ってスラムダンクすら知らない世代か?)
あだちマンガの魅力は「等身大のヒーロー」と「出来すぎた可愛さのヒロイン」の定番のラブコメと思われがちです。 でも本当のストロングポイントは「高校野球」です。 多くの作品で「脱・野球」を目指したようですが、実際にマンガが面白くなってるのは野球の試合ばっかりです。 水泳やらボクシングやら陸上などを題材にしたマンガだと、明らかに試合シーンがおざなりです。 当時のスポ根マンガ全盛時代に「タッチ」の野球よりも南ちゃんを重視したドラマ作りがスポ根のワクを越えた作品と評価されてました。 スポ根とラブコメは両立するみたいに。 しかし、「タッチ」で一番面白かったのは野球の試合そのものです。 あだち充さんは野球の試合をマンガで描くことがもっとも上手マンガ家です。 スポーツの素晴らしいところはシナリオが存在しないことです。 スポーツマンガはシナリオがあるんですけどシナリオがないような試合のシナリオを描く必要があります。 どうせ主人公が勝つだろうって展開でもどっちが勝つか判らないように読ませる技術です。
でもシナリオの多くをヤル気のないダメな主人公が才能を開花させるまでに費やされます。 試合までが非常に長いケースばっかです。 あだち充さんが一番すきなのは「オレはあいつの実力に気がついていた」っていうシナリオですね。 ここら辺も最近の読者が面倒くさいって思っちゃうんでしょう。 

 実際の新連載「MAX」は単行本が出るまで評価のしようがありません。 南ちゃんがイイ女になってればいいんですが40がらみのイイ女があだちマンガに出てきたことがないですし。 短編マンガでは青年誌向けのマンガも描いていますが、やっぱりあんまり面白くないです。 シナリオの挽き方がいかにも短編マンガって感じで。 ランバ・ラルがガンダムを「正確な射撃ゆえにコンピュータで予測しやすい」って言ってます。 読んでいてそんな感じがします。 盟友の高橋留美子さんの青年誌向け短編マンガは読んでいて予測不可能な面白さがあります。 せめて誰も死なないマンガを希望します。



 「タッチ」の野球のシーンで記憶に残ってるのは1アウトで達也が3塁ランナー、バッター4番の松平。 敬遠してゲッツー狙いだったが松平がウエストボールを大ファウルする。 ピッチャーが危険を感じさらに大きくはずす瞬間を狙って達也がホームスチールを成功させるシーン。 その後に敬遠された松平がやっぱりゲッツーになって相手監督が「作戦は間違っていなかった」と悔しがるんですが、このゲッツーが野球としてリアルなんですよね。 ライバル対決のドラマチックな野球マンガはけっこう描けるひとがいます。 でも本物の野球ってこんな勝負の機微の積み重ねだから。


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